ゼルダの伝説 蒼炎の勇導石   作:ちょっと通ります

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第37話 ゲルド古武術の奥義

 リンクの家

 

「お帰りリンク。今日もお疲れ様」

 

「ただいまスルバ姉ちゃん!いい匂い、お腹空いたなぁ!」

 

食欲をくすぐるいい匂いと暖かな空気。

我が家に帰って来た、そんな気持ちになれる。

 

「もうすぐご飯もできるからフェイパ呼んできてくれる?」

 

「え?フェイパ姉ちゃんまだ練習してるの!?」

 

「違うわよ、さっき帰ってきてね。いっぱい汗掻いていたから先に風呂に入って来なさいって言っといたのよ」

 

「ああ成程!良かったー、フェイパ姉ちゃんまた無茶しているかと思った」

 

 リンクの心配事にあなたの方がもっと無茶してるわよと心の中で突っ込むスルバ。

流石に砂漠を走って渡り、殺人を厭わない者と斬り合うよりは無茶はしていないだろう。

 

「それじゃ、フェイパ姉ちゃんのところ行ってくるね!」

 

「近くで声かけるだけでいいからね。ヴァーイの入浴に割り込んではいけないわ」

 

 聞いているのだろうか、あっという間にフェイパの下へ走っていく。

流石にヴァーイの入浴中に突撃はしないと思いたい。

 

「フェイパ姉ちゃーん!ただいまー!」

 

「お、おいリンク止まれ!絶対に入って来るなよ!?」

 

 帰ってきたリンクが近づいて来るのをフェイパは慌てて制止する。

いくら幼い弟と言えど、年頃のヴァーイが素肌を晒すのは憚られるものだ。

 

「えー、姉ちゃん僕を洗う時入ってるじゃん」

 

 …普段女装させている分、言い返しにくい。

ちゃんとした価値観を教えないとな、外でヴァーイと入浴なんてなろうものなら笑い話にもならない。

 

「いい訳あるかー!そ、それより言伝あるんじゃないか!?」

 

「あ、そうだった。「そろそろご飯だから早めにね」だってさ」

 

「もうそんな時間か、わかったわかったもう出るから先にスルバの所で待ってろ」

 

「早く来てね!僕もうお腹ペコペコだよ!」

 

 そう言ってスルバの下へ走って戻るリンク。

 

 呆れた体力だ、修練を遅くまでこなした後でもあれだけの元気があるとは…一体あの身体のどこから力が沸いてくるのだろう。

食べる量はスルバやフェイパよりも多いからその辺りも関係あるのかも知れない。

 

 

「待たせたな、スルバ、リンク」

 

「それじゃ食べましょうか。今日の献立は海の幸カレーとアップルパイよ」

 

「お!カレー好きなんだよな!ちょっとアレンジも入ってるみたいだし楽しみだ」

 

「早く食べよう!いっただきまーす!」

 

「「頂きます」」

 

 海の幸カレーのちょっぴり辛目な味付けが食欲をそそり、海鮮特有の深い味わいを口一杯に広げてくれる。

これはマックスサザエだろうか?歯ごたえと独特の苦みが香辛料を引き立てているようだ。

 

次第に食べづらくなって来た辛い料理には口直しのフレッシュミルクが舌を休ませる。

 

 食後のデザートには僅かな酸味と甘みが織りなすハーモニー、アップルパイが待っている。

丁寧に焼かれた生地はサークサークでリンゴとの相性がいい。

生地に練り込まれたきび砂糖がいい味を出している。

 

「御馳走様でした!」

 

「御馳走様」

 

「お粗末様でした」

 

 あっという間に皿の中身が無くなる。

リンクの前には大きな山が連なっていたのだが、恐ろしい食欲だ。

 

「やっぱカレーはいいな!定期的に食べたくなるよ!」

 

「今度香辛料が手に入った時作ってあげるわよ。ここからじゃゴロンシティは遠いからね、中々手に入る物じゃないわ」

 

「ちぇー、ティクルに作れないか聞いてみるか」

 

「流石にティクル姉ちゃんでもデスマウンテンで採れるような香辛料は難しいと思うよ…?」

 

 ゴロンの香辛料はゴロンシティでしか入手できない。

恐らくはその辺りに植生している植物なのだろうが、ゴロンシティは活火山デスマウンテンにある。

文字通り燃える熱さの為、生態系は特殊だ。

砂漠も昼間は暑いが夜は寒いし、流石に自然発火する程は暑くはない。

極端な植物を育てるのは非常に困難であろう。

 

「そういう事ね、ところでフェイパ。舞踏会はいつ行われるの?」

 

「3日後だな、昼頃に宮殿で行われるんだ」

 

「えー!?僕の試合と同じ日じゃん!僕また見れないの!?」

 

 リンクとしてもそれは避けたい、去年の演奏会の時だって参加するどころか見る事すら叶わなかったのだから。

あの時は演奏会だけでなく、祭りだってお預けだったのだから。

屋台だって見て回れなかった、姉達の友達とも会えなかったのは少しばかり心残りだ。

 

 後から聞いた話では非常にいい出来だったと聞いているし、その演奏で姉のスルバが立派な竪琴を譲り受けたと聞いては残念に思う気持ちも大きい。

 

「大丈夫さ、舞踏会の後に御前試合を行うって聞いたからな。問題なく見れるはずだぜ?」

 

 フェイパ自身も気になり、事前に聞いていたようだ。

時間が重なっていない事に胸を撫でおろすリンクがいた。

 

 

「あらあら、それじゃ当日は2人の応援になりそうね。1人で見るのは寂しいわ」

 

「いやティクルでも誘えよ。リンクと見る時間だってあるかも知れないしさ」

 

「そうしましょうか、そろそろ寝ましょう。明日も練習するんでしょ?」

 

「だな、スルバ、リンク。サヴォール!」

 

「「サヴォール!」」

 

 翌日

 

「スルバ!リンク!サヴォッタ!」

 

「フェイパもサヴォッタ」

 

「サヴォッタ、フェイパ姉ちゃん!」

 

「今日もいい天気ね。2人とも本番も近いし仕上げに入る予定なんでしょ?ティクルを誘った後、フェイパの手伝いをしようと思うけどいいかしら?」

 

「いいのか?こっちとしてはむしろ頼みたいと思ってたから助かる」

 

「いいなー、僕も手伝いに来て欲しい!」

 

「勿論、手伝いたいのだけど。私に出来る事を考えるとリンクの方はちょっと無理かなぁ…ごめんね?」

 

「うーん、残念だけど仕方ないね。引き続きリムーバさんにお願いする事にするよ」

 

「それがいいと思うわ、今日も元気にいってらっしゃい!」

 

 そう言ってリンク達を送り出す。

どことなく母であるメルエナの面影が見えたのは気のせいか。

 

 

 ゲルドの街 路地裏

 

「よく来たね、さっそく始めようじゃないか。時間は限られてるからね」

 

「よろしくお願いします!」

 

 そうしていつも通り実戦形式の訓練を通して錬度を高めてゆく。

しかし―

 

「うーん…」

 

 確かに少しずつ使いこなせるようにはなって来た。

しかし僅かではあるがどこか物足りない感覚が残る。

 

「リムーバさん、上手くは言えませんがこの武術まだ足りない部分があるのではないでしょうか?」

 

「ふむ、確かに全くないとは断言できないね。しかし当てと言ったら―」

 

 修練場のそれに視線を向ける。

元々添えられていた修練用の物だ。

緩衝材のない非常に危険の高いものとなっている。

 

「今の私なら問題なく出来るかと思います。勿論油断するつもりはありませんが…挑戦してみたいのです」

 

「大丈夫なのかい?そりゃ確かに全部打ち返せるとは思うがねえ…」

 

あまり乗り気ではないのだろう。

ほぼ同じ内容で安全なものがあるのに態々怪我の要素を上げる必要はないからだ。

 

「大丈夫です、きっと上手くいきます」

 

そう言ってリンクは中心に歩んでいく。

 

「やれやれ、本当に危ないと思ったら直ぐに摘み出すからね。心配しているお姉さん達に申し訳が立たない」

 

「勿論です、よろしくお願いします!」

 

 リンクの合図と共に丸太が次々と襲いかかる。

1つ2つ…順調に跳ね返すその姿は確かな成長を感じさせる。

勿論ゲルド2刀流を身に付けたからという側面もあるだろう。

 

だが―

フィン

 

 全て弾き出した時、音が鳴り、床が点滅した。

何事かと思って警戒を強めるリンクとリムーバ。

 

まだ終わっていなかったのだ。

先程の丸太に加え、棘付き鉄球、ゲルドのナイフ…あらゆる障害物がリンクを取り囲むよう同時且つ大量に押し寄せて来た。

 

(やっぱりあれだけじゃなかったんだ!)

 

 リムーバが止めに入ろうと試みるが…

いくら何でも多すぎる上に、彼女の向かえる全ての進路をふさぎ切っている。

しかもあらゆる方向からとあってはどうしようもない。

もはやリンクを取り囲む壁といっていい密度であった。

 

(怖さはもちろんある、でもこれは修練だ、絶対に出来ないものを用意なんてしない筈。最速で全てを吹き飛ばす2刀流―)

 

 リンクは構え沈むように力を溜める。

極限状態から来る研ぎ澄ました集中力が僅かな時をリンクに実感させない。

 

「ハァァアアアア!!!」

 

 竜巻 彼女にはそう見えた。

ありとあらゆる障害物がリンクを中心とした渦に巻き込まれ弾き飛ばされる。

丸太達が吹き飛んだ後には跳びあがり、着地するリンクの姿が見えた。

ゲルド古武術奥義 双刀回転斬り

それは奇しくも彼のもっとも得意とする回転斬りの派生形であった。

 

「凄い…これが古武術の可能性なのかい…?」

 

 非常識な速さの剣捌き、左右の剣両方を完璧に使いこなす基礎の高さ、そしてゲルド族特有のしなやかな身のこなしから生まれる暴風は荒々しく、過ぎ去った後の静寂に包まれた柔らかな着地とのコントラストは美しさすら覚えるものであった。

 

(今の感覚は…一体?)

 

それと同時に古武術はリンクに思わぬ副産物を与えたようだ。

今まで少しずつ研ぎ澄まして来た感性が実戦の中で使えそうな程に。

 

「―リムーバさん!見ましたか!?これが私の答えです!」

 

「ああ、年甲斐もなく感動してしまったよ。見事なものさ、私の求めたもの以上の技を見せてくれたよ。サークサーク…!」

 

 今の技は修練場の最後の仕掛けから見い出したものだ。

それは即ち古武術における最後の奥の手といっていいものでもある。

 

「もう私から教えられることは何もないよ。後はビューラとの決戦に向けて調整するだけさ」

 

「リムーバさん、お世話になりました」

 

そう言ってお辞儀をするリンク。

 

 思えば早かったものだ、訓練だけでは物足りなかったあの日。

この路地裏で彼女に出会った。

始めはどんな人か不安に思っていたが、自分の欲求不満を正確に言い当てた事や宮殿で数十年兵士としてゲルドの街の安全に貢献していた事を聞き打ち解けたものだ。

 

 リムーバさんは道楽と言ってはいたが、それは嘘だろう。

彼女の伝える知識は本物だったし、自分の細かいところまで気にかけてくれていた。

 

 それだけの情熱があるのにもかかわらず、リムーバさん自身では無く自分に教えたのはもう打ち込むことが出来ないからだと思う。

 

「…明日の御前試合。頑張りなよ、アンタは全力を尽くした。それはアタシが保証する」

 

「それでは失礼します」

 

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