ゼルダの伝説 蒼炎の勇導石   作:ちょっと通ります

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第34話 修練の道は続く

 翌日

 

「スルバ姉ちゃん、フェイパ姉ちゃん。サヴォッタ!」

 

「リンク、サヴォッタ」

 

「やっと起きたか寝坊助め!サヴォッタ!」

 

 翌日の昼頃になってようやくリンクは目を覚ました。

今までの疲れが溜まっていたのだろう、加えてダメージが大きかった証でもある。

それを示すように所々を庇うような奇妙な動作が入る。

 

「今日も暑くなるわ。ヒンヤリメロンとマックスドリアンを剥いておいたからしっかりと身体を冷やすのよ」

 

「わーい!いっただっきまーす!」

 

「…ああ、頂きます」

 

 朝の定番でもあるヒンヤリメロンに加え、マックスドリアンもある。

少々遅い時間ではあるが、朝食としては御馳走といえるだろう。

フェイパとは対照的にリンクは豪快にかぶりつく。

 

 

「ふぅ、御馳走様でした」

 

「御馳走様」

 

「お粗末様でした。…リンク、今日は話に付き合ってもらうわよ、あんなことがあった以上キチンと話し合う必要があるのはわかってるわよね?」

 

「うん、しょうがないよね。心配かけてごめんなさい」

 

「ある程度の事はリムーバさんに聞いている。それでもちゃんと教えてくれ。大事なことだ、お互いに理解をしていないと平行線になりかねない」

 

 彼女は努めて冷静に、自分にも言い聞かせる様リンクに語り掛ける。

リンクもちゃんと伝えるべき内容だとわかっているので、1つずつ丁寧に説明する。

こういう時、兵士として正確に伝えることをしっかり教えられているリンクは同じくらいの子供よりも得意だ。

 

「―なるほど、大体わかったわ。リンク、貴方はどうしたいの?危険を承知で修練を続ける?強くなる当てとしては悪くはないんでしょ?できる限り安全対策を施すのならアタシは反対しないわ」

 

「―怪我をしてからでは遅い。危険すぎる修練以外にも強くなる方法ぐらいあるだろ。修練よりよほど安全だろうしな。なにより傷だらけで帰って来るなんて辛すぎる。アタイは反対だ」

 

 どちらにもいい所と悪い所がある。

あえてそれを提示した上で、リンクに問う。

どちらを選ぶにしてもしっかりと知った上で選んで欲しいのだ。

 

「…―」

 

 迷っている、2つとも間違っているようには思えない。

自分の中で選択肢は決まっているつもりだった。

恐らく姉達は自分がどちらの選択をするのか知っていたのだろう、それでも熟考して決めて欲しかったという事か。

見えていなかった可能性や危険性によって後悔して欲しくないから。

 

「―決めたよ、姉ちゃん。僕は修練を続けたい」

 

静まった部屋に彼の声が響いた。

 

「危険な修練なのは体験してわかっている。強くなりたいというのも否定はしないよ。それ以上にフェイパ姉ちゃんもスルバ姉ちゃんも僕の事を心配しているのも」

 

 言葉をゆっくりと噛みしめ、しっかりと伝える為に一つ一つ選んでいるのだろう。

見極めてみせる、姉2人はそう覚悟した。

 

「全部僕の正直な気持ちだよ、ビューラ様は僕の初めての師匠だ。護衛の仕事に就けたのは間違いなくビューラ様の御蔭だよ」

 

 その通りではある、あの時にはどうやって生きていけばいいのか見当もつかなかった。

大恩のある相手であることは間違いない。

 

「そのビューラ様が言ったんだ、私の全てを捧げるつもりだと…。あの人がどれだけ長い間戦士としていたかは想像もつかない。少なくともいい加減な覚悟で挑むのは失礼だと思う」

 

 わかっている、それでもあんなに怪我をされるような内容を受け入れたくはない。

痣や出血だらけな弟など耐えられない。

 

「それにね、修練はあくまで修練なんだ。危険とは言っても命まで奪われるようなものじゃない。護衛の仕事の時には命を落としてもおかしくない状況にだってあると思う。上手くは言えないけれど…ルージュ様の時みたいなとんでもない事が起きるんじゃないかって予感がするんだ…」

 

 ルージュの呪いの件は明らかに人為的な悪意だった。

後で詳しく聞いた話ではリンク達に刺客まで向けられていたらしい。

 

 背筋が凍る話だ、魔物どころか同じ人間にまで殺意を向けられるとは…。

岩を落とされ、矢で射られ、首を切り落としにかかるなんて…

 

 ゲルドの男はその特異性からお伽話でも盛んに取り上げられるものだ。

その殆どは過酷という言葉すら優し過ぎるほどの受難に満ちた内容であった。

流石にあのような道は歩んで欲しく無い。

 

 しかしその一方で今のリンクでも十分波乱の中で生きていると言える。

7歳で両親を亡くし、危険に満ちたゲルドの砂漠で命懸けの護衛をしている。

加えてカカリコ村での件だ、リンクの予感から想像できる内容が恐ろしい。

 

「そうか…、それがお前の選ぶ道なんだな…。納得はできない、だけど理解はするよ」

 

「ごめんね、フェイパ姉ちゃん。寝ている間、ずっと見守ってくれたんでしょ?」

 

 姉の事だ、自分がこれだけ満身創痍になって帰って来たら間違いなく激昂する。

彼女は自分が傷つけられる事より、スルバとリンクが傷つけられる方がよほど堪えるのだ。

 

これからもこのような訓練を続けると言ったら絶対に納得はしないだろう。

 

「そうよ、フェイパはずっとリンクの傍にいたわ。献身的なヴァーイって感じにね」

 

「ス、スルバ!?ななな何を言ってやがる!?」

 

「ま、フェイパを揶揄うのはこれくらいにして…。アタシが言った前提条件、ちゃんと守るのならこれ以上言うことは無いわ」

 

 前提条件―できる限りの安全対策を施すという事だ。

限度はあるだろうが、修練をしていく者にとっては厳しさと同じぐらい重要な要素でもある。

 

「いきなさい、リンク。あなたが決めた道よ。あなただから進める道なのだから」

 

「スルバ姉ちゃん…ハイ!行ってきます!」

 

 そう言って、リンクは街に駆けていく。

よくもまあ、怪我だらけの身体で走れるものだ。

 

「行ったな」

 

「ええ、もう大丈夫でしょう」

 

「まったく冷や冷やさせやがるぜ。アイツの姉なんてアタイらにしか無理だな」

 

「あら、アタシは2人を指していったのだけど?舞踏会、もうすぐじゃない」

 

「…何のことかわからないな。何はともあれこれで舞踊に専念できそうだ」

 

「付き合ってあげるわ。韻を踏んで動く事だって大切なんでしょ?」

 

「助かるわ。それじゃあ頼めるか?」

 

「勿論よ」

 

 彼女達も街へ出る、恐らくリンクとは違う道を歩むのだろう。

それでもこの家から、この街から分かれているのは間違いない。

私達の帰る場所はここなのだから。

 

(…どうやらまだまだ油断できないわね)

 

 

 ゲルドの街 路地裏

 

「リムーバさん!修練をしてもいいそうです!引き続きお願いします!!」

 

「…うーん、ああリンクか。サヴォッタ…」

 

 リンクが彼女の元へ向かった時、何とも眠そうに出迎えた。

不夜城であるゲルドの街の大人としては珍しくもないが、彼女が寝ぼけているのは初めて見る。

何かをしていたのだろうかと訝しむリンクであった。

 

「あ、あの…大丈夫でしょうか…?とても眠そうなのですが」

 

「気にする必要はないよ、私はあの子達との約束を果たしただけだからね…」

 

「約束…ですか?」

 

 着いてきなと促された先には、修練場の荒行を模した簡易の設備が整っていた。

無論、丸太の数は少なく小さいものではあったが、それでも非常に高い完成度で作られている。

 

「まだまだ数は少ないけれど、似た感覚で使える筈さ。当面はこれを使って練習だね」

 

 あの後、リンクの為に修練用の設備を作ったのだろう。

それこそ夜通しだった筈だ、非常にありがたい。

数が少ないという事は要求内容が下がるという事でもある、前回ほど無茶なものでは無いだろう。

 

 特筆すべきは全ての丸太に綿の様な緩衝材が付けられている点だ。

万が一リンクにぶつかったとしても元の物よりは遥かに怪我のリスクは少なくなる。

 

 包帯や薬といった備品もしっかりと用意してある。

できる限り安全に修練を積むための責任をしっかりと果たしてくれたのだ。

 

「リンク。危険な修練も視野に入れるとは言ったが、安全に越した事は無い。鍛錬の質をなるべく維持したまま出来るならその方がいいからね。準備が出来次第始めよう…いい姉達を持ったな」

 

「はいっ!」

 

 手早く準備を終え、早速修練に挑むリンク。

数は少ないとはいえ、それは元となる修練場にある物と比べてである。

通常の訓練に使われる丸太の数とは比較にならないし向かってくる方向も様々だ。

 

 何度か丸太で打ち据えられたが、緩衝材の御蔭で負担は小さい。

その分だけ、すぐに次の修練に臨めるのは大きなメリットだ。

 

 少しずつではあるが、対応できる丸太が増えてゆく。

地道ではあるが確実に成長を続けていくリンクであった。

 

時が経ち、辺りが一面暗くなりだした頃

 

「うん、今日はこれぐらいにしておこう。明日までには少し丸太を増やしていくよ」

 

 今日の訓練はここまでとリムーバが宣言する。

同時に次の課題に向け、難易度の向上を図るつもりの様だ。

包帯などは巻かれてはいるが昨日までと比べればかなり負傷は少ない。

これならば通常の訓練でも起こりうる範囲だろう。

 

「リンクよ、私はこの修練から答えを見出すことはできなかった…。今は安全に行っておるが、その先に見出せそうか?」

 

 続けるかを問う、というよりは迷いを含んだ様に彼女はこぼす。

仕方のないとこではある。

 

 失われた古武術を長年追い求め、ついぞ叶わなかったのだ。

更には修練場の物と酷似はするものの違いのある物で修練を積んでいるのだ。

効果が出るかはわからない以上、これで迷わない方がおかしい。

 

「今の段階ではまだ答えられません、しかし手応えは感じております。リムーバさんが望んだ武術かはわからないです。それでもやって良かったと確信しております」

 

 やる気を焚き付けるのが上手い子だ…。

よもやこの歳になってから教えられるとは…老いては子に従えという奴かねえ。

そう思うリムーバであった。

 

「サークサーク。まさかそう言われるとはねえ。気をつけて帰るんだよ」

 

「それでは失礼します。サヴォール」

 

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