ギリギリ日刊チャレンジ成功。やったぜ。
私はお風呂に一人で入れない。入っちゃいけないって事になってる。入る時は絶対にお姉ちゃんと一緒。
そういう事に決まったのはいつか覚えてないし、どっちが言い出したのかも分からない。
でも別にいい。深く考える必要は無い。だってお姉ちゃんのこと大好きだから。それ以外のことを考えるのはめんどくさい。
「やってみせるからよく見てなさい」
そう言ったお姉ちゃんは、お人形のぷらーンとしてる右手を持って、よく洗剤を染み込ませたハンカチで丁寧に拭く。
私の頭を洗ってくれる時みたいに優しい手付き。
何回か擦ったら泡を落として、もう一度匂いを嗅ぐ。
……あ、顔をしかめた。
「まだ臭いー?」
「どんだけ染み付いてんのよ……。今みたいに優しく擦りなさい。間違っても強くゴシゴシしたらダメよ?」
「うん!」
優しく、優しーく、ゴシゴシよりもフワフワァ、みたいな感じ。
お姉ちゃんの相棒のモンちゃんをモフる時みたいに。
ジャー、と水で優しく洗い流したらおしまい。早速くんかくんか。
「臭い落ちた! お姉ちゃんできたよ!」
「はい良くできました……え、本当に臭わない?」
「臭くないよ?」
水で濡れててちょっと変な感触だけど、ギューって顔を埋めても平気。お姉ちゃんは不思議そうに顔をしかめてた。変なの。
しっかりとお人形から水を拭き取って、お庭の日当たりの良いところにゴローン。達成感を胸にグーンと伸びをする。
……あっ。少し上を向いて目を開けちゃった。
「痒いぃぃ……」
ゴシゴシ擦っちゃう手をお姉ちゃんに止められた。痒くて目を開けられないけど、多分呆れてそう。
「はぁ……。“ハブル”出てきて」
ブォンって音がして、スタッて音が続いた。前見えない……。
「シール。頑張って目を開けなさい」
そーっと目をほんの少し開く。途端に痒みが激しくなるけど、歯を食いしばって必死に我慢。
「ハブル。シールの目に超低火力みずでっぽう」
目にチロチローって水が入る。少し受け続けているとだんだん痒みが収まり始めて、五分もしないうちにまた目を開けられた。
お姉ちゃんに麦わら帽子を被せられる。ふぬっ。
「まったく、いつになったらシールからおっちょこちょいは抜けるのかしら?」
「ごめんなさい……」
怒ってないわ、と頭をポンッとされた。お姉ちゃんを見上げようとして、手のひらで目を覆われる。
お姉ちゃんは太陽を背にして立ってる。二の舞を踏むとこだった。あぶないあぶない。
「ほら、ハブルにありがとうしなさい」
お姉ちゃんがそう言うと、ハブルちゃんは褒めろ褒めろと胸を張った。
ハブルちゃん。お姉ちゃんの手持ちの一体で、“ハスブレロ”って言うんだって。私より大っきくて、抱っこしてもらうとちょっとヒンヤリしてて好き。
感謝の気持ちを込めてバッて抱きつく。フワッて抱っこしてくれた。
「ハブルちゃんありがとう! 目、痒いの治ったよ!」
ブロォ、って笑顔で鳴いた。よかったねって思ってくれてるのかな? だとしたら嬉しい。
シール、とお姉ちゃんに呼ばれて振り返る。今度は間違えないように、麦わら帽子のツバをしっかり抑えながら。
「良くできました。さっきのは応急処置だし、部屋に戻って目薬うつわよ」
「あれしみて痛いよ……」
我慢しなさいってあっさり受け流された。むぅ、イジワル。
ぷうって頬を膨らませながら、お姉ちゃんとハブルちゃんの後を追ってお家に戻る。
……戻ろうとして
「痛い!」
前に転んじゃった。何だろう? 何かに右足を引っ張られた気が…
「一体何? …うぅ、痛いよぉお姉ちゃぁぁん」
視界がぼやける。涙だ。痛くて泣いちゃった。
サッサッサって、お姉ちゃんとハブルちゃんの二人の足音がする。
手で涙を拭って、起き上がろうとして。
今度は強く、はっきりと分かる程に足を引っ張られてる。
見ると、変な手に掴まれてる足が徐々に地面に埋まっていっているのが見えて。
「手を伸ばしなさい! シール!!」
「!? お姉ちゃ……」
ぐっ、といっそう強く引っ張られた。
私の体が。どんどん。どんどん。地面に埋まっていって……
シール:虚弱体質。特に日の光が目に入ると駄目。