ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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Zの鼓動

 頭を下げる。

 

 

「楽しんでいる所を邪魔してしまい、申し訳ない」

「い、いや、俺のズゴックが人を殺さなくて良かったよ。まぁ、死んでもリスポーンするけどさ」

 イアが吸い込まれそうになっていたズゴックのパイロットは、あまり意味も理解出来ず───何故かGBNのチャンピオンに頭を下げられて困惑していた。

 

 

 ズゴックのパイロットと別れたキョウヤは、イア達の元に戻る。

 ニャムやアンジェリカ達は、イアを救ってくれたキョウヤを()()()を見るような目で感謝の言葉を伝えていた。

 

「いや、本当に助かりましたわ……」

「ジブン……未だに血の気が引いてる気分っすよ。本当、良かったっす」

「命の恩人って奴だな」

「はは、大袈裟……という訳でもないのかな。でも、僕は当たり前の事をしただけだよ」

 両手を上げるキョウヤ。そんな彼を見て、カルミアは目を細める。

 

 

「……しかし、なんでこんな突然GBNのチャンピオン様がおじさん達を助けてくれたのかねぇ。ユメちゃん達を騙して、近付いてたらしいじゃないの」

「か、カルミアさん! キョウヤさんは俺達の代わりにイアを助けてくれたんですよ?」

「そうですよカルミアさん。私なんて、泳ぎ方を教えてもらってたのに」

 カルミアの言葉に、ケイとユメは両手を上げて抗議した。しかし、そんな二人に手を向けてキョウヤは首を横に振る。

 

 

「カルミアさん、貴方の言う事は正しい。僕は身分を偽って君達に近付いたのだからね」

「……で、その理由は?」

「君が警戒してる事ではない、筈だ。僕は彼女───イア君に会ってみたくてここに来ただけなんだよ」

「ボクに?」

 カルミアに質問にそう答えたキョウヤ。

 

 イアは確かに、珍しくELダイバーなのかもしれない。

 現実世界に行く事が出来ない彼女は不思議かもしれないが、それでも態々チャンピオンがその足で会いに来る程のものなのなろうか。ケイ達は首を横に傾けた。

 

 

「何も下心がないと言えば嘘になる。けど、安心して欲しい。僕はGBNを楽しむ仲間全ての味方のつもりだ」

「……どうかね。第二次有志連合戦、あの時のアンタも同じ口が聞けるのか?」

 第二次有志連合戦。ELダイバーサラを巡る戦いで、彼───クジョウ・キョウヤはサラの命を賭けてビルドダイバーズに戦いを挑んでいる。

 

 それしか彼女を救う道がなかったとしても、だ。

 

 

「……何も言えないな。あなたの言う通りだ」

「……なら帰りな。これ以上俺の仲間を運営に殺させはしない。レイアが居なくならなければ、セイヤだってな!」

 キョウヤの胸ぐらを掴みながら、カルミアは彼の目を睨んで大声を上げる。そんなカルミアに驚きつつも、ケイとユメは彼を止めようと二人の間に入った。

 

 

「カルミアさん!」

「……悪い、大人の対応じゃないわな」

「僕も、何も出来なかった自分が憎い。……だからこそ、今こうして彼女に会いに来たんだ。聞いて欲しい」

 キョウヤはカルミアにされた事に怒る事もなく、その場にいた全員の目を見てからイアに視線を移す。

 

 

「今、ELダイバーが行方不明になる事件が多発しているんだ。運営も、勿論ただのプレイヤーである僕も、この事を放ってはおけないと思っている」

「ELダイバーが行方不明になる事件ですの?」

「初耳っすね」

 キョウヤが話した事は、まだ広く公にはなっていなかった。しかし、その数は無視が出来ない。

 

「ここ数日、多発的に起きている事だからね。……それが丁度、彼女───イア君を君達が保護してくれた後からの事なんだ」

 運営が動き出すのは時間の問題だろう。

 

 

「ウチのイアがその事件に関わってるって言いたい訳?」

「そうじゃない。だけど、僕には何も手掛かりがないんだ。一度この世界に生まれた命を奪おうとしたからこそ、僕はもう二度と同じ過ちを繰り返したくないと思ってる。綺麗事かもしれない。既に失われたものは帰ってこない。……だけど、だからこそ最善を尽くしたい」

 そう言って、キョウヤはカルミアに頭を下げた。流石にカルミアも、強い言葉が出なくなる。

 

 

「……悪いね、おじさん神経質なのよ。こと彼女らの話になると。……ウチのイアを助けてくれてありがとな」

「当たり前の事をしただけだよ」

 手を伸ばすカルミアの手を、チャンピオン───クジョウ・キョウヤは強く握り返した。

 

 

「話を聞きたい。協力してくれ」

 そして、キョウヤは再び全員に頭を下げる。これを拒む者は、誰もいなかった。

 

 

 

 AVALONフォースネスト。

 

 

「城じゃん」

「こ、これが噂のAVALONのフォースネストっすか。城っすね」

 御伽噺に出て来そうな城。

 

 ここは第二次有志連合戦の舞台ともなった、フォースAVALONのフォースネストである。

 

 

「人数にしては狭い客室ですまない。普段は作戦会議室なんだ」

「狭いのこれ?」

 全員が座れる椅子がある部屋で頭を掻くキョウヤに呆れながら、ロックは周りを見渡した。

 部屋の端にある機材や資料。なるほど、確かに作戦会議室である。

 

 

「ゆっくり出来る場所を、と思ったのだけど。お店を探した方が良かったかな」

「ボクはここ好きだよ。なんだか、優しい気持ちになる」

 部屋端を歩きながらそう言うイア。キョウヤは「ありがとう」と言って目を瞑った。

 

 

「本題に入ろう。イア君の事に着いて分かっている事を教えて欲しい」

 そうして、キョウヤはReBondやメフィストフェレスの面々に話を聞き始める。彼の目はいつも───いつだって、真剣だった。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 数十分後。

 

 

「───なるほど、奪われたZガンダムでログインしている状態か。これは、彼女の秘密を解き明かす鍵になるかもしれないね」

 イアについて話を聞いたキョウヤは、顎に手を当てて情報を整理する。

 

 

 実の所彼女は保護されるかなり前からこのGBNに存在していた事が分かった。

 それは何故かというと、今ReBondがフォースネストとして使っている場所が幽霊物件と言われていた事がヒントになる。

 

 本人曰く、彼女は自分でも分からない時間あのフォースネストで暮らしていたらしい。

 勿論フォースネストを買ったフォースからすれば、知らない人が自分達のフォースネストに居ると言う事で幽霊扱いになってもおかしくはない話だ。

 

 

 そうなると、彼女の存在がここ数日のELダイバー失踪事件に関わっているとは言い難くなる。これは、キョウヤにとって一番大きな情報だった。

 

 

「一旦ELダイバーの行方不明事件に着いては話を置こう」

「良いんですか?」

「僕は彼女について知りたくて君達に会いに来たんだ。確かにこちらも重要な話かもしれないけれど、今は彼女の事に着いて考えるべきだと思う」

 そんなキョウヤの言葉に、イアは「ほほう、ボクに興味があるんだな。お目が高いぜチャンピオン」と無い胸を張る。

 それに対してキョウヤは「お褒めに預かり光栄だ」と笑顔で返した。これがチャンピオンの器である。

 

 

「Zガンダムはニャムさんの権限でログアウトする事も出来ずに、スキャンしてもログイン中となる。……やはり、この辺りが問題か」

「ELダイバーは確か、その魂を現実でモビルドールと呼ばれるプラモデルに保護するんすよね。そして、そのモビルドールをGBNにスキャンする事で、再びGBNにログインする事が出来る」

 ニャムの言葉を聞いて、ケイ達はオフ会での事を思い出した。

 

 ダイバーシティで出会ったELダイバー、サラ。

 彼女は確かに、現実では小さなガンプラのような姿でいた記憶が脳裏に過ぎる。

 

 

「つまり、Zガンダムがその役割を奪ってしまっているから……ログアウトする事が出来ない。しかし、何故だ」

 考えても答えは見付からなかった。Zガンダムがモビルドールとしての役割を担っているとは考えにくいが、しかし実際にはそれと似たような現象が起きている。

 

 

「……Zにはそういう力がある」

 唐突にそう口を開くスズ。

 

 その言葉を聞いて、ケイはイアがZガンダムに乗っていた時の事を思い出した。

 

 

「バイオセンサーか」

 人の意思を駆動システムに反応させる、宇宙世紀の技術。勿論実際にはプラスチックでしかないガンプラにそんな機能はない。

 しかし、このGBNの中では違う話である。

 

 現にイアはケイ達と一度戦った時、Zのその力を発揮していた。

 

 

「Zのバイオセンサーがシステム的になにか悪さをしているという可能性は、確かにありますわね」

「実際に乗っていてZガンダムが何か反応を示した事はあるのか?」

 トウドウがそう聞くと、ニャムは「実は、さっきも話しましたがイアちゃんの撃墜イコールなので。あの日以降イアちゃんは機体に乗ってないんすよね。一応、その時の戦闘中に反応していた事はおぼえていますが」と答える。

 

 

「なるほど、バイオセンサーか。調べてみる価値はありそうだ」

「お、なんだ。ボクもやっとまたガンプラに乗れるのか?」

「でもチャンピオン、イアちゃんは───」

「分かっているさ。僕に提案があるんだ」

 そう言って、キョウヤは不敵な笑みを見せた。

 

 

「Zの鼓動を感じに行くとしようか」

 イアのガンプラバトルが始まる。

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