ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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第八章──新しい機体【フォースネストとELダイバー】
新しい力


 ベッドに倒れ込む。

 

 

「───ま、間に合ったぁ」

 深い溜息を吐きながら、少年───ケイスケは回収したガンプラを持ち上げた。

 

「ケー君、大丈夫?」

「大丈夫。正直ギリギリだし、色々他にもしたかったけどとりあえず完成だ。……ユメカ」

 ケイスケは立ち上がって、車椅子に乗った少女に手に持っていたガンプラともう一つ───机の上にあった紙袋を手渡す。

 少女───ユメカは首を傾げて「これは?」とケイスケの顔を覗き込んだ。

 

 

「開けてみてくれ」

 彼のいう通りに紙袋を開けて、中に入っていたケースを取り出すユメ。

 そのケースの中には、見覚えのあるネックレスが入っている。

 

「……これ」

「えーと、プレゼント。オフ会の時にさ、お土産売り場に売ってたんだ。GBNでも気に入ってたようだから、どうかなって」

 それはユメカがGBNで付けている複翼機のアクセサリーと同じ物で、ガンダムUCのリディがお守りにしていた物だ。

 

 ユメカがGBNで初めてチャレンジしたミッション。その報酬でプレゼントされたアクセサリー。

 

 

 現実でも同じ物をプレゼントされて、ユメカは大事そうにガンプラとネックレスを抱き抱える。

 

 

 

「その機体と一緒に、ユメカの力になったら良いなって」

「うん。うんうん。……ありがとう、ケー君」

 日の光よりも眩しい笑顔に満足気なケイスケは、一度大きく息を吸いながら目を閉じた。

 

 

「行こう、GBNに」

「うん!」

 二人は並んでダイバーギアを起動する。無意識に手が伸びるユメカの胸元には、複翼機のアクセサリー。

 

 二人はGBNの世界へと飛び立った。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 不貞腐れた表情で、カルミアは頬杖着いて溜息を吐く。

 

 

 観戦エリア。

 今から始まるバトルを見るのは、彼一人だ。

 

「おじさんだけ仲間外れにしなくても良いじゃないの」

 そう口を漏らしながら、カルミアはついさっきの事を思い出す。

 

 

「まさか一週間ログインしてこないなんて思いませんでしたっすよ」

「すみません、やりたい事が多くて。でも、もう完成したんで」

「完成というと……。もしかして新しいガンプラっすか?」

 オフ会から一週間後の週末。この一週間ケイとユメはGBNにログインしてこなかった。

 その間は、ロックと他二人でミッションをこなすなりなんなりとしていたらしい。

 

「はい。だから、さっそくバトルしてみたくて」

 身を乗り出してそう言うユメ。早く機体に乗りたいのか、ウズウズしてバタバタと足踏みをしている。

 

 

「と、なるとチーム分けはユメちゃんとケイ殿が一緒の方が良いっすよね」

「相手どうする? 流石に三対二はなしだろ」

「ジャンケンしよ、ジャンケン」

 ロックの言葉に意気揚々と腕を鳴らしながらジャンケンを提案するカルミア。

 

 

 結果はこの通り。

 

 

「あっち向いてホイにしておけば良かったわ」

 大人気ない言葉を吐きながらも、カルミアはこれから観るバトルを楽しみにモニターに視線を映した。

 

「これは───」

 バトルが始まる。

 

 

 

「今回はキュリオスか、ニャムさん」

「前回ロック氏と組んだ時はエクシアだったので、今回はこの機体で参戦させてもらうっす!」

 ロックのデュナメスHellの隣に立つのは、デュナメスと同じくソレスタルビーイングの機体として活躍したキュリオスだ。

 オレンジ色が特徴的な可変機で、火力には乏しいが機動力と遊撃力に秀でた機体である。

 

 ステージは軍事基地周辺。

 建物も多いが視界は開けている戦いやすいステージだ。ガンダムUCのエピソード4を思い出させる。

 

 

「ロック氏はユメちゃんやケイ殿のガンプラの進捗は知ってるんすか?」

「いんや、俺にも内緒でって隠されてた。なんか思い出したら腹立ってきたしぶちのめす」

「あ、あはは、お手柔らかに……。とはいえ、手を抜くのも失礼っすからね。本気で行くっすよ」

 言いながら、ニャムはキュリオスを航空機形態に変形させてスラスターを吹かせた。

 

 先手必勝。そして、彼女の領域である空に戦場を移す。

 

 

「───さて、どうくるか」

「ニャムさん来たぞ!」

 レーダーに映る敵影。数は一つで、速度的にMSだと二人は踏んだ。

 先行してくるならケイスケだろう。初撃を先行してくるMSに集中するなら───と、ロックは予めニャムと話していた作戦通りに足を止めた。

 

 腐ってもデュナメスは狙撃機体である。ロックとて狙撃が絶対に敵に擦りもしない訳でもない。

 その狙撃が当たろうが外れようが、相手はなんらかのアクションを起こさなければならない。その隙を突くだけの機動力をキュリオスは持ち合わせている。

 

 

「───ロック・リバー、目標を狙い撃つぜぇ!!」

 スコープを覗くロック。

 

 見慣れない機体。しかし、やはりMSだ。

 ストライクではない。だが、背中にはツインドライヴを装備したダブルオーストライカー。

 

 一見ストライクBondの改修機だと互角する。

 しかし、引き金を引く直前。ありえない事が起きて彼は固まってしまった。

 

 

「変形した!?」

 スコープに映るMSが変形する。ダブルオーストライカーを装備したまま。

 

 まるでその姿は───

 

 

「───スカイグラスパー!?」

 引き金を引く頃には機体はスコープにも映っていなかった。

 

 

「下手くそだと思ってはいたっすけどそこまでとは!!」

「いやそうじゃないんだって!!」

「え? 嘘ぉ!?」

 急接近。

 

 MSだと思っていた敵影が、ありえない速度でキュリオスに近付いてくる。

 

 

 白と空色のシンプルなカラーリング。

 スラスターや肩にストライカーパックを装備出来るよう改造された、可変機。

 

 

 

「───これが私の、デルタグラスパーだぁ!!」

 バレルロール。

 

 前方にシールドミサイルでキュリオスを牽制しながら、すれ違いざまに改修されたダブルオーストライカーのGNソードIIIを展開。キュリオスの翼を切り裂いた。

 

 

「なんとぉぉ!?」

「まだ!!」

 キュリオスを通り過ぎて、直ぐにユメは機体をMS形態に変形させる。翼を切り裂かれバランスを崩すキュリオスに向けて逆噴射で一気に迫った。

 

 GNドライヴによる機動力。緑色の粒子が置いていかれる程の接近速度。

 ニャムも機体を変形させて盾を構えるのがやっとである。

 

 

「……っ、この!!」

 なんとかユメを弾き飛ばすニャム。

 そうしてやっと、彼女の機体の全貌を知る事が出来た。

 

 

「───デルタプラス」

 その機体の正体。

 

「うん。あの大会で貰ったデルタプラスを、この一週間でケー君にここまで仕上げて貰ったんだ」

 真っ直ぐに前を向くユメ。

 

 

 白と空色のシンプルなカラーリング。

 ダブルオーストライカーを装備したデルタプラス。

 

 これが、彼女の新しい力である。

 

 

「ストライカーパックを装備出来るようにしたデルタプラス……。考えたっすねぇ!」

 それはユメカがケイスケに頼んだ事だった。

 

 

 

「───このデルタプラスを改造してくれ?」

「うん。あのね、私も皆と前で戦いたいんだ。勿論、私はケー君の手伝いをした方が良いって分かってる。だけど、もう空を楽しんでるだけじゃなくて……ガンプラを、GBNを楽しみたくなっちゃったから」

 そんな彼女の言葉はケイスケは強く頷く。

 

 どうしてもという彼女の頼みで、ストライカーパックを装備してケイのストライクBondに換装の選択肢を増やすというコンセプトだけは残し。

 このデルタグラスパーだけでもしっかりと戦えるように、装備したストライカーパックを自分で最大限使う事も考慮して作られた機体だ。

 

 ストライカーパックを装備する為のギミックには、ユメカがヒメカと出掛けた時に買ってカルミアのトラックに轢かれてしまったベアッガイの残骸も使っている。

 

 

 デルタグラスパー。これが今のケイスケと、ユメカの想いが全て込められた機体だ。

 

 

 

「───最高っすよ。……こんなに、熱くなれるんすからね!!」

 ビームサーベルを抜きながらデルタグラスパーにライフルを向けるニャム。同時にミサイルコンテナを展開し、ミサイルの雨を降らせる。

 

「うわ!?」

 しかし、そのミサイルの雨は遠距離射撃によってほとんど消し炭にされた。

 

 

「ケイスケか」

 スコープを覗くロック。その先で、エクリプスストライカーを装備したケイのストライクBondが砲身から煙を漏らしている。

 

「お前は何も変わってないじゃんかよ。ふ、良いぜ! 俺はお前を───」

「答えてくれ、エクリプス」

 突貫しようとするロック。その正面で、ケイのストライクBondが淡く光を放ち始めた。

 

 

「ダメっす! ロック氏!!」

「な!? まさか!?」

「───極限進化!!」

 光に包まれるストライクBond。その光の中から、巨大な砲身がデュナメスHellに向けられる。

 

 

「カルネージ・ストライカー!!」

 放たれる光。規格外拠点攻撃兵装───読んで文字の如く、それがこの武装の威力を物語っていた。

 

 直線上にあった建物は全て消し炭になる。

 

 

「……おもしれぇ」

 なんとか左手だけの損傷で撃破を回避したロックは不敵に笑っていた。

 

 新しい機体。新しい装備。

 仲間の成長に、好敵手の出現に、武者振るいが止まらない。

 

 

「勝負はこれからだぜお前らぁぁあああ!!」

「でもとりあえず撤退っすよ!!」

「なんでぇぇえええ!?」

 突如変形したキュリオスに連れ去られるデュナメスHell。ケイは「ニャムさんめ」と苦笑するが、そう簡単に終わっても面白くないだろう。

 

 第一ウェーブとして見るならキュリオスとデュナメス共に中破。こちらは無損害で、一歩リードだ。

 

 

「ケー君」

「追い掛けなくていい。逃げられたなら逃げられたでこっちも立て直す時間がある」

 展開したカルネージ・ストライカーを納めるエクリプスストライクBond。

 空から変形して着地したらデルタグラスパーと、まるで兄弟機のように並ぶ二機を眺めながらカルミアは不敵に笑う。

 

 

 これまで偵察や後ろで援護ばかりしていたユメが、あのニャムに噛み付いたのだ。見ているだけで面白かったが、だからこそ戦場に立たないのがもどかしい。

 

 

「───さて、どうなるか」

 体制を立て直す両者。先に仕掛けるのはどちらか。

 

 見守る瞳の先で、MSが変形する。

 

 

 戦闘の火蓋は再び切って落とされた。




久し振りにオリジナルガンプラの登場。ビルド系はこうじゃなきゃね。ユメの新機体の活躍にご期待下さい。
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