ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】 作:皇我リキ
ELダイバー。
フォース『ビルドダイバーズ』のサラをはじめとして、GBNでは稀に個を持つ電子生命体が誕生するという噂があった。
彼等は第二次有志連合戦以降、運営やビルドダイバーズの功績で培った技術により保護され守られてきている。
勿論、サラ以前にもELダイバーが誕生していた筈だ。
しかし、公式としてはその事実があったとしても───認めたくない物だろう。
彼等は救われなかったのだから。
「そのレイアって子は、ELダイバーだったって事か?」
「多分違う。話に聞くELダイバーや、今日居たサラちゃんってこを見る限り、レイアとは少し違った。……いや、本質は同じような物だったのかもしれないけどな」
タケシの質問にカルミアはそう答えた。
「レイアはゲーム内のデータではただのNPDだった。あの頃のログを俺達は何度か確認してるけど、どう考えてもそうは思えないが……俺達はNPDと会話をしていたとしか記録されてない」
その頃は何かのバグか何かだと、彼等は思っていたとカルミアは言う。
「……そのレイアっていうNPDが、この写真に写っていた女の子なんですね」
唐突にそう口を開いたのは、神妙そうな面持ちのナオコだった。
彼女の手には、一枚の写真が握られている。
その写真には赤い髪の女の子と、青年が一人写っていた。
「その写真……」
ケイスケ達はその写真に見覚えがある。
ニャムが彼等と仲間になった時、この写真に写っている男を探していると言っていたのを思い出した。
「……そゆことよ。ニャムちゃんの探してるお兄さん、それこそが俺達のリーダー。あのフォースアンチレッドのセイヤだ」
その事実にケイスケ達は頭を抱える。大切な仲間が探していた家族が、あのフォースアンチレッドのリーダーだったのだから。
「ちょっと待て。……その写真の赤い髪の女の子はさ、この前フォースフェスで見かけた時はただのNPDだった。何があったって言うんだよ」
目を細めてそう問い掛けるタケシ。カルミアは、彼の質問にこう話を続けた。
「レイアと出会ってから半年。……セイヤがGBNに復讐を誓った時の事を話そうか」
重々しい雰囲気で、彼は話し始める。それは五年前、彼らが彼女と出会い二ヶ月が経とうとしていた時の事───
☆ ☆ ☆
セイヤ達がレイアと出会い、二ヶ月が経とうとしていた。
彼女の存在は何かのバグで、いつか唐突に消える物だと───そんな単純な気持ちで片付けられる程の時間を一緒に過ごした訳ではない。
「皆ー! こっちこっち!」
「おい待てってレイア!」
初めはフォースネストに置いておける、珍しい置物感覚だったのは事実である。
だけど、彼女からは普通のNPDからは感じられない暖かさがあった。
「セイヤのがんぷらは凄いね。こんな所まで追いかけて来れるんだもん」
「対人レーダーが付いてるからな……って話じゃなくて、勝手に何処かに行こうとするなよ。皆が心配するだろ」
「あっはは、ごめんごめん」
吹き出すような笑顔を見るたびに、彼女がNPDである事を忘れそうになる。
「あのなぁ、本気で言ってるんだぞ」
いや、彼等にとってそんな事はどうでも良かったのかもしれない。
「大丈夫だよ、セイヤ。私は何処にも行ったりしない。私にはもう、セイヤ達の家にしか居場所はないから」
「レイア……。大丈夫だ。俺が、俺達がお前を守ってやるから」
NPDとしての彼女の居場所───すなわち、観光エリアは不正ツールを使ったプレイヤーに破壊されてしまった。
その観光エリアそのものは運営によって元通りに修復されたが、その時点でセイヤ達はおかしい事に気が付く。
エリアそのものは完全に元通りになっていた。そこにいたNPD達も一新され───レイアと同じ姿のNPDがそこに立っていたのである。
彼女はそれが怖くて、あのエリアに戻る事を拒んだ。
NPDが自分の意思でセイヤ達といる事を望んだのである。
「そもそもアレ、何だったのかねぇ」
「アレって、不正ツールを使っていたダイバーの事ですか?」
カルミアがそう呟いて、サトウは首を傾げながら頭の中にあの時の光景を思い浮かべた。
戦闘禁止エリアでの戦闘すら可能にする不正ツール。そのバグに巻き込まれたNPDのレイア。
初めの内はそうやって気になってはいたが、レイアが自分達の中で大切な存在になっていくにつれて彼等の中で彼女の事を詮索する者は居なくなる。
彼女が消えるのが、怖かったから。
「なんだなんだ? 何の騒ぎだ」
ある日の事。
フォースネストの外で、MS二機が起動する光景にカルミアは口を開いたまま首を傾げていた。
近くにいたレイアの肩を叩いて、彼は状況の説明を求める。
「えーと、ウエダ君がね。私とでーと? をしたいって言ったの。よく分からないけど、そうしたらセイヤが怒って」
「うわ、なにそれ青春?」
レイアから受けた説明にカルミアは表情を引き攣らせた。
フォース、ザ・レッドのメンバーの一人であるウエダというダイバーがどうやらレイアに詰め寄ったらしい。
セイヤの気持ちをカルミアは知らないが、現状を見る限り答えは一つである。
「青春だねぇ……。まぁ、良いんじゃない?」
「良いの?」
「良いの良いの」
何も知らなそうなレイアを見て溜め息を吐くが、彼は二人のガンプラが構えた所で視線をその先に戻した。
セイヤのZZと対峙するのは、ウエダのゲドラフである。
彼等ザ・レッドの機体は全てが赤く塗装されているか元々赤い機体だ。
赤く塗装されて、かつ改修も入れられているウエダのゲドラフが先に動く。
「リーダーばっかりレイアちゃんとイチャイチャしてずるいっすよ!」
「い、イチャイチャなんてしてねぇ!!」
「思ったよりも小っ恥ずかしいことしてるなぁ……」
二人の言い合いを聞きながら顔を赤くするカルミア。しかし、戦いが進むにつれて辺りでおかしな事が起き始めた。
「……なんだ?」
まるで空間がひび割れているかのような、視界が歪んでそこに別の空間が見える。
目の前に宇宙が現れたかと思えば、すぐにその光景は消えて別の場所で空間が割れた。
「バグ……?」
思い出したのはやはり、不正ツールを使って戦闘禁止エリアでバトルをしていたダイバー達の事。
しかし当たり前だがセイヤもウエダもそんな物は使っていない。
この場でバグの要因になるような物なんて、一つだけである。
「……レイア」
「……な、なんだろうこれ。私、どうしちゃったの?」
不安そうな表情。
彼女の身体は所々ノイズが走り、今にも消えそうで───
「───レイア!!」
それに気が付いたセイヤは、バトルを途中でやめて彼女に飛び掛かる勢いで抱き着いた。
それを見て文句を言うウエダでもない。
誰もが二人を見守ろうと視線を向けている。
「大丈夫か!!」
「え……あ、うん。あれ? 元通りになってる……」
しかしセイヤがバトルを辞めた途端、異変は消えていた。安堵するセイヤだが、カルミアは怪訝な表情を見せる。
安心していい問題ではない。
そもそも初めから分かっていたのだ。
彼女の存在そのものがおかしい物だと。
異変は続く。
決まってそれは、彼女の近くでバトルをする時に起こった。
時にはフォースバトルで相手のフォースを巻き込み、エリア一帯でバグが発生する事態にまで起こってしまう。
こうなれば、運営の対応は早かった。
「待ってくれ! レイアは普通のNPDなんかじゃない。ちゃんと感情があって……俺達の仲間なんだ!」
「そうです。普通のNPDではない。だから、危険なのですよ」
運営の一人が彼等に接触し、レイアを明け渡すように通告してくる。
彼女はバグを大きく抱え込んだNPDだ。
バグごと彼女を削除しなければ、GBNそのものに大きなバグを発生させかねない。
それは、一年前の第二次有志連合戦の発端ともなったサラと同じ理屈である。
それは正しい事だ。
レイアとサラに、大きな違いはなかったのだろう。
GBNで動くガンプラは、ビルダーが作り上げたガンプラをほぼ完璧にスキャンし、データとして転送した姿として構築されるものだ。
ほぼ───とは、その際百万分の一程の余剰データが生まれる事が確認されている為である。
そして、その余剰データが蓄積され生まれたのがサラ達───ELダイバーと呼ばれる電子生命体だ。
レイアという存在はその亜種ともいえる存在だったのかもしれない。
否、GBNのNPDへ宿った余剰データの集まりであるバグとして彼女達を見るのなら───レイアのような存在がELダイバーの先祖だという考えも出来る。
彼女達に大きな違いはなかった筈だ。
第二次有志連合戦。
サラが救われた理由は、きっと思いの力。それは殆ど奇跡だと言っていい。
その影に隠れ、救われなかったELダイバーの命やレイアのような存在がいたとしてもなにもおかしくない話だろう。
「このNPDのデータを削除しろ」
「ごめんね、セイヤ」
「離せ、離せよ! 離せぇ!! レイアぁ!!」
彼等は救えなかった。
「辞めろぉぉおおお!!!!」
俺達は救えなかったと、カルミアはそう言って話を終える。
消えたデータは戻ることは無い。
同じ姿のNPDを見付けたとしても、そこにレイアがいる訳ではないのだ。
彼女は死んだも同じ。
セイヤはGBNにレイアを殺されたと、この世界を恨むようになり───復讐に囚われる。
そうして同じくガンプラを、ガンダムを、GBNを恨む者達を集めてGBNへの復讐を始めたのだ。
これが、キムラ・セイヤという男が辿った道である。
この作品のプロットを立てている時はまだビルドダイバーズre:RISEでイヴの事が不明瞭だったので、まさかあんなことになっていようとは思ってなかったんですよ(言い訳)。それでも上手く組み込んでいきます。
読了ありがとうございました。次回もお楽しみに。