ゼルダの伝説 蒼炎の勇導石   作:ちょっと通ります

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第27話 街の演奏会

 ドゥランの家

 

 宿泊先であるドゥランの所へ行くと既に布団が敷かれていた。

おそらくココナが準備してくれたのだろう。

本当にありがたいことだ。

 辺りを見渡してみるとプリコが微かに寝息を立てて眠っている。

その表情は穏やかで胸をなでおろす。

怖い思いをしたものは、それを引きずることがあるのだ。

 

 願わくばそう言った症状とは無縁であって欲しいと願うリンクであった。

 

(もう限界だ、眠くて仕方ないよ…。ココナさんはまだ起きているみたいだ、凄いなぁ。…姉ちゃん達、上手くいったかなぁ―)

 

 ココナはまだやるべき事があるのだろう。

夜も更けて来たというのに、未だ床に就いていない。

次第に瞼がおり、意識が落ちてゆく中で彼は姉達の演奏会の成功を案じていた。

 

 

 ゲルドの街 同日 昼頃

 

「いよいよだな…。ちょっと緊張してきたぜ」

 

「何言ってんの、年に1度の演奏会なのよ?完璧な演奏をしてやるわ!」

 

「大丈夫よ、みんな一生懸命練習したんだから」

 

 ついにリト族との演奏会当日になった。

リンクがこの場にいないのは残念でならないが…

そればかりはどうしようもない。

 

 この演奏会は、リト族との交流の意味合いも大きく、重要なイベントである。

リトの村は山を挟んでいるとはいえ、直線距離ならばゲルドの街への距離は最も近い。

 

加えて彼らは空を飛ぶことに長けた種族だ、その移動力は他の種族の追随を許さない。

つまり最も交流しやすい種族と言える。

 

「フェイパちゃん、スルバちゃん、ティクルちゃんも久しぶりだね!」

 

 どうやらリト族のメンバーも着いたようだ。

リト族側の演奏会をまとめている、長女ナンがフレンドリーに話しかける。

彼女達は5人姉妹で、それぞれ長女のナン、次女のコッツ、三女のゲンコ、四女のグリグリ、五女のキールとなっている。

 

それぞれが非常によく似ているが、フェイパ達も何回か交流する事である程度見分けることが出来る様になった。

ちなみに羽の色が、それぞれ赤、黄、緑、青、紫となっている。

 

「おっ、ナン達もよく来たな!今日はお祭りだ、ゲルドの街を楽しんでおくれよ!」

 

「ありがとう、せっかく来たんだし、思いっきり堪能するんだから」

 

 末っ子のキールはここぞとばかりに祭りを、ゲルドの街を堪能するつもりの様だ。

案外ちゃっかりしているのかも知れない。

 

「ここまで5人で飛んできたの?いくら上空は危険が少ないといっても、大丈夫だった?」

 

「もしもの事があったらいけないから、パパが引率してくれたのよ。街には入れないから外でお留守番してるわ」

 

「それは、お気の毒ね…」

 

 四女のグリグリが悪いことしちゃったなぁと悲しそうに答え、ティクルがそれに同意する。

 

 彼女らの父は有名な吟遊詩人である、その為この演奏会にも大きく貢献しているのだが、街の掟によって入ることが許されない。

 

リンクの様に女装すればその限りではないのだろうが…流石に娘たちの目の前でそれは差し控えたいだろう。

 

「そういえば、リンクちゃんはどこ?私達の事覚えてるかな!?」

 

「言われてみたら確かに見ないね、まだお昼ご飯食べてるのかな?」

 

 三女のゲンコがリンクを探している。

元々恥ずかしがりやであまり顔を見せる事のしなかった彼女だからこそ、今度こそはと人見知りを克服したいようだ。

 

 次女のコッツはまだご飯を食べているんじゃないのと付け加える。

彼女は魚料理が好きでこちらへと旅立つ前にも堪能してきたらしい。

 

「リンクちゃんはね、ビューラ様に頼まれ事をされていてね、今回は参加できないの」

 

 ゲルド族で外にいるリンクに関する話をすれば、メルエナ達の事まで話さなくてはならない。

そこでティクルが端的に内容を話すことで、話題を切り上げる。

 

「そう…、残念だわ。リンクちゃんにもよろしく伝えて貰える?フェイパ、スルバ」

 

「勿論だぜ、サークサーク」

 

「そうね、遠路はるばる来たからお腹空いたでしょ?何か食べていく?」

 

「うーん、それもいいけど…。パパが可哀想だし出店で買ってくるよ。流石に待たせておいて食べてくるのはねー」

 

 申し訳なさそうに、残念そうにコッツが答える。

彼女達の父は今も街の外で待っている、父を置いてみんなで食べに行くのは流石にあんまりだ。

 

 元より娘達の晴れ姿を何より楽しみにしており、更に自らがプロという事もあって、熱心に指導をしていたのだ。

それだけに入れないと知って盛大に凹んでいた。

 

「それもね、肉屋なら焼きケモノ肉が売っているわ。近くにも屋台が並んでいるから。見てみるといいかも」

 

 意外に思うかもしれないがナン達はれっきとした肉食だ。

猛禽類である彼女達は魚や肉といった食事が大好きなのだ。

 

 特に母であるハミラの作るマックスサーモンムニエルは絶品だという。

 

 交流会も兼ねた演奏会はゲルド族にとっても大きなイベントだ。

元々活気のある街に更に多くの人が来るため、大規模なお祭りとなっている。

 

「行こうよ姉ちゃん!お腹空いてきた!」

 

「ちょっとちょっと、引っ張っちゃダメだって…。ごめんね、お先に失礼するわ」

 

「楽しんできてね。そして、演奏会絶対成功させましょう」

 

「それじゃ、またね」

 

 そう言って、ナン達は屋台の方に駆けて行った。

楽しみにしていたのだろう、心なしか若干高いテンションで各々が気になった出店に向かっていく。 

 

「行っちまったなー、迷子にならなきゃいいけど…」

 

「流石にそれはないと思うわ、何回か来ているし。私達も祭りを楽しみましょう」

 

「練習もしたいのだけど…、楽しめなきゃ勿体無いわ。行きましょう」

 

 こうして3人で祭りを楽しむ、今日は特別だ。

 

 思いっきり遊んで、出店の品に舌鼓を打つ。

的当てで景品を狙い、お洒落なアクセサリーに目を奪われる。

リンクがいないのは残念だが、だからこそ彼の分まで楽しまねばならない。

 

「いやー、なかなか難しいもんだな。あとちょっとだったのに…」

 

「的当ては本物の弓を使うからね、訓練してる兵士でもないと難しいわ」

 

 祭りの定番である、的当ては矢はともかく弓の方は本物を使っている。

その分かなりの勢いで飛んでいく。

 

流石に景品に穴が開いては不味いので円形の的に番号が振ってあり、該当する番号に当てたら貰えるシステムになっているのだ。

 

「リンクもまだ使いこなせないからね、大人用に調整された弓を引き絞るのはちょっと厳しいけど」

 

 ゲルドの弓には特徴がある。

それは長距離射撃に重点を置いているという点だ。

 

 基本的に矢が共有な為、弓に個性が出る。

遠くまで飛ばす為に、弦の張りが非常に強く、相当の力が無いと引き絞れないのだ。

 

「ま、楽しかったからいっか。おっ、あっちでハチミツアメが売ってるぜ!」

 

「美味しそうね、せっかくだから買ってみようか?」

 

 それぞれが思い思いに出店を、祭りを満喫する。

この祭りは今しか堪能できない。

 

「甘くておいしいね、手軽に食べられるのがありがたいわ」

 

「うーん、確かに美味いけど。スルバのお菓子の方が美味くね?イチゴクレープとか出店だしたら人気でそうだぞ?ちょっと話つけておくかー」

 

「何、勝手に話を進めてるのよ!演奏会に出られないなんてもっての外だわ!」

 

「じょ、冗談だって…。ホント今日のテンション凄いな」

 

「そろそろ演奏会の準備をしないとね、会場へ戻るわよ!」

 

 そう言って会場へと移動する3人。

そこには既にナン達5人が準備して待っていた。

 

「あらスルバ達ももう来たのね。祭りは楽しめた?」

 

「ええ、色々と見て回れて本当に良かったわ。ナン達は楽しめたの?お父さんのご飯とかも大丈夫だった?」

 

「勿論よ。リトの村にはこんなに賑やかな場所は無いから、いつ来ても飽きないわ。父の分の料理も渡したから大丈夫よ」

 

「ホントはもっと遊んでいたかったなー。でも演奏をわざわざ聴きに来てくれる人もいるのだから誠意をもって演奏に打ち込みなさいって」

 

 ナンがちゃんと食事を渡して来たと伝え、末っ子のキールがもっと祭りを堪能していたかったとちょっと漏らす。

 

 彼女らの父は物腰柔らかく誠実であるのと同時に、音楽に信念を込める人でもある。

それが分かっているから、5人ともちゃんと準備できるように集まったのだ。

態々聴きに来る人の中には彼女達の父も入っているのだろう。

 

「まあまあ、演奏会が終わった後、思いっきり楽しんできなさいって言ってたじゃん」

 

「飴の御蔭で、今日の喉の調子はばっちりだよ!絶対成功させようね!」

 

 心なしか長女のナンに安堵の表情が浮かぶ。

元々歌の練習のし過ぎで、喉に負担をかけすぎてしまう事があった為、喉のケアが出来たことがいい意味で誤算だったのだ。

 

 それぞれの種族の文化を大切にするため、ゲルド族が楽器で演奏しリト族が歌うのが恒例になっている。

つまり今回はスルバ達が楽器を演奏し、ナン達がそれに合わせて歌うのだ。

 

「あのハチミツアメ美味しかったね!喉に優しくて気に入った!」

 

「そうそう、アタイら演奏会が終わったらスルバのイチゴクレープ食べようと思うんだけど一緒にどうだ?」

 

「何それ美味しそう!食べたい!食べたい!」

 

彼女達も年頃の女の子だ、美味しそうなデザートとなれば断る理由はない。

 

「えっ、初めて聞いたけど…」

 

「おう!今思いついたからな!」

 

 スルバの困惑顔にフェイパが二カッっとした笑顔で答える。

そんなノリで言われても直ぐに出せるものでは無いのだが…。

 

「まったく…こういう事もあろうかと準備しておいたけどね…」

 

「えぇ…スルバ準備良すぎない…?」

 

「ご相伴に預かってもよろしいのですか?」

 

 そんな突発的な発想にすらきっちりと準備をしておくスルバにティクルは驚き、ナンは本当にいいのかと尋ねて来る。

 

「勿論よ、せっかく作るのに私達だけで楽しむのは申し訳ないわ」

 

「ありがとう、さてとそろそろ着替えましょう」

 

「ええ、もうあまり時間はないわ」

 

 そう言ってみんなに着替えの準備を促す。

これはスルバ達とナン達の晴れ舞台だ。

 

 正式な行事として演奏会で見られる以上、御洒落にもそうとう気を遣われる。

宝石店 Star Memories より煌びやかな装飾が施されてるのだ。

 

 流石に高価な品なので貸し出しという形にはなるが、それでも滅多にお目にかかれない流麗な代物だ。

 

「凄いわ、すっごい御洒落!演奏会に参加してよかった」

 

「でしょう?この衣装はゲルドの族の有名な人が共同で作成しているのよ。…フェイパ、気に入ったのはわかったから夢の中から帰って来なさい」

 

「ふぇ!?ち、違う!アタイはこれから始まる舞踊に向けてー」

 

「えー!?演奏会じゃないのー!?」

 

「落ち着きなさい、周りまで混乱させちゃ駄目よ?」

 

「す、すまん。ちょっとばかり舞い上がっちまった」

 

「私だって胸の高鳴りを抑えられないわ、最高の演奏を届けましょう」

 

――

 

(そろそろ始まるか…)

 

代表代理としての挨拶の為、ビューラは宮殿から会場へと足を運ぶ。

 

 会場の前には人だかりができている。

毎年恒例の行事である演奏会はそのクオリティの高さもあり、交流会の目玉なのだ。

 

 特に今年は、リトの5姉妹が出場する事もあり素晴らしい出来であると専ら評判だ。

地元であるゲルド族だけでなく、交流相手であるリト族、果てにはハイリア人にゾーラ族とゴロン族まで観賞に来ている。

 

 沢山の人が集まり、活気のある街が更に勢いづく。

これが交流会の良いところだ。

 

 ビューラはルージュが倒れた今、代役として族長の仕事を引き継いでいる。

元々先代族長が早逝した時、幼いルージュの分も仕事をしていた事もありそれほど難しいものでは無い。

それでも、呪いで倒れたという状況に内心穏やかでいられる筈が無かった。

 

(リンク達は解呪の手がかりを掴めただろうか…?私はそれを信じて己の役目をこなさねばな)

 

 そう彼女が考えている間に、スルバ達が入って来る。

中心にいるフェイパが指揮者で、両脇にいるスルバが竪琴、ティクルが鳩笛を持ち入場する。

空いた中央にはナン達5姉妹が勢ぞろいだ。

 

役者は揃った、後は自分が代理として挨拶をすれば本日の大体の仕事は終わりだ。

積み重ねた修練の成果、見せて貰おう。

 

彼女達の演奏が今始まる―

 

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