ゼルダの伝説 蒼炎の勇導石   作:ちょっと通ります

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第16話 失われた武術を求めて

 何とか3周終わらせることが出来たリンク。全身砂だらけで軽い切り傷と擦り傷が見られる。

 

「3周乗り切ったことは評価しよう。よく頑張ったなリンク。スナザラシを使った移動はカーブさえ安定すれば問題ないだろう」

 

ビューラとしても競争とは言ったが、ルージュに勝てるとは思っていない。

ルージュはスナザラシに乗り慣れているし、彼女専用であるパトリシアちゃんは特別なスナザラシ。

 

その錬度はスナザラシの中でも最高で、技量や体格もルージュには及ばない。

特に体格については特例で外に出ているリンクには成長を待つしかない。

 

「途中から気が付いた様だな、見違えるようにバランスとるのが上手くなったぞ」

 

ルージュがリンクに近づきリンクのスナザラシ捌きを評価する。

 

「やはりルージュ様の言葉は助言だったんですね?」

 

「気づくかどうかはおぬし次第だがな。この手のものは自分で気づくことが大事なのはわかるか?」

 

確かにルージュの助言はわかりにくかった。

しかし魔物の時とは違いできる限り安全に配慮した失敗の許される内容であった。

 

「わかっています、いつでも教えられる訳でも無い事も、時には自分で掴み取るしかないという事も」

 

「うむ、おぬしには過酷な経験をさせているだろうな。わらわもゲルド族の長、出来る限り手を貸すつもりだがそれも限界がある」

 

族長として多くのゲルド族を見つめて来たルージュだ。

全ての仲間にいつでもどこでも手を差し伸べることは不可能である事も知っている。

 

「そうですか…わかりました。ところでルージュ様、少しお聞きしたい事があるのですがよろしいでしょうか?」

 

「うむ、内容にもよるが聞いてみよう」

 

「サークサーク、ルージュ様。スナザラシに乗れる人はどれくらいいるのですか?」

 

予想外の質問、そして範囲が曖昧である。

顎に手を添え、少し考え込むような仕草をして答える。

 

「そうじゃな…ゲルド族の兵士はほぼ全員乗れるし、大人のゲルド族でも何人かは乗れるといったところかのう?他の種族だと盾サーフィンを嗜むものならできるじゃろう」

 

「突然どうしたリンクよ。話の内容が見えてこないぞ」

 

ビューラもリンクの考えの真意を尋ねる。

彼がいたずらにこのような言葉を投げかける者ではないと知っているからだ。

 

「ビューラ様、護衛の仕事をしたとき私は初めて砂漠の厳しさを思い知りました。母様も父様もずっと過酷な旅をして守ってくれていたんだなと」

 

当然だ、街の中では暑さも寒さもある程度は対策されている。

砂に足を取られることもなければ、視界を奪われることもない。

魔物のような危険な生物もいないのだから。

 

「ゲルドの街は世界最大の交易場です。しかし、ここまで足を運ぶにはあまりにも環境が厳しい。私が提案したいのはカラカラバザールにレンタザラシ屋を置けないかという事です」

 

「…なるほど、整備しないといけない事や利益、人員を考慮せねばならぬからすぐに返答は出来んが…検討する価値はありそうだ。ビューラ!」

 

「かしこまりましたルージュ様。すぐに宮殿のものを集めて検討に当たらせたいと思います」

 

リンクが言った内容はおそらく、安全にゲルドの街へと移動できるようにできないかという事だろう。

だが族長としてのルージュには別の視点も見えてくる。

それはより迅速な交易、行商方法と護衛に回せる人員の拡張だ。

 

スナザラシに乗っているのならばその速さで大抵の魔物からは逃げ切ることが出来る。

最もスナザラシ自体は臆病な生き物なので正面に突っ込むような真似は出来ないが。

 

従来の護衛は砂漠での移動に問題がある為、ある程度迎撃の必要がある。故にリンクぐらいしか適役がいなかった。

 

ゲルドの兵士には砂漠の脚となるスナザラシの運転はできて当然だ。

兵士でなくとも大人なら移動できる者もそれなりに存在する。

 

(童の発想とは案外馬鹿にできんものよのう。)

 

交易の為の物資の輸入、輸出には物資の移動ルートの確保が肝要である。

それも少量ではなく大量に持ち運びが出来なければならない。

 

だからといって一瞬にして設置できるわけではない。

資材の確保や予算、人員など様々なことを打合せする必要がある。

 

「さて訓練を続けるつもりじゃったが、族長としてやらねばならぬことが出来た。今日の所はこれで仕舞いじゃ」

 

どうやら先程の内容を実現できるかどうかの採算を取らせ、検討をするつもりの様だ。

ルージュは無駄のない所作で片づけを終え宮殿へと足を向ける。

 

「サークサーク、ルージュ様、ビューラ様」

 

「よく頑張ったリンク。身体の成長がついてこれていないから仕方がないが、それでもある程度操縦できたのは見事だ。それでは失礼するぞ」

 

ルージュに続き、ビューラも宮殿へと移動を始める。

護衛対象から離れる訳にはいかない。

 

「また手合わせ願おう、リンクよ」

 

 

 裏路地

 

(ふぅ…、本当ならもっと訓練が続くはずだっただけにちょっと物足りないなぁ…。それとどうすればビューラ様にも勝てる様になるのかな?)

 

 リンクは宮殿から路地裏に抜けていった。

普段と違う帰り道であったが訓練場から直接帰る時には通ることもある為比較的人通りはある。

他の兵士達は弓の鍛錬に励んでいたが、リンクは大人の兵士用の弓を引き絞ることが出来ないので早めに上がることになったのだ。

 

「おや?そこにいるのはリンクじゃないか」

 

「ヴァ―バ(おばあさん)、あなたは?」

 

路地裏の簡易テントから老婆が声をかけて来た。

 

リンクの名はゲルドの住人にはそれなりに知れ渡っている。

幼いながらに並みの兵士よりもさらに強く、事情があるとはいえ外へ出ることが許されているのだから噂ぐらいにはなるだろう。

 

「これは失礼したね。私はリムーバ。かつてゲルドの兵士だったものさ」

 

兵士は肉体を使う仕事である為ずっとできるものではない。

リムーバの様に引退して次の世代に任せる者もいるのだ。

 

「こちらこそ失礼しました。私にとっては先輩にあたるんですね」

 

現役ではないと言えリンクにとっては大先輩だ、すぐに頭を下げるリンク。

 

「ああそんなに気を張らなくてもいいよ。これは私からのお願いだ、仕事の後まで上下関係を気にしてたら疲れちまうからね」

 

階級の上下がある兵士達からすると意外なほどに物腰柔らかな人だ。

リンクはそう感じた。

 

「そうですか、それでは…僕に用事ー?」

 

姉達以外では殆ど使わなくなった砕けた口調で用を尋ねるリンク。

「ホッホッホッ、そうじゃな…。私の道楽に付き合っては貰えんかの?見たところかなり物足りないとようだ。これからするであろう、自主的な訓練に一枚かませては貰えんかと思うての」

 

「すごい!なんでわかったの!?」

 

リムーバはリンクの心境を見通し、訓練に付き合わせてもらえないかと提案してきた。

これにはリンクも驚きの声を上げる。

 

「これでも数十年、宮殿でゲルドの兵士として仲間を見て来たんだよ?一番見続けてきた仲間達なら手に取るようにわかるさ」

 

種という都合のいいものでは無く、ずっと兵士達といたからわかる職業観の様なものだと言ってのけるリムーバ。

 

「そういうものなのかな?あんまり実感がわかないや。僕は大丈夫だけど訓練を見せればいいの?」

 

兵士として過ごしてきたのならわかるが訓練とは代わり映えのしない鍛錬の積み重ねでもある。

ただ見ているだけでは面白いものでは無いだろう。

 

「確かにその通りでもあるが、それだけではおぬしにとってあまり面白くはないだろう。よって新たにテーマを加えようじゃないか。内容は失われた武術の復活じゃ」

 

失われた武術…その響きに兵士としてのリンクが興味を持った。

ただ闇雲に鍛錬を続けるよりも明確な目標があったほうがやりがいもできる。

 

「そんな凄いものがあるの!?やりたいやりたい!」

 

「ホッホッホッ、元気があるのう。しかしこれはとても難しい。私ですら身に着けることが出来なかった。流れるような攻撃と身のこなし、優れた反射神経とあらゆるバランス感覚が必要らしい…」

 

少々眉唾な言い回しになるリムーバ。

復活というぐらいだ、元々わかっているのならわざわざそんな言い回しはしないであろう。

一朝一夕で身に付くものではなさそうだ。

 

「リムーバさん、サークサーク。手探りだと時間もかかるのかな?」

 

「うむ、じゃがどうしても見てみたい。この老いぼれに残された時間は少ないのだから…」

 

寂しそうにつぶやくリムーバ。

 

リムーバはかなりの高齢だ、そして彼女が言う武術の存在は初めて聞いた。

下手をすればこのまま時代の流れに飲み込まれ完全に消滅してしまうだろう。

 

「そんな悲しいことは言わないで、リムーバさん。2人でやってみよう!」

 

リンクにとって彼女の存在はありがたかった。

ビューラやルージュも大切な師であるが、彼女達には部族にとって重要な仕事もある。

常に相手になってもらう訳にはいかないのだ。

 

「ふむ、それでは始めるとするかの。まずは剣を構えてみるんだね」

 

随分と基本的な事を言うんだなとリンクは不思議に思った。

慣れたもので難なく構えるリンク。それ構えをリムーバは真剣に見つめ、腕や足に触れながら確認していく。

 

こんな感じで構えや基本の振りを調べてゆく事で時間が過ぎていった。

 

「手さぐりである以上、慎重にいかねばならん。リンクよ利き腕はどちらじゃ?」

 

「えっと、さっき構えた方です」

 

「では右利きじゃな?ここで練習するときは左で練習してみよう。右並みの感覚にできるかはリンク次第。早めに鍛え上げるほうが結果的に近道じゃ」

 

気を付けるべきはその感覚、利き腕と同じくらい逆の腕も使いこなせなければ話にならない。

今はその下地作りだ、リンクという鉄を熱いうちに打てる。

 

それはリムーバにとっても内心にある興奮を抑えられなかった。

半世紀近くにも及ぶ自分が積み重ねてきた経験に、7歳にして並み居る兵士を倒すことのできるリンクの天賦の才。

その行き着く先がどれ程のものか、興味を持つなというのは無理であろう。

 

「うん、今日の所はこれぐらいにしようかね。できるだけしっかり食べてしっかり寝るんだよ。次の日に疲れを残さないことも大事な仕事だ」

 

「サークサーク、リムーバさん。それじゃあ、失礼します」

 

鍛錬への真剣さや明日の訓練への配慮などからこの人は武術に真摯な人でもあるとリンクにも伝わる。

指導してもらったという事で自然と敬語になってしまった。

 

「なんだい、結局最後には目上への言葉になってるじゃないか。まあいいさ。サヴォーク」

 

満足いく訓練だったのだろう、リンクの脚は元気よく家に向かって駆けて行った。

 

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