ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】 作:皇我リキ
アオトへ。
久し振りにメッセージを送ります。
お父さんは元気です。アオトは元気かな。
もうアオトも高校二年生だ。そんな息子に何も出来ない俺の事をアオトが嫌いなのは分かっているよ。
それでも、聞いてほしい事がある。
昨日、お店にタケシ君とケイスケ君とユメカちゃんが来たんだ。
タケシ君とケイスケ君がお店でGPDをプレイしてくれた。とても嬉しかったけど、何か違うと思ったよ。
俺はアオトや彼等が楽しんでガンプラで遊んでいるのを見たかっただけなんだ。それは、GBNもGPDも変わらない。
沢山の事を勘違いしていたと思う。アオトの事も、ガンプラの事も。
お店のGPDのマシンは撤去したよ。近いうちにGBNのマシンを四台買う気だ。
タケシ君とケイスケ君とユメカちゃんとアオトで、いつか一緒にプレイ出来るようにね。
返事を待っています。父より。
「……父さん、俺はもう───」
メッセージを消去しますか?
「───ガンプラなんて」
はい
☆ ☆ ☆
GBN。メインフロア。
休日の昼間。GBNにログインした
「タケシ君まだかな?」
「家にGBNのログインマシンがないし、こう……田舎だとログイン出来る場所も少ないからな」
「それじゃ、プラモ屋さんにGBNのマシンが出来たら結構楽になるって事だね。……あれ? そういえばケー君はどうしてマシンを二つ持ってたの?」
「あー、それは───」
なんて会話をしているとケイの視界に見覚えのある顔が入って、彼は目を細める。
視界に入るのは右目が隠れる程に長い金色の前髪。何処かで見たような気がするそんな髪の毛に、ケイは「ん?」と首を横に傾けた。
確かに見覚えがある髪型だが、こんな派手な色をしていただろうか。
「あれ? もしかして、タケシ君?」
「……否、俺はタケシではない」
ケイの視線を追いかけて、ユメは金髪のプレイヤーに話し掛ける。
しかし、帰ってきた返事は否定の言葉だった。
「……俺の名はロック。ロックリバーだ。よろしくな」
そして、金髪の彼はコンソールパネルを開いて自分のプロフィールを二人に見せる。
プレイヤーネームにはしっかりとロックリバーという名前が表記されていた。正真正銘───
「タケシじゃん」
───彼である。
「タケシ言うなし!! ゲームネームなんだから本名使う訳にもいかないだろ!!」
「マツタケとかシイタケとかにしとけば良かったじゃん」
「なんでキノコなの!!」
「あっははマツタケシ君」
「笑うな!! てかお前ユメカか?」
という一悶着があったが、作ってしまった物は仕方がない。タケシはロックリバーとしてGBNを楽しむようだ。
「しかしなんで金髪なんだ?」
「リアルでママに金髪は禁止されてるんだ」
「……なるほど」
なりたい自分になれる場所。
それはある意味、彼のなりたい自分なのだろう。
「……ふ、だが今の俺は正真正銘ロックリバー。クールで格好良い男! ロックと呼んでくれて構わないぜ」
「よし、それじゃさっそくチャレンジミッションやるか」
「そうだね。初めて三人でやるミッションだから、絶対にクリアしよう!」
「人の話を聞けよ!!」
ロックを置いてミッションカウンターに向かうケイ達だが、ユメに「こっちだよ、ロック君」と手招きされて彼は瞳を輝かせた。
「俺はロックだぁ!!」
どうにも嬉しそうな幼馴染みに、二人も笑顔を見せる。友人が嬉しそうで何よりだ。
いつか、アオトも───
「ミッションって、なんか凄い数あるんだな。こういうのって最初ら辺だけ遊ばれるイメージだから種類は少ない物だと思ってたが」
「GBNはCPU戦もかなり凝って作られてるから人気も高いんだ。せっかくだからタケ───ロックが選ぶか?」
ロックの言葉にそう補足を入れて、ケイは彼にミッション一覧が表示されたコンソールパネルを見せる。
「おう、このロックリバー様に任せろ。……って、本当に凄い数なんだが。この中から選ぶって」
表示されたミッションの数に表情を痙攣らせながら、ロックは画面と睨めっこをしてミッションを選んだ。
ミッション内容
拠点防衛戦
防衛目標
戦艦メガファウナ
敵戦力
カットシー十五機
成功条件
一定時間の経過/敵戦力の全滅
失敗条件
メガファウナの撃破/味方戦力の全滅
バトルフィールド
海上/入江
防衛時間
二十分
「Gのレコンギスタからのミッションか」
「Gのレコンギスタ?」
ロックが選んだミッションを見てケイが呟くと、ユメは首を横に傾けて頭の上にクエスチョンマークを浮かべる。
彼女が知っているガンダムは機動戦士ガンダムSEEDだけだ。見慣れない単語ばかりだからか、ユメは頭を抱えて目を細める。
「あー、ユメカ───ユメはそもそもこの前ガンダムSEED見ただけだったか」
「そもそもガンダムってSEED以外にあるの?」
「そこからかよ」
ツッコミを入れるロックだが、ふとユメを見ると目を細めて上から下まで視線を何度も往復させた。
そんなロックに、ユメは「な、なに?」と少し顔を赤くする。
「……俺も大概だが、ユメも普段と全く違うのか。なるほどな。……ケイはまんまだけど」
「まんまだよねー」
「悪いか」
彼女が立っている事が不思議だが、ケイスケがGBNに彼女を連れて来た理由が分かった。
不思議と漏れる笑顔が嬉しくて、ロックも笑う。
「……そもそもガンダムってのはかなり作品数があってな。その全部が同じ世界の話じゃないって訳だ。ウルトラマンとか仮面ライダーとかプリキュアとかと一緒な」
「なるほど。シリーズがあるんだね」
「……そういう事。ユメが見たのはガンダムSEEDって作品だ。他にも色々あるから、まぁ……気になるならケイに聞いて一緒に見れば良い」
「タケシ君……ロック君のおすすめは?」
「勿論、OO」
ミッションを受けてから待機中にロックに説明を受けるユメ。
なら今度はその作品を三人で見ようと約束をした所で、ミッションがスタートした。
MISSION START
岸壁から二機のモビルスーツと一機のモビルアーマーが発進する。
近くの入江に待機している赤い戦艦が、今回の防衛対象であるメガファウナだ。
「SEEDのアークエンジェルみたいなものなんだね」
「そういう事だな。よし、作戦通り行くぞ」
ユメのスカイグラスパーが上空を旋回している中、二機のモビルスーツがメガファウナの甲板へと降り立つ。
一機は黒色に機体の前面をシールドで覆った、ロックのデュナメスHellだ。
GNスナイパーライフルを構え、対空戦闘用にカメラを調整する。
もう一機はケイのストライクBondなのだが、ストライカーパックはクロスボーンでもダブルオーでもないユメの知らない装備だった。
機体は全体的に赤く染まっていて、両肩部に装備された砲身と、両手に持つ銃身の長いライフルが特徴的である。
その姿は見たままに砲撃機といった風貌だ。
「ケー君のストライクがまた違う姿になってる?」
クロスボーンストライカーを背負ったスカイグラスパーを駆るユメは、上空からそんなストライクBondを見て言葉を漏らす。
勿論だが、その装備が何を元に作られているのかユメには分からない。
「エクリプスストライク。ゲームに登場してるエクストリームガンダムエクリプスフェイスの装備だ」
「……射撃は俺が居るのに」
そんなストライクの姿を見て唇を尖らせるロック。そんな彼に苦笑いを零しながら、ケイはレーダーを見て表情を引き締めた。
「来るぞ。レーダーに映った」
ケイの言葉で二人もモニターに視線を移す。距離は離れているが、それなりの速度で接近する機体が十機以上確認できた。
「うわ、凄い数だよ……」
「作戦通り、まずはユメが囮になって近付かれる前に俺達が出来るだけ数を減らすぞ!」
「……ふ、任せろ。ロックリバー、目標を狙い撃つ!」
ケイの指示でユメのスカイグラスパーが先行し、二機の狙撃機がライフルを構える。
「よーし、頑張るぞ! えーと、こういう時なんて言うんだっけ? そうだ、ユメ……行きまーす!」
スラスターを吹かせ、スカイグラスパーはカットシーの編隊との距離を縮めた。
「一個中隊くらい、かな。……全部で十五機。アレは……羽の生えたモビルスーツ?」
ユメの視界に入ったのは機体背後にフライトユニットを搭載したモビルスーツ───カットシー。
スカイグラスパーが射程圏内に入ると、前方三機のカットシーがライフルを構える。
「ロックオンされたよ!」
「……逃げ回りゃ、死にはしない」
タケシからの通信に、ユメは表情を引き締めて操縦桿を握った。
それを一気に引くと機体が持ち上がって、カットシーの攻撃は空を切る。
「よし、やるぞタケシ」
「ロックだ!! ロックリバー、目標を狙い撃つ!!」
同時にデュナメスのGNスナイパーライフルが火を吹いた。遠距離まで届いたビームライフルだったが、射撃はカットシーには直撃せずに足の爪先をかするだけに終わる。
「ふ、当たったな」
「いや当たったけど」
「タケシ君の下手くそー!」
「うるせぇ!!」
などと言い争っている場合ではない。
「とにかく撃ちまくれ!」
「任せな。ロックリバー、目標を乱れ撃つ!!」
さらに狙撃を外し続けるロックのデュナメスの隣で、ストライクは一対のライフルを重ねて銃口を持ち上げた。
「───ヴァリアブル・サイコ・ライフル【クロスバスターモード】」
そうして放たれた射撃は、見事にカットシーの胸部を貫いて機体を爆散させる。
ビーム発射の余波が残るほどの威力に、ロックは口を開けて固まった。
「凄い武装だな」
「そんな連射は出来ないけどな」
連結させたライフルを外して、二丁のライフルを空に向けるストライク。
そうしてヴァリアブル・サイコ・ライフルを連射し、さらに二機のカットシーを撃破する。
それでも残りのカットシーは十二機。それに対して相手はそろそろメガファウナを射程内収める距離に近付きつつあった。
「ちょっと大変じゃない……?」
カットシーがメガファウナにライフルを向けるのを見て、ユメは冷や汗を漏らす。
想像以上に敵が減っていないし、この数に攻撃されたら防衛目標がひとたまりもない。
「ユメ、作戦変更。ストライカーパックを!」
ケイはヴァリアブル・サイコ・ライフルを連結、クロスバスターモードでカットシーを一機吹き飛ばしながら、両肩のブラスターカノンでもう一機カットシーを撃破した。
そうしてからその装備を海面に落として、スラスターを吹かせて機体を浮かせる。
「分かった!」
ケイの指示でユメはスカイグラスパーを旋回させてストライクの背後に着いた。
そのままバックパックを外してストライクに送り届ける。
「───クロスボーンストライク」
X字のスラスターを装備したストライクは、付属していたビームライフル───ザンバスターを手にスラスターを吹かせた。
ABCマントまでスカイグラスパーに装備する事は出来ない為、防御面が不安だがこれで空中戦に対応出来る。ストライクの換装機構を生かした作戦だ。
空中で換装してカットシーの編隊に向かうストライクを見て、ロックは「おぉ、すげぇ」と感心の声を漏らす。
「───じゃなくて、俺を置いていくなぁ!!」
「タケシはそこで待機!」
「ロックだ!! 畜生!!」
やけくその用にGNスナイパーライフルを放つが、これはどうも当たる気がしない。
そんなロックを他所に、ストライクが先行してその後をスカイグラスパーが追いかけた。
カットシーの編隊が二機に標準を合わせる。
「ユメ、少しで良いから援護を頼む!」
「分かった!」
大型のスラスターで、ある程度の空戦闘能力は確保出来ているが相手はフライトユニット装備の機体な上に数も多い。
不利は承知だ。だからこそ、面白い。
「───当たれ!」
先頭のカットシーに向けてライフルを放つ。ほぼ同時に背後からスカイグラスパーがミサイルを放って、ライフルで動きを止めたカットシーをミサイルが撃破した。
これで残りは九機。しかし、敵もやられてくれるだけではない。上を取ってきたカットシーが、脚部からビームサーベルを展開してストライクに襲い掛かる。
「ケー君!」
「上を取られる……接近戦、なら!」
ストライクは手に持っているライフル───ザンバスターを分離、それは小さなライフルともう一つの何かに分かれた。
その何かから、シミター型のビームサーベルが形成される。ビームザンバー。クロスボーンガンダムの特徴的な接近兵器だ。
「なんとぉぉ!」
上から来るカットシーに向けてビームザンバーを薙ぎ払う。その刃はカットシーのサーベルが届く前に目の前の機体を二つに分けて爆散させた。
これで残り八機。
しかし、爆破に巻き込まれたストライクは海に落下していく。
「ケー君───って、うわ。抜かれちゃった!」
そんなストライクと、モビルスーツより旋回能力の悪いスカイグラスパーを他所にカットシーの編隊は味を占めたように二人の防衛線を突破。
ロックが一人で防衛するメガファウナへと一直線に進路を取った。
「ど、どうしようケー君!」
ロックの腕はともかくデュナメスは聴く話では遠距離戦を想定して作られた機体である。
カットシー八機がメガファウナを襲おうと猛進する光景を見て、ユメは悲鳴を上げながら表情を痙攣らせた。
「───いや、タケシなら大丈夫だ。俺達は充分に仕事した」
しかし、ケイはなんとかストライクの姿勢を戻しながらも不敵な笑みを見せながらそんな言葉を漏らす。
どこからそんな自信が湧いてくるのか。だけど、彼がそういうならとユメは心を落ち着かせて操縦桿を握った。
「ここからが本領発揮だよな、タケシ!!」
そんな言葉は届いているのか届いていないのか。
「───八機か」
メガファウナの甲板の上で、立ち上がったデュナメスHellの眼前にはカットシーが八機。
コックピットの中でロックは俯きながらもその口角を吊り上げる。
「───死ぬぜ、俺を姿を見た奴は」
少年は笑っていた。
あけましておめでとうございます。
前回の更新でデュナメスをデュナミスと表記していたようです。別の天使と混合してました!ごめんなさい!
そんな訳で、次回ロックことタケシの本領発揮です!
八機のカットシー相手にどう立ち回るのか、お楽しみ下さい。
今回Gのレコンギスタを選んだのは映画を見たばかりだったからです()
読了ありがとうございました!