ゼルダの伝説 蒼炎の勇導石   作:ちょっと通ります

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第39話 ジュエルよりも輝いて

 

「皆、よく来てくれた。これより舞踏会を始める。ゲルド伝統の文化を存分に楽しんで欲しい」

 

 ルージュが手短に話し、開始の合図を送る。

舞踏会へ参加する者達は皆、いつもとは違う気合の入った服装をしている。

 

 この日の為に服飾店や宝石店が軒を連ねる通りで準備をしてきたのだろう。

特にサジェの Fashion Passion で新調したと思われる服が多く見えた。

 

それだけでは面白くないと思ったのか、骨を模した怪しく光る服装やどこから手に入れたのか男性用の服装を改造した変わり種を選ぶ者もいる。

何故かはわからないがエプロンをアクセントとして身に付ける者もいた。

 

 ゲルド族の女性はこういった行事を進んで楽しむ者が多い。

始まる前からでも各々が観客席に手を振ったり、ウインクしたりなど色々なアピールをしている。

 

 フェイパもステージの上に立つが、やはり子供という事もあり背の低さから少しだけ埋もれてしまっている。

それでも、目聡い観客は彼女の衣装や装飾の見事な事に感嘆の声を上げている。

 

(みんなに支えて貰えたからここまで来れた。色々と迷惑もかけちまったけど見てくれるよなアタイのすべて)

 

 曲が流れる

2人で組んで踊る者もいれば、曲調に合わせて音を鳴らす者もいる。

歌いながら道具を使い更に踊る者までいる。

しかし、リンク達の主役は当然彼女だ。

 

(凄い…綺麗だ…)

 

 フェイパが回る。

右に左に動く度、散りばめられた宝石や腕輪が輝いて観客を魅了してゆく。

 

 スカートの裾がふんわりとそれでいて均等に上がる。

それは彼女の軸が安定しているという証拠。

更に一定の速さで回転できているという事でもある。

 

「―まさかずっと見て来たアタシが目を奪われるなんてね。見事だわ」

 

「フェイパこんな踊りもできるようになったんだ…あんなふうに踊れたら楽しいだろうなぁ」

 

(色々と悩んだし、迷っても来た。笑えるよな、明るくて元気を与えるようなアタイが実はそんな風になってたなんてな。…でもそれもアタイなんだ。それを受け止めなくちゃいけない。だからこそ明るさや元気のありがたみもわかったよ)

 

(変わったわね、あの子)

 

 宝飾職人の彼女に踊りの才があるかはわからない。

それでも同じぐらいの年の子よりは遥かに上手だったし真剣に打ち込んでいた。

 

 その彼女の姿からイメージを膨らまし、作り上げたのが先程の装飾だ。

私自身いい加減に作ったつもりはないし、登場だけで観客を惹きつけていた為似合ってはいるだろう。

 

(考え方というか視点が変わったのかしら?あの年頃のヴァーイは本当に成長が早いわ)

 

 その一方でどこか物足りなさも感じていた、大切な何かが欠けているような…そんな感じが。

 

 今は何が足りていなかったかはっきりとわかる。

見極めきれていなかったのだ、あの子の心を。

 

 恐らく本質はあまり変わらないだろう。それでも今の踊りはしっかりと見ている相手の事も自分の事も考えている。

 

(あの子の境遇は知っている、悲しみも苦悩も筆舌に尽くしがたいものでしょう。それすらも乗り越えたのね。見て欲しい相手はわかっている。いい家族を持ったわね)

 

 まだまだ精進しなきゃね、そう己に言い聞かせるアイシャがいた。

曲調が変わり、穏やかなテンポから激しいものになった。

 

(だからこそ、アタイは元気で明るくありたい。アタイだけじゃない、スルバやリンク、ティクル達が悲しく沈んで欲しくないからだ。それこそ分け与えられるぐらいに!)

 

 先程とは打って変わって鋭い動きで魅了する。

脚を組み替え、空いた利き脚と手を使い拍子をとる。

この速い曲にダイナミックな動きで魅せつける。

 

 更にその間も回転を正確にこなし前で後ろで、手で足で表現を加えてゆく。

持てる全てを自分に相手に捧げているのだ。

 

(父様も母様もいなくなってからもずっと支えてくれたみんなに伝わって欲しい!大好きだみんな、サークサーク!)

 

舞踏会の主役は、決まった―

――

 

 曲が終わるとともに割れる様な拍手が起こる。

楽しい事やいいと思ったものには素直に褒め称えるのが彼女達の文化だ。

 

やり切った

 フェイパはそう思った。

今できる事は踊りを通して伝えたつもりだ。

初めての試みで少々不安ではあるが…それでも後悔はない。

精一杯観客席のみんなに手を振り、会場を後にする。

 

「ふぅ…、終わったぁ…」

 

 控室へ戻った、フェイパ。

力を出し切り疲れ果てた彼女はそのまま座り込む。

少しだけヴァーイとしてははしたないかもしれないが、許して欲しいと思う彼女だった。

 

「フェイパちゃん、今大丈夫かしら?」

 

「アイシャさん!?しょ、少々お待ちください!」

 

 何という事だ、アイシャさんの前でこんなみっともない恰好など出来る訳がない。

慌てて整えて彼女を迎える。

 

「お待たせしました!申し訳ありません!」

 

「そんなに気を遣わなくてもいいわ、疲れているのはわかっているしね。…早速で悪いけれど本題に入ってもよろしいかしら?」

 

 フェイパに緊張が走る。

いくら全力を出し悔いはないとは言っても、それとは別で内容によっては影響が小さくないからだ。

 

「貴方の事は気に入ったわ。その装飾は貴方の物よアタシからのご褒美って事ね」

 

「あ、あの!装飾品も大変うれしいのですが、働かせてください!スルバやリンクばかりに負担をかけたくないんです!」

 

 彼女は宝飾の全てを手に取りアイシャに差し出しながら頭を下げる。

大凡想像は着く、小さいながらも家事をこなす子と危険の満ちた砂漠の護衛をこなす子。

 

 子供が生きていく為とは言え相当な無茶をしていることだろう。

彼女自身できる事を探していたからこその言葉だろう、だが生憎これぐらいの齢のヴァーイを雇う場所など無いのが実情だ。

 

 彼女が宝飾や服が好きで大切にしている事も知っている。

定期的に店の前で宝飾を憧れの目で眺めているからだ。

あれだけキラキラした目で覗き込まれてはわからないほうがおかしい。

今だって外して渡そうとしている手が震えている。

 

「―話はまだ終わっていないわ。それをしまいなさい」

 

 駄目なのか、スルバやリンクみたいにはいかないか。

震える手で宝飾をしまう。

 

「実はね、ある企画を考えているの。それはね、生涯つけてられる様なアクセサリーの作成及び、微調整のサービス」

 

 はっと顔を上げるフェイパ。

合点が言ったのだろう、中々勘のいい子だ。

 

「貴方をその企画のモデルのヴァーイにしようと思うの。勿論報酬も払うわ、モデルとして思いっきり好きな踊りもこなしてみせなさい」

 

 本当にありがたい話だ。

先程の話は恐らく今考えてくれたのだろう、他ならぬ自分達の為に。

 

 世界中で人気のアイシャさんが態々こんな販路を拡張しなくてもいいはずなのに…

自分の好きな事をしながら、幼い自分の為に支援をしてくれる…。

 

「勿論仕事でもあるから、しっかりと身だしなみや踊りには気を遣って欲しいわ。約束できる?」

 

「はい!サークサーク!」

 

 彼女の顔に大輪の花が咲く。

何といっても笑顔の映える子だ。

 

「うんうん、貴方にはそっちの方が似合っているわ。アタシのアクセサリー、ちゃんと着こなしてね」

 

 今すぐはアローマさんやアイシャさん達に返せるものは無いかも知れない。

それでもいつかこの恩を返せるよう頑張らねばと心に決めるフェイパがいた。

 

――

 

(フェイパ姉ちゃん凄かったなぁ…。さぁ、今度は僕の番だ)

 

 いよいよ次はリンクとビューラによる御前試合だ。

あらかじめ武器は支給されたものを使う。

 

 いくら何でも観客もルージュも催し物でそんな殺気立ったことなど望んでいないからだ。

リンクはゲルドのナイフと盾を選び、ビューラは恐らくではあるが槍で来るのだろう。

 

(僕が本当の意味でビューラ様を超えるには…、この方法しか思いつかなかった。ある意味で一番無謀かも知れないな。それじゃあ、行こうか)

 

 訓練場へと会場を移る。

先程と比べれば流石に観客は少ない。

立て続けなのもあるし、武道まで興味を持つヴァーイばかりではないからだ。

 

「ティクル。早くしないといい場所無くなっちゃうわよ」

 

「急かさないでよ、さっきよりも観客だって少ないんだから問題ないわ」

 

 ティクルの手を引っ張り、会場を指し示すスルバ。

蒼い瞳を輝かせながらリンクの晴れ舞台を見る為に席を確保しようとするその姿は年相応のヴァーイに見える。

 

「何言ってるの。せっかくのリンクの晴れ舞台なのよ?それに後から来るフェイパも分まで確保しなくちゃいけないわ」

 

「さっきだってちゃんと取れたし、まだ誰も来ていないじゃない。宮殿の関係者しかいないわよ?」

 

 いくら人が少なくなったとはいえ2人が並んで座る場所の確保よりは3人が並んで座れる場所の確保は確実に困難になる。

それでも会場の空き具合を見ても考えを変えないこの姉は妹馬鹿ではないのかと呆れるティクルだった。

 

 

「ワリィ、待たせたな!間に合ったか!?」

 

 フェイパが息を弾ませながらスルバ達に合流する。

急いで着替えて来たのであろう。

先程とは違う服装で息を弾ませながら駆けて来た。

 

「大丈夫よ、まだ始まっていないわ」

 

「お疲れ様、フェイパ。とってもかっこよかったわよ」

 

「サークサーク、ティクル。やっぱアイシャさんスゲーわ。…さてそろそろ時間か」

 

 彼女のセリフで3人とも会場の方へと目を向ける。

玉座にルージュが座り、リンクとビューラが入場する。

予想通りリンクはナイフと盾、ビューラは槍の様だ。

 

 観客は先程よりは人数は少ないが、それとは別に兵士達が見ている為そこまで少ないとは思えない。

 

「来たなリンク。見せてもらうぞ、お前の集大成」

 

 威圧感すら漂う、威風堂々としたビューラの佇まい。

気合十分といったところか、この日の為に彼女も万全を期して来たのが一目でわかる。

 

「ビューラ様、私も色々悩んだり迷ったりもしましたが何とかここまで来れました。全力をもって御相手致します」

 

 これに対し、リンクも苦悩や怪我こそあったもののこの日に向けて最後まで調整を重ねて来た。

 

 2人は向かい合い、一礼をする。

ここから先は言葉は無粋、技と技、力と力持てる全てをで語り合うまでだ。

 

「2人とも準備は大丈夫の様じゃな。せっかくの御前試合。互いに正々堂々悔いの残らない試合をするように。チーク、試合開始の合図を頼む」

 

「はい、それでは―始め!」

 

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