ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】 作:皇我リキ
GBN、GMルーム。
「───すまない遅くなった。カツラギさん」
GBNにログインしたキョウヤは、GBNのゲームマスターであるカツラギの元を訪れていた。
チャンピオンのキョウヤとゲームマスターのカツラギ。
二人はGBN開設よりも前の旧知の友人でもある。
「いや、問題はない。話は聞いているか?」
SDガンダムの姿をしたアバターのカツラギは、キョウヤに背中を向けたまま話し始めた。
彼の視線は、正面にあるモニターに向けられている。
「数名のELダイバーが行方不明になっている、なんて大まかな話を少し」
「そうだ。本部でのこの事は重く見ている」
「詳しい話を聞きたい」
キョウヤがそう言うと、カツラギはモニターを操作して画面を切り替えた。
そこにはここ一週間で行方不明になったとされるELダイバーの顔写真が映し出される。
その数、五人。
「……こんなにもか」
「彼女達は既に保護されているELダイバーだ。しかし、ログアウトの形跡もなければGBNサーバー内で探しても見つからないのだ」
「それで行方不明、か」
キョウヤは目を細めた。
第二次有志連合戦から一年と半年。
GBN運営はELダイバーの保護を積極的に行ってきたが、彼等の事を全て理解している訳ではない。
ELダイバーが何故生まれたのか、何をきっかけに生まれたのか、何処で生まれたのか。
それらすら今のGBN運営はハッキリとした答えも得られていないのである。
「この件がGBNのサーバーを再び危機に落としいれる物なら、直ぐにでも対策を練る必要がある」
「カツラギさん……」
「……君はこの件をどう思う?」
未だ未知のELダイバーの問題に対して運は慎重にならざるをえない。だからこそ、カツラギはキョウヤを呼んだのであった。
「僕は───」
ふと、彼の脳裏に一人の少女の姿が映る。
GBNチャンピオン、クジョウ・キョウヤの答えは決まっていた。
☆ ☆ ☆
頬っぺたを引っ張る。
「な〜に〜を〜す〜る〜」
「ELダイバーといっても、他のダイバーと特に変わりはありませんのね」
イアの頬っぺたを餅のように伸ばしながら、アンジェリカは「でもよく伸びますわ」と微笑んだ。
「その辺にしておけ。それに、この世界にいる以上誰もが同じなのはお前も分かっている筈だ」
「トウドウ。……確かにそれもそうですわね。失言でしたわ。ごめんなさい」
「何を言ってるか分からないけどボクの頬っぺたを引っ張った事を謝ってないのは分かったぞ!」
頬を真っ赤にしながら両手を振るイア。
そんな微笑ましい光景に、周りの仲間達は賑やかに笑うのだった。
フォースReBondのメンバーと、フォースメフィストフェレスのメンバーはイアを加え───アンジェリカの提案でGBNでの旅行へと向かっている。
現実での旅行と違いGBNでは準備等がほとんど要らない。
即日決行のこの旅行は、メフィストフェレスが用意してくれたシャトルに乗るところから始まった。
「───さて、まずは大気圏離脱を体験しますわよ!」
シャトルに乗り込み、シートベルトをするメンバー達。数秒後、カウントダウンと共にシャトルは轟音を上げながら高度を上げていく。
「さ、殺人的な加速ですわーーー!」
「なんじゃこりゃーーー!」
大気圏離脱時に感じる
しかしGBNはある程度痛覚や感覚を抑えてあり、このように大気圏離脱等も楽しんで体験する事が出来るのだ。
「───だからといって態々シャトルで宇宙に行かなくても、GBNはワープなりなんなり出来るのにな」
それでも感じるGは相当なものなので、大気圏離脱に成功したシャトルの中でロックは苦笑い気味に言葉を漏らす。
「ここが、宇宙」
無重力。
正確にはまだ地球の重力圏内ではあるが、このシャトルの外は空気も何もない暗黒の世界が再現されていた。
見渡す限りの星の空。
ユメは目を輝かせてシャトルの窓に釘付けになる。
「ねー、ほら見てケー君! 地球が本当に青い!」
「そうだな」
思えばユメはGBNの宇宙にこうしてちゃんと出た事はなかった事を思い出した。
もっと早く連れてきてあげれば良かったな、なんて思った矢先───ケイの頭に何かがぶつかる。
「───あばばばばばばばば」
「イア!?」
「イアちゃん!?」
それは泡を吹いてシャトルの中で浮いているイアだった。
「だ、大丈夫っすか!?」
「───ばばばびばびぼぼびは、ひっ。……オーケー! ボク元気! 多分生きてる!」
突然目を覚ましたイアは「これが宇宙かー!」とユメと同じようにシャトルの窓の外を見渡す。
安心したニャム達だったが、帰りは普通に移動するという事に決まるのだった。
「今回の旅行の目的は、ガンダム世界のあちこちを実際に見て回る事ですわ! それと、新しくお友達になりたいイアさんとの親睦会もかねて! さて皆さん、ガンダムといえば!」
シャトルの中で全員の前に立ってそう言葉を響かせるアンジェリカ。
「目と角」
「戦争をテーマにした人間ドラマ」
「格好良いMS!」
「格好良いMA!」
彼女の問い掛けに、メンバーは思い思いの言葉を口にしていく。
「全員ハズレですわ」
「分かる訳ないよ!」
「分かる訳ないって!」
「でも、レフトとライトは若干近かったですわよ」
二人を見比べて得意げな表情を見せるアンジェリカ。彼女は不敵に笑いながら、シャトルが到着した事を知らせるアナウンスと共にこつ口を開いた。
「ガンダムといえば……巨大戦艦ですわ!!」
白い巨大な宇宙戦艦が窓の外に映る。
「これは!」
「ホワイトベース!」
それは、ガンダムの原点。機動戦士ガンダムに登場する宇宙戦艦の名前だった。
ホワイトベース。
馬の両脚を前後に伸ばしたようなその形状から、作中では木馬とも呼ばれている。
そのサイズは全高97m。全長262m。
MSガンダムが全高17mなのに対してMSを運用する宇宙戦艦は、必然的にこのように途方も無い大きさになるのだ。
日本の基準で分かりやすく例えるなら、ホワイトベースの全長は戦艦大和と同じで、高さは三十階建てのマンションと同じである。
そんな巨大戦艦をシャトルから間近に見たメンバーは、ガンダムやこのGBNに疎いユメじゃなくても圧巻されるのであった。
「ほ、ほへー」
「す、すげぇ……」
「これが実寸大のホワイトベースか……」
「アークエンジェルに似てるね」
「アークエンジェル、というよりガンダムSEEDはこの初代ガンダムのオマージュが多く見られる作品っすからね」
シャトルはホワイトベースのデッキに降り立ち、メンバーはホワイトベースの中に招待される。
このホワイトベースはGBNが用意した観光用のフィールドであり、細部まで再現されたホワイトベースの中を自由に見学する事が出来る人気の観光スポットだ。
その証拠に、アンジェリカ達以外にも観光客が戦艦の中を歩いている。
「───味が薄いですわ!!」
「すみません、塩が足らんのです」
「……このやり取りオフ会でやったっすねぇ」
そのホワイトベースの食堂エリア。
ホワイトベースの料理長、タムラが出す料理を再現した食事が取れる広場だ。当たり前だが本当に味が薄い訳ではない。
「さてと、お膳立てもここまでにして。少しお話をしたいですわね。私達、イアさんの事をあまり知らないので」
「……自己紹介、するか」
「良いですわね。スズがそんな事言うなんて珍しいですけど」
そうして、スズの提案で一同は食堂エリアでイアに自己紹介をする事になる。
ここまでアンジェリカが強引に話を進めて来た訳だが、イアは嫌がらずに楽しんでいたようだった。
それもあってか、自己紹介の中で彼女とメフィストフェレスのメンバーの間に溝はなくなっていく。
「僕がライトで!」
「僕がレフトだよ!」
「こっちがレフトで、こっちがライトだな!」
「「違うよ!!」」
「ノワールだ。一応このフォースのリーダーをやっている」
「タケシと同じだな!」
「ロックな」
ついにイアまでロックの事をタケシと呼び始めたのはともかく───
ホワイトベースの中を歩きながら会話を弾ませるイアと二つのフォースのメンバー達。
楽しい旅行は始まったばかりだ。
劇場版ガンダムSEED……?