ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】 作:皇我リキ
宇宙を光が走る。
同時に走る三本の光は、MSを同時に四機貫いて爆散させた。
「どこから撃たれてるんだよ!!」
「敵はどこにいるんだ!?」
そう言って背中合わせで盾を構えるも、無慈悲な光が再び戦場に降り注ぐ。
「大量大量ですわー!」
「……次」
フォースメフィストフェレス。
その狙撃手、スズの有効射程距離は約五十キロメートル。
この広大な宇宙空間でMSを撃破すれば撃破するほどポイントの稼げるスコア戦では、その狙撃能力の価値は計り知れなかった。
「アンジェ、そろそろアイツらが動くぞ」
「もう一度撃ち落として差し上げますわよ、フォースReBondの皆さん! このイベント戦、こちらの狙撃がバレてない序盤がポイント稼ぎの勝負所。邪魔されたらたまりませんわ!」
「撃つのはアンジェリカさんじゃなくてスズ姉さんだけどねー」
「撃つのはスズ姉さんであってアンジェリカさんじゃないけどねー」
レフトとライトのツッコミにもその自信満々な表情を変える事なく、アンジェリカはReBondの自軍エリアに向けてどこからか取り出した扇子を向けてこう口を開く。
「さぁ、スズ! やっておしまいですわ!!」
「……了解」
再び、戦場に閃光が走った。
☆ ☆ ☆
宇宙を光が走る。
ビームライフルと呼ばれる兵器は、実弾とは違い距離が遠ければ遠い程威力が低下する武装だ。
しかし実弾と違い弾は真っ直ぐ高速で放たれる。
狙い定められたビームライフルを避ける事は難しい。
「───このアカツキに! ビーム兵器は無力って事を教えてあげるっすよ!!」
───ならばと、ニャムが今回用意した機体は暁の名を冠するMSだった。
黄金に輝くその装甲に狙撃が命中するも、ビームはまるで反射されるように弾かれてしまう。
ガンダムSEEDDESTINYに登場するこのアカツキはヤタノカガミと呼ばれるビームを無効化する装甲を持つMSだ。
シラヌイと呼ばれるドラグーンシステムを搭載したストライカーパックを装備し、そのドラグーンシステムはνガンダムに代表されるビームバリアを展開出来る。
そのビームバリアでユメ以外の四機を守り、ユメはフルクロスというビームを防ぐ装備でスズの狙撃から身を守った。
「───全部防がれた……?」
「なんですと!?」
三本のビームスナイパーライフルに対しての答えを見せつけたReBondのメンバー達は、間髪入れずにメフィストフェレスのメンバーが展開する領域に足を踏み入れる。
「こちらの射程距離に入ったっすよ!」
「さっきは良くもやってくれたな!! オラ、ここからは俺達の反撃の時間だぜ!! トランザム!!」
敵を目視出来る距離まで近付いたロックが先行し、ReBondのメンバーはそれに追従した。
「……舐めるな」
そのロックに狙いを定め、スズのビームスナイパーライフルが光を放つ。ビームはロックのデュナメスHellに直撃し爆煙が宇宙に広がった。
「───舐めるなはこっちの台詞だぜ!!」
「───な!?」
───しかし、その爆煙の中から赤い光を放つデュナメスHellが飛び出してくる。彼の機体はGNフルシールドこそ破損していたがほぼ無傷だった。
「……フルシールドにまで防がれた」
「近寄らせませんわよ!!」
「やるな、ロック」
唇を噛むスズ。
そんな彼女にビームサイズを構えながら直進してくるロックの前に、アンジェリカとノワールが立ち塞がる。
二人はミラージュコロイドを展開してスズの近くに待機していた為に、ロックはその存在に気がついていなかった。
「三人まとめて相手してやるぜ!! ここは俺の距離だ!!」
しかし、この距離まで接近したロックのトランザムまで使ったデュナメスHellを止められるダイバーはそういない。
二人掛かりでロックを止めようとするアンジェリカとノワールだが、ロックを止めるだけでも押し切られている状態である。
「お得意のミラージュコロイドでチマチマ逃げる作戦はどうした!」
「そんな事したらスズを倒しに行くのが分かっているんですのよ……!」
アンジェリカのゴールドフレームオルニアス、ノワールの迅雷ブリッツはミラージュコロイドを使用したヒットアンドアウェイを得意とする機体だ。
こうして味方を守りながら戦う立ち回りは、本来の機体特性に合っていないのである。
そもそも本来ならスズの近くでミラージュコロイドを使って待ち伏せしていた二人に対して、一人で攻め切るなんて該当が出来るロックの接近戦闘センスがこの状況を作り上げていた。
「二人を助けよう!」
「同じ事思ってた!」
「そうはさせないっすよ!」
「二人の相手は俺達だ!」
そんな二人を助けようとするレフトとライトを囲むケイとニャム。
「EXAMシステムを止めるだと……」
「残念ながらこのレッドウルフにパワーで勝つのは難しいのよね。おじさん達の前で奥の手を見せちゃったのが敗因よ」
EXAMシステムを使用したトウドウのクランシェアンドレアをサブアームを展開したカルミアのレッドウルフが止める。
フォースReBondとメフィストフェレスのメンバー数は同じく六人。
ロックが二人を止めている為、一人ずつ個人戦に持ち込めば───何処かで二対一を作る事が可能だ。
「さて、今回はこっちが二対一だよ! スズちゃん!」
「今回もボクが勝つよ! スズ!」
「……なるほど」
───敵のエースであるスズに対して、ユメとイアが勝負を仕掛ける。
ユメのデルタグラスパーが今回装備しているのはフルクロスを含めたクロスボーンストライカー。
ABCマントよりも強力なビーム耐性を誇るフルクロスと、ムラマサ・ブラスターにピーコック・スマッシャーと遠近どちらにも対応出来る万能装備だ。
イアのZガンダムと共に、挟み込むようにしてスズのサイコザクレラージュを襲う二人。
しかしスズは、サブアームを巧みに駆使してビームバズーカとザクマシンガンを二人の機体に向ける。
「……挟み込みが単調」
「それはどうかな!」
ザクマシンガンの射程から、機体を変形させて高速移動形態を取るユメのデルタグラスパー。
フルクロスを装備したまま変形機構を保てているのは、ケイのビルダーとしての能力の賜物だ。
「……早い」
その速度に、サイコザクのサブアームは付いていけない。
変形状態のデルタグラスパーの速度に、クロスボーンストライカーのスラスターを加えた彼女の機体はサイコザクレラージェの反応速度を超えている。
「前回は負けたけど、今回は私が勝つよ!!」
「……っ!」
サイコザクの真下から急接近し、変形してムラマサ・ブラスターを展開するユメ。
サイコザクレラージェは六本のサブアームにより四方八方への攻撃が可能なガンプラだ。
しかし、その構造上足元だけは死角もあり攻撃が覚束無くなる。地上では問題ないが、この宇宙空間において完璧とも思われるサイコザクレラージェの弱点が機体の真下だった。
「……ユメ!」
ビームスナイパーライフルを捨て、メインアームでヒートホークを構えながら機体を翻すスズ。
同時にムラマサ・ブラスターとヒートホークが重なり合い、光が弾ける。
「スズちゃん!!」
「このサイコザクレラージェに……死角はない!」
反応速度が追い付かずに間合いに入られたスズだが、彼女は攻撃を受け止めて直ぐに体制を立て直した。
フルクロスでビームの通りが悪いデルタグラスパーに、彼女はサブアームのザクマシンガンを突き付ける。
「そうはさせないもんね!!」
しかし、その背後からビームサーベルを構えて突撃してくるZガンダム。スズは機体を翻しながら、ゲシュマイディッヒパンツァーで押し出すようにZガンダムを振り払った。
「お、やるなぁ!」
「……私は負けない」
「ユメ!」
Zガンダムの相手をしている内に、一度ユメが離脱する。そんな彼女に構う事なく、スズはイアのZガンダムに狙いを定めた。
「ボクも一旦逃げよ!」
「……逃すか」
スラスターを吹かせて後退するZガンダム。隕石の背後に隠れたZを追い掛けて、スズは隕石にビームバズーカを向ける。
放たれる光。
名前の通り、ビームバズーカの威力は絶大だ。その一撃で隕石は粉砕したが、イアのZガンダムは見当たらない。
どこか死角から他の遮蔽物に隠れたのだろうと、スズは周囲の警戒に神経を尖らせる。
「───可変機、ユメか……!」
再び真下から。
高速で接近してくる機体を見付け、スズは姿勢を整えながらザクマシンガンを構えた。
今度は反応が早く、間合いに入られる前に引き金を引ける。
「残念ボクだよ! 変形出来るのはユメだけじゃない!」
「な……!」
───しかし、真下から接近してきたのは今さっき見失ったばかりのZガンダムだった。
放たれるザクマシンガン。
Zは変形してシールドでそれを防ぐが、スズの焦りはそこじゃない。
さらに別方向から高速で接近してくる機体を見付ける。
咄嗟にビームバズーカを構えるが、それが意味のない事だという事をスズは気が付いていた。
「ビーム兵器は耐えられるよ……!」
クロスボーンストライカーのフルクロスはビーム兵器を弾く性質を持っている。フルクロスを装備したデルタグラスパーにビームは効きにくい。
だからこそ、スズはユメの機体に対してザクマシンガンを向けるようにしていたのだ。
しかし初めに高速で接近してきたMSはイアのZガンダムであり、スズはZにザクマシンガンを向けてしまっている。
ビームスナイパーライフルを三本持つ為に他の装備を減らしたサイコザクレラージェには、Zの反対から責めてきたユメのデルタグラスパーに向けられる
「……強いな」
「貰った!!」
ビームバズーカをフルクロスが弾き、ムラマサ・ブラスターがサイコザクレラージェを切り裂く。
「……今回は負けた、か」
爆散するサイコザクレラージェ。
バランスの崩れたメフィストフェレスのメンバーは、レフトとライトも撃破され、続いてトウドウも落とされた。
「ここだぜ! さっきからスナイプしてきた奴がいたの!」
「もうスナイパーはやられたみたいだな! だがまたスナイプされても面白くねぇ! ここを拠点に戦おうぜ!」
そしてその戦闘の光に釣られてか、他のフォースの機体も集まってくる。
このバトルで戦うフォースは一つだけではない。
ReBondの目的はメフィストフェレスと一度戦い、戦闘地域をそこに作る事である。
そうすればリスポーンする度にスズに狙い撃たれる心配が減るからだ。
「ぐぬぬぬぬぬぬ、ReBondにしてやられましたわ。こんなにも早く狙撃ポイントを失うなんて!」
「今回は負けだな。……これ以上キルポイントを渡す必要もない。撤退して、別の狙撃ポイントを探そう」
ミラージュコロイドで隠れた二人は、自軍エリアに離脱。
戦火は拡大し、その場は数多のフォースが集まる戦闘地域となる。
「さて、自分達も撤収しましょう。それなりにキルポも盛れたっすからね」
「タケシ君はまたやられちゃったけど、これでスズちゃんも迂闊には手を出してこれないもんね」
ReBondは混戦の中数機体を撃破するが、トランザムの切れたロックが撃破されたタイミングで一度撤退する事にした。
イベント戦は始まったばかりである。戦いはここからが本番だ。