ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】 作:皇我リキ
地表を駆ける四足歩行のMS。
完璧な連携と三つの形態で敵を翻弄し、フォース砂漠の
そしてNFT決勝戦。その相手は───
「……この復讐の仕上げだ」
───フォースアンチレッド。ReBondやメフィストフェレスを下したフォースだった。
☆ ☆ ☆
NFT会場は熱気に包まれている。
イメージこそ悪くも、圧倒的な強さを見せつけるフォースアンチレッド。
そして、統率力と連携で確実な勝利を勝ち取って来たフォース砂漠の犬。
準決勝が終わり、NFT決勝はこの二つのフォースがぶつかり合う事が決まった。
「凄いなアレ……」
「俺達も去年、ただ完封されて彼等が決勝に行くのを見ている事しか出来なかった。それがここまでにさらに磨きの掛かった動きを見せてくれる」
唖然とするロックに、去年のNFTでの記憶を漏らすノワール。雪辱を果たせなかったのは悔しいが、自分達が目指した道の大きさがどこか誇らしい。
「去年あのフォースを倒したのが、ビルドダイバーズ……」
そんな中で、ケイは話に聞いただけの事を思い浮かべる。砂漠の犬の強さは本物だ。しかし、上には上が居る。
「これより、NFT決勝戦を開始します!!」
司会のアナウンスに続き、会場の巨大なモニターがフィールドを映し出した。
BATTLE FIELD SPACE
デブリベルト。
大気圏外の宇宙空間で、人間の捨てたゴミや戦闘により発生した残骸、隕石などが集まっている地域である。
地球の引力に引かれながらも漂う残骸は、高速で突撃すればMSとてタダではすまない。反対に隠れる場所は多いので、遮蔽物を使った中距離近距離戦闘能力が試されるステージだ。
「これは砂漠の犬に完全に不利なステージっすよ。ガイアトリニティの変形は二つともこのステージと相性が悪いっす」
「それに、このフィールドではファンネルによるオールレンジ攻撃はかなり有効だ」
モニターに映ったステージを見て、ニャムとトウドウはそんな言葉を漏らす。
彼女達の言う通り、二つの変形機構を持ち高速戦闘を得意とするガイアトリニティにとってこのステージは最悪な組み合わせかのように思われた。
「犬モードは使っても足場がないし、飛行機になっても下手すればデブリに衝突だもんな」
「あそこで操縦するだけでも大変そう……」
怪訝そうな表情を見せるロックと、心配そうに両手を組むユメ。二人の脳裏には、アンチレッドのリーダーセイヤがこれまでの戦いで対戦相手にして来た事が嫌でも浮かんでくる。
「……あの人は大丈夫だ」
そんな中で、ケイだけは真っ直ぐにモニターを見てそう言った。彼と直接対決をしたケイだからこそ、その言葉が自然と盛れたのだろう。
「各機索敵陣形。さーて、始まるぞ。───狩りの時間だ!」
試合が始まった。
アンディ達フォース砂漠の犬のMSは、ガイアトリニティというMSに統一されている。
全機体が同じ性能であり汎用力に欠けるが、それを補う程の指揮能力と機体スペックが彼等の持ち味だ。
航空機形態に変形したガイアトリニティは五機で陣形を保ちつつデブリベルトに突入する。
流石に本来の最高速度を維持する事は出来ないが、メンバー全員が同じ速度でデブリ帯を高速移動する様は圧巻だ。
「あの速度でデブリ帯を突っ切るのか……」
それには同じく変形機を使うトウドウも驚いている。ユメも珍しく真剣な表情で「むむ……」とモニターに釘付けになっていた。
「流石っすねぇ」
「だが戦闘になればそうはいかない。……どうする気だ」
目を細めるノワールだが、心配ではなく興味の感情が大きく勝る。彼等が何を見せてくれるのか、自分達が届かなかった頂きに何があるのか、それが早く見たくて仕方がなかった。
「隊長! 攻撃来ます!」
巡航飛行するガイアトリニティ。砂漠の犬の隊員の一人が唐突に声を上げる。
情報量は少なくとも地上戦闘の二倍。そんな中で敵の攻撃にいち早く気が付く事は、熟年のダイバーであっても難しい。それこそニュータイプの所業だ。
だからこそ砂漠の犬の索敵陣形は、五畿で並列に並ぶのではなく、まるで中心から五角形を作るように宇宙空間を並んで進む。
これにより一人当たりが注意しなければならない空間は通常の五分の一になる訳だ。
いち早く攻撃を察知した砂漠の犬のガイアトリニティは一斉に散開して攻撃を交わす。
その先に現れたのはゴトラタンとサザビーの二機だった。
「ファンネルが来るぞ! 各機回避運動、まずはゴトラタンを落とす!」
アンディがそう言い終わる前に、サザビーのファンネルが彼の機体を襲う。
ガイアトリニティは航空機形態を維持しつつ、スラスターを吹かせてファンネルを振り切るように速度を上げた。
「あんな速度で……!」
それに驚くユメ。航空機ならではの速度でファンネルを振り切るガイアトリニティだが、その速度でデブリに突撃すればいくらフェイズシスト装甲とはいえただでは済まないだろう。
そして案の定、アンディのガイアトリニティの進行方向に巨大な隕石が接近していた。
「なんの……!」
しかし、アンディはガイアトリニティを四足歩行形態に変形させる。その四つの脚でしっかりと隕石に
「隕石を蹴った!?」
驚くロックだが、そんな驚きを置いていくようにアンディはさらに機体を人型MS形態に変形。
撹乱され操作の覚束無いファンネルをビームライフルで撃ち抜く。
会場からは歓声が沸き上がった。
MSの操縦技術だけではない。そのガンプラの制作技術、そして自らが作ったガンプラの性能を最大限に活かすプレイヤースキル。その全てが詰まった一瞬の攻防に会場は大いに盛り上がっていく。
「フォーメーションD、敵を撹乱する!」
アンディ達はそのままデブリ帯で四足歩行形態に変形し、隕石や残骸を蹴りながら立体的な攻めでゴトラタンを追い詰めていった。
そしてサザビーの援護も届かぬままに、ゴトラタンは五畿のガイアトリニティに囲まれて撃破される。
間髪入れる事なく、アンディはサザビーのファンネルを撃破しながら味方の突破口を開いた。
ガイアトリニティの高速戦闘にサザビーはなす術もなく、アンチレッドは一瞬で二機のMSを失う。
「僕はね、本気なのさ。本気でこのGBNを遊んでいる。……なんなら宣言しよう。僕はこの戦いに勝った後、ここに居るリリアンと婚約をする予定だ!」
怒涛の展開の末にそんな誓いを漏らすアンディ。会場は様々な意味でも熱気の渦に包まれた。
「それ死亡フラグっすよ!?」
「あ、あはは……」
苦笑いしながらも、ケイは彼の言葉を思い出す。
──これはゲームだ。どちらかが滅びるまで戦う必要もない。……ならどうして戦う! 何の為に戦う! 真剣になるのが怖いのか? 真剣に戦って負けるのが恥ずかしいのか? なのに続ける理由はなんだ! 君は……誰の為に戦っている!!──
これは戦争ではなくてゲームだ。
アンディの口癖のようなその言葉は、軽い気持ちでプレイしろと言っているのではない。遊びだから、ゲームだからこそ真剣になれる。
それが彼の、砂漠の犬───アンディの強さなのだ。
「次だ、各機フォーメーションE。敵を追い詰めるぞ!」
航空機形態に変形したガイアトリニティが、近くにいたジンクスを追い詰めてその連携を見せ付ける砂漠の犬。
完璧な陣形、指示。数的有利も最大限に活かし、使える物全てを使い相手を翻弄する。
イージスがその援護に来る頃には、ジンクスは既に撃破されていた。それに気が付いて後退しようとするイージスだが、既に遅い。
「逃すな、フォーメーションBだ!」
変形して逃げるイージスを追い詰めるガイアトリニティ。同じく変形機構を持つイージスだが、スピードはガイアトリニティの方が上に見える。
そんな中で後方からの援護にも当たらず、デブリ帯の隕石や残骸を軽々しく避けて距離を詰めるのはアンディのガイアトリニティだった。
「背中を取ったぞ!!」
イージスの真上を取りながら、MSを変形させてライフルを構えるアンディ。変形中のイージスに反撃の手はない。
放たれるビームライフル。
イージスは変形しつつ姿勢制御でシールドを向け、なんとかライフルを受け止める。
しかし、減速して変形した訳ではないイージスは慣性に逆らう事が出来ず、進行方向にあった戦艦の残骸に両足をぶつけてしまった。
激しい衝撃に両足の破損で機体が揺れる。なんとかライフルを構えようとするも、その時には既にガイアトリニティの接近を許していた。
「アオト……」
久しぶりに戦った友人の事を思い浮かべるケイ。
彼が何を考えているのかはよく分からない。だけど、自分もそうだがアオトも成長している。五年ぶりの再会に思う所はあれど、やはり彼はケイのライバルのアオトだった。
それをこうも簡単に───
「……強い」
再戦を願った砂漠の犬の強さを再確認するケイは、無意識に拳を強く握る。
あの人に勝ちたい。いつかよりも強く、深くそう思った。
「イージスまでも撃破! フォースアンチレッド、残るはフラッグ機のみとなりました!!」
司会とモニターに映る戦況に、会場はさらに燃え上がる。第二回NFT決勝戦もクライマックスが近付いていた。
「───やはりフラッグ機はあの赤いキュベレイか。僕としては呆気ない幕引きも望む所だったんだけどねぇ」
再び索敵陣形でデブリ帯を進むガイアトリニティ五畿。その進行方向に、丁度小さな漏斗状の物体が光る。
「ファンネルよ……!」
リリアンが気付いて口を開くが先か、五機は一斉に散開して放たれたビームを避けた。
ファンネルの奥から現れる赤いMS。キュベレイを赤く塗ったその機体は、ただゆっくりとアンディ達に近付いて来る。
「手荒い歓迎だねぇ。……投降してくれても僕は構わないけれど?」
「負けを認めれば殺さないでくれるってか?」
「言い方は妙だが、一応NFTでもバトルリタイア機能は制限されていない筈だ。君がそうするとは思えないがね」
「それじゃ、投降する」
「……ん?」
両手を上げる赤いキュベレイにアンディは顔を顰めた。会場はブーイングの嵐である。
しかし、そんなキュベレイの両脇から突然現れたファンネルがアンディのガイアトリニティを攻撃した。
アンディはそれを軽々しく避けるが、会場はさらに別の意味でブーイングが吹き荒れる。
「め、滅茶苦茶卑怯だな……」
「このブーイングも納得っすね……」
表情を痙攣らせるロックとニャムだが、それに反してユメは首を横に振った。
「どんな人でも、どんな戦い方でも、GBNを遊んでる人を貶したら……あの人の事何も言えないよ」
静かに、しかし強くそう言うユメの言葉に二人は顔を見合わせてから目を逸らす。彼女の言う通りだ。
他人を否定するという事は、そういう事なのだから。
「……もしかして、それがあの人の目論みなのか」
静かにそう言ったケイに、ノワールは「どういう事だ?」と問い掛ける。
セイヤのこれまでのバトルや口調からして、彼がGBNになんらかの恨みを持っているのは確かだ。
それにGBNを壊す、潰す等の言葉。それが言葉の意味そのままなら───
「───あの人はGBNを内側から壊そうとしてる、のか?」
そんな、不安めいた声がケイの口から漏れる。
モニターの奥でセイヤは笑っていた。
「なんてな。……俺はGBNを壊す。何もせずに投降する理由はない」
「それが君の
「お前にとってGBNはなんだ?」
「質問に質問で返すのは感心しないな」
怪訝そうに言いながらも、アンディはセイヤの質問に「うむ……」と少しの間答えを探す。ケイは何処かで彼の答えを分かっていた。
「ゲーム、かな。僕が真剣に命を掛けて本気になれる。人生を捧げるゲームだ。本物の戦争じゃない、だからこそ本気になれるゲームだ」
はっきりとそう言うアンディの言葉に会場は同意の意で埋め尽くされる。感心する者も居れば「そうだそうだ」と賛同する者も居た。
「……そうか」
静かに、セイヤはゆっくりと目を瞑る。
「ならこれがゲームじゃなければお前はどうする! この世界で死ねば、そこで命が絶たれる本当の世界だったら!! お前は今、どうする!!」
「……ふ、安い挑発だな」
言いながらも、アンディはリリアンを含む仲間四人を下がらせた。
「───もしこれが本当の戦争なら、僕は大切な人を守る為に戦うよ。……その挑発、乗ってやろう」
「───それで良い。……さぁ、殺し合いを始めるか」
二機のMSのメインカメラが光る。
デブリベルトに光が走った。
ガイアトリニティ大奮闘。次回勝負の行方は?
そんな訳で、ついにこの作品も五十話目になりました。なぜ五十話も書いて終わっていない。テレビ版なら最終回だぞ。
なんて愚痴ばかり言っていても終わらないので記念にイラストを描いてきました。
【挿絵表示】
ルー・ルカコスのニャムさんです。昔のアニメなのに衣装が凄いルー。個人的にはエル派。
それでは読了ありがとうございました!百話までには終わらせたいね!