ゼルダの伝説 蒼炎の勇導石   作:ちょっと通ります

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第38話 三日月の舞踏会

 同日 ゲルドの街

 

「そういう訳だから、一緒に応援に行きましょう?」

 

「ええ、他ならぬフェイパとリンクちゃんの晴れ舞台だもの。喜んで参加させてもらうわ」

 

「サークサーク、それともう1つ頼んでいた例の件だけどどうかしら?」

 

「うーん、詳しい事まではわからないけれどいいと思うわよ。でもいいの?私よりもカッシーワさんの方が詳しいわよ?」

 

「いいのよ、今度の演奏会のサプライズにしたいから。それにね、1曲ぐらい作曲してみたいの。私の初めての曲…リンクに演奏会で使って欲しいから」

 

 恐らく彼女なりの思いやりでもあるのだろう。

去年参加できなかった分、この演奏会楽しんで貰いたいのだ。

 

「それじゃあ、演奏会の練習が始まるまでの間に完成させないとね。早めに作っておかないとリンクちゃん困っちゃうわ」

 

「あっ」

 

「ハァ…なんで音楽の事になると周りが見えなくなるのよ…。ある程度は完成しているし早めに作り上げなさいよね」

 

「そうね、やっぱりあなたに話しておいて良かったわ。うちの家系はみんな凝り性で偶に周りが見えなくなっちゃうから…」

 

「とりあえずは2日後の舞踏会と御前試合ね。大丈夫、きっと上手くいくわ」

 

「うん、アタシもそう信じてる。大丈夫よ、あれだけ練習してきたんだから。っとそろそろ時間ね、フェイパの練習に付き合うからこれで失礼するわ」

 

「あなたも無茶しちゃ駄目だからね、今日の所は作曲は諦めなさい。体力が持たないわよ」

 

「うっ…ぜ、善処するわ…」

 

 明らかに気落ちをする様にちょっとくらいいいかと思ったティクルだが、それでも心を鬼にしてそれを抑える。

そうでもしないと絶対に無茶をしてしまうと長年の付き合いでわかってしまうからだ。

 

――

 

 2日後

 

「リンク、スルバ、サヴォッタ!」

 

「サヴォッタ、フェイパ姉ちゃん」

 

「2人とも今日は早いわね、早い所ヒンヤリ煮込み果実食べちゃって」

 

「何だよスルバ、今日は特別な日だぞ?」

 

「だからこそよ、あんまり変えすぎて体調を崩しても知らないわよ」

 

「うーん、そう言うなら仕方ないか…。あ、スルバ姉ちゃん。お代わり!」

 

「アタイも」

 

「まったく食欲だけはいつも通りなんだから!これで最後にしときなさい、特にフェイパ!」

 

「おいなんでアタイだけそんな風に言われなきゃいけないんだ!?」

 

「アンタの舞踏会すぐじゃない!それとも何?ふっくらしたお腹をみんなに見てもらうつもり?」

 

 ゲルドの衣装はお腹が出ている服装が多い。

腹部はゲルド族に置いて一種のステータスの様なものである。

ゲルドの戦士はその見事に割れた腹筋を誇りに思っているし、そうではないヴァーイはスリムなそれこそヴォーイに好まれるような状態を保つことが重要視されるのだ。

 

「ゲッ、それは嫌だ…。リンク、アタイのコレ、食べるか…?」

 

 太ったお腹を晒しながら踊る事はフェイパにとってどころか全てのヴァーイにとって許されない愚行である。

それこそ辱めと言っていい公開処刑だ。

 

「いいの!?サークサーク!」

 

 そんな姉の気持ちなど露知らず、感謝の気持ちを伝えあっという間に口に運んでゆくリンク。

 

「リンクだって食べ過ぎて動けなくなっても知らないわよ。ルージュ様の御前でそんな無様な真似は許さないんだから」

 

 ただの訓練での失態ならばそこまでは言わないだろう。

御前試合である以上、何よりリンクも恐らくビューラもこの日に向けて鍛錬を積んで来た筈。

それを全て台無しにすることだけは、代表者であるルージュの顔を潰す為、避けなければならない。

 

「大丈夫だよ、これぐらいで支障が出てきたらビューラ様に勝てる訳がないもん」

 

 どうやらリンクは本気で勝つ気でいるらしい、並みの兵士ではもはや恐れ多くて戦う事や話しかける事すら出来ないというのに。

 

「ハァ…、それで最後にしなさいよ。フェイパはもうそろそろ時間じゃない?」

 

「ゲッもうそんな時間か。それじゃあ行ってくるわ、スルバ、リンク御馳走様!」

 

「あ、僕も行く!スルバ姉ちゃん、御馳走様!」

 

荷物をまとめて宮殿へを足を運ぶフェイパとそれを追うリンク。

 

「はいはい、お粗末様でした。後でティクルと一緒に行くからね。2人とも気を付けて」

 

 数時間後 宮殿前

 

「ごめん、スルバ待たせちゃった?」

 

 宮殿の入り口で2人は落ち合う。

ただ、今回は失敗だったかもしれない。

舞踏会や御前試合はこの宮殿で行われる為、人が集中するのだ。

御蔭で近くまで来てから、見つけるまで時間がかかってしまった。

 

「そんなことないわ、今来たところよ。2人とも大丈夫かしら…」

 

「少し深呼吸したほうがいいわよ、応援するアナタが緊張してたら駄目じゃない」

 

「一理あるわね…スゥー…ハァー…。うん、さっきよりいい感じ!サークサーク」

 

「心配なのはわかるけど大丈夫よ。なんて言ったって貴方達は私の自慢の友達だからね。きっと上手くいくわ」

 

「それなら今夜は御馳走かしらね。何を作ろうかしら…」

 

「その時は御一緒したいわ、スルバの料理はとても美味しいから」

 

 自分と変わらない齢なのにきっちりと料理のできるスルバは凄い。

「そろそろ料理のいくつかは覚えなさい」と母様から厳命されているティクルとしては友人達のお祝いのついでに自分でも作れそうな料理を教えて貰いたいのだ。

 

 ゲルドの恋愛教室行にされては堪ったものでは無い。

教師であるプシャンの助言は的確であるとは聞く。

が「ミコン」である事も有名なのだ、確か彼女は今年で43になる。

漠然とした不安感もあるのだ。

 

 

 同時刻 宮殿

 

「ふぅー…、流石にアタイも緊張してきたぜ…。―大丈夫、スルバがいる、リンクがいる。ティクルだって応援に来てくれるんだ。1人じゃない」

 

「お邪魔してもいいかしら?」

 

 1人舞踏会の準備をしているフェイパ。

その彼女の前にヴァーイが入って来る。

ゲルド族特有のやや堀が深い女性は、服をお洒落に着こなしている、特筆すべきは身に付けているスカートだ。

ゲルドの街でこれを着こなすものは非常に少ない。

その上で来賓として招かれることも想定した上品な装飾品を見事に散りばめている。

 

「ア、アイシャさん!?」

 

 宝飾店 Star Memoriesを営んでいるアイシャと名乗っている女性だ。

アイシャの作る宝飾は全てオーダーメイドで世界中で人気の逸品でこの街の目玉の一つでもある。

 

 彼女の凄い所は見せるだけではなく、機能性や耐久性を確保したうえで、宝石に秘められた力を引き出すことが出来る所だ。

戦場に身に付けていく事すら想定して作るのだから恐れ入る。

 

「気楽にしてもらっていいわ、本番前の微調整をしておきたくってね。ちょっとだけ踊って貰える?」

 

 そう言って彼女に踊る様促す。

何といってもオーダーメイドだ、相手を知らずして作る事などあり得ないしこれから舞踏会というお披露目が待っている。

 

「あ、はい。よろしくお願いします」

 

 軽くではあるが舞ってみせるフェイパ。

それを真剣な目で見つめた後、1人思案を始めるアイシャ。

 

「…なるほどね、今の段階ではこれが精一杯だけどちょっとだけコーディネートさせて貰ってもいいかしら?」

 

「いいんですか!?お願いします!」

 

 ゲルドのヴァーイすべての憧れと言っていいアイシャの装飾だ、断る道理はない。

少し大きめの腕輪に三日月のイヤリング、所々に散りばめられたルビーの赤が情熱的なフェイパには良く映える。

 

「凄い…こんなに素敵なアクセサリー初めてです…!」

 

 快活なフェイパに僅かに照れの朱が混じる。

それもまた彼女の魅力だ。

 

「そう言って貰えて嬉しいわ、でもこれは即席の物。もっと貴方に合っている装飾が思い浮かぶ様、舞踏会でも楽しみにしているから思いっきり踊って来なさい」

 

「はい!サークサーク!」

 

 そう言って舞台に向かう、もう時間だ。

スルバやリンク、ティクル達が待っている。

 

 

「来た!フェイパ姉ちゃんだ!」

 

 リンクはフェイパとは別の控室から覗き込むように姉を見る。

彼にはこの後試合があるのだ。

だからこそスルバ達の観客席と一緒には観戦できない。

共に応援をしたかったがそれは仕方ない。

 

「うわぁー!フェイパ姉ちゃんすっごい綺麗!嬉しそう!」

 

 うんうんと頷くリンク、あれがアイシャさんの技術なのだろう。

リンクには御洒落はあまりわからないが、姉の喜ぶ姿を見れるのならば大歓迎だ。

 スルバだったらどうなるのだろう、御洒落に関してはフェイパのほうが好きの様だが嫌いではないのは知っている。

 

「そうだなー、スルバ姉ちゃんなら清廉なイメージで御淑やかな感じが似合いそう!あの竪琴が絵になる感じだと喜びそう!」

 宮殿 観客席

 

「あっ、来た来た。へぇ、フェイパ綺麗じゃない。あーあ、アタシもアイシャさんの装飾着けてみたいなー」

 

「ええホントね…、ちょっと妬けるわ。竪琴に相応しい装飾で涼しげな服装なら言う事ないわね」

 

「ふふっ、確かに似合いそうね。―そろそろ始まるわよ」

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