ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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敗北と勝利

 モニターに映るストライクを見ながら、少年は目を細めた。

 

 

 懐かしい。

 楽しかった思い出も、悔しかった思い出も───何もかもが憎たらしく思える。

 

 

「ケイスケ、お前はいつも───」

 そう、いつだって───

 

 

 

「───格好良いよな」

 少年アオトの目に映るのは、いつの日か自らが託したストライクだった。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 サザビーはスラスターを吐かせてストライクから距離を取る。

 そんなサザビーから奪ったライフルを連射したケイのストライクBondは、離れたサザビーを見て今度は背後のキュベレイにライフルを向けた。

 

 

「ほぅ」

「アオトめ、しくじったな……!」

「いや、俺達が時間をかけ過ぎたな」

 サトウの悪態にそう返しながら、セイヤはストライクにキュベレイの片手を向ける。

 

「満身創痍で何が出来る」

「そっちだって。こっちは四機居るんだ」

 言いながらキュベレイにライフルを放つケイ。それを軽々と避けるセイヤだが、ケイはライフルの照準を調整しながらスカイグラスパーの前に出た。

 

 

「ニャムさん!」

「ガッテン!!」

 ライフルを避けて一瞬の隙を見せたキュベレイに、崖の下からアッガイがミサイルを放つ。

 ミサイルは数発ライフルで掻き消されたが、キュベレイの足に二発直撃した。

 

 

「舐めるなよ……」

 脚部を損傷しながらも、セイヤは崖下のアッガイをビームライフルで狙撃する。

 その攻撃はアッガイの両足と頭を貫いて、直後にケイが放ったビームライフルをセイヤはビームサーベルで弾き返した。

 

 

「なんと!?」

「強い……!」

 それでも、とケイはスカイグラスパーを守るようにキュベレイの前に出る。

 ニャムのアッガイは崖下で倒れて、ロックのデュナメスHellと同じく戦闘不能だ。

 

 

 

「くっそ、スラスターもイカレてて機体が動かないっす。やらかした! 本当にやらかした!」

「落ち着いてくれニャムさん……。いや、俺も叫びたいくらいなんだけどな」

 ニャムとロックはケイを見守る事しか出来ず、ただ壁を叩く。

 大切な仲間のピンチに何も出来ない。これ以上悔しい事があるだろうか。

 

 

 

「……ユメ、飛べるか?」

「ごめん、無理みたい。ケー君、私の事は良いからバトルに───」

「それで勝てたとして、そんなのは勝ちじゃない」

「ケー君……?」

「感動的だな。……そういうのが、ガキ臭いって言うんだよ!!」

 ビームサーベルを展開し、ストライクBondに切り掛かるセイヤ。ケイはライフルを盾にしようとするが、それは簡単にサーベルで切り裂かれた。

 

 

「……っ」

 誘爆するライフルを投げ捨てて、ケイは右腕でキュベレイの手首を掴みサーベルを受け止める。

 しかし既に消耗しているストライクはキュベレイに押し負けていた。光の刃が機体にジリジリと迫る。

 

 

 

「ユメはずっと……辛い思いをして来たんだ」

「それを自分だけだと思ってるのが許せないんだよ……。なぁ、サトウ!」

 セイヤの声に、サトウのサザビーが背後からストライクを襲おうとサーベルを振り上げた。

 

「……まだ動ける!?」

「ケー君!!」

 ユメの悲痛の叫びに、ケイの頭の中で何かが弾ける。

 

 視界から色が消えた。

 感覚が研ぎ澄まされていく。

 

 

「……それでも!!」

 ケイはストライクBondのスラスターを吹かせて、その推力も使ってキュベレイの腕を蹴り上げた。

 同時に自由になった右腕で、展開したアーマーシュナイダーを逆手に持って背後から来たサザビーの胴体に突き刺す。

 

 

「な……に!?」

「一番苦しい思いをしたのはユメカだ。……それに、ユメカはいつだって、自分の事より迷惑をかけた周りの人の事を考えてた!!」

「そんな奴が居る訳───」

「ユメカはそういう奴なんだよ!!」

 事前のビームサーベルでの攻撃もあり、パワーダウンするサザビーを崖に蹴り飛ばすストライクBond。

 

 

「誰よりも優しくて、強がって、自分を責め続ける弱い女の子だ」

「こいつ……バカな! そんなバカな!!」

「そんな女の子に、大人が小さな愚痴を垂れ流すな!!」

 ケイはそう言いながら、崖の下に落ちていくサザビーに向けてアーマーシュナイダーを投げ付けた。

 その一撃で姿勢制御も出来なくなったサザビーは、そのまま崖の下に叩き付けられて爆散する。

 

 

 

「こいつ……」

「あんたもだ……!」

 怒りの瞳をキュベレイに向けるケイ。ストライクBondのメインカメラが光り、同時にイーゲルシュテルンがキュベレイの片腕の関節を撃ち抜いた。

 

 

「そんな機体で!」

「あんたさえ倒せば……!」

 キュベレイに肉薄するストライクBond。もはやイーゲルシュテルンしか武装がない上に左腕もないそんな機体に、セイヤは何故か恐怖を覚える。

 

 

狂戦士(バーサーカー)とでも言うつもりか……! クソが!!」

 背後にスラスターを吹かせるキュベレイ。その先は崖だ。

 

 

「逃げる!? させるか!!」

 追い掛けるケイだが、キュベレイのライフルの銃口を見て一瞬思考が停止する。

 その銃口はストライクには向けられておらず、ユメのスカイグラスパーに向けられていた。

 

 これは勝ち負けを決めるゲームである。

 だから、今彼女を守る理由はない筈だった。だけど、彼にそれが出来る訳がなく、ケイは一瞬動きを止めてしまう。

 

 

 それが試合の勝ち負けの分かれ道だった。

 

 

 

 

「まさか……! ロック氏、逃げて下さいっす!!」

「え? いや、もう機体が」

 崖の下で戦闘不能になっていたニャムが事に気が付いて叫ぶ。この試合はフラッグ戦だ。

 

 アンチレッドのフラッグ機はキュベレイで確定している。そしてReBondのフラッグ機はデュナメスだ。

 カルミアが情報を流したという事を信じる訳ではないが、きっと相手の狙いは───

 

 

「ここに来て勝ちに来たっすか!?」

「嘘だろオイ!?」

 気が付いた時には既に遅い。

 そもそも今のデュナメスHellは、戦う事はおろか逃げる事すら出来ないのである。

 

 

勝ち(・・)は譲ってやるよ」

「や、やめろっす!」

 デュナメスHellの元に降り立ったキュベレイはビームサーベルを展開し、腕を振り上げた。

 なんとか腕だけで地面を這いずって来たニャムのアッガイが、キュベレイの足を掴む。

 

 

「邪魔をするな、ナオコ」

「───ぇ」

 アッガイを振り払い、デュナメスHellをビームサーベルで切り裂くセイヤ。

 

 

 

 BATTLE END

 

 デュナメスが爆散し、戦いの終わりが告げられた。

 

 

「待って、なんでジブンのわ私の名前を───」

 バトル終了に伴い消滅していくデータの世界。

 

「───兄さん……?」

 伸ばした手は、綻びになって消える。

 

 

 フラッグ機デュナメスHell撃破。

 

 WINNER FORCE‬ アンチレッド

 

 

 

 

 

 

 光が散らばった。

 

 

「見事、と言うべきかな。……私の事を覚えているか? セイヤ」

「……それは皮肉か? チャンピオン」

 バトルが終わって控え室に立つセイヤの前に、一人の男が現れる。

 

 現GBNのダイバーランキング一位にして、フォースランキング一位であるフォースAVALONのリーダー。クジョウ・キョウヤだ。

 

 

「そんな呼び方はよせ。一緒に仲良く塩を探した仲じゃないか」

「初心者の頃に数回ご一緒しただけの俺の事を覚えているのは感心するけどな……何の用だ?」

「私は見込みのあるダイバーを───いや、一緒にこの世界を楽しんだ仲間を忘れたりはしない」

 整った口調でそう言うキョウヤだが、その瞳は鋭くセイヤの瞳を穿つように向けられている。

 

 

「なんでこんな事をしている……とでも言いたいんだろうな。俺を排除しに来たって訳か? チャンピオン」

「何度も言わせないで欲しいな。私は一緒にこの世界を楽しんだ仲間を忘れたりはしない。……君とは塩探しやバトルミッションを何度か一緒した。今のバトルで君と戦っていたカルミアやチームだったサトー、あの赤髪の女の子とも。……君はあの頃純粋にGBNを楽しんでいた筈だ! 君に何が───」

「綺麗事ばかり覚えてる奴がぬかすんじゃねぇ!!」

 訴えかけるキョウヤの首元を掴み、セイヤは彼を睨んで激昂した。鬼のような形相に、キョウヤも冷や汗を流す。

 

 

「あの子は───レイアは……GBNに殺された!!」

「な、何を言っている」

「ELダイバーを見逃したGBNの運営が、お前達が大好きなこのGBNでしか生きていけなかった女の子を! あのELダイバーだけが救われて、レイアは救われなかったんだよ!!」

「まさか……彼女以前にも───」

 言いかけたキョウヤを突き飛ばして、セイヤはGBNからログアウトした。

 

 

 

 

 

 

 

「だから俺は、復讐を果たす」

 そんな言葉だけを残して。




そろそろNFT編も終わりです。少しずつ明らかになるセイヤの過去。リライズのイヴとは少し違う立ち位置ですが、何かあった事だけ察していただければ幸いです。

読了共に感想ありがとうございました!
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