ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】 作:皇我リキ
一年前。
「───トランザムインフィニティ!!」
「───うぉぉぉおおお!!」
ダブルオーガンダムを改修したガンプラのトランザム。対するガイアガンダムを改修したガンプラは、変形機構による高速戦闘で応戦した。
「やるな……!!」
「そっちこそ……!!」
お互いが本気だったのだろう。本気で勝ちたくて、本気でこのGBNを楽しんでいた。
勝敗の理由はなんだったのだろうか。
「リク……!」
「アンディ……!」
それはきっと、機体の問題でもなくて───
WINNER FORCE BUILDDIVERS
「君が私の元を去って、半月かな」
「……それに関しては悪いと思っているよ、大佐」
同日、飲み屋のような場所に二人。アンディともう一人───軍服を着たフェレットのようなダイバーが並んでいる。
彼はアンディが砂漠の犬を結成する前に所属していたフォースのリーダーで、ようするに元上司と部下という関係だ。
「気にしていない……といえば嘘になるが、責め立てるつもりはないさ。優秀な隊員が巣立った寂しさはあれど、新たなライバルに胸躍らせる自分の方が大きい」
「そいつは買い被りだ、なんて言うのは失礼だねぇ。なんせこちらはあの知将の戦術を盗んで来た身だ」
二人は言い合うと、少しの沈黙の後笑い合う。
「───それで、本当に婚約はしないのか?」
「この悔しさのまま、中途半端な事はしたくない。リリアンだって同じ気持ちの筈だ」
「つまり、来年も出ると」
「……ビルドダイバーズとの再戦を望む気持ちもあるが、僕はそれよりも残る結果を示したいからね。来年のチャンス、必ずや掴んで見せるよ」
「頼もしい元部下だ」
「いつか、あんたの首にも噛み付くよ。僕は狂犬だからね」
二人はグラスをぶつけ合った。
「───やっと一年か。リリアン、このNFTに優勝したら……僕と結婚してくれ」
「えぇ、勿論よ」
必ず優勝する。
そう心に決めて、この
☆ ☆ ☆
縦横無尽。
彼のガイアトリニティを一言で表すなら、その言葉が適切だ。
隕石や残骸の犇くデブリベルト。
そのフィールドすら巧みに使い、障害物等無いとでも言うように可変機特有の機動性を余す事なく発揮している。
「その程度か!」
「ほざくな……!」
ガイアトリニティをファンネルが追うが、アンディは巧みに三つの形態を使い分けてそれを回避、迎撃した。
「逃げるので精一杯の分際で!!」
「それはどうかな!」
ファンネルの猛攻を掻い潜り、キュベレイに接近するガイアトリニティ。その翼に展開したビームサーベルが、キュベレイの肩を斬り裂く。
「……っ」
「最適な位置調整を考えつつ攻撃を避ける、戦術の基本だ。戦略家だと思って甘くみたかね?」
挑発的な態度のまま、アンディは機体を急速変形させライフルをキュベレイに向けた。
放たれたライフルを辛うじて裂けながらも、キュベレイはさらにファンネルを出して応戦する。
「必死になりやがって……」
「必死にもなるさ。このバトルには僕の生涯が掛かってるんだからな!」
「その割には挑発に乗ってきたな」
「僕はフラッグ機じゃないからね、負け筋を潰すなら正しい選択をしたと思っているよ!」
ファンネルを交わしながら接近し、ビームサーベルを振り下ろすガイアトリニティ。それを受け止めるキュベレイのビームサーベルがぶつかり合い、火花が散った。
「この勝負は僕にとって現実の物だ。しかし───いやだからこそ、君の言い分は気になるな。この世界で死ねば本当に命が絶たれる……そんな事はありえないからこそ、僕達は本気で楽しめるんじゃないのか!?」
「……それでも、アイツは違った」
ファンネルが二機の周りを囲む。このまま攻撃すればキュベレイは自爆になりかねない。攻撃する訳がない。
しかし、妙な気配がしてアンディは距離を取った。同時にファンネルから放たれたビームはガイアトリニティのいた空間を貫く。
勿論それはキュベレイも例外ではない。左足をビームが貫く。誘爆し、爆炎がキュベレイを包み込んだ。
「……何?」
「アイツは本当に死んじまったんだよ……!!」
爆炎の中から現れた左足を失ったキュベレイは、両手やファンネルからビームを放ちながらアンディのガイアトリニティに接近する。
変形してそれを交わしながらも、アンディは彼の言葉に耳を傾けていた。
「本当に……死んだ?」
「GBNに殺された奴がいる。だから俺は、その復讐を果たす!!」
「それが君の戦う理由か!」
変形。サーベルを手に取り、ガイアトリニティとキュベレイは激突する。
頭部バルカン───イーゲルシュテルンで接近してくるファンネルを打ち落としながら、アンディは強くスラスターを吐かせてキュベレイを戦艦の残骸に押し込んだ。
「そうだ。これが俺の復讐だ……!」
「それで本当の世界、か」
納得したような表情で目を瞑るアンディ。会場の熱気は止まない。その殆どがアンディを応援するものである。
当たり前といえば当たり前だ。セイヤのやって来た事を好ましく思う人は少ないだろう。
「───だから、俺はお前を殺す!!」
突然キュベレイが両手を開き、アンディのガイアトリニティは見えない何か弾き飛ばされた。
「プレッシャーだと!?」
「この復讐の為に、俺はこの世界を現実にする。……今GBNにウイルスを撒いた。今から俺の機体に撃破されたダイバーは、現実の世界でも炎に包まれて死ぬ事になる」
細く目を開いてそう言い放つセイヤの言葉に、バトルフィールドのダイバーは勿論、会場の───さらにはバトルを動画サイトで見ていた者達も怪訝な表情を見せる。
「何を言っている……ウイルス?」
「そうだ。俺に撃破されたダイバーが使っているダイバーギアが爆発するウイルス、それをGBNにばら撒いた」
「……ふ、脅しにしては少々大袈裟じゃないかね?」
「じゃあ試してみるか?」
言いながら左手を明後日の方角に向けるセイヤ。一瞬硬直したアンディだったが、その先にある物を確認して冷や汗を流しながらも身体は勝手に動いていた。
放たれるビーム。そのビームにわざと直撃するように、アンディのガイアトリニティはシールドを向ける。
無理な体制でのビームの直撃は、いくらシールドを構えていたとはいえ無傷では済まなかった。左腕が爆散し、宙に漂うシールドを見ながらセイヤは不適に笑う。
「安い挑発に乗る男だな」
「このくらいハンデのつもりだがね」
「アンディ……!」
「心配するな、このくらいどうという事はない」
セイヤがビームで狙った先。アンディの背後には待機していたリリアンの機体が立っていた。
それが初めから狙いだったかのような、そう考えてアンディは舌を巻く。
「……やられたねぇ」
「最適な位置調整を考えつつ攻撃を避ける、戦術の基本……だったか?」
攻防の内に、セイヤはリリアンを狙う事が出来る位置取りを作っていた。安い挑発だが、このゲームに人生を賭けるアンディだからこそ無視は出来なかったのだろう。
勿論、ウイルスだの爆発だのを信じている訳ではない。
しかし彼にもプライドがある。大切な人を傷付ける事など、あってはならない。
「───面白い」
「……何?」
だからこそ、アンディは笑った。
「リリアン、そこで見ていてくれ。僕の本気を。このGBNに掛けた想いを!!」
キュベレイに向けてライフルを放つガイアトリニティ。セイヤは舌打ちをしながら、ファンネルをリリアンの機体に向けて飛ばす。
「無駄だ。各機、フォーメーションC。ファンネルを迎撃せよ!」
「「「了解!」」」
しかし、砂漠の犬隊員達は素早い挙動でリリアンの機体を守るように隊列を組んでファンネルを迎撃した。
アンディが認めた砂漠の犬の隊員である。彼に従ってきただけでここまで登って来た訳じゃない。
「さぁ、本当の一騎討ちを始めようか!」
変形しキュベレイに肉薄するガイアトリニティ。セイヤは表情を歪ませながらも、ビームサーベルを展開して構えた。
「遊びでやってる癖に……ヒーロー気取りか!!」
「遊びさ!! 遊びだから、本気になれる!!」
四足歩行形態に変形し、戦艦の残骸を蹴って立体的な動きを見せるアンディ。セイヤのキュベレイの反応の上を行くその動きで、アンディは翼のサーベルを叩き付けていく。
ファンネルはもはや品切れだ。
片腕を失いながらも、アンディのガイアトリニティの機動力はセイヤのキュベレイを圧倒している。
「君の言い分は聞こう。……だが、負ける訳にはいかないんでね!」
そして、遂にはセイヤを追い詰めるアンディ。会場は今日一番の盛り上がりを見せた。
これが砂漠の犬、アンディの力。
愛の力だと誰かが言う。
「……楽しいバトルだった。もし良ければ、このバトルの終わりに君の悩みを聞かせてくれ。力になるよ」
「……それは───」
ビームサーベルをキュベレイのコックピットに向けながらそう言うアンディ。
セイヤは俯いたまま───
「無理だな。お前はここで死ぬ」
───不適に笑った。
「───何?」
キュベレイの腕がガイアトリニティの身体を掴む。そんな事でガイアトリニティが止まる訳がなく、サーベルを振り下ろそうとしたその時だった。
───キュベレイが炎に包まれて、アンディのガイアトリニティがそれに飲み込まれたのは。
「自爆───」
「あばよ」
爆炎。
ガイアトリニティ撃破。
フラッグ機キュベレイ撃破。
BATTLE END
WINNER FORCE 砂漠の犬
悪足掻きの自爆に会場は一瞬静まり返ったが、司会の「第二回NFT勝者! 砂漠の犬!!」という声で会場は一気に盛り上がりを取り返す。
バトルが終わり、壇場にリリアン達が立った。
お祭り騒ぎの喧騒の中で、ニャムはふとこう呟く。
「……今の、キュベレイがガイアトリニティを撃破したって事になるんすかね?」
誰もウイルスの事なんて信じていない。それは勿論ニャムも同じだ。
だけど、壇場にはリリアンを含む砂漠の犬の隊員が揃っているのに───
「アンディさんは……?」
───アンディだけが居ないのである。
「アンディ?」
壇場に立ったリリアンは最愛の彼を探して辺りを見渡した。しかし、やはり彼は何処にもいない。
コンソールパネルを開くと、フレンド一覧の表示ではアンディはログアウトしている事になっていた。
「どういう事だ?」
「……冗談だろ?」
ノワールとロックはその事実に顔を見合わせる。
しかし、運営としては多少のトラブルで大会の盛り上がりを捨てる訳にはいかない。
司会はリリアンを呼び付けて、大会の授賞式に出るように申し出た。
「隊長はどうしたんでしょうか?」
「もしかしたら、興奮してログアウトしちゃったのかもしれないわ。私、授賞式が終わったら家まで様子を見てくるわね」
そうしてNFT決勝戦と授賞式は、一部の人々にとって不穏な空気を残したまま執り行われる。
ケイ達にとってそれは関係ある事のようで、しかし手の届かない事だった。
これは現実ではなくゲームなのだから。
───その筈なのだから。
現実。
夜道を一人の女性が歩いている。
歩いているとは言っても、そんなに長い距離ではない。家を出て五分で着くような距離だ。
電話にも出ないし連絡もつかないものだから「仕方ないわね、あの人は」とゆっくり歩く。
きっととても嬉しかったのだ。
一年間この為だけに過ごして来たと言っても良い。
だから優勝したのが嬉しくて、興奮して倒れているのかもしれない。
──そうだ。俺に撃破されたダイバーが使っているダイバーギアが爆発するウイルス、それをGBNにばら撒いた──
嫌な予感を振り払う。
そんな訳がない。
そんな事が起こる訳がない。
「嘘───」
だから、これは夢だ。
「ハルト君……!! 嫌……嫌ぁっ!! なんで……嫌ぁ!!!」
燃え上がる恋人の家を見て、彼女は膝から崩れ落ちる。
けたたましいサイレンが鳴り響いていた。
NFT決着。この戦いが終わったら結婚するとか言ったらダメですよ……。
評価入れて頂いていました!ありがとうございます!