ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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木星

 それにしても、とキョウヤはモニターに視線を戻す。

 

 

「───確かに不思議な話だ。ログアウト出来ないELダイバーか」

「行方不明と関係があるかは分からないが、彼女が発見された時期とELダイバー達が行方不明になり始めた時期は一致する。完全に無関係とも言い切れない」

 あまり表情は変えずに、モニターに映る赤い髪の少女を見るカツラギ。

 

 

 彼の話によれば、ELダイバーが行方不明になる件が報告され始めたのは彼女が発見された数日後からだそうだ。

 

 キョウヤは顎に手を向けて少しの間考え込む。

 

 

「───今彼女は?」

 ふと、彼はカツラギにそう問い掛けるのであった。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 木星。

 太陽系第五惑星。火星の外の小惑星帯(アステロイドベルト)の更に外に存在する、ガンダム作品では地球から最も遠い人類の生活圏としても描かれる過酷な場所である。

 

 

「───と、いう訳で。この木星は火星と違って資源となるヘリウム3というガスが多く、宇宙世紀とかだと火星よりも重要視されていた生活感なんですよね」

「ほへー。この大きな星がねー」

「とはいえ、木星はガス惑星……すなわち核以外の質量の殆どが固体ではないので鉄血のように木星の大地に住む……なんて事はないんすけども。大概はその衛生軌道上に生活圏を作る形になってるっす」

「ここまでデカくなるともうおじさんも唖然を通り過ぎて何も感じないわ。もはや実感が湧かない」

 木星に関心を示すイアにガンダム世界での木星について語るニャム。

 

 そんな彼女の隣で、カルミアは太陽系で一番大きな惑星をぼんやりと眺めていた。

 

 

「そうだな、カルミアの言う通りだ。もはや規模が分からん!」

「そうっすねぇ。木星の大きさは地球の約十二倍、しかし自転の速さは地球とほぼ同じだった火星とは違いなんと約十時間。地球よりも大きい惑星なのに、地球より二倍以上早く自転してる訳で、赤道上の時速はそれはもう恐ろしい速度になってるんすよ。その大きさ故に重力も地球の二.五倍。クロスボーンガンダムのスラスターや木星帰りのMAメッサーラのスラスターが強力なのは重力の強い木星圏での運用を想定して製造されたからなんす!! 宇宙世紀の他にも、ガンダムSEEDの世界ではファーストコーディネーター、ジョージ・グレンがエヴィデンス01───所謂はねクジラの化石を発見した場所であったり。ガンダム00ではGNドライヴの製造が行われていたり、劇場版では木星に発生したワームホームからELSが現れたりしてたりと、意外にも登場する作品は多いんすよ!!」

 鼻息荒く解説するニャムに、イアは「ニャムはなんでも知ってる物知り博士だな!」と目を輝かせる。

 

 そんなニャムを見てゲンナリしているカルミアは、ふと旅客機であるシャトルの窓に映る巨大な建造物に視線を移した。

 

 

「コロニーレーザーか」

 巨大とは言っても、木星の大きさと比べればそれは点でしかない。

 

 この建造物は宇宙世紀が舞台の物語、クロスボーンガンダムシリーズで木星帝国が地球へ攻撃する為に建造した兵器である。

 

 

「ここから地球を撃とうとか、よく思い付くものよ。……しかし随分と遠くに来ちゃったわねぇ。おじさん地球が恋しいわよ」

「そんなに地球から離れたのか? カルミア」

「ん? あー、そーね。普通にワープでここまで来たから感覚薄いかもしれないけど。地球から木星まで……えーと、ニャムちゃん。どれくらい離れてるんだっけ?」

「地球からは一番近い時で約六億キロメートル、遠い時は九億五千万キロメートルっすね。簡単に言うと新幹線と同じ時速三百キロメートル程で動く乗り物に乗って真っ直ぐ向かっても早くて二百年以上掛かる距離っす。光の速さでも三十分掛かりますし、木星に行くくらいなら地球からは太陽に向かった方が早い……つまり地球から木星の距離は地球から太陽の距離よりも長いんすよね」

「……らしいよ」

「凄く遠いって事だな?」

 分かったのか分かっていないのか、イアは首を傾げながら唇を尖らせた。

 

 

「でも、ま。ロマンチックになっちゃうわねぇ。おじさんが子供の頃、木星なんて夢にも見なかった。それこそ、この広い宇宙のどこかに居る宇宙人と同じくらい遠い存在だったのにね。今は仮想現実とはいえ、こんな手を伸ばしたら届きそうな場所に木星がある訳で」

 木星に手を伸ばしながらそう言うカルミア。勿論手を伸ばしたら届きそうというのは比喩表現だが、GBNをプレイしていなければ木星をこんなに身近に感じる事はなかっただろう。

 

 

「こうするとさ、居るんじゃないのかって思うのよね」

「何がっすか?」

「宇宙人」

「あはは、流石にそれはどうか分からないっすけどね。確かに、そんな気はしてくるっす」

「宇宙人?」

 カルミアとニャムの会話に、イアはそう言って再び首を傾げた。

 

「なんていうのかね。この世界の外、現実の……そのさらに外の人達の事かな」

「現実にも外の世界があるのか!」

「そうそう。だけど、おじさん達は自分達の世界の外に居る人達にまだ会ったことがない。……それが本当に居るのかも分からない」

「分からないのか」

「そ、分からない。……居るかもしれないけど、出会えてないから居ないかもしれない。おじさんは一生掛けても会えないかもしれないし、居ないのと同じかねぇ」

 寂しそうにそう言うカルミアの手を、イアに強く握って首を持ち上げる。

 

 

「居るさ」

「……い、言い切るねぇ」

「だって、ボクだって自分の世界の外に人が居るなんて思ってなかったからね! きっとカルミアの世界の外にも人は居る! だって! そうじゃなきゃ寂しいだろ!」

「───レイア」

 ふと、少女の笑顔と記憶の中の少女が重なった。

 

 

「……そうだよな。そもそも、おじさん達にとってGBNは内や中の世界なんて事はない。GBNも現実も、どっちも外じゃなくて繋がってる世界だ」

 レイアは確かに生きていた、カルミアは目を閉じてそう信じ込む。

 

 確かに彼女はこの世界に居たんだ。生きていたんだ。

 

 

「……イアちゃん」

「……どした? カルミア」

「お前に会えて良かったよ。ありがとな」

「あわわ、や、やめろー」

 イアの髪の毛を滅茶苦茶にするカルミア。そうしていると、アンジェリカが全員に集合を掛け始める。

 

 

 この惑星ともお別れだ。

 

 

「さて、宇宙旅行は終わりですわ! 次は地球に戻りますわよー!」

「この次はGBNで宇宙人探しでもやるか」

「いやいや、流石にGBNでも宇宙人を探すのは無理だと思うっすよ」

「そうかねぇ、イアはどう思うよ」

「居るさ。だって、この世界はボクもカルミア達も知らない事が沢山あるんだからね!」

 発進する船は木星を離れていく。

 

 

 ガンダムの世界では木星まで二百年以上掛かる事はないが、それでも旅の時間は果てしない。

 しかしこのGBNでは、それも一瞬で出来てしまうのだ。

 

 

 

 作り物の世界だからと言う人も居る。

 

 

 しかし、カルミアはこう思った。

 

 

 

「……これが、GBNっていう世界か」

 四方八方、どこを見ても星の海。この世界の空はどこまで続いているのだろうか。

 

 もしかしたら、()()()にも手が届くかもしれない。その世界には───

 

 

 

 

 

 

 ───けて───助けて───い! ───助け───助けて下さい! 助けて! 助けて下さい!───

 

 

 

 ───その世界には、きっと誰かが生きている。




最後のシーンはフレディです。
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