ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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この世界は好きかい?

 頭を掻きながらも、キョウヤは満足げな表情を見せていた。

 

 

 それに比べ、トウドウ達キョウヤと戦った三人はげんなりしている。

 三対一でさらに四十機の残機がありながら敗北したのだ。それに加えてトウドウは他のメンバーに自分には勝ちのビジョンがある、とまで言ってしまっているのである。

 

「ま、残念でしたわね」

「惜しかったなユメ」

 しかし、試合を見ていたメンバー達から不満の声が来る事はなかった。

 

 チャンピオン、クジョウ・キョウヤが満足したバトルである。他に誰が満足しなかっただろうか。

 

 

「正直、イア君の為とはいえ大人気ない戦いを申し出たかとは思っていたが。その考えから訂正するべきだったようだね。……ありがとう、良いバトルだった」

「……こちらこそ」

「わ、私も! 良い経験になりました!」

「見所があるな、チャンピオン! またボクと遊んでくれ」

 三人と笑顔で握手をしたキョウヤは、ふと「そういえば皆はGBNで旅行中だったか」と思い出したように言葉を漏らした。

 キョウヤの言葉に、カルミアも「そういえばね……。いや、でも話したっけ? なんで知ってる訳よ」と当初の目的を思い出す。

 

 

「邪魔をしたお詫びに、僕からもGBNのオススメ旅行スポットを教えたいから一緒に旅行なんてどうだろうか?」

「え」

「チャンピオンが」

「俺達と」

「旅行」

「っすか!?」

 そうして、ReBondとメフィストフェレスのメンバー達はキョウヤと共にGBNのオススメ旅行スポットを回る事になったのだった。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 地平線まで広がる更地。

 キョウヤがメンバー達を連れて来たのは、そんな場所である。

 

 

「何もないな」

「何もないね」

「すご! 何にもない! 逆に凄い!」

 唖然とするケイとユメの背後で、イアは逆にはしゃいでいた。

 一面見渡す限りの更地に、惑星を見た時とは違う広大さを感じる。人間とは小さなものだ。

 

「チャンピオン! ここはなんだ!」

「ここはとあるミッション用のフィールドなんだ。ちなみに、僕の独断でそのミッションはもう受けた!」

「何その行動力」

 半目でキョウヤを見るロックの前で、キョウヤは「ミッション内容は、塩を探す事だ!」と高らかに宣言する。

 

「塩?」

「おー! 塩っすね!」

 首を傾げるユメの横で興奮して目を輝かせるニャム。ユメの頭の中では、何故か塩という単語に因縁があるような、ないようなと───謎の葛藤が生まれていた。

 

 

「ほらユメちゃん、ガンダムのオタクの皆さんが良くカフェで味が薄いとか言ってるでしょ。あれよあれ」

「あー!」

 分かっていなさそうなユメにカルミアが説明すると、ユメの葛藤は解決する。

 

 

 機動戦士ガンダムでは、ホワイトベースで塩不足が問題になったというシーンがあった。

 このシーンは何故かガンダムファンの間では印象に強く残っているのである。

 

 

「よし、皆で塩を探そう!」

「……GBNのチャンピオンが塩を探してますわ」

 アンジェリカは「私達ならともかく」と唖然としていたが、キョウヤは本気で塩を探して本気でこのミッションを楽しんでいた。

 

 その内イアが「一番最初に塩を見付けた人が優勝な!」なんて事を言い出す物だから、キョウヤはバトルをしている時並みに燃え始めたのである。

 

 

「……僕が負けた」

「やったぜ、今回はボクの勝ちだね! チャンピオン!」

 ちなみに優勝したのはイアだ。キョウヤは本気で悔しがっている。

 

 

「次だ!」

 そして次にキョウヤがメンバーを連れて来たのは、何やらガンダムの世界観にそぐわないファンシーな森だった。

 

「見てアレ。ベアッガイじゃない?」

「なんだあのガンプラ!?」

 ユメが森の中でダイバーと同じサイズのベアッガイを見付けると、それを見て驚くイア。

 彼女にとってガンプラは乗り込んで操縦する巨大なロボットである。しかし、その常識がここにきて崩れ落ちたのだ。

 

 

「ここはベアッガイの森だ。ガンダムはリアルロボットだけが売りじゃないからね。所でどうやらあのベアッガイは子供とはぐれてしまったらしい。探してあげないとね」

「と、いうミッションっすね」

「いやだからその行動力何」

「なんとなく分かった! あのガンプラの子供を探せば良いんだな! 一番初めに見付けたら優勝!」

「そういう事だ!」

 ノリノリのチャンピオンと火花を散らすイア。森の中にはベアッガイの他にも、SDガンダム等のファンタジックなガンプラ達が暮らしている。

 

 これもまた、ガンダムの楽しみ方なのだと───ベアッガイの子供を一番初めに見付けたチャンピオンは自分が一番楽しみながらそう言っていた。

 

 

 

「ここは?」

「ガンプラ工場さ。ここではガンプラ工場の見学が出来るんだ。早速工場見学の予約はしておいたからね」

「だから何その行動力」

「ダイバーシティと同じで、ここも現実とGBNの境目みたいな場所なんすねぇ」

 キョウヤはメンバー達を、ガンプラを作る工場を見学出来る施設に連れてくる。

 

 この場所はGBNのダイバーシティとは違い、現実と殆ど変わらない施設が並んでいて、実際の工場見学と同じようにガンプラの製造を見学する事が出来るのだ。

 

 

「うぉぉ! プラスチックの再利用、生成、こんな風に間近で見られるなんて! 感激っす!」

「こうやってガンプラが出来てるのか! でも、なんかこのガンプラ小さくないか?」

「僕達の世界ではね、ガンプラはこのサイズなんだよイア君」

 興奮して騒いでいるニャムの横で、イアの疑問に答えるキョウヤ。

 

 人と同じサイズのベアッガイを見て驚いていたイアである。現実のガンプラのサイズを知って、彼女は唖然としていた。

 

 

「1/144、これが主流であるガンプラのサイズだ。僕達はこうしてパッケージに包まれたガンプラを買って組み立て、飾ったり改造したり、眺めたり───こうしてGBNにログインして遊んだりしているんだよ」

「ガンプラって凄いんだな!」

 目を輝かせるイア。

 

 

 旅はまだまだ終わらない。

 

 

「本物のサンクキングダムじゃない」

「ニャムが砂で使ってた奴か!」

 

「コロニーの落ちた地、か」

「なんかデカい穴があるぞ!?」

 

「軌道エレベーターってやっぱり実際に見てみるとまた途方もないな」

「なんだこれ! 柱が空まで続いてるぞ!」

 

「ヤナギランの花畑、懐かしいねケー君。ニャムさん」

「そうだな」

「あ、あはは……その件はどうもというか、あはは」

「すっごい綺麗な花畑だな!」

 メンバー達は地球の様々な場所を巡る。

 このままずっとGBNで遊んでいたい気持ちもあるが、しかしそういう訳にはいかない。ここはどれだけリアルでも、現実の世界ではないのだから。

 

 

 

「───おっと、もうこんな時間か」

 コンソールパネルを開いたキョウヤのそんな言葉に、全員が時間を確認した。予定よりも長居してしまった事に驚きつつも、名残惜しさにメンバー達は少し言葉を失ってしまう。

 

 

「───あの、キョウヤさん!」

 その沈黙を破ったのは、ケイだった。

 

 

「どうしたんだい? ケイ君」

「俺も、キョウヤさんとバトルがしたいです」

 彼の目を真っ直ぐに見てそう言ったケイ。ユメ達とのバトルを見て、ケイはずっと考えていたのである。

 GBNのチャンピオン───クジョウ・キョウヤと自分もバトルがしたい。あんな熱いバトルを見せられて、燃えないビルダーはいないと。

 

 

「……良い目をしている」

「それじゃ───」

「でも、今日はもう遅い。僕もその気持ちには答えたいし、ユメ君に聞いたけど彼女のガンプラを作ったのは君なんだってね。……君と戦うのが楽しみだ」

 そう言って、キョウヤは少し考えた後こう話を続けた。

 

 

「きっと、その機会は直ぐに訪れると思う。僕はGBNのチャンピオンとして、その勝負を受け入れるし───楽しみにしているよ」

「その機会?」

「直ぐに分かるさ」

 そうして、ケイ達はキョウヤと別れを告げる。

 

 

 別れ際───

 

「チャンピオン!」

「どうしたんだい? イア君」

「この世界は面白いな! 本当に、色んな事が出来る!」

「あぁ。僕もそう思うよ。イア君は、この世界が好きかい?」

「おう!」

「それは良かった。僕も、この世界が好きだ」

 ───そう語ったチャンピオン、クジョウ・キョウヤの顔は本当に心からこの世界を楽しんでいる少年のような笑顔だった。




第十章───完!

次回から新章突入となります。お楽しみに!
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