ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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復讐者

 スラスターを吹かせるアッガイ。

 

「ニャムさん!?」

 飛び上がるアッガイを見届けたロックは、彼女に言われた事を思い出して目を細めた。

 

 

「……キュベレイ」

 敵の残り機体は三機。今頭上に居るサザビーと、ケイと戦っているイージス、そしてあの───

 

 

「デュナメス、フラッグ機か」

「……テメェだな、俺のダチ公やライバルをコケにしてくれやがった奴は」

 ───赤いキュベレイ。

 

 デュナメスHellのフルシールドが開く。ビームサイズを手に取ったロックは、間髪入れずにセイヤの赤いキュベレイにその刃を向けた。

 

 

「テメェだけは───」

 ビームサイズを振り下ろすデュナメスHell。しかし、キュベレイはそんなデュナメスHellの懐に潜り込む。

 大釜の刃は間合いが広い代わりに超至近距離には不向きの武器だ、勿論これはロックも分かっていた。

 

「───許さねぇ!」

 ロックのデュナメスHellは、キュベレイが懐に潜り込んでくるのが分かっていたかのように膝を上げてキュベレイを蹴る。

 カウンターへのカウンターが決まったと不適に笑うロックだっが、セイヤの赤いキュベレイはデュナメスHellの膝蹴りを受けてもビクともしていなかった。

 

 それどころか、デュナメスの膝にヒビが入る。

 

 

「は?」

「ガンプラの出来が違うんだよ、ガキが」

 そのままキュベレイはデュナメスを押し倒し、ビームサーベルでデュナメスの頭を突き刺した。

 

 モニターが死ぬ。

 

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

「俺が……こんな、バカな」

「よう、フラッグ機を置いて行くとは……余程大切なんだな。あのキサラギ・ユメカが」

 ユメを救助するべくフラッグ機の側を少しだけ離れたニャムが見たのは、その一瞬で倒されたロックのデュナメスHellの姿だった。

 

 

 遠距離射撃はともかく、近距離戦ではニャムの知る限りでもトップクラスのダイバーだったロックが一瞬で。

 信じられないと一瞬固まるニャムだったが、首を横に振って操縦桿を握りしめる。

 

 

「フラッグ機? なんの事すかね」

 自分に落ち着けと念を押した。フラッグ機は相手には分からない筈である。

 鎌掛けか、そうでなければロックが自分で言ったか、あるいは───

 

 

 ──カルミアさんはそんな事しないよタケシ君!──

 

 

「いやいや、そうっすよ。……そんな訳がないっす」

「カルミアが漏らした。フラッグ機はデュナメス、お前達の作戦は地下水脈に俺達を誘き出し、背後から襲う事だってな」

「───へ?」

 ユメの言葉を思い出してカルミアへの疑いを振り払った直後、セイヤのそんな言葉にニャムの思考は今度こそ停止した。

 

 カルミアはアンチレッドの敵を一機撃墜しているし、理由は分からないがユメを案じてかサザビーを近付けるなという忠告もしてきている。

 それなのにカルミアが情報を漏らしたという意味が、ニャムには分からなかった。

 

 

「元々そういう予定だったんだよ。……まぁ、少し予定外の事も起きたが」

 デュナメスの両腕をサーベルで切り飛ばし、セイヤの赤いキュベレイはニャムのアッガイにビームサーベルを向ける。

 対するニャムはカルミアの事以外にも頭に引っ掛かる点が一つあった。

 

 

「……この声、どこかで」

 赤いキュベレイのパイロット。観戦中にも声は聞いていたが、こうして直接話してみるとどこかで聞いた事があるような気がしてならない。

 カルミアの事といい分からない事ばかりだが、今はそんな事よりもバトルに勝つ為にはどうすれば良いのか考えなければならないだろうと、彼女は再び頭を振って自分の頬を叩く。

 

 

「ニャムさん! こちらケイ。イージスを撃破したけど、合流には時間が掛かりそうです! そっちの状況を教えて下さい」

 丁度、そんな所でケイからの通信が入った。イージスの撃破、これは大きな戦果だが合流に時間が掛かるというのは状況的に宜しくない。

 

「こちらニャム。状況は最悪っすね。ユメちゃんがサザビーに追われていて、ロック氏は大破、ジブンは今キュベレイと交戦……って所っす」

 引き攣った声で「出来るだけ早めの合流求めます」と付け足したニャムは、ヒートホークを右手に装備して通信を切る。

 

 これはゲームであって現実ではない。

 負けても死ぬ訳ではないが───だからこそ負けたくないのだ。

 

 

「───ふぅ。機動戦士ガンダムサンダーボルトより、アッガイ。ニャム・ギンガニャムが相手するっす!!」

「ニャムさん、気を付けろ。コイツのガンプラヤバイぞ」

 セイヤの実力を身を持って知ったロックの忠告もあり、勢い良く言ったは良いが慎重に構えるニャム。

 対するセイヤのキュベレイは首を持ち上げて、アッガイを見る事なく空を見上げている。

 

 

「な、舐めてんすか!?」

「落ちたな」

「はい?」

「ニャムさんごめんなさい……!」

 突然入ってきた通信。空ではユメのスカイグラスパーがサザビーに襲われてスラスターを破損、高度を落としていた。

 

 

「───しまった!?」

「そんなに大事なら、最後まで守りきれ……」

 言い捨てたセイヤはキュベレイのスラスターを吹かせて、降下してくるスカイグラスパーの元へ跳び上がる。

 そうはさせないとバルカンを向けようとしたニャムだが、スカイグラスパーと一緒に降下してきたサザビーのライフルを感知してそれを避けるのでやっとだった。

 

 

「ユメちゃん!」

「ユメぇ! 逃げろ!!」

 ニャムとロックの悲痛の叫びは届かず、彼女のスカイグラスパーはキュベレイに捕まってしまう。

 モニターいっぱいに映る赤いキュベレイ。そのパイロットの試合を思い出して、ユメの身体は震えていた。

 

 

「……私、何を言われてもあなたの思い通りになんてならない」

 だけど、彼女は震える体を抱きながらそう言う。

 

 理由は分からない。GBNへの復讐とか、GBNを壊すだとか、まだGBNを始めたばかりのユメには到底関係のない問題だ。

 だけど、彼がやっている事、やろうとしている事が間違っている事は分かる。スズに彼が言った事は正しい事なのかもしれない、本当の事なのかもしれない。

 

 それでも、それが彼女からGBNを奪って良い理由にはならない。

 

 

「そうか」

「私は確かにGBNでしか歩けないし、飛行機の操縦も出来ない。事故で夢を諦めなきゃ行けなくなったし、周りの友達にも迷惑ばっかりかけてる。……私が悪いなんて分かってるよ!」

 スカイグラスパーの砲身をキュベレイに向けながらそう言うユメ。セイヤはその砲身を簡単にサーベルで切り飛ばして、崖の上に着地した。

 

 

「だけど、そうじゃない人だって居る。何もなくてもGBNが楽しいって思ってる人も居る、ガンダムが好きでGBNが好きって思ってる人も居る。……私は何を言われても、私が悪いって分かってる。だけど、他の人は違うよ! だからあなたは間違ってる!」

「ユメちゃん……」

「ユメ……」

 彼女の必死な言葉に、何も出来なかったロックとニャムは感心して息を飲む。

 

 自分がどれだけ嫌な思いをしても、他の人の事を考えられるのは彼女の良い所だ。

 幼馴染みのロックはそれをよく知っている。

 

 

 それが彼女の良い所でもあり、悪い所だという事も。

 

 

 

「いや、お前は何も分かっちゃいない。お前が悪い、だから自分だけ苦しんでるから他の人間は悪くない? 勘違いも甚だしい。自分だけが苦しんでると思うな」

「……え?」

 しかし、セイヤの言葉にユメは固まってしまった。

 

 自分だけが苦しんでいる。

 そんな事は思っていない。ケイスケやタケシや、アオトやその父親にだって沢山迷惑を掛けている事くらい分かっているつもりだ。

 

 

「サトウ、言ってやれ」

 言いながら、セイヤはスカイグラスパーを地面に投げ捨てる。その脇に着地したサザビーを見て、ニャムは再びカルミアの言葉を思い出した。

 

 

 ──それと、サザビーだけはユメちゃんに近付けさせるな──

 

「ユメちゃん、聞いちゃダメっす!!」

 そんなニャムの言葉はなんの意味もなさない。

 

 

「俺は、あの事故を起こしたトラックを運転してた」

「……トラック」

 サトウの言葉を聞いて、ユメの脳裏に事故の光景が蘇る。

 ガンプラを取ろうと飛び出した道路。近付いてくるトラック。吹き飛ばされる自分の身体。激痛と恐怖。

 

 身体が震える。

 だけど、そんなのはいつもの事だ。

 

 

 怖くない。負けるもんか。

 ユメは自分にそう言い聞かせて前を見る。

 

 

「その事故で俺がいくら払わされたと思ってる! 会社も俺も借金まみれで、あの事故だけで人生どん底だ。……お前のせいでな!!」

「ぇ……」

 しかし、続くサトウの言葉にユメの呼吸は一瞬止まった。

 

 

「自分だけが苦しんでると思ってるのか! 俺達が、道路に飛び出してきたお前のせいでどんな目にあったかも知らないで! そんなお前が、GBNを楽しんでるなんておかしいだろ。俺はな、ガンプラもお前も憎いんだよ!!」

「私……が」

 サザビーがビームライフルをスカイグラスパーに向ける。

 

 

 機体はスラスターも損傷、キュベレイに武器も壊され、地面に投げられた衝撃で本当に何も出来ない状態になっていた。

 スズに狙撃されて不時着した時よりも、本当に何も出来ない状態。

 

 

 自分のせいで知らない人達に考えられない程の迷惑をかけていたという事実が、彼女の頭の中で反響する。

 

 自分がどれだけ嫌な思いをしても、他の人の事を考えられるのは彼女の良い所だ。

 それが彼女の良い所でもあり、悪い所でもある。自分を責め過ぎる彼女の性格上、こんな事を言われて簡単に立ち直れる訳がなかった。

 

 

 カルミアの忠告もあったのに、それを止める事が出来なかったニャムは抑えきれずに「クソが!」と悪態を吐く。

 動けないロック、そして単体での戦闘に不向きなアッガイにこの状況を打開する手はなかった。

 

 

 

「私……そんなの、知らなくて。……ごめんなさい」

「今更謝っても意味なんかないんだよ!」

「……ごめんなさい」

「二度とGBNで楽しい思いなんてさせない。俺達が、このGBNを壊すからな!」

「ごめん……な、さ───」

 銃口が光る。

 

 

「大人が……ふざけた事を言うなぁ!!」

「何!?」

 ビームサーベルがサザビーの腕を切り飛ばした。

 そしてそのビームサーベルの主は、サーベルをサザビーの身体に投げ飛ばして、切り飛ばした腕が持っていたサザビーのライフルを掴む。

 

 デュナメスもアッガイも動けてはいない。

 そこに現れたのは───

 

 

 

「……ケー、君?」

「ストライクだと……」

「GBNは……好きな人が好きな事を楽しむ場所だ。それを壊すなんて、大人のやる事じゃないだろ!」

 ───ケイのストライクBondだった。




いつも主人公は良いところで登場する。
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