ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】 作:皇我リキ
ロンメル隊の包囲網に隙はない筈だった。
アンディ達ガイアトリニティ大隊を囲む隊をロンメルは直接指揮、ロック達三機を包囲する部隊の指揮は部下に任せていたが、問題はないだろう。
たった三機相手に、ガイアトリニティ大隊を包囲した部隊と同数の部隊を回したのだ。
懸念材料があるとすれば、範囲の外にいたドーベンウルフくらいである。
それも、大部隊を相手にして包囲網を突破する程の脅威ではない。
彼等二つの部隊を包囲した時点で、ロンメルは勝ちを確信していた。
しかし───
「分隊長! 高熱源反応、来ます!」
「何? 後ろ───うぉ!?」
───背後からロンメル隊を貫く光。
レッドウルフのメガランチャーが、ロンメル隊の包囲網に小さな穴を開ける。
だがそれだけでは包囲網を完全に突破する事は叶わない。その程度の攻撃はロンメルも予測済みで、レッドウルフの火力を持ってしても一撃で葬れるのは精々中隊一つ程度だ。
それで運良く分隊長を撃破できたとしても、ロンメル隊の精鋭達の指揮が崩れる事はない。
予定通りの包囲網の修正、そんな事に一瞬だけ意識を割いたその時である。
「なんだ!? 中央───うぉぉおおお!?」
謎の光が包囲網の別の箇所に穴を開けた。
その光は外から放たれた訳ではない。中央から───包囲している筈の三機が居る場所からの攻撃である。
「バカな、別方向から? いや、包囲網の中からだと!? あの三機にこんな火力が出せる機体なんて───」
「背後からの第二射、来ます!」
「えぇい!! なんなんだ!!」
再び包囲網に穴を開けるレッドウルフのメガランチャー。そして直ぐに、中央から
「───何が……起きているのだ」
部隊は混乱していた。
包囲した三機は高出力のビーム砲なんて物を積んでいるようには見えない。
なのに、何故───
「───いやぁ、やっぱりジブンは……不可能を可能にする男なんすよねぇ!!」
「ニャムは女だろ?」
「言いたいだけなんだよその人は。ほっといてやれ」
───その答えは至極簡単である。
「ほーら、もういっちょ行きますよ」
「どんとこいっす!! アカツキのヤタノカガミで跳ね返して、連続連鎖攻撃!!」
部隊から離れたカルミアのレッドウルフの砲撃、それをニャムのアカツキがヤタノカガミで跳ね返す連鎖攻撃。
包囲網の外と中から超威力のビーム砲を同時に放つ形になり、相手の混乱も相まって四人は包囲網を突破する事が出来たのだった。
数が減り、三人の援護で接近戦に持ち込めばロックはロンメル隊の隊員をも凌ぐ実力を発揮出来る。
崩れた包囲網を突破する事は、そう難しい事ではなかった。
ロンメルはイベント戦の後に彼等ReBondに付いて少しだけ触れ、こう称えたという。
「窮鼠猫を噛むとは、まさに彼らと私の事だろう。……私は猫ではないがね」
追い込み、追い詰められた鼠に、ロンメルは噛まれたのだった。
☆ ☆ ☆
───しかし比較的に、ロンメルは冷静である。
包囲網が崩されたと知って数秒もたたずに部隊を再編成、ReBondのメンバー四人の迎撃体制を取った。
「接近戦に特化したガンダムデュナメスか。……ならば、接近させないまで! 迎撃体制を取れ! 各部隊援護射撃」
ロンメルの指示で、部隊は纏まって動きながらロックから距離を離す。
確かにロックの近接戦闘センスは、上位プレイヤーにも通用する実力だ。しかし、それは接近戦だけの話。
「な、なんだコイツら!? いきなり動きが……」
ロックから距離を取った相手に、近接戦特化のデュナメスHellは無力である。近付こうとしても、援護射撃の弾幕が厚く突破する事が出来ない。
「んなろぉ! ちょこまかと───のわ!?」
それどころか、ロックは正確な指示の元に形成された包囲網に囲まれ───気が付いた時には逃げ場を失ってしまっていた。
焦ってGNフルシールドを展開するが既に遅い。四方八方からの攻撃がロックの機体を一瞬で蜂の巣に変えてしまう。
「あー! こんな所で!?」
ロック撃破。
「───次だ」
ロンメルの猛攻は終わらない。
イアにニャム、カルミアに対しても戦力を送り込み確実に一つずつ仕留め───ReBondの機体はケイとユメを残して全滅してしまった。
「あの四人があんなに簡単に……」
「数の利もあると思うけど、統率力が凄い。こんなに綺麗に作戦が決まるのは隊員が隊長を信用してる証だろうな───」
ReBondの隊長はロックだが、彼は彼で勿論仲間として信頼している。
しかし、ロンメルのカリスマ性は別格だ。
そう思うと同時に、ケイは自分達にとってロンメル隊よりも近しい関係にあるフォースのリーダーであるアンディのカリスマ性を恐ろしく感じる。
「───だけど、それはこっちも負けてない。何せ、あの人はフォースメンバーじゃない俺達すら手駒にしてるんだからな」
「───第二中隊、包囲網の穴を広げるぞ!! フォーメーションEだ!!」
「───やはり動くか、アンディ」
ロンメルがReBondの四人に気を取られた一瞬。
ガイアトリニティ大隊を囲む包囲網に生まれた隙を、アンディは逃さなかった。
航空機形態に変形したガイアトリニティ一個中隊は、翼のビームサーベルを展開して包囲網に生まれた隙へ突撃する。
勿論ロンメル隊の先鋭がそれを見ているだけで済む訳がない。激しい弾幕が第二中隊を襲うが、その弾幕が全て第二中隊に届く事はなかった。
「援護射撃! バルカンの弾は撃ち尽くして構わん!!」
第一第三中隊のガイアトリニティ、そしてケイのストライクBondがバルカンを撃ち尽くす勢いで第一中隊を援護する。
ロンメル隊の放ったミサイルは殆ど撃ち落とされ、マシンガンの一発二発等フェイズシフト装甲を発動しているガイアトリニティには無力だ。
第二中隊はビームサーベルと変形機構による機動力で、ロンメルの包囲網に空いた
「やるな、アンディ。……だが、猪口才はそれまでだ! 部隊再編成は済んだな。第二大隊で包囲網を形成しつつ、第六中隊は生き残りの第四第五中隊を纏めて遊撃に当たれ。第一から第三中隊、迎撃体制を整えよ!」
ガイアトリニティの第二中隊に攻撃されている迎撃部隊の体勢を整える為、ロンメルは中隊で遊撃を行い時間を稼ぐ作戦を立てた。
「敵がスイッチするぞ。怯んだ相手を逃すな! 第一中隊は俺に続け、遊撃部隊を攻撃する! 第三中隊と少年ほデルタの護衛を抜かるなよ! フォーメーションE、敵を殲滅する!」
そしてロンメルの動きを見て、アンディは自分も加わりながら戦術を展開していく。
「───第六小隊を下がらせろ、包囲網から人員を割くのだ」
「───第二小隊、左翼側から来る敵を二十秒足止めしろ! 残りは二十五秒以内に正面の敵を叩くぞ!」
戦略と戦術、その二つがぶつかり合って戦局は瞬く間に一変していった。
「六番機! 被弾状況は!」
「ダメです隊長、耐えられそうにありません! 特攻します!」
「了解した。六番機を援護する、一発噛んでこい!」
「被弾した敵が突っ込んでくるぞ。フォーカスを合わせよ、特攻などさせん!」
数の利は確かにロンメル隊にあるだろう。しかし、ロンメル隊は数々のフォースに狙われて充分な戦力があるとは言いにくい。
それに加えて機体性能と相性は遥かにアンディ達が優っているが───しかし、戦局は互角だ。
「十二番機、真下の敵を抑えろ! 第二小隊は上から来るぞ!」
「敵を上下で挟み込め! 左右には遊撃隊を展開し、敵の逃げ場を奪うのだ。機動力を殺せば、フェイズシフトも意味はない」
自らのフォースの部下を駒にして、自らも王将として戦場で戦う。
「大佐……!!」
「アンディ……!!」
二人はまるで戦場という盤上で将棋やチェスをしているようだった。
「敵大将の首を齧るぞ! 第一第二中隊、道をこじ開けろ!! 第三中隊、作戦開始だ!!」
アンディの指示で、ユメのデルタグラスパーと共にそれを援護するガイアトリニティ第三中隊が一斉に変形する。
第三中隊はそのまま、第一第二中隊が開けた───敵将ロンメルへと向かう包囲網の穴へと猛進した。
ユメを囲むように編隊飛行を行う第三中隊に着いて、ケイのストライクBondはクロスボーンストライカーの機動力を活かして第三中隊を攻撃する敵を迎撃する。
「───なるほど、ストライクは護衛部隊の護衛という事か。ならば、やはりアンディの作はあのデルタで私を落とす事……。甘い! 甘いぞアンディ!!」
突進してくるガイアトリニティ中隊に銃口を向けるロンメルのグリモアレッドベレー。
その銃口が光るより先に、ロンメル本人を護衛する仲間がガイアトリニティ中隊を迎撃する為に弾幕を張った。
デルタグラスパーを守る為、第三中隊はそれを避けずに固まって撃破されていく。しかしそのおかげで、ユメのデルタグラスパーは無傷でロンメルを射程に捉えた。
「───ここだ!!」
「君達の戦術は見抜いている!!」
ミサイルを放つデルタグラスパー、しかしその程度の攻撃はロンメルの護衛が撃ち落とす。
「終わりだな」
ミサイルを交わされたからか、起動を変えたデルタグラスパーにロンメルが狙いを定めたその時だった。
「───トランザム!!!」
赤い粒子が眼前を覆い尽くし、グリモアレッドベレーのライフルを切り裂く。
「───何!?」
これが、彼等の戦術最後の牙だ。