ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】 作:皇我リキ
実の所彼女を連れて来るのはとても苦労した。
「イヤダーーー!」
「まだ言ってるんですの? もうここまで来たら引き返せませんわよ」
車椅子の上で暴れるリン。そんな彼女に呆れながらも、どこか満足気か表情をするアンジェリカを見てサキヤは苦笑いを溢す。
オフ会への誘い。
彼のライバルであり良き友人であるタケシからの誘いで、フォースメフィストフェレスのメンバーはダイバーシティに向かっていた。
トウドウの運転する高級車に六人。
駄々をこねていたリンだったが、ユニコーンの立像が視界に入るや否や「おぉ……」と大人しくなる。
それで肝が座ったのか、彼女もどこか楽しみそうな表情を見せていた。
「楽しみますわよー!」
「「「おー!」」」
天気は晴れ。六人の視線は一点に伸びる。新しい場所へ。
☆ ☆ ☆
片手を上げてブンブンと振るうユメカを見付け、サキヤは「あそこだな」と片手を上げた。
ユニコーンの立像の近くで待ち合わせていたReBondのメンバーとヒメカ、そしてメフィストフェレスのメンバーが合流する。
「初めまして、私───じゃなかった……ジブン、ニャムっす。よろしくおねがいします」
「本当にこの人が?」
「俺も最初は疑ったけどな」
ナオコの挨拶に目を丸くするサキヤ。タケシは一応フォローを入れるが、サキヤは二人を見比べて目を擦った。
「トウドウだ」
そんなナオコに動じずに片手を伸ばすトウドウ。メフィストフェレスとの戦いを思い出し、ナオコは不敵に笑いながらその手を取る。
「俺の名前はロック・リバー。クールで格好良───」
「こっちがレフトだよ!」
「こっちがライトだー!」
「おい無視するな!」
「どっちか分からない……!」
「えーとライト君がレフト君を読んでレフト君がレフトで? アレ?」
「おい無視するな!?」
そして全く同じ顔のレフトとライトに、ケイスケとユメカは目を回していた。当の二人はそれが面白いのかケタケタと笑っている。
「えーと、おじさんは初めましてだったかな? 一緒にベアッガイフェスでは遊んだっけか」
「えぇ、初めまして。私、フォースメフィストフェレスのアンジェリカと申しますわ」
「ノワールだ」
メフィストフェレスの面々とそこまで面識のないカラオは頭を掻きながら控えめに挨拶をする。そんなカラオの後ろに隠れていたヒメカに気が付いたアンジェリカは、姿勢を低くして「こんにちは」と笑顔を向けた。
「あなたがヒメカちゃんですわね?」
「……え、あ、はい」
「お姉ちゃんと仲良しなんですってね。今日明日は私とも仲良くして欲しいですわ」
包み込むような優しい笑顔に、ヒメカは安心したのか彼女が伸ばした手を自然に掴む。
そんな光景を横目で見ていたユメカは安心したようにため息を吐いて、一人の女の子に視線を向けた。
車椅子が二台。
ユメカの他に、もう一人だけ車椅子に座ってるトウドウの後ろに隠れている人物がいる。
ユメカは車椅子を自分で動かして彼女の横に付けた。
「……スズちゃん、だよね?」
「……ん」
顔を合わせるとそっぽを向いてしまうリン。しかしユメカは気を悪くする事もなく、はにかんで「ユメだよ。よろしくね」と笑顔を向ける。
手は伸ばさない。彼女にはその手を掴む手がない事を知っているから。
それでも、気持ちは伝わるとユメカは思っていた。しかし───
「うわ!?」
───ユメカの前に突然、手が伸びてきた。
手というよりはアーム。スズの車椅子から伸びてきた、機械の腕である。
「……ん」
目を細めてユメカの目を見るリン。ユメカはハッとしてその手を握った。
「……よろしく」
「す、凄いねこの車椅子!」
まるでサイコザクのサブアームのような機械の腕に興奮するユメカ。リンはやっぱり困惑して「GBNと変わらない……」と苦笑いする。
ただ、こんな自分の姿を見ても変わらずに接してくれる事が彼女にとっては嬉しい事だった。
「さて、立ち話もなんですから。少し早めの昼食と行きましょう。私が予約しておいたお店があるので、そこで」
またキャラを忘れているナオコに若干戸惑いつつも、合計十二人の少年少女と女性とおっさんが歩き出す。
カラオは「あれ? おじさん凄く場違いじゃない?」と目を白くしながらもついて行くしかなかった。
ヒメカがユメカの、アンジェリカがリンの車椅子を押しながら世間話をしている。夢はお医者さんだとか、姉が大好きだという事を上手く相手から話させるアンジェリカのコミュニティー能力は流石だ。
どちらかといえば元気なお嬢様といった感じのアンジェリカとは対照的に、キャラ崩壊して清楚系お嬢様になったナオコを先頭に目的の場所に辿り着く。
「ガンダムカフェ……?」
お店の看板を見て、ユメカとヒメカは首を横に傾けた。
ダイバーシティの端っこ。
人で賑わうお店には、入り口に下の身長くらいあるガンダムの模型等。グッズが沢山並ぶお店の奥ではお客さんが食事を取っている。
「ここがダイバーシティのガンダムカフェですわね!」
「普通にキャラカフェの一種として見て貰えば良いですよ。アニメに出て来た食事とか、グッズが置いてあって、ガンダム好きにはたまらないカフェなんです」
目を輝かせるアンジェリカの横で、ナオコはユメカ達にそう説明をした。
そのまま店員に「予約していたキムラです」と彼女が伝えると、総勢十二人を店員が奥に連れて行く。
メニューは飲み物こそ豊富だが、昼食にするなら一択といった感じなので十二人全員がそれを頼む光景にはヒメカもユメカも困惑していた。
「お待たせいたしました、オードリーのホットドッグになります」
飲み物が先に来て、次に全員が頼んだお祭り価格で割高のホットドッグがやってくる。そして、少し小太りしたコック姿の男が料理を持って来るなり、ナオコはそれを一口食べると───
「味が薄い!」
───何故かキレた。
「「ぇ」」
困惑するユメカとヒメカ。しかし、続いてアンジェリカやタケシ達まで「薄いな」等言い始める。
「すみません……実は、塩が足らんのです」
謝る店員。皆の反応の意図が分からず慌てるユメカ達だったが、その店員の謝罪の言葉で空気が一転。
さっきまで怒っていたナオコやアンジェリカ達は笑顔で店員に拍手をし始めた。若干訳が分からない。
「ガンダムだと鉄板のネタなんですわよ。他にも「ニンジン要らないよ」とか、ご飯ネタは沢山ありますわ」
「ネタで済ませてちゃんとニンジンを食べて頂けると助かるんですがね」
「うぐ……」
アンジェリカの説明に、ユメカ達は「なるほど……」と目下のホットドッグに視線を落とした。
確かに、二人とケイスケの三人で見たガンダムUCにはオードリーという登場人物がホットドッグを食べるシーンがある。
「……美味しい」
そんなシーンを思い出しながら食べる食事もまた、ガンダムカフェの魅力なのだ。
一行は食事を終えてカフェ内のお土産を見て回ると、今度は建物の中に歩いて行く。
一般のお店も混じる巨大なデパートといった感じの建物の中は、ガンダム一色で右を見ても左を見てもガンダムが視界に入った。
「すっごいねぇ」
「皆ガンダム……好きなの?」
「ここに居る人達はまぁ、好きなんだと思いますわよ」
驚くユメカのと首を傾げるヒメカに、アンジェリカはそう言って辺りを見渡すように手を向ける。
至る所にガンダムの看板やポスター、キャラクターの等身大パネル。記念撮影をする旅行客が視界に入らない事がない。
「……嫌いな人は、ここには来ない」
一人ボソリとリンがそう言った。ご飯の時ですらあまり話さなかった彼女だが、やっと開いた口にユメカは目を輝かせる。
「スズちゃんもやっぱり好きなの? ガンダム」
「ん……」
コクリと頷くリン。口を開いたは良いが、やっぱり人と話すのは苦手だ。
時折向けられる視線が怖い。
彼女の眩しい瞳が怖い。
だけど、変わると決めたから───
「……ユメ、は?」
友達の名前を呼ぶように、視線を逸らしながらも口を開く。そんな彼女を見てアンジェリカは少し驚いていたが、心底嬉しそうに笑っていた。
「私も、ガンダム好きだよ。まだ知らない事沢山あるけど、ガンダムが好きな人達の事も、ガンダムが好きな自分も、全部好き」
「……そっか」
満足いく回答に笑顔を見せるリン。それを見てユメカも笑って、嬉しそうにするユメカを見てヒメカも喜ぶ。
オフ会を提案して良かった。
そんな光景を見ながら満足するナオコだったが、まだオフ会は始まったばかりである。十二人は特に買い物をする訳ではなく、建物の最上階まで歩いた。
「ようこそ、ガンダムベースへ!」
右を見ても左を見てもガンプラ。
そこはガンプラ好きの夢の聖地、数多のガンプラが揃いに揃い、著名なガンプラ作品が展示され、ガンプラ好きがガンプラを全力で楽しめる場所。
「お、おぉ……」
これにはユメカ達だけでなく、ケイスケ達も圧巻の一言で口を開けて固まっている。
初めて発売されたガンプラから、最新のガンプラ、ガンダムベース限定の物まで、目移りしてしまう規模にユメカとヒメカは目を回していた。
「やべぇ! すげぇ! これ、あのシャフリヤールの作品!? マジ!?」
語彙力を無くしたタケシの後ろで、カラオも「おぉ、これがねぇ」と感心した表情を見せる。
何も言っていないのにそれぞれ関心のあるスペースに向かう様を見て、ナオコは満足気だった。
「わ、私のガンプラの方が凄いですわよ」
「……うん。アンジェの方が凄い」
「アンジェリカさんのガンプラも飾ってあるんですか?」
「え!? あ、私のは……私のはパリの美術館に飾ってありますわ!! こんな凄い場所───じゃなかった、こんな小さな場所に飾れる作品じゃないのですわよ」
「……負け惜しみ?」
「ふぐぅぅぅ!!!」
アンジェリカとスズ、ユメカとヒメカが話している中で、ナオコは「ここに展示してあるガンプラは有名とか優秀とかそういうのではなく、単にガンプラを楽しんでもらう為のものなんですよ」とフォローを入れる。
彼女の言葉を聞いて、ヒメカは「楽しむ為……?」と首を傾げた。
他の男性陣がはしゃいでいる姿を見ても、彼女には何が楽しいのか分からないのである。
「……ごほん。まぁ、つまり、ですわ。……ここに来たのは作ってあるガンプラを見る為じゃないって事ですわよね?」
「その通りです。そろそろアナウンスがあると思うので、ちょっと待ってて下さいね」
ナオコがそう言ってから数分、興奮止まない男性陣を他所に本を読んでいたヒメカの耳に知らない男の声が響いた。
「……あー、テステス。マイクは大丈夫そうだね」
「ありがとう、コーイチさん。それじゃ、後はナナミさんに任せて俺達も楽しもう!」
お店のエプロンを着た眼鏡の男性と、自分達より少しだけ歳下に見える男の子がレジの辺りで話している。
眼鏡の男性はマイクを持っていて、それを同じくエプロン姿の女性店員に渡した所だった。
「あれって……」
その姿を見てケイスケは視線を真っ直ぐに向ける。
「ケー君?」
そんなケイスケの視線に釣られ、彼女の視界に入ったのはガンプラと同じくらいのサイズの女の子だった。
模型なのか人形なのか、そんな姿をしているのにその女の子は自分で動いて、話をしているようにも見える。
「サラ、もう始まるよ」
その女の子に、一人の少年が声を掛けた。
「えー、こほん! お集まりの皆さん! 本日はガンプラを作って遊ぼうのイベントにして頂きありがとうございまーす!」
短い茶髪の女性が活気のある声でそう言うと、ケイスケ達以外もレジの辺りに視線を向け始める。
今日はこのガンダムベースでとあるイベントが開催されるのだ。ナオコはそれが丁度良いと、オフ会の場所をここに選んだのである。
「イベントの内容は簡単! がんぷらを自分で作って、GBNで遊ぶだけ! そしてー、今回はスペシャルゲストとしてー!」
彼女の傍には五人と一人。さっきの小さな人形のような女の子合わせて六人がいて、女性はそんな六人に手を向けてこう続けた。
「───ビルドダイバーズのメンバーが皆のガンプラ作りをサポートしちゃいまーす!」
「ビルド……ダイバーズ」
紹介される六人を見て、ケイスケだけでなく沢山の客達が驚いたり喜んだりしている。
フォースビルドダイバーズ。
第二次有志連合戦、ELダイバーを巡る戦いの中心にいたダイバー達だった。
一時間半程添削せずに作品が公開されていました。謝罪いたします。
今年のこの作品の更新はここまで!次回はいつも通り一週間後、来年の一月二日更新になります。
それでは皆様、良いお年を!