ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】 作:皇我リキ
イベント戦待機ルーム。
「───それでは、もう一度ルールを再確認するっすよ」
イベント戦が始まる前に、ニャムは細かいルールと作戦を整理しようと思ってそう口を開いた。
「まずステージは地球圏A。大規模イベント用の宇宙空間っすね」
「確かスペースデブリとか小惑星の破片とか、それなりの大きさの障害物はあるけど……小惑星とか宇宙要塞とか、戦術を変えなきゃいけない程の障害物はないステージよね」
「カルミア氏の言う通り、場所によって考える事を変えなくても良いので今回のイベントに適したステージとも言えるっすね。今回はこの広大なステージの各ポイントにフォースごとの自軍エリア───つまりリスポーンポイントが用意されているらしいっす。自軍エリアから半径五百メートルはダメージ無効エリアになっていて、リスキル対策もバッチリっすね。ただし自軍エリア内からの攻撃は威力が大幅に落ちるのと、自軍エリアに近ければ近い程にも攻撃の威力の低下があるので注意が必要っす。各フォースの自軍エリアは最低二キロの距離があるらしいので、一番近くのフォースとの戦闘範囲は大体一キロって事を頭の中に入れておくと良いかもしれないっすよ」
ステージの範囲は五百キロメートルを超える。
これがどれだけ広大かというと、実に東京から四国地方までの直線距離が大体五百キロメートルという事を考えると分かる筈だ。
距離といえばフォースメフィストフェレスのエースで狙撃手───スズの有効射程距離が訳五十キロメートルなので、その十倍の距離があると言う点も驚きである。
「ルールは変則スコア戦。簡単に言うとMSを撃破するとポイントが貰えるので、ガンガンMSを撃破してポイントを頂こうってルールですね。撃破されたMSは即リスポーンするっすけど、一分間自軍エリアから出る事が出来ないっす。……あとは変則スコアの変則の部分ですが、これはフォースの戦力によって会得ポイントが違うって事っすね」
「ボクも出られるルールって事だ! 会得ポイントの違いって?」
「今回参加するフォース、メンバーの数の制限はないんすよ。ようするに、自分達のような少人数フォースから三十から五十人もメンバーがいるフォースや、百人以上メンバーのいる大型フォースまで、フォースメンバー全員が参戦するバトルなんっす。これは大きなハンデになるので……メンバーの少ないフォースの会得ポイントは高く、逆にメンバーの少ないフォースの機体を撃破した時のポイントは少なく設定されています。そしてメンバーの多いフォースの会得ポイントは低く、逆にメンバーの多いフォースの機体を撃破した時のポイントは大きく設定されているっす」
メンバーの少ないフォースも多いフォースも不利有利はなく、逆にメンバーの少ないフォースを狙うか多いフォースを狙うかという戦略が試される事になるルールになっていた。
「ようするに、狙うはAVALONって事だな」
「ロック氏の言う通り、AVALONはメンバーも多いですからね。チャンピオンとも戦えるという事なのでジブンもそう言いたい所なのですが───それは他のフォースも考えている事は一緒なのではないでしょうか?」
「皆チャンピオンと戦いたいし、メンバーの多いフォースの機体を撃破してポイントを稼ぎたいって事か」
ケイがそう言うと、ニャムは「その通りっすね」と残念そうな顔を見せる。
しかし彼女は直ぐに切り替えて、大きなコンソールパネルにマップを表示してこう口を開いた。
「イベント戦、やるからには本気で勝ちに行くというのは絶対ですけど───こんな機会は少ないので出来るだけ楽しめる作戦を立てたっす。このマップを見て下さい」
ニャムの表示したマップ、そこには全てのフォースよ自軍エリアが三次元的に表示されている。
「ジブンから近い位置に、ビルドダイバーズの自軍エリアがあるっす。他にも近いところだとメフィストフェレス、虎武龍、第七機甲師団。初めのうちはこの辺りとの戦闘を意識して戦うのが良い───というか、メフィストフェレスは絶対に仕掛けてくるっすよ」
「メフィストフェレスの自軍エリアと私達の自軍エリア、三十キロしか離れてないもんね」
「三十キロも離れてるじゃねーか───いや、待てよ? アレの有効射程距離って……」
ユメの言葉に、ロックは顔を真っ青にした。
「
「アイツなんなん。化け物なの?」
ライバルフォースの実力を再び思い知ったロックは頭を抱えて蹲る。
そんな中で、ケイは表示されたマップを真剣な表情で眺めていた。
「ケー君、何見てるの?」
「AVALONと百鬼の位置かな。あと……」
「百鬼?」
「ケイ殿、百鬼と何か因縁でもあるんすか?」
「いや、実はGBNを始めたばかりの頃に、百鬼のオーガさんって人と戦った事があって……。また戦えるのかも、なんてさ」
「ケイ殿もなんだかんだで熱い人っすよねぇ」
膝を当ててくるニャムに、ケイは顔を赤くして目を逸らす。
そして逸らした視線の先で、ケイはもう一つの探し物を見付けたのだった。
「……アンチレッド」
「本当だ」
ケイが指差す先───自軍エリアからはあまり近くないが、遠くもない位置にそのフォースの名前が表示されている。
本当に参加するのかすら分からなかったが、その名前はその場所に確かに存在していた。
「……ニャムさん」
「イベント戦、制限時間は三時間っす。その間に、ジブンは出来るだけ楽しんで、力を出し切りたい。……もしその時が来たら、ジブンも兄と話す覚悟はしてるっすから。そこは、ケイ殿やロック氏の判断に任せるっす」
試合開始の作戦は決めたが、その後は周りのフォースの動きにもよるだろう。
その時の事はその時に決めれば良い。今はただ、楽しもうとニャム達はそう心に決めたのだった。
☆ ☆ ☆
広大な宇宙空間が広がっている。
目の前に表示されるカウントダウン。その数字がゼロになってから数秒後、暗黒だけが広がっていた空間で炎や光が走り出した。
三百のフォース。
その全てが競い合うバトルロワイヤルが始まったのである。
「よっしゃ行くぜお前ら!!」
「くれぐれもメフィストフェレスの居る方角には要注意っすよ!」
「だとしても最初に戦うのはアイツらだ!」
自軍エリアからメフィストフェレスのエリアに向かう、フォースReBondのメンバー達。
無敵エリアである自軍エリアを離れた瞬間、戦いの火蓋は切って落とされた。
「待ってろノワール、今回は勝たせてもら───」
光がロックの機体を貫き、爆散させる。
「だから要注意って言ったんすけどぉ!?」
「待って、イアちゃんとカルミアさんも撃破されてる!?」
「は?」
ユメの言葉に辺りを見渡すケイ。彼女の言う通り、イアもカルミアもロックと
「ちょ、なんですとぉ!? 退避退避! 一旦退避!!」
急いで自軍エリアに戻るケイ達三人。
撃破された三人はリスポーンして、唖然とした顔で固まっている。
「……な、何が起きたのよ」
「なんか突然やられたぞ!?」
「三人同時って、どういう事だよ」
「もしかして……スズちゃん、今回ライフルを三本持ってきてるんじゃ」
冷や汗を流しながらそう言ったユメの言葉に、ニャムとケイは顔を真っ青にした。
ありえない話ではない。
今回のルール、狙撃で敵を倒すのはポイント稼ぎとして効率が一番良いのである。
そしてメフィストフェレスのスズというダイバーはそういう事が出来るダイバーだ。
「───ロック、カルミア、イア……撃破」
───そして実際、スズはビームスナイパーライフルを三丁所持している。
「流石ですわ、スズ!」
「よし、これで一分はReBondも出てこれない。狙撃が通り易い初動はとにかくポイントを稼ぐぞ」
「……了解。護衛よろしく」
トウドウの言葉にそう返事をしたスズは、メインアームとサブアーム、合計三丁のビームスナイパーライフルを別々の敵に向けて引き金を引いた。
その全てが敵を撃墜していく。
「───なんだ今の狙撃!? どこからだよ!!」
「───今別のフォースに仲間がやられたぞ!? 索敵どうなってる!?」
「───獲物を撮られた!! 畜生、何処に居るハイエナめ!!」
彼女から半径49.8km以内の敵を次々に貫く光。
まず何をされているか分からないこの現状で、スズは殆どノーマークだ。しかし、狙撃手が居るとバレれば少し話は変わってくる。
最初にReBondを潰したのは、彼女達の戦法を一番分かっている相手だからだった。これはトウドウの作戦勝ちだろう。
「今頃スズちゃんの狙撃でポイントいっぱい稼いでるんだろうね……。どうしよう、ケイ君」
「イベント戦上位は勿論、ライバルフォース達に負けないのも目標だしな。当初の作戦通り、メフィストフェレスはなんとか攻略しておきたい。ニャムさん、さっき考えた対メフィストフェレス戦法、プランCならいけるんじゃないかと思うんだけど」
ロック達が撃破されて一分。
「そうすっね。相手が三本持ちでも、なんとかして見せるっすよ。───さて、反撃開始っす!」
黄金色に光るニャムの今回の機体が先行して自軍エリアを離れた。
超大規模変則スコア戦───開幕である。