ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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ELダイバー

 とある酒場に、一人のダイバーが腰掛けた。

 

 

「───それで、私に頼みたい事とは?」

 綺麗な黒髪に白のジャケットとコートを着た少女は、腰掛けた先で立つ()()()に視線を向ける。

 

「いらっしゃい、メイちゃん。そうねぇ、あなたにこの子を探して欲しいのよ」

 マギーはメイと呼ばれた少女に一枚の写真を見せながらそう口を開いた。

 

 

「……彼女は?」

 写真には赤い髪の少女が、ボヤけた状態で写っている。メイはこの少女に見覚えはないようだ。

 

 

「あなたの妹に当たる子よ。まだ保護出来ていないEL───メイちゃん?」

 話の途中で立ち上がるメイに驚くマギー。しかし、メイは写真だけ手に取ると店から出て首だけをマギーに向ける。

 

「次の私のミッションだな、承知した。情報を集めて来る」

「もぅ、せっかちなんだから」

 店の扉が閉まって、マギーは我が子でも見るようにその奥に視線を向けた。

 

 

 長くて黒い髪が、風に靡いて窓から映る。

 

 

「頼んだわよ、メイ」

 コンソールパネルに映る一人の少女の写真。その写真に写っていたのは───

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

「待てやごらぁぁぁあああ!!」

 怒号を上げるニャム。しかし、彼女の機体は謎の少女に盗まれていてニャムは何も出来ない状態だ。

 そんな彼女を乗せてデュナメスHellを駆るロックは、半目で「ニャムさんうるせぇ」とボヤく。

 

 

「流石ニャムさんの作った機体だね、全然追いつけないや」

「呑気に言ってる場合じゃないけどな」

「おじさんが重いばかりにすまんねぇ」

 その背後から着いていくユメとケイとカルミアだが、レッドウルフを引いているというのもあって距離が縮まる様子がなかった。

 

 このまま追い掛けるのがやっとだが、それはそうとZを盗んだ犯人の意図が見えない。

 そもそも何故フォースネストに入り込んでいたのか、幽霊物件の話も含めて分からない事だらけである。

 

 

「追いかけてくる。ふーん、結構しつこいね。……なら」

 悩んでいたのも束の間、突然Zを変形させてひっくり返りライフルをロック達に向ける謎の幽霊。

 

「やっちゃうよ!」

「こいつ、やろうってか!?」

 反射的にライフルを構えるロック。同時に放たれたZとデュナメスのライフルは、すれ違い───デュナメスの頭だけを貫いた。

 

 ロックの放ったライフルは何もない空を突き進む。

 

 

「ロック氏の下手くそぉ!!」

「面と向かって言わないで!? 俺も傷付くから!!」

 頭部を吹き飛ばされ落下するデュナメスHell。続いて構えられたZのライフルに、ユメとケイはカルミアを地面に放り投げて散開した。

 

 というのも、カルミアがそう指示した為である。

 勿論、狙われるのは落下するレッドウルフだ。Zを駆る謎の幽霊は、舌を巻きながらレッドウルフに銃口を向ける。

 

 

「おいお前! レイアなのか!!」

「……レイア?」

 しかし、突然通信が入ってきて謎の幽霊は動きを止めた。モニターに映るカルミアの顔。同じくカルミアのモニターにも、赤い髪の少女が映る。

 

「……違うのか」

 モニターに映るのは確かに赤い髪の少女だ。翡翠色の瞳はどこか思い出の中の少女に似ているが、思い出の中の少女よりも髪は短くて顔は幼い。

 

 

「誰だか知らないけど、こうしちゃうよ!」

 放たれるライフル。カルミアは反射的にビームハンドを飛ばし、それを盾にしてビームライフルを防ぐ。

 

 

「流石ニャムちゃんの作った機体だこと───何!?」

「ボクと遊んでくれるのかな!」

 爆煙の中から、ビームサーベルを構えて突進して来るZガンダム。

 カルミアもビームサーベルで応戦するが、自由落下中のレッドウルフでは受け止めるのがやっとだ。

 

 

「カルミアさん!」

「自由落下というのは言うほど自由ではないんだよな……っ!」

 そのまま地面に叩き付けられるギリギリの所で、カルミアは腰のサブアームを展開───Zを掴んで体制をひっくり返す。

 

「悪いがクッションになってもらおうかねぇ」

「やるじゃん! でも!」

 腕部からグレネードを発射し、レッドウルフからの拘束を逃れるZガンダム。そのまま変形したZに逃げられたカルミアは、地面に叩き付けられてしまった。

 

 

「タケシ君とカルミアさんがこんな簡単に……」

「ユメ、来るぞ!」

 変形したZに背後を取られる。ユメは機体をMS形態に変形しながら、ケイと一緒に機体をひっくり返した。

 

「あなたは何者なの……?」

「ボク? さぁ、ボクはボクだよ。ただ、遊びたいだけ! このガンプラも、君達のガンプラもそう言ってるよ!」

 不思議な事を言う少女は、機体をMS形態に変形させてライフルを放つ。

 フルクロスでビームを受け止めたケイは、ムラマサ・ブラスターを展開。機動力を活かして一気にZに肉薄した。

 

「貰った!」

「早いねぇ!」

「なんだ!?」

 しかし、突然Zを淡い光が包み込み始める。抜き放ったビームサーベルは、機体よりも大きくなる程に出力を上げていた。

 

 

「え!? 何!? チート!?」

「バイオセンサーっす。ジブンでも手が付けられない能力なのに!」

「くそ!」

 振り下ろされるビームサーベルをムラマサ・ブラスターで受け止めようとするケイ。しかし、あまりにもパワーが違い過ぎる。

 ユメもGNソードIIIを展開してケイを守ろうと加勢に入った。

 

 

「ふふん、どんなもんだ! 凄いだろ!」

「遊びたいって言ってたよね、あなた。どういう事? ガンプラがそう言ってるって」

 ユメは少女が言っていた言葉を思い出す。

 

 ただ、遊びたいだけ。このガンプラも、君達のガンプラもそう言ってるよ。

 まるでガンプラの声でも聞こえているような台詞だ。そう思って、ユメとケイはとある一人の少女の事を思い出す。

 

 

「「EL───」」

「貰ったぜぇぇええ!!」

 突如、トランザムしたデュナメスHellが跳んできてZガンダムの背後を取った。構えられたビームサイズ。少女は驚いて振り向こうとするが、既に遅い。

 

「なんだか知らんがとりあえず落とす!」

「ジブンのガンプラぁぁ!」

「オラ───」

 振り下ろされようとするビームサーベル。しかし、その刃が届こうとした瞬間、どこからか放たれたビームにデュナメスHellは消しとばされる。

 

 

「「えぇぇえええ!?」」

 悲鳴と共に消え去るデュナメスとロック達。

 

 その隙に、Zガンダムは変形して逃げようとスラスターを全力で吹かした。

 

 

「逃すか……って、なに!?」

 逃げようとするZガンダムに地上からライフルを向けるカルミア。しかし、そんなカルミアの機体を何かが蹴り飛ばす。

 地面を転がるレッドウルフ。何が起きたと地上に視線を送るユメとケイ。

 

 二人の視線の先では、カルミアの機体を蹴り飛ばしたと思える巨大な脚を持つ機体が鎮座していた。

 

 

「何あれ?」

 その機体は円盤状の胴体に身体の何倍もある足と、小さな腕の着いた奇妙な機体である。

 

「少し小さいけど、ウォドムか」

 その機体を見て、ケイはそんな言葉を漏らした。

 

 

 ウォドム。

 ∀ガンダムに登場する重MSである。

 

 その改修型か。本来のウォドムよりも小さな姿をしているが、それでもカルミアのレッドウルフより巨大な身体は三人を威圧するのに充分だった。

 その隙に、少女はZガンダムに乗ったまま空に消えてしまう。

 

 追い掛けるのを諦めた三人は、とにかく乱入したウォドムをどうしたものかと頭を悩ませていた。

 ロックとカルミアへの攻撃以降、ウォドムが動く気配はない。これは困ると、カルミアはウォドムのパイロットに通信で呼び掛ける。

 

 

「おじさん達は盗まれたMSを追っていただけなんだけどねぇ。どうして攻撃されなきゃいけないのよ。……あんた、あの女の子の仲間か?」

「どうしてGBNでMSを奪うなんて事するんですか!」

 続くユメの言葉に、通信を返してきたウォドムのパイロットはこう答えた。

 

「攻撃しておいて信じて貰おうというのもおかしな話かもしれないが、私は彼女の仲間ではない」

 モニターに映る綺麗な黒髪の少女。白いジャケットに、スーツを着たその少女は、機体から降りて両手を上げる。

 

 そんな彼女を見て、三人も機体を降りて少女の前に立った。

 同時にアバターがリスポーン(復活)したニャムとロックも、黒い髪の少女に詰め寄る。

 

 

「よくも俺のデュナメスHellを吹き飛ばしてくれたな!」

「まぁまぁ、タケシ君。とりあえず落ち着いて話を聞こう?」

「ロックな!?」

 いつものやり取りの後、少しだけ間を置いて黒髪の少女はこう口を開いた。

 

 

「自己紹介が遅れたな。……私はメイ。さっきあなた達が追っていたこの少女と同じ───」

 言いながら、メイは赤い髪の少女が映った写真をコンソールパネルから開く。

 その写真に写っていた少女は、間違いなくニャムのZガンダムを盗んでいった少女だった。

 

 

 そして、その正体は───

 

 

「───ELダイバーだ」

 ───ELダイバー。

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