ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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狙撃手と狙撃手

 二つの拳が襲い掛かる。

 

 

「いくら姉さんといえど!」

「狙撃出来なければ怖くないよ!」

 可変MSディキトゥス。左右非対称でモノクロの、異様な姿をしたこの機体はクロスボーンガンダム鋼鉄の7人に登場する機体だ。

 

 まるで左腕と右腕のように左右反転のディキトゥスを駆るのはフォースメフィストフェレスの双子、レフトとライトである。

 

 

「……生意気な」

 対するは同じくフォースメフィストフェレスの狙撃者スズのシナンジュ。そしてその相方は───

 

 

「んなろぉ! ちょこまかと動きやがって! 狙い撃てないだろ!!」

 ロックの操るケルディムガンダムだ。

 

 

「下手くそ……」

「誰が下手くそだぁ!」

「アレの狙撃は怖くない! 一気に叩き負けるよ、レフト!」

「姉さんの接近戦も甘い! ここで潰しておくよ、ライト!」

 足跡チームでチームワークもないスズとロック、それに比べてランダムチームなのに組むことになった双子はチームワークも抜群である。

 

 

 一気にシナンジュを追い詰める二人。

 スズは眉間に皺を寄せ、一向に攻撃の当たらないケルディムに向かって体当たりした。

 

 

「仲間割れかぁ!?」

「違う……そいつを貸せ。お前はコレでも使ってろ……」

 言いながら、スズはロックのケルディムからGNスナイパーライフルを奪い取る。

 そして自分のビームサーベルとビールアックスを放り投げると、ライフルを構えて引き金を引いた。

 

 

 ビームは正確にディキトゥスを貫く───事はなく、掌側に発生されたIフィールドに阻まれる。

 

 

 

「げ、姉さんがライフル使いだした」

「でも、僕らの機体には効かないよ」

 ディキトゥスの強力なIフィールドは機体正面にしか発生しないのが弱点だが、機動力は並大抵のMSを凌駕しており、赤い彗星の再来の機体といえど背後を取るのは難しい。

 

 さらに強力な接近戦用の武器により、近付く事も悪手だ。

 そんな事は分かりきっているロックだが、接近武器を渡されて彼は不敵に笑う。

 

 

「───しょうがねーな、やってやるよ。ただし、テメェも俺からスナイパーライフル取ったんだから当てろよな!!」

「こっちの台詞」

 二人は背中合わせでお互いの機体を蹴るように二手に分かれると、レフトとライトも示し合わせたかのように別れる。

 

 

 スズに背中は向けられない。

 だが、正面を向いていれば彼女には勝ち目はない筈だ。

 

 だから、一人が抑えれば負ける訳がない。

 

 

 

「ケルディムでこのディキトゥスに格闘戦をするつもりかな!」

「機体なんざ関係あるかよ!!」

 拳のようなMA形態から、二つの頭を持つMS形態に変形したレフトのディキトゥスがビームクローを展開しケルディムを襲う。

 シナンジュから譲り受けたビームアックスでそれを受け止めるケルディムだが、ディキトゥスの出力が圧倒的で押し込まれる一方だ。

 

 レフトの言う通り、ケルディムはそもそも格闘戦をする為に設計されていない。

 いくらシナンジュの強力なビームアックスといえど、機体のスペックが追い付いていないのである。

 

 

 押し込むビームクロー。

 しかしロックは不敵に笑った。

 

 

「ピンチはチャンスってぁ!!」

 ついに姿勢を崩したケルディムだが、ディキトゥスを足元から蹴り上げて浮かせる。

 

 追撃でビームアックスを薙ぎ払うが、ビームクローに阻まれた。しかし彼は止まらない。

 ビームアックスを片手に左手でビームサーベルを持ち展開。振り回し、ディキトゥスのビームクローを根本から切り飛ばす。

 

 

「ケルディムで二刀流!?」

「接近戦ってのはこうやるんだよ!!」

 一瞬の隙を見せたレフトのディキトゥスは、ケルディムのビームアックスとビームサーベルに切り刻まれ爆散した。

 

 レフト、撃沈。

 

 

 

「逃げても無駄だよ!!」

 高速で後退するシナンジュを追い掛けるライトのディキトゥス。逃げるシナンジュだが、その距離は一方的に縮まっていく。

 

 しかし、そこでスズは機体をひっくり返し逆噴射。慣性を一気に殺して、急停止を掛けた。

 すると高速移動していたディキトゥスはシナンジュを追い抜いて一気に駆け抜けていく。今更ブレーキを掛けても遅い。

 

 

「……デカい的だ」

 シナンジュのGNスナイパーライフルが、ディキトゥスを背後から貫いた。

 

 ライト、撃沈。

 

 

 

「やるじゃねーか」

「……そっちも」

 そんなバトルを覗いていたアンジェリカはこう思う。

 

 

「……絶対組んだらいけない二人が組んでしまいましたわ」

 ただただ、苦笑いが止まらなかった。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 視界に映る戦闘機。

 

 

 ユニコーンガンダムを乗せたその機体は、ユメの駆るデルタプラスである。

 スズのライフルのスコープに映るデルタプラスが、GNスナイパーライフルの射程に入るのを彼女は不敵に笑いながら待っていた。

 

「次は外さない」

 彼女の射撃の命中精度は並大抵ではない。

 

 

 しかしユメは一度、彼女の狙撃を間一髪の所で避けている。これは絶好な機会だ。彼女はずっとそう思っていた。

 

 

「あの時の雪辱を晴らす」

「───と、思っている筈。だから、絶対にスズちゃんはリク君じゃなくて私を狙ってる」

 ユメはそう言って、ユニコーンのパイロット───リクに合図を送る。

 

 

「確かにあの時、私はスズちゃんの攻撃を避けれた……」

 だけど、あの時はなぜそれが出来たのか今でも分かっていない。

 

 分かるのは一つだけ。

 

 

「……どうしてだろう。スズちゃんの息遣いが聴こえてくる感じがする」

 自分にも分からない感覚が彼女にはあった。まるで何かと繋がっているような、不思議な感覚。

 

 引き金に手を引く感覚に、ユメは「今だよ!」と声を上げる。

 

 

「───落ちろ」

「させない!」

 スズが引き金を引いた次の瞬間、デルタプラスに乗っていたユニコーンがシールドを突き出して前に飛び出た。

 ビームはユニコーンガンダムのシールドに内蔵されたIフィールドに弾かれる。

 

 ユニコーンはデルタプラスから降りて地上に落下するが、おかげで狙撃から守られたデルタプラスはその機動力を生かして一気にスズのシナンジュに肉薄した。

 

 

 

「抜かれた!?」

「勝負だよ!! スズちゃん!!」

「……私の狙いがユニコーンだったら、シールドなんて逸らして撃ち落としていた事くらい分かってた筈」

「賭けたんだ……。スズちゃんは私を狙ってくれるって!!」

「……面白い」

 変形しサーベルを抜くデルタプラス。シナンジュも一本だけ残しておいたビームサーベルを構え、応戦する。

 

「一人で私を倒す気……? 直ぐにキミの仲間の狙撃者がこっちにくる」

「それは大丈夫。私はスズちゃんを抑えればそれで良いから!」

 ユメはデルタプラスの機動力で急接近してきたが、ユニコーンガンダムは彼女を守る為に落下していて合流には時間が掛かる筈だ。

 

 その前にロックが合流すれば、ユメは袋叩きになる。

 

 

「……なんだ」

「───こちらロックリバー。悪い、強敵に見つかっちまったんで援護遅れるぜ」

 しかし、ロックからの突然の通信にスズは眉間に皺を寄せた。

 

 

「ケイか……」

「ようタケシ」

 ケルディムガンダムの前に立つ、ケイのエクストリームガンダムtypeーレオスIIVS。

 

 

「───ここに来る前にケー君がスタンバイしてるのが見えたんだよね。きっとケー君なら、スズちゃんを抑えたらタケシ君を倒しに行くと思ってた」

「───ユメが飛んでるのが見えたからな、何処かでシナンジュを止めに行くんじゃないかと思ったんだ。そうしたらお前を倒せると思ってな」

 対するスズとロックは不敵に笑う。

 

 確かにピンチといえばピンチなのかもしれない。しかし、二人にとっては待ち侘びていたチャンスとも言えるのだ。

 

 

「───お前と久し振りに戦えるなら本望だっての!」

「───あの時の雪辱を晴らすよ」

 ビームサーベルを振り払い、デルタプラスから一度距離を取るシナンジュ。スズは「……舐めるな」と、踏み込んでデルタプラスを押し返す。

 

「抑えられるなら……抑えてみろ」

「私だって! いつまでも皆の後ろにいるだけじゃない!」

 ビームサーベルをなんとか振り払い、変形して一旦距離を取るユメ。しかし、距離を取れば狙撃される事は分かっていた。

 あまり距離は離さずに、彼女は岩陰に隠れてMS形態に機体を変形させる。ライフルを構え、頭を少しだけ出した所で岩がGNスナイパーライフルで吹き飛ばされた。

 

 

「……と、意気込んだは良いけれど。……どうしよう」

 冷や汗を流しながら操縦桿を握るユメ。初めてのMS戦闘に戸惑いながらも、デルタプラスは可変機という事もあり彼女に答えてくれる。

 

 あとは頑張るだけだ。

 

 

 

 

 ビームアックスとビールサーベルが鍔迫り合う。

 

 

「やるじゃねーか!」

「タケシと接近戦で真面目に付き合ってられるか……アリスファンネル!!」

 エクストリームガンダムのファンネル───全感応ファンネル『アイオス』がケルディムを囲むが、それを一つずつ切り飛ばしながらもケイのビームサーベルを弾くロック。

 

 狙撃専用のケルディムガンダムだが、彼の剣捌きにケイは圧巻されていた。

 

 

 

「嘘だろ……!」

「そんなんで俺を倒そうってか!」

「まさか!」

 ヴァリアントライフルで牽制射撃をしながら距離を取ろうとするケイだが、ロックはビームサーベルでライフルを弾きながらビームアックスを片手に接近してくる。

 再び放たれるファンネルも切り飛ばし、遂にエクストリームガンダムの懐に潜り込むケルディム。

 

 ケイはビームライフルを投げ捨てて、ビームサーベルをもう一本構え応戦するが、ロックの剣裁きについていけずに応戦一方になった。

 

 

 

「流石だな……」

「まぁ、本職は狙撃なんだけどな!」

「なんでここに来てまだそう言い切れるんだ!?」

 苦笑いしながら、ファンネルに反撃して一瞬の隙が出来たケルディムを蹴り飛ばすケイ。

 一瞬姿勢を崩したロックのケルディムに、ビームサーベル二本をクロスして振り下ろす。

 

「それでも、ケルディムで接近戦は無理がある!!」

 いかなロックの操縦技術が高かろうが、機体が反応速度についていけない筈だ。

 しかし───

 

 

「なめんな……!! トランザム!!」

 ケルディムを赤い光が包み込む。

 

 TRANS-AM

 

 

 高濃度圧縮GN粒子全面開放により、機動力を手に入れたケルディムはエクストリームガンダムのビームサーベルを抜けて一度距離を取った。

 あまりの速度に地面を滑る機体。ビームアックスで地面を抉り、やっと完成を殺したケルディムは両手に武器を構えその眼光をエクストリームガンダムに向ける。

 

 

「ここからが本番だろ! シールドビット!!」

「……っ、エクリプス!」

 背部に装備された砲身───高純化兵装『エクリプス』をケルディムに向けて放つケイ。

 高出力のビームがケルディムを包み込もうとするが、シールドビットがギリギリの所でそれを受けとめた。

 

 ケルディムの接近を許したエクストリームガンダムをビームアックスが襲う。その刃が機体を切り裂こうとしたその時───

 

 

 

「───シールドビット!」

 透き通るような少女の声。

 

 ケルディムのビームアックスは、半透明の何かに弾かれた。ロックは「あ?」と眉間に皺を寄せる。

 

 

 

「サラ、準備出来たか!」

「うん。ケイ、大丈夫?」

「待ってた!」

 ケイのエクストリームガンダムの背後から現れるもう一機の機体。

 サラの操るエクストリームガンダムtypeーセシアエクセリアだ。

 

 

「そういや二人チームのデスマッチだったな……」

「お前の敗因は一人で戦った事だな、タケシ」

「ロックだっての! まだ負けてね───あれ?」

 ケルディムのトランザムが終了する。予想よりも早いタイムリミットに、ロックは口を開けたまま固まった。

 

 

「そのガンプラ、もう限界だから」

 サラはそう言って機体を浮かせ、両手をケルディムに向ける。

 

「そうか、素組だから……」

 GBNの機体は、自分が作ったガンプラの出来により性能が変わるのだ。短い時間で作り上げた機体は、想像以上に性能が低下していたのである。

 

 

「───リンクリフェイザー!」

「チッ、次は本気でバトルしてぇな……」

 エクセリアから放たれたビームがケルディムを消し飛ばした。

 

 

 ロック、撃沈。

 

 

 

 

「よくトランザムが切れるタイミングが分かったな……」

 サラという少女のどこか不思議な雰囲気に驚きつつも、ケイは山頂の光を見上げて目を細める。

 

 ユメ達が仕掛けたのを見かけたからロックに仕掛けたが、漁夫の利を狙う理由もない。

 

 

「サラ、一旦引こうか」

「戦わないの?」

「きっとユメなら勝ってくれる。リクも、そうだろ?」

「……うん!」

 お互いに意思を確認し終わって、山を降りる二機のエクストリームガンダム。

 

 

 

 山頂では、GNスナイパーライフルの光が空を貫いていた。




この二人が本気で組んでちゃんと2on2で戦ったら勝てるチームは自キャラに存在しません。そのくらい特化して強いキャラ。
次回はユメ対スズ。軍配は如何に!
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