ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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フォースネスト

 空を駆ける。

 

 

 ユメのデルタグラスパーは敵MSの真横を突っ切り、変形しながら機体をひっくり返した。

 追ってくる機体に向けるのは、カルネージ・ストライカー。

 

 エクリプスストライカーを装備したエクリプスデルタグラスパー。その銃口が、敵の機体を捉える。

 

 

「逃がすか。くらえ必殺! ジャスティスソ───どわぁぁあああ!?」

「いっけぇ!!」

 機動力で圧倒し、強力な砲撃で敵のジャスティスの改修機を破壊するユメ。

 

 それが敵フォース最後の一機で、デルタグラスパーの初フォースバトルは勝利に幕を閉じるのであった。

 

 

「カザミ、お前が突っ込むからだぞ!」

「お前なんかクビだクビ!」

「な、お、俺が悪いのかよ!?」

 雰囲気の悪い相手フォースを苦笑いしながら眺めるニャムの隣で、ユメは確かな手応えを感じる。

 

 ケイが作ってくれたデルタグラスパーは、確かにユメの手に馴染め始めていた。

 

 

「やるじゃねーかユメ」

「ありがとう、タケシ君」

「ロックな。それにしても、相手のジャスティス。あれは中々酷かったな」

 戦闘を思い出しながら、ロックは横目で相手フォースのメンバーを眺めながらそう言う。

 

 

 バトル開始直後、一人で突撃してきたジャスティスは孤立して足止めされ───その間に仲間は撃破。

 最後にユメとの一騎打ちで、こちらの損害はほぼほぼなく試合は幕を閉じた。

 

 フォースReBondが成長しているというのもあるが、明らかに相手側に敗因がいたのも確かである。

 

 

「まー、あーいうのはどこかで一皮剥けたら本当に強くなるタイプだろうね。気の合う仲間に巡り会えれば、良いと思うよ。……おじさんみたいに」

「連携という点では、ジブン達もかなり成長してきたっすね。ユメちゃんの戦力大幅アップで、これからもなんだか楽しそうっすよ」

「わ、私なんて全然。……でも、ちゃんと前に出て戦うって楽しいなって」

 満面の笑みを見せるユメ。

 

 それは、ケイ達が見たかった彼女の笑顔だった。

 

 

 でもここには、アオトが居ない。

 まだ彼らは、進まなければならないのである。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

「フォースネスト、ですか?」

 首を横に傾ける幼馴染み三人。

 

 

 ある日のGBN。

 カルミアの提案でやって来たのは、バトルやミッションの受付ではなくとある店の前だった。

 

「そそ、フォースのお家。最近ミッションやらバトルやらも調子良くて沢山お金も溜まって来たじゃない? だから、そろそろ買っても良いんじゃないかなってね」

 フォースネスト。

 

 各フォースが所有できる基地のような物で、フォースの仲間なら自由に出入りが出来る家のようなものでもある。

 

 

 部屋に集まって作戦会議を開いたり、お茶会を開いたり。MSを並べてメンテナンスしたりと、様々な用途でも使えるGBNを楽しむ要素の一つだ。

 

 

「良いっすねぇ! どうせなら大きくて素敵な家にして、なんならメフィストフェレスなんかとアライアンスを組んでみるのも面白いっすよ」

「あらいあんす?」

「フォース同士の同盟みたいなもんっすよ。お互いのフォースネストに入れるようになったり、ミッション共有とか、色々な事が出来る様になるっす」

「面白そう!」

 カルミアやニャムの説明で、三人もフォースネストに興味を持ち始める。そんな訳で今日は自分達のフォースネストを探す事に───

 

 

 

「───思ったより高いな」

 しかし、現実はそう甘くはなかった。

 

 フォースネストを売り出す不動産屋さんのようなお店で試しに様々な物件を眺めるReBondのメンバーたち。

 気になる物件はいくつもあるのだが、どれも手持ちのビルドコインでは手が届かずにもどかしい気持ちが五人を包み込む。

 

 

「あれ、これだけちょっと安い」

「何か見つけたのか? ユメ」

「お前これ、幽霊物件とか書いてあるぞ」

 そんな中でユメが見つけたのは、自分達の手持ちのビルドコインで買えそうな一件のフォースネストだった。

 

 そのフォースネストは、山奥の小屋のような見た目だが内装はしっかりと基地になっている隠れ家のような場所である。

 少年少女特有の感覚はその場所を気にいるだろうが、注釈として()()()()なんて書いてあるものだからロックは怪訝な表情を見せた。

 

 

「ガンダムで幽霊ってなんだよ。ニュータイプかよ」

「死者の怨念とか魂とか、ガンダムはSFっすけどそういう所も触れてはいるっすからね。後はクロスボーンガンダムゴーストとか? しかしGBNで幽霊物件と言われてもピンとこないものですが」

 ロックとニャムがそうやって話し合っている間に、カルミアもその物件を確認しようとユメの見ている資料を覗き見る。

 

 その資料に載っているフォースネストの写真を見て、カルミアは目を見開いて固まった。

 

 

「カルミアさん?」

「……これ、セイヤと俺達が昔使ってたフォースネストだ」

 彼のその一言で、あまりにも気が早くフォースネストの購入が決まる。

 カルミア曰く「どんな物件か確認してからでも良くない?」だったが、他の四人は経済的な問題と興味も相まって即決だった。

 

 

 

 購入したフォースネストに移動したカルミアは、勝手知ったる家のようにフォースネストの中を四人に案内する。

 一階中央には応接室と大きなリビング。二階には何個か部屋があって、会議室と───その奥には建物の裏の山の中に繋がる通路があった。その奥が、MSの格納庫になっている。

 

 

「───と、まぁ……こんな感じか。しかし、幽霊ねぇ」

 部屋を紹介して回ったカルミアは、会議室の椅子に座って頬杖を付いた。

 それに習ってケイ達も机に並んでいく。

 

 ついさっきまでフォースネストを探検しながら、自分の部屋はここだのメフィストフェレスの面々に紹介したいだの騒いでいた訳だが───それらしい(幽霊)の影は特になかった。

 

 

「何もないなら何もないで良いんじゃないっすかね? 普通より安くこんな素敵なフォースネストを手に入れる事も出来たんですから」

「ならなんで何もないのに普通より安くこのフォースネストが売ってたのかねぇ」

「それは……なんとも言えないっすけど」

 カルミアが引っ掛かるのは、そもそもこのフォースネストは自分が使っていたフォースネストだったというのもあるだろう。

 勝手知ったるフォースネストは以前と何も変わらない。だというのに幽霊物件扱いだ。何かない方がおかしいだろう。

 

 

「幽霊といえばトイレとか?」

「GBNにトイレはない」

「裏山!」

「ここが裏山みたいなもんだけどな」

 ユメの発言にツッコミを入れるケイだが、ふと「そういえば」と思い出したようにカルミアに向き直った。

 

 

「まだMSの格納庫は見てないですよね」

「それもそうねぇ。案内するぜ」

 ケイの言葉に立ち上がるカルミア。会議室から更に奥、山の中に続く通路を通ると山を切り抜いて作られた形の基地のような施設が視界に入り込む。

 

 MSが十機は並びそうな格納庫に、四人は漠然と高い天井を見上げる事しか出来なかった。

 

 

「どうよ、せっかくだしMSも並べてみる?」

「良いっすね!」

「出ろー!! ガンダ──ーム!!」

 カルミアの提案に同意するニャムの横で、指を鳴らしながらそう言うロック。

 格納庫の一角に彼のデュナメスHellが待機状態で現れ、GNスナイパーライフル等の武器が近くに並んでいく様は見応えがある。

 

 

 続けてカルミアのレッドウルフ、ユメのデルタグラスパー、ケイのストライクBondが並んで格納庫に現れた。ユメのデルタもケイのストライクも、ストライカーパックは非装備の待機状態である。

 さらにニャムが今日持って来た機体───Zガンダムも並んで格納庫は一気に賑やかになった。幽霊騒動なんて話はやっぱり信じられない。

 

 

「ニャムさんの機体は、なんだか不思議だけど親近感が湧くなぁ」

「Zガンダム。デルタプラスはこのZや同時期に設計された百式等、Z計画として開発が進められたMSの一員なんすよ」

「兄弟機ってこと?」

「そんな感じっすね。Zはかなり歳の離れた従兄弟のお兄さんって感じっすけど」

 ニャムからMSの開発歴を聞くユメ。ケイ達男性人よりも興味抱いて聞いているのは、彼女が元々戦闘機等の開発歴が好きだったからだろう。

 

 

「───と、まぁ、そんな感じで。デルタプラスはδ計画本来の可変機として再設計され、量産を前提にした試作機として……ん?」

「どうかしたんですか? ニャムさん」

 話の途中、ニャムは格納庫の裏で何かが動く影を見付けて首を傾げた。

 

「何か今、人影が……」

「そ、それって……」

 青ざめるユメ。ケイもロックもカルミアも、ニャムの背後にいるため彼女の視界の中で動くのは自分だけしかいない筈である。

 

 

 今になってやっと怖くなって来たユメは、ニャムに抱き着いて後ろを見ないように震え始めた。

 

 

「ま、まさかぁ……ジブンの見間違いっすよ。あはははは……ヤバイ、絶対余計な事言ったっすよジブン。気が付かなければ良い事もあるもんですよね」

「どうかしたのか? ん? 今なんか動いたぞ」

 二人の気も知らないで、何かが動いた影を指差すロック。その直後「アハッ」と人の笑う声のような音が格納庫に木霊する。

 

「「きゃぁぁぁあああ!!!」」

 悲鳴を上げる女子二人。抱き合う二人を尻目に、ロックは動いた影を視線で追った。

 

 

「なんか、MSデッキに登っていったぞ?」

「ゆ、ゆ、ゆゆゆ、幽霊が!?」

「本当に居たんですか!? なんですか!? バグですか!? 私もう嫌ですよ!?」

「落ち着いて下さいニャムさん。素が出てます」

 そう言うケイだが、特に幽霊が苦手じゃない訳でもない。ただ、やはりGBNで幽霊なんてのはおかしな話である。

 

 しかしこのフォースネストは設定上使用中のフォースかアライアンスを組んだフォースのメンバーしか入れない筈だ。

 そうでないならニャムの言う通り、何かのバグだろう。

 

 ばぐというと、最近聞いた話を思い出すが───

 

 

 

「───レイア」

 そんな言葉を漏らしたのは、ロックの指差す先に視線を移したカルミアだった。

 

 視界に一瞬映る赤い髪。

 ありえない話である。ただ、その髪の色を見て彼の口からは自然とそんな言葉が漏れてしまったのだ。

 

 

「赤い髪の幽霊!?」

「私無理です! このフォースネストはクーリングオフしましょう!!」

「なぁ、なんかアレ……ニャムさんの機体に乗ろうとしてね?」

「え?」

 悲鳴をあげていたニャムも、ロックの言葉で我に返って視線を上げる。

 その先では、今まさにショートカットの赤い髪の少女がZガンダムに乗り込もうとしていた。

 

 

「ちょっとぉ!?」

「良い機体だね! ボクに頂戴! 良いよね?」

 なんて言って、幽霊(?)はニャムのZガンダムに乗り込む。これにはニャムも恐怖を通り越して唖然とするしかなかった。

 

 

「ふふん、愛情込められて作られたんだ。でもせっかくなんだから、その性能生かしてみようよ!」

 少女はそう言いながらZガンダムを起動させ、周りの武器を何個か手に持って出入り口にライフルを向ける。

 

「危ないよー」

「いや危ないじゃなくて!? それ私の機体です!!」

 ニャムの主張虚しく、発射されたライフルは壁を吹き飛ばして出入り口を作り上げた。

 そうして彼女のZガンダムは、変形して一気に基地を離れていく。

 

 何者かによって奪取された機体。ガンダムならよくある事だ。

 しかし、これはGBNである。

 

 

 

「なんでこんな事にぃぃいいい!?」

「良いから追い掛けるぞニャムさん!」

「いやでも私の機体取られちゃってますよ!?」

「俺のに乗れ! あと素が出てる!」

 ニャムの手を引っ張るロック。その後ろから二人を追い掛けるように自分の機体に乗ろうとするケイとユメだが、ケイは唖然として固まってしまっているカルミアを見て彼に「カルミアさん?」と声を掛けた。

 

「レイア……いや、そんな訳がないか。お、おう! おじさんも追い掛けるけど。……おじさんの機体は足が遅くていけねぇ」

「私とケイ君で運ぼう。なんだかよく分からないけど、カルミアさんの力は必要だと思う」

「そうだな。ユメ、俺はクロスボーンストライカーを使う。お前はダブルオーストライカーだ」

「分かった!」

 短く会話を済ませて機体に乗り込む三人。

 

 

 ケイのストライクBondはX字のスラスターに加えてABCマント───ではなく、追加装甲フルクロスを装備。武装もピーコックスマッシャーとムラマサ・ブラスターと新たに新調したクロスボーンストライクBondの新たな姿である。

 ユメのデルタグラスパーにはダブルオーストライカーを装備。GNドライヴに加えGNソードIIとIIIを装備した接近専用の換装だ。

 

 クロスボーンのスラスターとユメの変形機構による水力で、カルミアのレッドウルフをなんとか持ち上げてZガンダムを追いかける。

 

 

 

 

 そんな五人の真下で、長い黒髪の少女が目を細めて上空を通り過ぎる機体を眺めていた。

 

「……遅かったか。しかし、これはまずい」

 そう言った少女は、自らの傍に鎮座している巨大な機体に乗り込む。円盤形の巨大な頭部と脚部に不釣り合いな腕の付いた不思議な形の機体だ。

 

 巨大な脚部を活かし、その機体はジャンプしてから五機を追いかけるように走行する。

 

 

 奇妙な幽霊との追いかけっこが始まるのであった。




ガンダムビルドリアルが始まりましたね。青春って感じがして好きです。
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