ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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クジョウ・キョウヤ

 奥の手というのは最後に取っておく物だ。

 

 

 しかし、せっかくの奥の手も出し惜しみしていては意味がない。

 奥の手は持ってりゃ嬉しいただのコレクションではないのである。

 

 その点、トウドウというダイバーはものの使い所に置いて他の上位ダイバーにも劣らない感覚の持ち主だった。

 それはフォースメフィストフェレスをここまで導いた参謀としての力であり、そして融通という言葉を知らないアンジェリカを導いてきた彼女の側近としての力でもある。

 

 

「このままいけば勝てるっすよ!」

「んや、チャンピオンもそんなに甘くないでしょうよ。こっちにはもう隠し弾がない訳だし」

「いいえ、ありますわよ」

 カルミアの言葉に、アンジェリカは両手を腰に置いて自慢げに口を開いた。

 

 トウドウの機体───クランシェアンドレアはアンジェリカが作った機体である。

 ReBondの面々が知らない()()()が、彼の機体には隠されているのだろうか。

 

 

「……ユメ、頑張れ」

 戦いはお互いの奥の手に委ねられていた。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 ユメの機体が爆散する。

 トランザムの限界時間を過ぎてしまうと、機体のスペックが大幅に減少する弱点は今の彼女達に取って言葉よりも重い。

 

 

 デルタグラスパーのトランザムでイアとトウドウを守れば、トランザムが実質無限に使えるというのが三人の作戦だった。

 しかし、もしトランザムが使えなくなればユメを無視して二人を撃破すれば良いだけの話である。

 

 

「危なかった、トランザムの時間はちゃんと見ないと……」

「ほぼ自爆目的の特攻、崩れないように意識も出来ているという事か」

 そこで、ユメを無視しようとしたキョウヤにユメは残り時間ギリギリで変形状態による特攻を強行した。

 

 トランザム中の可変機の速度は言わずもがな。これには流石のキョウヤも無視を決め込む事は出来ない。

 

 

 しかし、コレで三人の残機は残り六機。三人に残されたリスポーン回数は残り五回だけである。

 

 

「攻撃を緩めるな!」

「うん! トランザム!!」

 四回目のトランザム。流石のチャンピオンも、これには額の汗を拭った。

 

 とはいえ、GBNで汗はかかないが。

 

 

「……熱いな。思っていた以上に!」

 再び刃が交差する。

 

「やはりGBNはやめられない!!」

 前のめりになって、今度はキョウヤがユメに仕掛けた。イアとトウドウの射撃を交わしながら、キョウヤはユメの機体に刃を叩き込む。

 

「トランザム中なのに、押し負ける……!」

「はぁぁぁああああ!!」

 連撃。

 トランザム中のデルタグラスパーですら反応出来ない速度の攻撃。三十四機のMSを落とした後ですら、チャンピオンにはまだ余力が残っていた。

 

 

「まずいな。イア、接近戦に切り替える。しかし、落ちるな。奥の手もまだ使わない」

「凄く難しい事言ってる気がするけど! 分かった!」

 二人は射撃を一度止め、ユメの援護の為にサーベルを抜く。

 

 三体一の接近戦。二人は消極的といえど、こうなるとチャンピオンといえど上手く踏み込む事は出来ない。

 

 

「状況に応じる能力が高い。良い指揮官だ」

「お褒めに預かるのは光栄ですが、こちらが勝ってから褒めて欲しい物だ」

「なるほど。それは失礼をしたね!!」

 トウドウの機体を蹴り飛ばすキョウヤ。左右からの攻撃を片手ずつで止めてから、キョウヤは変形してトウドウを追った。

 

「させない!」

 そんなキョウヤを追い掛けるユメ。しかし、それを読んでいたキョウヤは変形しながらの射撃でユメを撃破───そのままトウドウをも撃破してしまう。

 

 

 

「───逃げて正解だこれ!」

「───判断が早いね」

 その間に逃げていたイアまでは打ち取れなかったが、これで残機は四機だけになってしまった。

 

 

 

「───流石に本気を出したなチャンピオン。つまり、時は来た。二人共、奥の手を使うぞ」

 リスポーンしたトウドウは二人にそう指示を出す。動きを再び変える三人に、キョウヤは不敵に笑っていた。

 

 

 

「まだ、持っているか」

「トランザム!!」

 先行したユメがトランザムでキョウヤを揺さぶりにくる。しかし、これは囮だ。

 三人がまだ何かを隠している。キョウヤにはそれが分かっていた。

 

 exam system stand by

 

 

「クランシェか、いやあの頭は───」

「エグザム!!」

 頭部を真っ赤に染めたトウドウのクランシェが、武器も捨てて素手でキョウヤのAGE2マグナムを掴みに来る。

 咄嗟の起点でユメを撃破したキョウヤだが、思いの外クランシェのパワーが高く逃げる事が出来ない。

 

 EXAMシステム。

 オールドタイプがニュータイプに対抗する為のシステムとも言われていて、人間の脳波を電磁波として捉えてその中の()()を元に索敵と攻撃の回避をするといったニュータイプに近い戦闘能力を発揮するシステムだ。

 しかしこのシステムは不安定で、機体のスペックを超えた動きやシステムの破壊衝動等。簡単に言えば機体が暴走状態になりうるシステムである。

 

 冷静沈着なトウドウには似合わないシステムだと、彼を知る人物は思うかもしれない。

 

 

 

「EXAMっすか!?」

「えぇ、トウドウのクランシェを作る時。頭はブルーディスティニー一号機から作り上げていきましたのよ。トウドウは前線には出ないので使わないシステムですけども、彼だってガンプラバトルをする者───ファイターなんですのよ」

 アンジェリカの言う通り、彼もまたファイター。熱い魂の持ち主なのだ。

 

 

 

「捕まえたぞチャンピオン! 悪いがコイツは言う事をあまり聞いてくれなくてな、手加減は出来ない!」

「なるほど、これが隠し玉だということか……!」

「それだけではない!」

 チャンピオンの機体をも上回る出力で、AGE2マグナムを抑え込むクランシェアンドレア。そしてその背後から接近する、もう一機のMS。

 

 

「ボクにもあるんだな、とっておきが! さぁ、Zガンダム! 皆に君の力を見せてやってくれ!」

 機体から光を放ちながら、Zガンダムは通常では考えられない出力のビームサーベルを振り上げる。

 

 

「いけ!!」

「面白かったよチャンピオン! でも、これで終わりだぁ!」

 振り下ろされるビームサーベル。ついに、チャンピオンの機体を撃破したと───誰もがそう思った瞬間。

 

 

 

「───いいや、これで終わらせるのは勿体ないさ」

 キョウヤの機体が突然光りだし、彼はトウドウの機体を跳ね飛ばして目に見えない速度で撃破した。

 そして、Zガンダムのビームサーベルが振り抜かれた瞬間。彼の機体は残像を残して消え、イアのZだけが爆散する。

 

 何が起きたのか、彼等は一瞬では理解出来なかった。

 

 

 

「必殺はこちらにもある。……EXプロージョン!」

 淡い光を漏らすキョウヤのAGE2マグナム。

 これはガンダムAGEに登場するFXバーストと呼ばれるシステムを元にキョウヤがAGE2マグナムに組み込んだ強化システムである。

 

 機体の周りに浮くのは、キョウヤがこの試合では使っていなかったFファンネルという武装だ。

 

 

 彼はこの試合で、まだ何も出して居なかったのである。

 

 

 

「これが、チャンピオン……」

「でもボク達には!」

「まだ一機残機がある!」

 これでユメ達に残された残機は一機のみ。三人の内、あと一人でも撃墜されてしまえば、ユメ達の負けだ。

 出し惜しみをする理由もない。トランザム、EXAMシステム、バイオセンサー、全力でチャンピオンへと挑む。

 

 

「これまで本気を出さなかった非礼を今、ここで詫びよう。僕はGBNのチャンピオンとして、本気で君達を倒す!!」

 持ち上げられる刃に集まるFファンネル。

 チャンピオンの機体から天に登るように広がっていくエネルギー。

 

 必殺技。

 この言葉に相応しい、洗礼されたチャンピオンの機体の技だ。

 

 

 

「はぁぁぁぁああああああ!!!」

 天まで届く光の刃は、三人の機体を一度に葬りさるのに充分な威力を誇っている。

 

「これが……」

「GBNチャンピオン……」

「クジョウ・キョウヤか……」

 残機ゼロ。

 

 

 

 

 勝者───クジョウ・キョウヤ




チャンピオン強すぎ問題
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