ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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第七章──オフ会編【2onバトルロイヤル】
いざオフ会へ


 ひそひそと、タケシはケイスケに話し掛ける。

 

 

「なぁ、今日のユメカの服凄い可愛いな」

「おま───」

 普段そんな事は言わないタケシだが、彼がそう言う程に彼女の服装は気合が入っていた。

 それもその筈で、その服はヒメカがデートの時に選んだ物である。ケイスケは顔を真っ赤にして彼女から視線を背けた。

 

 

「……ユメカが取られる」

「……いや俺は取らねーけど、キープしてないお前が悪い」

 ごもっともであるが、どうしようもない気持ちでいっぱいである。

 

 

「よし、このロックリバー様が車椅子上げるの手伝ってやろう」

「あ、良いです。私がやります。ていうか誰ですか」

「いつも通り酷いなヒメカちゃん」

 固まっているケイスケは置いておいて、車に車椅子を乗せるのを手伝おうとしたタケシはヒメカにあしらわれて固まってしまった。

 

 大きなワゴン車の後ろからユメカを乗せたままの車椅子を動かそうとするヒメカ。

 しかし、乗せやすい形状になっているとは言っても中学生のヒメカには文字通り荷が重い。

 

 

「よっと」

 そんな彼女の背後から、カラオとプラモ屋の店長が車椅子を押し込む。ヒメカは大人の力に驚きながらも「どうも」と小さくお礼を言った。

 

 

 

「よし皆、忘れ物はない?」

「はい! 店長さん、車のレンタル本当にありがとうございます」

「良いんだよ。楽しんでおいで、オフ会」

 ───そう、今日はオフ会の日である。

 

 

 カラオがプラモ屋で働き始めてから一週間。丁度、NFTから四週間が経った今日。

 ケイスケ達は店長がレンタルしてくれた車で、カラオの運転でオフ会に行く事になっていた。

 

 カラオはエンジンを掛けて、店長に片手を上げて挨拶をする。

 

 

「四人を任せたよ、カラオ君」

「了解よー、店長。ほんじゃ、安全運転で行きますかねぇ」

 いざ、オフ会へ。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 それにしても、とタケシは思った。

 

 

「ヒメカちゃん、本当に付いてくるんだな」

「悪いですか? 大丈夫です、邪魔はしません。二日間、お姉ちゃんのお世話以外で何もする気ないですから。そこら辺に転がってるジャガイモだとでも思ってて下さい」

 タケシの言葉にそう答えるヒメカは、鞄から本を取り出して読み始める。

 

 このオフ会は一泊二日の予定で、姉の事が心配になったヒメカはこうして付いて来ると言って聞かなかったのだ。

 

 

「可愛いらしいジャガイモねぇ」

 カラオがそう漏らすと、バックミラーに鋭い眼光が映る。カラオは運転に集中する事にした。

 

 

 

「私の事なんて気にしないで良いのに。せっかくの休日なんだから、ヒメカはヒメカのしたい事をしてれば良いんだよ?」

「それじゃ、私お姉ちゃんと一緒にいたいな!」

 そう言われると心が痛い。

 

「大丈夫、どうせ家にいてもやってる事同じだし」

 そう言いながら彼女が読んでいるのは、なんと漫画でも小説でもなく医学書である。

 医者志望なので意外という訳ではないが、彼女は中学生だ。ユメカはどうしたものかと頭を抱えていた。

 

 

「ニャムさんは『任せて下さい! ジブンがユメちゃんの妹ちゃんも絶対に楽しませてみせるっすよ!』とか言ってたけどな……」

「あ、あはは……」

 タケシの妙に似てる物真似に苦笑いしか出来なかったケイスケだか、とりあえずの目的地が見えて来てそっちに視線を移す事にする。

 

 

 ニャムさんを信じよう、と若干投げやりでもあった。

 

 

 

「もうニャムさん付いてるのかな?」

 辿り着いたのは、都心部の空港である。そこでニャムを拾ってから目的地に行く予定だ。

 

 

「でもよ、俺達ニャムさんの素顔知らないんだよな。流石にGBNのあの格好ではないだろ?」

「確かに……」

「いやあの格好の人来たらおじさん逃げるけど」

 タケシの言う通り、彼等はニャムの本当の顔を見た事がない。普段仲良くしているユメカですら彼女の素顔を知らないので、探そうにも手がないのである。

 

 

「どんな人なんだろう?」

「実はネカマで男とか」

 ケイスケの疑問にタケシがそう答えると、ユメカは「ニャムさんがそんな嘘付く訳ないよ!」と頬を膨らませた。

 それを聞いて彼女達を騙していた張本人のカラオは後ろめたさに苦笑いを漏らすが、彼らの言う通りニャムの素顔は想像出来ない。

 

 

「おじさん的には、あのタイプの女性として典型的なのはグルグル眼鏡にチェック柄シャツインリュックサックスニーカーって感じだけど」

「おっさんそれ昔のオタクイメージそのままじゃん……」

「美人さんのイメージはないなぁ」

 頭に人差し指を当てながらそう言うカラオ。彼的には普段の話し方や態度を見るに、慎ましい女性というイメージは皆無である。

 

 

「綺麗な人かもしれないよ?」

「まぁ、会ってみれば分かるって事で」

 ユメカの「むむむ……」という唸り声にケイスケは落ち着くように手で諭して、待ち合わせ場所の辺りを見渡した。

 しかしというかやはり、顔を知らない相手を見付けるのは難しい。

 

 

「……連絡、取れば良いのでは?」

 そんな四人を見ていたヒメカは、自分の携帯を持ち上げてそう言う。

 四人が目を丸くして一斉に自分の携帯を取り出すと、同時に一見のメッセージがSNSのグループチャットに届いた。

 

 

 

『待ち合わせ場所の噴水前に居るっすか? 出来たら確認の為に皆で手を上げて欲しいっす』

 そんなメッセージを見て、五人は片手を上げる。気になって辺りを見渡すと、一人の女性がゆっくりと歩いて来た。

 

 

「あの、初めまして……なんて言うのは変ですね。ケイスケさんに、タケシさん、カラオさんに、ユメカちゃんとヒメカちゃんですよね? 私、キムラ・ナオコです」

 大きなアタッシュケースを引いて来たその女性は、長くて綺麗な黒い髪を抑えながら五人に話しかけて頭を下げる。

 薄着で身体の凹凸がハッキリとしていて、モデルさんなのかと思えるような───俗に言う美人なお姉さんがそこには居た。

 

 

「───あんた誰?」

 目を半開きにしてタケシはそう問い掛ける。頭のどこかでは分かっていたが、正直な所認めたくなかった。

 

 

「あはは、酷い事言わないでくださいよロック氏。私ですよ。……それとも、話し方が行けないでしょうか? えーと───ゴホン、ジブンっすよ! ニャムっす」

 清楚なイメージの話し方から一転、聴き慣れた声に聴き慣れた話し方を聞いてタケシはその場でひっくり返る。

 

 何を隠そう、彼女こそがニャム───キムラ・ナオコ本人なのだ。

 

 

 

 男三人はすっ転んで、ユメカはあまりの身体付きの違いに目を眩ませる。何が違うって、とても大きいのだ。凄く大きい。何がとは言わないが。

 

 しかも薄着なのでそれがよく分かる。

 

 

 

「おじさん、昔からニャムちゃんは絶対可愛いって思ってたのよね」

「おいさっきと言ってる事が違うぞおっさん」

 車を運転しながら妙に良い声を出すカラオにツッコミを入れるタケシ。

 

 六人は車に戻って、次の目的地に向かって出発していた。

 ちなみに席順は運転席にカラオ、助手席にタケシ。その後ろにケイスケとナオコ、ユメカとヒメカである。

 

 

 ケイスケは隣に綺麗なお姉さんが座っているので、どうも目のやり場に困り───それを見たユメカは顔を赤くするケイスケを見て頭を真っ白にしていた。

 

 

「お、お姉ちゃん……顔色悪いけど大丈夫!?」

「え、あ……うん。大丈夫。ケー君……やっぱり大きい方が───」

「お兄さん……」

「待て、俺は何も言ってない」

「どうかしました?」

 状況を分かっていないナオコはキョトンと首を横に傾け、大きなアタッシュケースをコンコンと叩く。

 すると、小さく「にぁ〜お」とネコの鳴き声のような声が車の中に響いた。

 

 

「は?」

 そんな声にタケシが振り向くと、ナオコは「もう少しで着くので辛抱して下さいね、ヤザンさん」とアタッシュケースに話し掛ける。

 

「そういえば」

 と、ユメカは思い出したように手を叩いた。

 

 

「ネコ、連れて来たんですよね?」

「はい。私、友達が居なくて面倒を見てもらえないので……」

 笑顔でなんて事を言うんだ、と思うケイスケ。車はそのネコを一旦預ける為に今日泊まるホテルに辿り着く。

 

 

 

 

「───なんて目付きの悪いネコなんだ」

「えー? 可愛いよ?」

 ナオコがチェックインの支度をしてある間、彼女の飼い猫であるヤザンの世話をしていたタケシはネコの顔を見てそう言った。

 彼の言う通り、ネコのヤザンは目付きが鋭く名前負けしていない。

 

「可愛いか?」

「可愛いよ。ね、ヒメカ」

「うん、可愛い」

 そんなヤザンの頭を撫でるヒメカ。普段よりもどこか表情が柔らかく見える彼女を見るに、どうやら本心で可愛いと思っているようである。

 

 

「……ヌコ」

「お待たせしました。さて、ヤザンさんはここでお留守番お願いしますね」

 戻ってきたナオコがヤザンを持ち上げると、ヒメカは「ヌコ……」と寂しそうに手を挙げた。

 それを見たナオコは彼女の頭を撫でて「今日のお泊まり会をお楽しみに」と笑顔を向ける。

 

 

 チェックインを済ませた六人は再び車に乗り、今日本来の目的地に向かい始めた。

 

 

 

「なんていうか、意外だな」

 席順同じに、タケシはバックミラーに映るナオコを見ながらそんな言葉を漏らす。

 

「どうかしました?」

「いや、俺はニャムさんがそんな美人さんなんて思ってなかったから。もっとこう……オタク丸出しかと」

「あ、あはは……褒めてもらってるのか貶されてるのか分からないです」

 苦笑いのナオコは内心傷付いていそうだが、さほど気にする事もなくこう続けた。

 

 

「私は兄以外で周りに同じ趣味の人が居なかったんです。だから、本来の自分(シブン)を隠して生きてきた……。GBNの中でなら変われたのだけど、それと同時にどちらが本当の自分(シブン)なのか分からなくなってしまったんですよね」

「ニャムさん……」

「勿論、どっちも私である事は分かってます。リアルだとこの話し方ばかりでちょっと口が慣れないのですが、出来るだけGBNのジブンとして接するようにするので……許して下さいっす」

「……あ、いや、なんか……ごめんなさい」

 流石のタケシも彼女のプライベートに触れてしまい反省したのか、その場で頭を下げる。

 ただやはり、彼女は気にしていないように「大丈夫っすよ、ロック氏」とはにかんでみせた。

 

 

「綺麗だ……結婚してくれないかな」

「おっさんは運転に集中しろ」

 そんなカラオが運転する車は、少しずつ目的地に近付いていく。

 

 

 車の中でナオコは自分の事を五人に話していた。

 自分が大学生で、自由な時間が多くて自堕落に暮らしている事。兄───セイヤからの仕送りで楽に暮らせているという事。

 

 普段はネコのヤザンと二人暮らしで、ヤザンは兄が誕生日に連れてきてくれたネコらしい。

 

 

 そんな会話をしていると、視界にとある物が映ってヒメカ以外の五人は目を輝かせた。

 

 

 

「「「「「ゆ、ユニコーーーン!!!」」」」」

 視界に映る大きな建物よりも大きな建築物。人型のロボット───実物大ユニコーンガンダム立像である。

 

 

「ユニコーン、あ……ユニコーン。え、ユニコーン? 大きい……凄い」

 ヒメカも、姉やケイスケと見たガンダムのアニメを思い出して口を大きく開けて固まった。

 

 アニメのロボットだと思っていた物が、目の前で実物大の大きさで存在している。

 そんな事に感動して、ヒメカも感動したのか目を光らせていた。

 

 

 

「よーし、到着よ」

 車を降りたカラオは背伸びをしながらユニコーンの立像を眺める。

 

 

 ここはダイバーシティ。

 今回ナオコがオフ会の場所に選んだ理由の一つが、このユニコーンの立像だった。

 

 

「やっぱ本物見ると凄いな……」

「ケー君、見て見てユニコーンだよ! デルタプラスとかもないのかな?」

 ケイスケより騒いでいるユメカは辺りを見渡しながらケイスケの腰を叩く。

 当のケイスケは圧巻されながらも「デルタプラスはないかな……。確かどこかにストライクはあるらしいけど」と漏らした。

 

「ストライクもあるの!?」

 騒ぎ立てるユメカの後ろで、ヒメカは「凄い……」と文字通り見上げる高さの立像を見上げる。

 そんなヒメカにナオコは「どうですか? 凄いでしょう」と笑顔で話しかけた。

 

 

 彼女がここを選んだのは、ヒメカがユニコーンガンダムを視聴したという事を知っていたからである。

 そこまで興味がないものでも、この立像は知らない人ですら感動する物なのだ。

 

 

 

「それじゃ、オフ会を楽しんじゃいましょう!」

 ナオコはそう言って片手を上げて歩いていく。立像のユニコーンガンダムは、そんな六人を迎え入れるように太陽の光を反射していた。




オフ会編開幕です!
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