ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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知将ロンメル

 ReBondのメンバーを囲むロンメル隊のMS。

 

 

「おいおいおい、凄い数だなこりゃ」

 ケイやユメ、アンディ達ガイアトリニティ大隊の後方から援護射撃に徹していたReBondのメンバー達だが、彼等はロンメルの策略にハマり包囲されていた。

 

 

「……これがロンメル隊の指揮能力って事っすかねぇ。コレだけの戦力を作戦展開領域に温存しておける手腕は恐ろしいっすよ」

「感心してる場合か!?」

「でも、ボクらにも頼もしい()()()がいるじゃないか」

 脳天気な声で、しかし確かな自信混ざりにそんな言葉を漏らすイア。

 その場でガイアトリニティ大隊を掩護していたのはこの三人だけで、カルミアだけはさらに後方に待機している。

 

 しかし、それもロンメルにはお見通しだ。

 MS一機が外側を取れたとしても、この数の包囲網を抜ける事は出来ない。

 

 

 ───普通なら。

 

 

「……さて、こっちはこっちの役目を果たすっすよ!!」

「ま、やるしかないわな」

「おー!」

 ニャムの機体、アカツキのヤタノカガミが光を反射させる。反撃の狼煙は直ぐに炊かれることになった。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 ロンメルの指示と同時に、ケイ達を取り囲む大隊が一斉に射撃を開始する。

 

 

「───回避行動!!」

 アンディに言われ、なんとか機体を動かすが弾幕の量はこれまでとは桁違いだ。

 それにロンメル隊の三百六十度全てを包囲する完璧な配置で、何処にいても何処かしらからの射線が通ってしまう。

 

 この作戦展開領域に逃げ場など存在しない。

 

 

 

「……っ、えーい! 迎撃開始! こっちにはフェイズシフトがある。ある程度無理してでも数を減らすぞ!」

 逃げ場がないことを理解したアンディは舌を鳴らしながらライフルを構える。

 

 ユメ以外の機体は全てフェイズシフト装甲により実弾のダメージは大幅に軽減されるが、完全にダメージがない訳ではない。

 そして、当たり前だがフェイズシフト装甲は無敵の装甲ではなかった。

 

 

「対実弾装甲において、ガンダムの世界では確かにフェイズシフト装甲は最高の性能を誇る。しかし、弱点がない訳ではない───」

 ロンメル隊の猛攻。

 その中で遂に、ガイアトリニティ大隊の八番機が撃退されてしまう。

 

 

「た、大隊ぉ───」

「八番機か……! くそ!」

 八番機は初めの戦闘で被弾した機体だ。元々の損害もあるが、それよりも───

 

 

「───フェイズシフト装甲の発動には膨大なエネルギーが必要だ。通常弾頭でも七十六発でその効力は失われる。いつまで持つかな、アンディ」

「四番機、八番の穴を埋めろ! デルタをやらせるな!」

 ガイアトリニティ第三中隊はユメのデルタグラスパーの護衛が任務である。

 作戦の要であるデルタの撃破は直接敗北に繋がる損害だ。前線の維持を捨ててでも、デルタグラスパーの護衛は第一優先事項である。

 

 

 

「ガイアトリニティ他二機はストライクとデルタプラスか。……デルタプラスにはツインドライヴ。フェイズシフトのないデルタを守っている所から見るに、アンディの切り札はデルタと見た」

 戦闘宙域の一番端で、ロンメルは冷静に状況分析をしていた。

 

 トランザムには、確かに今この状況を打破出来る程の力がある。

 しかし、逆に言えばそれさえ警戒すれば怖いものはなにもないのだ。

 

 

 

 一流の戦略家は勝機を見出すのではなく、敗北の芽を一つずつ摘む。

 

 

 

「攻撃部隊、太陽炉付きのデルタプラスを集中攻撃せよ。……ビーム撹乱幕の仕様を許可する!」

 勝利へのビジョンは戦う前に決めるものであり、その準備は戦いの中でこそ生きるものだ。

 

 

「トランザムの警戒、後方の援護部隊との遮断、私の戦略は完璧だ。……さぁ、どうするアンディ」

 不敵に笑うロンメル。

 

 アンディとケイ達は、着々と知将ロンメルの策略に押し潰されていく。

 

 

 これがフォースランキング二位。第七機甲師団の本領だ。

 

 

「倒せない相手ではない、だけどコレは……! 持つのか!?」

 戦闘の中、ケイは自分の機体のエネルギーが尽きかけている事に気が付いて冷や汗を流す。

 

 イベント戦が始まって小一時間以上。

 ケイ達が第七機甲師団に攻撃を仕掛けた時点で、第七機甲師団の戦力は他のフォースに大幅に削られた後だった。

 他フォースからの攻撃で被弾した機体が多く、普通に戦っていれば負ける事はないだろう。

 

 しかし、その殆どが損傷しているとはいえ撃破されていない()()の捨て駒だ。

 人海戦術程恐ろしい戦術はなく、その戦術を組み込んだ戦略は完璧に等しい物である。

 

 

 

「───この鼠取り作戦は私にとって最初のプランに他ならない。そして、君がこのタイミングで仕掛けてくる事は予想出来た。……故に、被弾済みの機体で多少のポイントはくれてやっても砂漠の犬という大きな()を最後に取る事でこの鼠取り作戦は真の成功となるのだ。ここで使った被弾済みの機体は完全修理で戦場に戻り、私は次の作戦を立てる。君はその礎になれ……アンディ!! ビーム撹乱幕、発射!!」

 ロンメルの指示で、大型のミサイルが戦場に発射された。

 

 アンディは咄嗟にそれをライフルで撃ち落とすが、ミサイルの爆発に混じって小さな粒子が戦場に広がる。

 

 

 

「アンディ!」

「これは……ビーム撹乱幕か! 大佐め、厄介な物を残していたな」

 周囲のロンメル隊の機体をビームライフルで撃破していたアンディだが、突然発射した筈のライフルが威力を落とした。

 エネルギーが切れた訳ではなく、周囲に放たれた細かな粒子がビームのエネルギーを吸い取って威力を低下させているのである。

 

 

「た、隊長! ビームが効きません!」

「無駄弾を撃つな!」

「しまった、エネルギーが───うわぁぁ!?」

 更に撃破されるガイアトリニティ。戦況は誰が見てもロンメル隊の優勢だ。

 

 攻撃すればする程、エネルギーは失われて頼みのフェイズシフト装甲も使えなくなる。

 しかし攻撃しなければ敵の攻撃でこちらの戦力を奪われるだけだ。

 

 

 劣勢。

 逆転の手立てはない───

 

「───そう、思っているんだろうね」

 この状況でアンディは笑う。

 

 

 

「大佐!!」

「なんだ? 騒騒しい」

 ロンメルの元に届く一通の通信。その声の主は、震えるような声でこう続けた。

 

「後方の援護部隊の包囲が……突破されました!!」

「なんですって!?」

 思わずキャラがブレる程慌てるロンメル。

 

 そんなバカな、と彼は思考を巡らせる。

 

 

 後方の援護舞台はガイアトリニティではなく、デュナメスやZ等の混合部隊だ。

 おそらくストライクやデルタと同じチームで、アンディは彼等と手を組んで戦いを挑んで来たのだろう。

 

 一機だけさらに後方に下がったドーベンウルフの火力は脅威だが、残りの後方部隊を囲んでしまえはコレ一つが脅威になる事はありえない。

 デュナメス、Z、そしてアカツキも単体では強力な機体だがアンディ達を包囲したのと同等の戦力で三機だけを包囲したのだ。それが突破される事等、ある訳がない。

 

 

「ドーベンウルフのメガランチャー以上の脅威が隠されているのか。デュナメスにZ、まさか……なるほどアカツキか!!」

「隊長!! 突破された包囲網から、四機がこちらに向かってきます!!」

 更に怯えた声で入ってくる通信。その声の主は、数秒後に断末魔と共に撃破されてしまう。

 

 

 

「───オラオラオラァ!! 待たせたなぁ、ロック・リバー様のお通りだぁ!! 道を開けろぉ!! トランザム!!」

 トランザムにより赤い粒子を撒き散らしながら、道中の敵を薙ぎ倒していくロック。

 その背後から、ReBondのメンバー三人がロックの取りこぼしを撃破しながら主戦場に接近していた。

 

 

「タケシ君!」

「ロックな!!」

「待ってたぞタケシ!!」

「だからロックな!!」

 いつものやり取りを交わしながら、ロックは殆どが被弾しているとはいえロンメル隊の機体を次々と薙ぎ倒していく。

 

 その姿と後方の機体を見て、ロンメルは不敵に笑うのだった。

 

 

 

「なるほど、私はアンディだけを見て彼と手を組んだフォースを見くびっていたようだ。……だが───」

 銃口を背後に───迫ってくるロック達に向けるロンメル。

 

 彼の指示の元、部隊が再編成される。

 

 

「敵の包囲網に穴を開ける、だよね! ニャム! 任せてよ!」

「もういっちょやってやろうじゃないの」

「さぁ、こっからが本番っすよ!!」

「───ロンメル隊が甘くない事を、その身に叩き込んでみせよう」

 敵の包囲網をこじ上げる、その為にアンディが仕組んだ戦略。

 

 

 今まさに、砂漠の犬の牙が知将ロンメルの首を噛もうとしていた。

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