ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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ガンダムベース

 憧れとは少し違ったかもしれない。

 

 

 GBNに興味を持ったキッカケ。

 彼等の事は聞きたくなくても耳に届いてくる。次第にケイスケも彼等の事が気になっていた。

 

 だからこれは憧れじゃなくて───

 

 

「───ビルドダイバーズのメンバーが皆のガンプラ作りをサポートしちゃいまーす!」

「ビルド……ダイバーズ」

 ───闘争心。彼等と戦いたい。

 

 

 一人のガンプラビルダーとして。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 イベントの内容は至って簡単である。

 ただガンプラを作って、自分が作ったガンプラでGBNを遊ぶだけ。

 

 

 ただ今回はそのGBNで遊ぶ時のルールが特別なようだが、何が特別なのかは参加者にはまだ知らされていないようだ。

 もう一つはゲストとしてフォースビルドダイバーズの面々がガンプラ作りをサポートしてくれるらしい。

 イベントにはヒメカのようにガンプラ作りの初心者も多いようで、そんな初心者にとっては嬉しいサポートだろう。

 

 

「作るガンプラは決まりましたか?」

「私はデルタプラス! ずっと作ってみたいと思ってたんだよね」

 ヒメカと一緒にイベントで作るガンプラを選んでいるユメカに話しかけるナオコ。ユメカの手にはガンダムUCに登場する可変機、デルタプラスのガンプラが置かれていた。

 

「……私は、ピーマン」

「クシャトリヤとはお目が高い」

 ヒメカが持っている機体に目を丸くするナオコ。人気な機体ではあるが、女の子が手に取る物としては珍しい気がする。

 

 

「ヒメカちゃん、ユニコーンは観たんですもんね。良いですよねクシャトリヤ」

「……ピーマン」

 若干オタクモードの入っているナオコに引きながらも、ヒメカはかろうじて返事をした。返事になっていないが、コミュニケーションが苦手な彼女にしては言葉が出て来ただけでもマシである。

 

 

「ヒメカちゃんが怖がってますわよ」

「……作るガンプラ、決まった?」

 そんな三人の元にアンジェリカとリンがガンプラを手に現れた。

 リンは車椅子にシナンジュのガンプラを乗せている訳だが、そこでふとユメカは疑問に思う。

 

 

「スズちゃん……ガンプラ作るの?」

 彼女には腕も足もない。しかしイベントには参加するらしく、アンジェリカはアンジェリカで別のガンプラを持っていた。

 

 

「……舐めるな」

 しかし、心配は無用だったようである。彼女は車椅子から伸びるアームでニッパーとヤスリを持って彼女に見せ付けた。

 

「やっぱりその車椅子凄い……」

 どうやら抜け目はないようである。

 

 

 各々が作るガンプラを決めると、広い作業場でガンプラ作りがスタートした。

 

 

 ユメカ達が並んでガンプラ作りをしているのを眺めながら、タケシは隣に座っているケイスケに横目でこう語り掛ける。

 

「ユメカのところ行かなくて良かったのか?」

「せっかく仲良くなって一緒に話してるんだから、邪魔しちゃ悪いしな」

 彼がそう言ったところで、噂のユメカは二人の視線に気が付いたのか手を振っていた。

 その手に自分も手を振って返すと、ケイスケは「ヒメカちゃんもなんか楽しそうだし」と笑う。

 

 

 そんなケイスケは話しながらも、自分の手にしたガンプラを黙々と作り始めていた。

 黙々とだが真剣に、ガンプラに向き合ってパーツを一つずつ組んでいく。

 

 そんな彼の視線に、ふと不思議な光景が映った。

 

 

「───このガンプラ、すっごく優しい気持ちを感じる」

 頭から作って足まで完成し、後は武器とバックパックといった所でガンプラを立たせて置いたケイスケの視界に入る小さな女の子。

 

 小さな女の子と言ってもヒメカのような小さなという事ではない。物理的に、それはもうガンプラと同じサイズくらいの女の子である。

 

 

「え? 何それ。ケイスケ、そんな趣味あった?」

 それを横で見たタケシは、少女が首を横に傾けるのを見て目を丸くして固まった。

 

「ぷ、プラモが動いた……」

「いや、違うぞタケシ。この子───」

「サラ」

 説明しようとしたケイスケの言葉を遮る声。

 

 二人の後ろに少年が一人。そんな少年の姿を見て、ガンプラサイズの少女───サラは、ニッコリと笑い少年に手を伸ばす。

 

 

「リク、このガンプラも楽しそう」

「本当だ、綺麗に作ってある。すみません、少し見せてもらっても良いですか?」

 少女にリクと呼ばれた少年は、ケイスケが「ど、どうぞ」と答えると嬉しそうに身体だけ完成したケイスケのガンプラを持ち上げた。

 

 左右上下様々な所から自分のガンプラを観察されるのは、どこか恥ずかしい。

 

 

「丁寧にやすりがけしてある……。何か、コツとかあるんですか?」

「え? あー、面倒くさがらない事……かな」

 リクの質問にそう返したケイスケは、彼の手からガンプラを返してもらうと自分でも眺めながらこう続ける。

 

「俺は作る工程も好きだから、丁寧っていうか……ただ粘着質になってるだけなのかもしれないけど」

 自虐的に笑ってガンプラを立たせると、サラとリクはお互いに顔を見合わせて何故か笑った。

 その意図が分からなくて、ケイスケは首を傾げる。そもそも彼等は───

 

 

「あんたら、もしかしてビルドダイバーズか?」

 思考の横から、タケシのそんな声が聞こえてきた。彼の質問にリクは「そうですよ」と答える。

 

 

「俺はリク。こっちはサラで……俺の大切な仲間です」

 リクが紹介すると、サラは文字通り小さな手を振って笑顔を見せた。

 

 

 彼女こそ、世を騒がせたELダイバーなのである。

 

 

「ケイスケだ。こっちは───」

「ロックリバー、クールで格好良───」

「タケシです」

「ロック!!」

 いつものやり取りをしながら自己紹介をすると、サラは楽しそうに笑みを溢していた。

 そんなサラを見て嬉しそうにするリクは彼女に「俺は向こうを見てくるから」と言ってケイスケの目を真っ直ぐに見る。

 

 

「戦えるの、楽しみにしてます」

 純粋で真っ直ぐな眼だと思った。返事を忘れていて、ケイスケは「俺もだ……」と小さく呟く。

 

 

「二人はガンプラの事……好き?」

 少し驚きはしたが、彼女と話しながらガンプラを作るのも面白いかもしれない。ケイスケとタケシは目を見合わせて二人で答えた。勿論、と。

 

 

 

 

「それ、SDですよね?」

 端っこの方で楽しそうにしている皆を眺めながらゆっくりガンプラ作りを楽しんでいたカラオの前に、サイドテールの少女が話しかけて来る。

 

 ふと視線を上げたカラオの目に映ったのは、目を光らせて彼の手元に寄ってくる少女の姿だった。

 

 

「ひぇ!? お、おぅ……そうよ。SDは作るの楽かもしれんけど、その分愛情込めて作れるし。こういうイベントならコレかなって思ったのよね」

「ザクIII……素敵です」

「お、分かる? おじさんコレ好きなのよね」

 どうやらSD好きの少女と話が合いそうなカラオは、会場の端でSDトークで盛り上がっている。

 

 

 その他にも色々な人が、知らない人と自らのガンダム愛を語り合っているようだ。その為のイベントでもあるし、主催者側もここに皆を連れてきたナオコも満足気である。

 

 

 ふと、そんな会場に遅れて二人の客がやって来た。

 客は男女の二人組で、男性は頭に怪我をしているのか包帯を巻いている。

 

 

「いやぁ、遅刻しちゃったよ。大丈夫? まだ参加できるかな?」

 男性の方が受付をしている女性に話しかけると、女性は「大丈夫ですよー」と笑顔で答えた。

 

 二人はガンプラを持って来ると、丁度ケイスケ達が談笑している隣に座る。

 

 

 

「ラゴゥ……と、ブルーディスティニーか」

 覗き込んだタケシがそういうと、サラと話していたケイスケも隣に座った二人に視線を向けた。

 

 頭に包帯を巻いている男性はサングラス姿にアロハシャツと、何処かで見た事のある姿をしている。

 そしてその手元で作られていくガンプラと、頭の中で何かが重なった。

 

 

「……アンディさん?」

 無意識にそんな言葉が漏れる。

 

 

 NFT決勝戦で撃破された瞬間、GBNからログアウトしてダイバーギアが爆発するという事件に巻き込まれた男の名前だ。

 

 

「……君? もしかして───」

 男はケイスケの声を聞き、サングラスをズラして彼の顔を覗き込む。

 

 

「───ケイスケ君か! こんな所で出会うなんてな!」

 そして男はやや興奮気味にケイスケの肩を抱いてそう口にした。彼こそケイスケが口にしたアンディ本人なのだろう。

 

 

「え? マジ?」

「なんですってぇぇえええ!!」

 驚くタケシよりも大きな声で飛び込んでくるアンジェリカ。サラは何が起きたのか分からず首を傾げていた。

 

 

「あ、あなた! 砂漠の(いぬ)の!!」

(けん)だ。……アンドウ・ハルトという。よろしく」

 誰に向けるでもなくそう自己紹介をするハルト。その後ろで、女性は「アイジョウ・シヤよ」と短く挨拶をする。

 

 

「怪我は……。あ、ケイスケです! サイトウ・ケイスケ」

「アンジェリカですわ。あなた、大怪我したって聞きましたわよ?」

「あー、そうだねぇ。本当、参っちゃったよ。この通り、やっと退院出来たって感じだからねぇ。……リハビリも兼ねて、遊びに来たって訳さ」

 頭の包帯を指差しながらそう語るハルト。

 

 

 彼は「今日はこの後バトルだろう? まさか君達がいるなんて思ってなかった。ビルドダイバーズもろとも、戦うのを楽しみにしてるよ」と目を光らせた。

 

 

「ギッタンギタンにしてやりますわ!」

「……アンディさんと、また戦えるのか。よし」

「さーて、面白くなって来たねぇ」

 火花を散らす三人をみて、サラはタケシと視線を合わせてこう口を開く。

 

 

「三人は、ライバル?」

「……まぁ、確かにそうなのかもな」

 これはまた面白い事になりそうだ、タケシもまたそう思うのであった。その気持ちはきっと、サラや他のメンバーにも届いている。

 

 

 

「……可愛いな」

「……うん、可愛い」

「カプル……だったっけ? こんなに可愛く作れるんだね」

 一方でアンジェリカが抜けて三人になったリンとヒメカとユメカのところには、一人の少女が現れてガンプラの見せ合いっこが始まっていた。

 

「うん! とはいっても、これはコーイチさんにほとんど手伝ってもらったんだけどね。……あ、私モモカ! そしてこっちはモモカプル!」

「……リン」

「ユメカです。この子は私の妹のヒメカ」

 モモカと名乗った少女にユメカが自己紹介をすると、リンは「モモカプル……。ユメカプル……。ヒメカプル……」と小さく呟く。

 

 それがツボに入ったのか、ヒメカは少しだけ目を輝かせてモモカのモモカプルを見つめていた。

 

 

「それじゃ、リンちゃんはリンカプルだね!」

 意図を汲み取れていないのか、そう語るモモカにリンは「えぇ……」と目を丸くする。

 

 ただ、そんな何気ない女子同士の会話も───彼女にとっては新鮮で楽しかった。

 

 

 

 

 そして、全員のガンプラが完成したのを確認すると───イベント主催の女性は全員をGBNのログインマシンがある部屋に案内する。

 

 

 

「ルールは至って簡単! コンピューターでランダムに選ばれた二人チームによる生き残りを掛けたチームバトルロイヤル戦!! 優勝したチームには、景品としてガンプラを一つプレゼント!!」

 女性の言葉に盛り上がる会場。誰が仲間になるのか分からないのも面白いが、普段自分が使っているガンプラではないという事も面白い。

 

 

 参加者全員がGBNにログインしていく中で、ケイスケとユメカの視線が合った。

 

 

「……ユメカ」

「ケー君?」

「もし敵になっても、手加減しないからな」

 欲を言うなら、いつものように彼女に隣にいて欲しい。彼女にいつものように背中を任せたい。

 

 だけど、彼女と戦ってみたい気持ちも確かに合ったのだろう。ずっとこの時を待っていたのかもしれない。

 

 

「……私も!」

 お互いに拳を向けて、背中を向けた。

 

 

 

「───それでは、ガンダムファイトぉぉ! レディィィ、ゴォォ!!」

 ガンダムベース特別マッチ2onバトルロイヤル、開幕。




あけましておめでとうございます!
本編は遂にビルドダイバーズが本格登場。バトル編もお楽しみに!

それでは読了ありがとうございました!
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