ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】 作:皇我リキ
閃光が機体を貫く。
超射程からの精密射撃を横目に、ユメとリクはお互いの作戦を確認していた。
「スズちゃんを私が止める?」
「うん。さっきの狙撃もだけど、ユメさんはあのシナンジュの攻撃タイミングを完璧に見切ってたよね?」
リクの言葉に、ユメは首を傾げながらも「うん」と答える。
ここ数回の狙撃、スズは山頂から三機のMSを一度も外さずに撃破していた。
その攻撃タイミングを、ユメは全て言い当てていたのである。
「だから、ユメさんのタイミングで俺が攻撃を止める。その間にユメさんにはシナンジュに接近して貰いたいんだ」
「え?」
「そしてユメさんにはシナンジュを止めておいてもらって、俺が合流したところで一気に倒す───って作戦はどうかな?」
リクの作戦に、ユメは少しだけ強く拳を握った。
「大丈夫?」
「うん、大丈夫。やろう! 私頑張る!」
「よし、行こう!」
変形したデルタプラスの上に乗るユニコーン。狙撃を防ぐまでは一発勝負。失敗すればその時点で負けだろう。
操縦桿を握る手、モニターを見る瞳、音を聞く耳、全ての感覚に意識を集中させると───頭に電気が走るような感覚を感じた。
「今だよ!」
「させない!」
ユニコーンガンダムのシールドがライフルを弾く。落下していくユニコーンを尻目に、荷物を下ろして軽くなったデルタプラスは一気に加速してシナンジュに接近した。
「ユメさん、すぐに行くから……待ってて!」
ユニコーンも着地して直ぐにスラスターを吹かせる。山の奥では別の閃光が光り輝いていた。
☆ ☆ ☆
岩盤が削れる。
GNスナイパーライフルからの狙撃を避ける為に岩陰に隠れたは良いが、次々に放たれる攻撃に遂に隠れていた岩が機体よりも小さくなってしまった。
「隠れてばかりか。……時間稼ぎがしたいとしても、それじゃ足りない」
再びライフルを構えるスズ。これにはたまらずユメも機体を変形させて離脱を試みる。
「……無駄だ」
「これが、MSの戦闘……」
初めてのMS戦。不慣れな戦いに、格上の相手。しかし彼女にも考えはあった。
「……戦闘機相手に二度も外すと思うな」
ライフルを構えるスズ。デルタプラスの機動力がどれだけ良かろうが、真っ直ぐに距離を取ろうとする戦闘機なんて彼女にとっては的でしかない。
「───このデルタプラスは、ただの戦闘機じゃない!」
しかしユメは空中で機体をひっくり返しながら変形させ、一気に機体の高度を下げる。そしてさらに再び機体を変形させて、今度はシナンジュに正面を向けて一気に急接近を仕掛けた。
引き金を引く手が固まる。
「何!?」
戦闘機相手では絶対にありえない起動に反応が遅れたスズ。奇しくもそれは、フォースReBondとメフィストフェレスの戦いでユメ相手にトウドウが見せた技だった。
「いっけぇ!」
一気にシナンジュに接近したデルタプラスは、再び変形しビームサーベルを片手に切り抜ける。シナンジュの左腕が切り飛ばされて、地面に転がった。
「……よし! もう一度!」
再び変形。一気に距離を取るユメ。
そんな彼女を尻目に、スズはライフル片手に不敵に笑う。
「……面白い!」
二度も三度も、自分の攻撃から逃れられたのは彼女以外に居なかった。
だからこそ、倒し甲斐がある。
「……勝負だ、ユメ」
「……行くよ、スズちゃん!」
再び急接近を試みるユメ。ライフルは間に合わないもう一度同じ攻撃を───
「いっけぇ!」
「二度目はない!!」
突然スラスターを吹かせたかと思えば、シナンジュは地面を蹴って横に転がった。思わぬ回避にデルタプラスのビームサーベルは空を切る。
攻撃を交わされて、焦って変形した時にはユメの脳裏に嫌な感覚が走った。
シナンジュは体勢を崩しながらも、ライフルを構えている。銃口が光った。
ユメは知っている。スズがその程度の条件で狙撃を外す事はないと。
「しまった───」
「今回は私の勝ち───」
「間に合え……!!」
スラスターが火を吹いた。
引き金が引かれ、ライフルが放たれた瞬間。デルタプラスとGNスナイパーライフルの間にユニコーンガンダムが割って入る。
「……時間を掛けすぎた」
構えられたシールドにライフルが弾かれて、スズは舌を鳴らした。
悔しいが、自分の負けである。
「いけ、ビームマグナム!」
リクの放ったビームマグナムがシナンジュを貫いた。
スズ、撃沈。
「リク君!」
「間に合って良かった。ありがとう、ユメさん!」
二人は頭の中でハイタッチをしながら辺りを警戒する。気が付けば山の奥で行われていた戦闘も終わっているようだ。
山岳地帯はそこで、静かさを取り戻す。
一方、港湾基地付近。
「見付けたよー! ほらほらノワールさん、あっちあっち!」
ガンダムの世界に似合わない、とてもファンシーな姿のMSを駆る少女───ビルドダイバーズのモモは、見付けた敵を指差して声を上げていた。
彼女の機体はアッガイの派生機、ベアッガイ
「こっちの方が先に見つかってる可能性はあるがな……」
そんな
二人が見付けたのは、基地の建物に隠れていたマラサイとガブスレイのペアだった。
それぞれパイロットはビルドダイバーズのコーイチ、メフィストフェレスのトウドウである。
マラサイに乗るコーイチは「厄介なのに見つかっちゃったなぁ」と、目を細めながら冷や汗を流した。
トウドウは「しかし、先に動かなければ不利になる」と眼鏡を曇らせる。
コーイチも、ズレた眼鏡を直しながら「そうだね」と視線を敵に向けた。
「行くよ!」
「任せろ」
同時に飛び出したマラサイとガブスレイ。変形したガブスレイは、スラスターを全力で吹かせて一気にベアッガイIIIと百式に接近する。
「来たぞ!」
「任せて! いっくよぉ、お口ビーム!!」
「は?」
突然前に出たモモのベアッガイIIIは、熊の顔の口の部分を開いてそこからビームを放った。
全く想像出来ない攻撃に、トウドウは反応する事が出来ずにそのまま撃沈する。
トウドウ、撃沈。
「うわぁ……」
苦笑いするコーイチ。しかしノワールも、その突拍子もない攻撃に口を開いて固まっていた。
「……これがビルドダイバーズか」
「あ、コーイチさん見付けた! お手てビーム!!」
コーイチ、撃沈。
一方、森林地帯。
「ここまで来れば、スズの狙撃も届かない筈ですわ」
「逃げてばかり……?」
「……うぐ」
ヒメカを連れて山岳地帯から逃げてきたアンジェリカだが、彼女の言葉に表情を引き攣らせる。
今回ヒメカは初めてGBNにログインして遊んでいるのだ。アカウントもないため、アバターはハロの姿である。
そんな彼女だから、いきなり接敵して直ぐに倒されてしまっては楽しめないだろうとアンジェリカも内心気を遣っていた。
しかし、結局バトルが出来ないのでは意味がない。彼女にGBNの醍醐味を抑えるには戦うしかないだろう。
「むむむ、そんな事はありませんわ! スズ以外なら敵が誰であろうとケチョンケチョンに───」
「ほぅ、それはそれは楽しみだねぇ!」
通信に割って入る声。森林地帯の砂を巻き上げながら接近するMSが一機。
「な!?」
「ワンコ……?」
木々を薙ぎ倒して進むのは、四足を持つMSラゴゥ。そのパイロットは奇しくもアンジェリカの雪辱の相手、砂漠の犬───アンディだった。
「ここで会ったが百年目ですわ!!」
スラスターを吹かせるアンジェリカの機体。
彼女の機体は
「え?」
ヒメカを置いてラゴゥに飛び掛かるExーSガンダムだが、その傍から青い機体がExーSガンダムを殴り飛ばした。
地面を転がるアンジェリカの機体を他所に、アンディのラゴゥはヒメカのクシャトリヤに向かっていく。
「ふふ、アンディの邪魔はさせないわよ」
アンディのチームになっていたのは、彼の最愛の女性リリアンだった。
彼女の機体はブルーディスティニー1号機。こちらはEXAMというシステムを搭載している。
EXAMシステム、スタンバイ
ブルーディスティニーのメインカメラが赤く光った。禍々しい雰囲気に、アンジェリカは苦笑いを見せる。
「ヒメカちゃんをやらせはしませんわ!! ALICE!!」
ALICE
ExーSガンダムのメインカメラも赤い光を放ち、ブルーディスティニーを蹴り飛ばして立ち上がった。
巨大ながらも最適化された動きにより、その機動力は飛躍的に高まっている。二本のビームサーベルがリリアンのブルーディスティニーを襲った。
「……っ」
「機体性能が違うんですわよ!!」
ブルーディスティニーの両腕を切り飛ばすアンジェリカ。逃げようとするリリアンだが、ブルーディスティニーの片足をインコムが撃ち抜く。
「やるわね……」
「終わりですわ!!」
「ごめんなさい、しくじったわアンディ」
リフレクターインコムを展開。ビームスマートガンはこのリフレクターインコムにより不規則な動きながら予想もできない軌道でブルーディスティニー1号機のコックピットを貫いた、
リリアン、撃沈。
「まずはキミを狩ろうか!」
ヒメカのクシャトリヤに迫るアンディのラゴゥ。ヒメカは「え、えーと……えぇ?」と困惑しながらも、なんとか反撃しなければとレバーを捻る。
発射されたファンネルがラゴゥを囲むが、アンディはビームサーベルとビームキャノンを巧みに使い、それをことごとく撃ち落とした。
「どうしたら……」
このままではやられてしまう。別に、彼女は元々このゲームをやる気ではなかった。ここで負けたからといって何か嫌な思いをするという事はないだろう。
しかし、楽しそうにプレイしていた姉やアンジェリカを見て───その気持ちが理解できない訳ではなかった。
「───ふぁんねる!」
もう一度ファンネルを展開。ラゴゥに向けて一斉に放つ。
「素人のファンネルは単調だ、交わすのも容易い!」
ファンネル等のオールレンジ攻撃は使用そのものが難しい物だ。しかしこのGBNはゲームであり、ある程度システムに任せて武器を使う事も出来る。
その代わり、システム任せの攻撃は単調で避けやすい。アンディは回避運動を取りつつ、クシャトリヤに接近しようとした───その時。
「何!?」
ラゴゥの眼前を四つの閃光がまるで網のように阻んだ。
もし気が付くのが少し遅れてそのまま直進していれば、今頃ラゴゥはバラバラになっていただろう。
「マニュアルだと?」
「もう少し!」
再びファンネルを放つヒメカ。アンディは「これは驚いた」と不敵に笑った。
「だが!!」
ファンネルの猛攻を交わし、遂にクシャトリヤに肉薄したラゴゥはビームサーベルでクシャトリヤを二つに分ける。
遅れて辿り着いたExーSガンダムもライフルで撃ち落とし、激闘の末相方を失うもこのバトルに勝利したのはアンディだった。砂漠の犬は森林地帯に鎮座する。
「ご、ごめんなさいですわ……ヒメカちゃん」
「……ううん。……えーと、まぁ」
「?」
「楽しかったです」
ヒメカ、アンジェリカ、撃沈。
残りチーム、四。
生き残ったのは、リク・ユメチーム、ケイ、サラチーム、モモ・ノワールチーム、アンディチーム。計七人。
激闘は終局に向かっていた。