ゼルダの伝説 蒼炎の勇導石   作:ちょっと通ります

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第14話 イチゴクレープは甘く重たい

 リンクも耳を傾けてくれたようだ。

ティクルも胸を撫で下ろし、一息つく。

理由が姉達によっているのが彼らしい。

 

「ティクル、サークサーク。気を遣わせちゃったわね。―さてと、せっかくだからデザートでも食べてリフレッシュしましょう!イチゴを借りてもいいかしら?」

 

スルバが言いたかった事を代わりに言ってくれたティクルに感謝を示し、デザートを作るつもりの様だ。

態々イチゴを使うという事は、ゲルドの街では食べられないお菓子である可能性が非常に高い。

期待が持てそうだ。

 

「もちろんよ、どんなお菓子ができるか楽しみね!」

 

「その為に色々と持ってきたのか。フレッシュミルクやきび砂糖、トリのタマゴって事は…最近練習してたあれを作る気なんだな」

 

フェイパが言うように練習をしていたのか流れるような手つきで調理をしてゆくスルバ。

このデザートは使う食材が多く中々に難しい。

 

フレッシュミルクでほぐしたタバンタ小麦にタマゴを加え、きび砂糖で味を調える。

ダマなく解したそれを薄く焼いてゆき並行してクリームを作ってゆく。

最後にメインであるイチゴを生地に乗せクリームで彩るとイチゴクレープの完成だ。

 

「凄い、スルバ!いつの間にこんなお菓子を作れるようになったの!?」

 

ティクルが予想したデザートという方向性は的中していた、だが予想以上に美味しそうな甘味が出来た為たいそう驚いている。

 

「スルバ姉ちゃん、とっても美味しそうだよ!こんなお菓子初めて見た!」

 

「本当に最近よ、リンクになんでも支えて貰う訳にはいかないしね」

 

2人のやり取りからリンクが外へ出ている間に練習したのだろう。

普段から一緒にいる彼に気付かれないとなるとそれぐらいしか考えられない。

 

「まったく、練習に付き合わされたアタイの気持ちにもなっておくれよ…。おかげでちょっとお腹周りが―」

 

「あっ」

 

「?どうしたの?フェイパ姉ちゃん?」

 

フェイパがらしくない遠い目をしたところから多感なティクルも察してしまった。

ゲルド族伝統の露出の多い衣装がこの時ばかりは恨めしい。

これに関しては流石にリンクに察しろというのは無理ではあるが。

 

「ま、まあ。味の方は保証するわ。私からのお礼よ、ティクル。みんなで美味しく食べましょう」

 

自覚はあったのかスルバもそれとなく話の内容をすり替える。

クリームやフルーツは鮮度が命、早めに食べるほうがいい。

 

「「「「それじゃ、いっただっきまーす!」」」」

 

みんなこぞってデザートを食べる。

しっとりとしつつモチモチとした食感の生地に甘酸っぱいイチゴの風味が口に広がる。

その上酸味だけの主張にならない、甘みの強いクリームに癒されること間違いない口へと運ぶ手が止まらない。

 

「これ美味しい!お店に出しても文句ないレベルよ!?」

 

初めて食べるティクルがクレープに舌鼓を打つ。

いつの時代もどんな種族でも甘いお菓子が好きな女性は多い。

ましてやここは女性のみ(リンクを除く)が暮らしているゲルドの街だ。

人気が出ても不思議ではない。

 

「イチゴってこんなデザートも作れるんだね!いっぱい食べれそうだよ!」

 

「畜生…。ホントうめえ…食べるのが止まらねえ…。きっちり動いて消費もしないと…」

 

リンクが沢山食べられそうなことに満足し、フェイパは後の事を考えると悲しくなりながらも食べるのをやめない。

気が付けばあっという間に無くなっていくクレープ、甘いものは別腹とは言うように普段食べることのできない貴重なデザート各々のお腹の中に納まっていった。

 

「ふふっ、お口に合ったみたいで嬉しいわ。ティクル、これベローアさんの分も作ってあるからね?」

 

「サークサーク、母様の分まで作ってくれてるなんて嬉しいわ」

 

スルバはクレープの出来に満足し、お世話になっているベローアにお土産を用意していた。

ありがたく頂くティクル、先程の味からしてこれはいいお土産になりそうだ。

 

「…さて、リンクの話の続きを聞こーぜ。まだ行きの途中じゃねーか」

 

「そうだね、それじゃあカラカラバザールから一日かけて砂漠を抜けたんだ。その先にはゲルドキャニオンっていうおっきな岩で囲まれた谷があったんだよ!」

 

フェイパに促され説明を続けるリンク。

カラカラバザールの先にある渓谷、ゲルドキャニオンの話をする様だ。

 

「た、谷!?でっかい岩って…このゲルドの街の岩以上かよ!?」

 

ゲルドの街の床や建物は岩でできている。その頂上には水の通り道が整備されており街全体を潤す構造となっている。

 

「うん、初めは信じられなかったけれど。あの大きさだと街全部が入っちゃいそうだったよ!砂漠の外は初めての経験だったんだけど砂漠と比べると昼は寒いし夜は暑かった。あんまり気温が変わらないってホントだったんだね!」

 

「外の気候は砂漠慣れしていると厳しそうね…外では眠ると汗かいちゃうそう」

 

ゲルド族は眠る時に毛布などを使わないものもいる。

ティクルもそのうちの一人だ。

それぐらい寒さにも強い民族だが、その分慣れない夜の暑さには参るのだろう。

 

「その谷の中で一晩明かした後、初めて見たんだ!赤い鬣を持った黒い馬を!」

 

「「「馬!?」」」

 

 今現在馬に乗るゲルド族は聞いた事がない、砂漠では移動に使えないし育てていける環境でもないからだ。

更に加えて言うのなら砂場での高速移動はスナザラシがいる為需要が少ないのだ。

 

「リンクちゃん!馬ってどんな生き物なの!?私知らないわ」

 

ティクルが興奮気味にリンクの話に食いつく。

 

「えーっとね、四本足で歩く背中に乗れそうな生き物だったよ?まだ子供だったらしいから乗らなかったけれど。ゲルド馬って言われる貴重な馬だったらしいよ?」

 

リンクは自分なりに一生懸命説明した。

ただし、その仔馬の為に全財産をはたいた事は伏せておいた。

砂漠へと帰る時に無理をしてたことがばれると思ったからだ。

 

「そういえばお伽話では馬が出てくる作品もあったわね…。ゲルド族もかつては馬に乗っていたのかしら?」

 

3人の中では比較的物知りなスルバがかつてのゲルド族に思いを馳せる。

 

「うーん、お姉ちゃん達程はおとぎ話に詳しい訳じゃないからなぁ…。でもいつかは一緒に走ってみたいなぁ!」

 

「違えねぇ!アタイだって乗ってみたいぜ!」

 

乗せてもらうのはアタイが一番だ!

いやアタシよ!

私だって乗りたい!など誰が最初に乗せてもらうかわいわいと言いあっている。

リンクに乗せてもらう事は確定の様だ。

 

「その時は一緒に乗ろうね!どこまで言ったっけ?あっ、そうそう馬と一緒にゲルドキャニオンの馬宿まで行ったんだ!とっても大きいテントの中で暮らしているんだ。そこに住んでいる人達、職員といったほうがいいのかな?見たこともない帽子や服を着こなしていたんだ!」

 

馬宿の人々について説明していくリンク。

自分達とは異なる文化を持つ人の話だ。3人とも興味津々に聞いている。

特に御洒落なんて興味ないとバレバレの嘘をついているフェイパの反応はものすごい。

 

「だよなリンク!デールの包みこまれるような暖かさもいいし、マルガェのおしゃれなデザインもいいもんだ!あ、!帽子にはビーズを忘れるなよ!?どっちかといえば晴れ着仕様の方が好きだ!」

 

「フェイパ姉ちゃん。僕より詳しいね」

 

何故実際に見てきたリンクよりも、見たことがないフェイパの方が詳しいのだ。

色々と突っ込みどころしかない彼女の反応であった。

 

「あ、いや。そ、そうだ!ちょっと書物で勉強した時に載ってたんだよ!アタイとしては悪くはないかなって程度だけどさ!?」

 

「ま、そういうことにしといてあげる」

 

そう言いながらスルバはニコニコと笑っている。

ティクルも微笑んでいる。

慌てて隠そうとしているがあれで隠せているつもりなのだろうか。

 

「な、なんだよ。スルバどころかティクルまで。ア、アタイは御洒落になんて興味ないんだからな!?」

 

「それで馬宿では名前が示すように馬を預けることが出来る施設だったんだ。仔馬も僕に懐いてくれてたし、また会いたかったから登録してきちゃった」

 

「え!?あの仔馬リンクちゃんの馬になったの!?私が街の外に出られる頃になったら乗せて欲しいわ!」

 

さらっと自分の馬として登録したことを告げるリンク。

いつか馬に乗せてもらうという目処が立った訳である。

 

「私達も乗せて欲しいわね。せっかくあんな素敵な曲を貰ったんだから」

 

ここでスルバが馬宿で貰って来たという曲について話を持ってくる。

正確には楽譜であるが、もうバッチリと読み込んだらしい。

 

「え?スルバ姉ちゃん、まだあの曲弾いてないでしょ?なんでわかるの?」

 

「楽譜と注釈がこれでもかと書いてあれば特徴ぐらいは掴めるわ。これ程完成度の高い曲をならきっとリンクだって気にいる筈よ」

 

「まったく、音楽の事になるとさらっととんでもねえこと言いやがる…」

 

当然でしょと言わんばかりのスルバに、手で額を抑え呆れる仕草をするフェイパ。

 

「あはは、ねえこの後は演奏会に向けて練習するんでしょ?私も参加してもいいかな?その曲聞いてみたいの」

 

「もちろんよ歓迎するわ。それじゃあ早速行きましょうか」

 

ティクルの提案に乗り、演奏会の練習として馬宿で手に入れた新曲を聞いてみる事にした4人。

一刻も早く弾いてみたい、聞いてみたいとウズウズしているスルバ。

 

落ち着いている様に見えて、音楽の事となるとすぐに動くのが彼女なのである。

ティクルの手を取って練習場へと連れて行ってしまった。

 

「相変わらずだなぁ、スルバ姉ちゃん」

 

「仕方ねぇよ、演奏会までそう時間もないからな。元々音楽に強いリト族が、ナン達の親父さんの指導でさらに上達していると思う。好きな分野で悪目立ちなんてそりゃ嫌に決まってるさ」

 

 

フェイパの言い分にも納得したリンク。

ここで油を売っている訳にもいかないので、彼らも練習場へと足を運ぶ。

 

「二人とも遅いわよ、さてとさっそくみんなで演奏してみましょう。まずはみんなにこれを渡しておくわ」

 

そう言ってスルバが渡してきたのは先程の曲が書かれていた楽譜である。

どうやら昨日の段階でみんなで練習するために準備しておいたらしい。

 

「おいスルバ。なんでこの楽譜が人数分もあるんだよ。昨日リンクに貰った曲、前から持ってたのか?」

 

フェイパの疑問も最もだ、これだけの量があるのなら以前から持っていたと考えるのが自然であろう。

だがスルバの性格を考えると、その場合は今よりも前に提案していそうなものである。

 

「そんな訳ないでしょ、他の民族のプロが書いた曲なんてそうそう手に入らないわよ。まぎれもなくリンクのお土産よ」

 

「いつ書いたのスルバ姉ちゃん…。渡したの昨日の夜だよ?」

 

これには流石のリンクも訳が分からないといった様子だ。

 

「秘密。それじゃ自分達が奏でる部分を練習してみましょう」

 

 各々が自分の楽器を持ち、練習を始める。

リンクがオカリナを吹き、スルバが竪琴を弾く。

フェイパは指揮者のつもりか棒を振る。ティクルは鳩笛だ。

始めはそれぞれが上手く演奏できなかったり、タイミングがずれたりしていたが少しずつ曲になっていった。

 

 日が沈みかけるころにはみんな自分達の曲にしていった。

ふしぎな曲だ、リンクを除けば馬の姿を見たこともない人ばかりだというのに、彼女達の頭の中には草原の香りとそこを駆ける馬が見えてくる。

 

「―なんかスゲエな…見たこともないのにはっきりした景色が浮かんでくるなんてよ」

 

「…それだけナンのお父さんが凄いって事よ。きちんと情景が想像できるような曲を作れる、本当に素晴らしいわ」

 

フェイパが感嘆の声をあげ、スルバは作曲者の技量に魅了されている。

 

「馬宿にいた時の様子がはっきり見える…。とっても落ち着く曲だね」

 

居心地のいいリラックスできる曲だ。

彼が作ったその曲名は「エポナの歌」と記されていた。

 

――

 

「ふう、今日もいい練習ができたわ。演奏会には何とか間に合いそうね」

 

一通り曲を練習し、そして新曲を堪能したリンク達。

真剣に臨んだからであろう、彼女らの顔には心地よい汗が浮かんでいた。

特に音楽が好きなスルバは満足げな表情をしている。

 

「あー疲れた、これだけ打ち込めば多分大丈夫だろ」

 

フェイパが言った大丈夫とは演奏会の事なのか、それとも他の意味を含んでいるのか。

それは彼女の名誉の為に伏せておくべきだろう。

 

「久しぶりに姉ちゃん達の曲が聴けて良かったよ!僕も上手くできるかなぁ?」

 

「大丈夫よ、リンクちゃんだってまだ小さいのにちゃんと演奏できてたわ」

 

リンクは久しぶりにみんなで遊ぶことが出来て楽しそうだ。

彼も姉達と同じように曲を弾けるようになれるか訊ね、ティクルがそれに答えている。

 

「それじゃあ、今日の所はここまでにしましょう。ティクル、サヴォーク!」

 

「ティクル(姉ちゃん)、サヴォーク!」

 

「今日は楽しかったし美味しかったわ、それじゃあサヴォーク!」

 

それぞれが帰路に着く、最もティクル以外は同じ場所なのだが。

みんな疲れていたのだろう。

特にリンクは明日の訓練の為、帰り次第すぐに眠りについた。

 

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