ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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ストライクとイージス

 赤い髪が揺れる。

 

 

「ねぇ、セイヤ」

「なんだ?」

「私、この世界が大好きだよ」

 笑顔で振り返った少女は自分の手を持ち上げて、GBNの空と一緒に並べて見比べた。

 

 

「セイヤが居て、カルミアが居て、サトーが居て、皆が居て。……変な言い方だけど、生まれてきて良かった!」

「俺もだ、俺も───」

 手を伸ばす。

 

 

 

 ───その手は届かない。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 ノイズが走った。

 

 

「……だからさ、後の事頼むわ。それと、サザビーだけはユメちゃんに近付けさせるな」

「え、どういう事すか? カルミア氏? カルミア氏ったら!」

 ニャムが聞き直している間に通信は途絶していたらしく、ザーというノイズだけが彼女の耳に届く。

 そんな彼女にロックは目を細めて「おっさんどうしたって?」と、問い掛けた。

 

 

「……敵が、くるらしいっす。よく分からなかったっすけど、作戦がバレてるのかと」

 レーダーを見ながらそう答えるニャム。敵の機体の反応が一つ消えたと思ったら通信が入り、それが終わったら今度はカルミアの反応が消えている。

 

 しかし、どうして作戦がバレたのか。

 そんな事を考えている暇もない。敵の機影は残り三機とも、確実にこちらに近付いてきていた。

 

 

「おっさんが脅されてバラしたとかじゃねーよな?」

「カルミアさんはそんな事しないよタケシ君!」

「ロックな! いや……冗談だって」

 二人の会話を聞きながら、ケイは視界に映る敵の機影を見て目を細める。脳裏にはいつの日か別れた親友の顔が映っていた。

 

 

「とにもかくにも、敵さん来るっすよ! 戦闘準備。ジブンとロック氏で援護するっすから、ケイ殿とユメちゃんで前衛をお願いします。カルミア氏がサザビーをユメちゃんに近付けさせるなって言っていたので、よく分からないっすけどそれも留意してください!」

「「「了解!!」」」

 ニャムの言葉に三人は同時に返事をして、ストライクとスカイグラスパーがスラスターを吹かせて飛び出す。

 デュナメスはアッガイの索敵を頼りに援護射撃。まずは敵の出方を伺って切り口を探す事だ。

 

 

 

「アオト……」

 銃口を構えながら無意識に言葉を漏らす。

 

「なんでよりに寄ってイージスなんだか」

 ロックはスコープ越しに映るイージスを睨んで、目を細めながら舌打ちをした。引き金を引く。いつも通り、その光は当たらない。

 

 

 

「ストライクとスカイグラスパーが来たな……。アオト、ストライクを抑えろ。俺が後ろの二機をやってる間に、サトウ……お前がスカイグラスパーをやれ」

「了解です」

「やっとこの日が……復讐を果たす日が来た!」

 一方でアンチレッド、セイヤの命令にアオトとサトウはそう答えた。

 

 真っ直ぐストライクとスカイグラスパーに向かうイージスとサザビー。

 対するストライクBond、ケイはロックのデュナメスHellから借りたドッズランサーを携えてイージスを迎え撃つ。

 

 

「タケシが珍しく射撃付きの武器を持ってて助かった……。ユメ、サザビーからタケシ達の所まで逃げれるな?」

 戦闘空域に入る前に、ニャムからの言葉を思い出してケイはユメにそう伝えた。

 ユメも無理に立ち向かうつもりはないし、カルミアからの伝言を信じて首を縦に振る。

 

「大丈夫!」

「よし、イージスの事は任せろ!」

「ケー君……。……うん、任せたよ!」

 何か言い掛けたが、ユメは言葉を飲み込んで機体をひっくり返した。それを追い掛けるサザビーを横目に、ケイはイージスを睨む。

 さらに彼等を追い越すキュベレイ。アオトとの一騎討ちを望む気持ちは確かにあるが、今は味方を信用しているという気持ちの方が大きかった。

 

 

「アオト!」

 ドッズランサーを構え、イージスに肉薄する。

 その名の通り槍状の武器であるドッズランサーだが、穂先の根本にはドッズガンを装備していてロックがデュナメスHellに隠し持っている武装の中では珍しく射撃武器としても使える武器だ。

 

「そんなもので!」

 ドッズガンを連射しながら距離を詰めてくるストライクに、アオトはライフルを連射して応戦する。

 実剣兵器であるドッズランサーでは、イージスやストライクのフェイズシフト装甲を貫く事は出来ない。気をつけるべきは右腰のビームサーベルだけだ。

 

 それに、今はストライクを落としに行く必要はない。

 

 

 

「どうしてあんな人に手を貸してるんだ!」

 接近し、ビームサーベルを抜くストライク。イージスもそれに応えるように両腕のビームサーベルを展開し、ストライクと機体をぶつけ合う。

 

 

「何度も言わせるな、俺達はGBNを壊すだけだ!」

「何でそんな事を! 俺達、ガンダムが好きで……ガンプラが好きだっただろ!?」

「好きだった……からだよ!!」

 鍔迫り合い、サーベルを振り払ってそう言うアオト。ケイはドッズガンを連射しながら再びイージスに肉薄し、大振りにビームサーベルを構えた。

 対するアオトはその大振りに耐えられるようにサーベルをクロスさせる。

 

「だから……なんで!!」

 しかし大振りと見せ掛けて、ケイはクロスボーンストライカーのスラスターをずらしてイージスの真上に潜り込んだ。

 地上戦闘でこんな動きが出来ると思っていなかったアオトは一瞬反応が遅れる。

 

 

「───好きな物を壊そうとするんだよ!!」

「───っ」

 振り下ろされるドッズランサーに盾を向けるアオト。縦を貫いたドッズランサーだが、イージスのフェイズシフト装甲を破る事は出来ない。

 しかし、その衝撃の隙にケイはビームサーベルを振り払いイージスの左腕を切り飛ばした。アオトは舌打ちをしながらストライクBondと距離を取る。

 

 

「壊してきたじゃないか……俺達は!!」

「アオト……?」

「大好きなガンプラを、何度も壊して、何度も直して、それでも壊してきたじゃないか!!」

「……っ」

 残った右腕と両足のサーベルを展開し、ストライクBondに肉薄するイージス。

 ドッズガンによる牽制を意にも介さずに、ストライクの懐に潜り込んだイージスはドッズランサーごとストライクの左腕を切り飛ばした。

 

 

「───それって、GPDの事か」

「そうだ、俺達が……父さんが夢中になったガンプラバトルだ。こんな偽物の世界じゃない、本当の世界のな!!」

 お互いに再び鍔迫り合いながら、アオトはそう叫ぶ。

 

 

 あの日、あの事故の日。

 GBNに皆が熱中し始め、GPDは忘れ去られようとしていた。

 そんな事に苛立ちを覚えていたアオトの父親は、彼のガンプラを道路に投げて───

 

 

 その後アオトは父親と仲違いして家を出て行ったが、今の彼はあの頃の自分の父親と同じ想いを募らせているのかもしれない。

 

 

「GBNが憎いのか……」

「そうだよ……。俺の父さんからGPDを奪ったGBNが、ユメカの足を奪ったガンプラが、俺から何もかも奪っていったガンダムが憎いんだよ!!」

 変形し、ストライクに突撃するイージス。対するストライクはスラスターを吹かせ逃げる事はなく、自分からイージスに突進する。

 

「だから俺は、GBNをぶち壊す!! それで、また何かを失うとしても!!」

「アオト……!!」

 彼がこの五年間何を考えて過ごしていたのか、考えた事が無かった訳じゃない。

 ただ、その想像は尽く外れていた。俺達は親友に、とても寂しい想いをさせていたんだと気付く。

 

 

 なら、今ここで止めなければ。殴ってでも、アオトを連れ帰るんだ。

 

 

 変形したイージスの両手足がストライクをつかもうとしたその瞬間、ケイはクロスボーンストライカーを離脱させてストライクをしゃがませる。

 するとスラスターを全力で吹かせていたクロスボーンストライカーだけが、イージスに向けて突撃していった。

 

 これをイージスは避ける事が出来ずに、ストライカーにぶつかりバランスを崩して地面を転がる。

 

 

 

「違うんだアオト、お前のお父さんだってもうGBNの事は乗り越えた。ユメカだって新しい夢を見てる。お前がこんな事で悩むことなんてないんだよ!」

 ビームサーベルを構え、地面に倒れているイージスに向けて歩くケイ。

 しかし、死に体の筈のアオトは不敵に笑っていた。

 

 

「……俺の恨みがそれだけだと思ってるのかよ」

「……アオト?」

 その声に身体は震える。本物の憎悪を向けられたかのような、嫌な感覚が身体を走った。

 

 

「……俺から何もかもを奪ったのは、ガンプラと───お前なんだよケイスケ」

「は? 何言って……おい、アオ───」

 刹那。

 イージスは炎に包まれて、地面に転がっているクロスボーンストライカーと一緒に鉄屑になり変わる。

 

 

 

「……どういう事だよ、アオト。……おいアオト! 見てるんだろ!! アオト!! 説明しろよ!! アオトぉ!!!」

 自爆したイージスが居た場所には、爆風に巻き込まれて地面に横たわるストライクBondだけが残っていた。

 

 

「……なんで」

 唇を噛むケイだが、状況を見てハッとする。

 アオトの目的が時間稼ぎなら、自分はクロスボーンストライカーまで失って彼等の思う壺だ。ニャム伝えで聞いた「サザビーをユメちゃんに近付けるな」という言葉が頭に浮かぶ。

 

「くそ、ユメカ……! 大丈夫だよな……」

 戦いに真剣になり過ぎて周りが見えていなかった。ケイは踵を返してストライクBondのスラスターを吹かせる。ストライカーパックのないストライクの機動性は、実際よりも遅く感じた。

 

 

 

 

「ロック氏、敵さん射程圏内っすよ! そろそろ当てて下さいっす!」

「ニャムさんまで俺の射撃をバカにしたな!? 見たろよ畜生。ロック・リバー、目標を狙い撃つ!!」

 ユメが引き連れてきたサザビーに向けて、GNスナイパーライフルを向けるロック。放たれた光はスカイグラスパーの真下を通り抜けて、サザビーの頭の上を通り過ぎる。

 

「惜しいな」

「タケシ君今私に当たりそうだったよ!?」

「ロック氏に期待した自分がダメだったっす」

「酷い!!」

 言っている間にユメのスカイグラスパーは二人の上空を走っていた。

 サザビーの射程にデュナメスHellとアッガイが入る。しかし、サザビーのパイロットはスカイグラスパーしか見ていないようだった。

 

 

 放たれたライフルはスカイグラスパーの左翼を掠める。ユメは冷や汗を流しながら機体を旋回させた。

 

 

「こうなったらプランBっすよ! ロック氏、別で近付いてくるキュベレイの事は任したっすよ!」

「おうよ───って、え? ニャムさんアッガイでどうする気だ?」

「こうするっす!!」

 言いながら、ニャムはアッガイのスラスターを全力で吹かせる。

 本来水陸両用であり空中戦を想定していないアッガイだが、その完成度の高さからかスラスターはオーバーロードしたものもスカイグラスパーを追うサザビーの軌道へと上昇して見せたのだ。

 

 

「アッガイが飛んで来ただと!?」

「ニャムさん!?」

 それにはスカイグラスパーを追いかけていたサザビーのパイロット、サトウも目を丸くする。

 そしてニャムのアッガイは、そのままサザビーに組み付いた。無理な姿勢で機体のバランスが崩れたサザビーは、そのまま重力に引かれて落ちて行く。

 

 

「なんなんだこのアッガイ!」

「重力に魂ごと引き摺り込んでやるっすよ!!」

「ニャムさん!!」

「ジブンの事はお気になさらず!!」

 落下していくニャムに冷や汗を流すユメ。どう考えてもこの高度から落ちればMSといえどタダではすまない。

 サザビーを道連れに出来るならばそれで良いのかもしれないが、サザビーのパイロットも甘い訳ではなかった。

 

 

「そんな機体のパワーで捕まえ続けられるかよ!」

 サトウは機体を振って、簡単にアッガイを振り払って見せる。そうして姿勢制御をこなし、落下を阻止した。

 一方でアッガイは高台の崖に落ちていく。このままでは撃墜するのはアッガイだけだ。

 

 

「ニャムさん……!」

「大丈夫大丈夫、目的はユメちゃんを救う事っすから。勿論、やられるつもりはないっすよ! フリージーヤード展開!」

 しかしニャムもそのつもりはない。彼女のアッガイは頭頂部のミサイル発射口からカプセルを射出、そのカプセルから放たれたゲル状の物体がアッガイを覆い尽くす。

 

 

「何あれ!? スライム!? ガンダムなのに!?」

 ユメの言葉はごもっともだが、これも歴とした機動戦士ガンダムに登場する装備の一つだ。

 

 

 フリージーヤード。

 このゲル状の物体が機体を覆う事で、機雷や爆雷を絡めとり無効化する事が出来る装備である。

 

 

「着地ぃ!!」

 そうして、そのフリージーヤードで全身の摩擦を減らしたアッガイは丁度高台の崖を滑り落ちるようにして落下速度を落としていった。

 それは機動戦士ガンダムサンダーボルトでダリルがフリージーヤードを使ってやった事とほぼ逆の行動である。

 

 崖を下り終える頃には、アッガイは見事に落下速度を殺して着地したのであった。

 これでユメが逃げる時間も稼いで、アッガイも無傷。ニャムの作戦勝ちである。

 

 

「流石ニャムさん!」

「邪魔しやがって、くそ」

 感心するユメと悪態を吐くサトウ。しかし、着地したニャムは崖の下に広がっていた光景を見て「へ……?」と情けない声を漏らした。

 

 

「ニャムさん……?」

「そんなバカな……」

 アッガイのモノアイ。その先に映っていた光景は───

 

 

 

 

「俺が……こんな、バカな」

「よう、フラッグ機を置いて行くとは……余程大切なんだな。あのキサラギ・ユメカが」

 ビームサーベルをロックのデュナメスHellの頭部に突き刺すキュベレイ。

 

 

 ───ニャムのジャンプ中、その一瞬でロックを戦闘不能にしたセイヤの赤いキュベレイだった。




一瞬だけ原作SEEDの戦闘シーンのオマージュを混ぜました。こういうのはやりとく。

読了ありがとうございました!
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