ゼルダの伝説 蒼炎の勇導石   作:ちょっと通ります

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第5章 果てにある村
第41話 最果てと打ち上げ


 同時刻 リンクの家

 

「それでは、フェイパの舞踏会とリンクの御前試合の成功を祝して―乾杯!」

 

 新鮮な果物を絞ったジュースで祝杯を挙げる4人。

ティクルの母であるベローアが沢山作ってくれたのだ。

爽やかな甘さにたっぷりの果肉がとても美味しい。

 

 特に疲労と達成感で一杯の2人には格別な味わいであろう。

 

 今回は珍しく音頭を取るのは、スルバだ。

普段こういうことはフェイパが率先して行うのだが、主役にやらせるわけにはいかない。

 

「おめでとう、フェイパ。リンクちゃん。とーてもカッコ良かったわよ」

 

「な、何だか面と向かって言われるのも照れくさいな…。サークサーク」

 

 自分が褒めたりする事にはなれているが、いざ言われるとなると、どう返せばいいかわからないフェイパ。

 

「やりぃー!御馳走が一杯だ!スルバ姉ちゃん、ティクル姉ちゃん。サークサーク!」

 

 ビューラとの激戦と朝食が物足りなかったこともあり空腹だったリンクは豪快に頬張ってゆく。

 

「リンク、そんなに急いで食べなくても逃げたりしないわ。喉に詰まらせちゃうからよく噛んで食べなさい」

 

「ねえねえフェイパ。せっかくなんだし舞踏会の衣装、着て見せてよ」

 

「ええ!?確かに汗は流したけれど…。ち、ちょっと恥ずかしいな」

 

「いいじゃない、衣装は着てこそ意味があるもの。着てあげないのは可哀想よ?」

 

「そ、そこまで言うのならしょうがないなー。ちょっと待ってろ」

 

 照れの表情を張り付け、奥へいったん引っ込むフェイパ。

しばらくすると、衣装に着替えて戻って来た。

ばっちりと宝飾まで着飾っている辺り、結構乗り気の様だ。

ちょっと恥ずかしいのか頬が赤く染まっている。

 

「うわぁ~!やっぱり間近で見ると凄いや!かっこいいのにカワイイ!」

 

「改めてみても本当に美しいわね。…ねえフェイパ、後で私も着て見ていい?」

 

「あ、ずるいスルバ!私だってこんな素敵な衣装とアクセサリーなら着てみたいわ」

 

 2人とも尋ねる形で聞いているが、返事は聞いていない。

どうあっても着るつもりの様だ、恐るべしゲルド族

 

「お、おう…。頼むから壊したりだけはするなよ。アイシャさんからの大切な贈り物なんだから」

 

 スルバやティクルも思う存分に衣装を堪能する。

特に宝飾品の類はまずつける機会など無い事から2人とも興味津々だ。

 

「いいないいなー、私も大きくなったらアイシャさんに作って貰いたい!このアクセサリーの模様とか素敵だわ!」

 

「スルバ姉ちゃん、せっかくだからその衣装で演奏してみてよ」

 

「おっ、いいじゃねーか。何だかんだ絵になると思うぜ!」

 

「主賓からのリクエストならしょうがないわね、せっかくだし半分だけできた新曲を聞かせてあげるわ」

 

そう言って奥から竪琴を持ってくるスルバ、その時である。

 

「あっ」

 

 スルバが躓いた。

それだけの事であるが、手には竪琴。

身に付けているのは借り物の服に高価な宝飾。

新品であるという点も見逃せない。

 

「っ!」

 

 咄嗟に体を捻り正面の宝飾と竪琴を庇うようにそらす。

だがそれは転倒を防ぐ動きでは無く、転倒した時の被害を減らすためのものだ。

数秒後の予想を裏切る事は無い。

 

ドタン!と音がした。

 

「リ、リンク…?」

 

「ね、姉ちゃん、怪我はない…?…できたら早く起き上がって欲しい…」

 

 尻もちをつく形で倒れ込んだスルバ、しかし思いの外ダメージは少なかった。

 

いつの間にかリンクがスルバの転倒先に滑り込んでいたようだ。

類稀な身体能力の無駄遣いである。

 

「あっ、ごめんリンク!」

 

「お、おい!2人とも怪我はないか!?」

 

「スルバ!リンクちゃん!大丈夫!?」

 

「う、うん…ちょっと重いけど平気」

 

「あっ!?馬鹿!」

 

 空気が 凍った。

重い―言うまでもなくヴァーイに対する禁句である。

 

「リ・ン・ク?」

 

 笑顔が、怖い

その怖さは魔物のとはまた違った恐ろしさを孕んでいる。

逃げ出したい気持ちでいっぱいだが、年の割にやや大きめの尻に乗られている状況でどうやって逃げろというのか。

 

「ご、ごめんなさい…」

 

「まぁ…その、料理が上手いってことの証だと思うぜ?」

 

「咄嗟に庇ってくれたリンクちゃんの行動で水に流しましょう?ね、スルバ?」

 

 何とかティクルがとりなしてくれた御蔭か大惨事にならなくて済んだ。

フェイパの言葉は火に油な気がしないでもない。

 

「もう…、ここで怒ったらせっかくの祝杯が台無しじゃない…。今回だけよ。リンク、ヴァーイに重いなんて絶対に言っちゃ駄目」

 

「そ、その…ごめんなさい」

 

「ささ、それぐらいにして演奏を頼むよ。半分って事は今作曲中のあれだろ?」

 

「リンク。この曲は今年の演奏会の為に、アナタの為に作っている曲よ。完成はもう少し先だけど、しっかりと聞いて欲しいの」

 

 コクンと彼は頷く。

 

 今年の演奏会はスルバの誕生日に行われる。

去年参加できなかったリンクへの姉からのプレゼントだ。

 

 音色が広がってゆく、不思議と耳を傾け時を忘れてしまう曲だ。

雄大ながらも身近にある、これで未完成なのだから完成した時はどんな曲になるのか興味は尽きない。

 

衣装を着たスルバの姿は幼いながらも神秘的な魅力を醸し出していた。

 

「姉ちゃん凄いや。これで半分なんだよね!?」

 

「サークサーク、その通りよ。前回はリンク参加できなかったからね。早めに作っておきたかったけど初めての作曲は中々難しくて」

 

「他の人が作曲している所を見たことが無いからわかんねえけど十分凄いと思うぞ?もっと胸張れよ、いい曲だったぜ」

 

「ねえねえ、他の曲もお願いできるかしら。せっかくだし今日ぐらいは楽しみましょうよ」

 

「それもそうね!今日はオールナイトよ!」

 

「「「そこまでは言ってない」」」

 

 ハハハと笑い声が響く。

活気に満ち溢れるゲルドの街ではよくある光景でもあり、幸せな一時であった。

 

――

 

 数か月後 ゲルドの宮殿

 

「チークさん、サヴォッタ。本日はどのような仕事でしょうか?」

 

 リンクは宮殿に呼び出されていた。

訓練ではないので恐らくは護衛の仕事なのだろう。

 

「サヴォッタ、リンク。今回の仕事はカカリコ村を経由して、ハテノ村へ行ってもらいたい。カカリコ村の長から指名でな、頼めるか?」

 

 しかし、今回伝えられた仕事は護衛では無く先方から来てほしいという依頼であった。

珍しい事もあるものだ。

 

「わかりました。しかしカカリコ村は以前行きましたが、ハテノ村…ですか?」

 

 ビューラの行っていた業務をチークが代わりに行っている。

その一環で、リンクにも仕事が回って来たという事だろう。

もうビューラから任せられることもないと思うと少しだけ寂しいリンクであった。

 

 昨年のルージュの件もあり、カカリコ村との親交が深まっている。

代表であるインパからの呼び出しという事だろう。

それからカカリコ村はわかるのだが、ハテノ村につながる理由はわからない。

 

「詳細はカカリコ村で話すそうだ。ハテノ村はカカリコ村よりもさらに遠い。備品は多めに支給しておく、道中にはしっかりと気を付けろ」

 

 地味に彼にとっては初めての一人旅でもある。

ハテノ村はカカリコ村を経由する事もあり、カカリコ村で行き方を聞く事だってできるだろう。

 

「わかりました、すぐに出発でしょうか?」

 

「ああ、出来るだけ早めに出発して欲しい。勿論、準備をしっかり整えた上でだがな」

 

「はい、それでは失礼します」

 

 

 ゲルドの街 リンクの家

 

「お、リンク今回はどこへ行くんだ?」

 

「うーんとね、今回はカカリコ村を経由してハテノ村へ行って欲しいんだって」

 

「ハテノ村…?えーとどんな村だっけ?」

 

 フェイパが首を傾げる、ゲルドの街が西の果てならハテノ村は東の果てだ。

遥か彼方の異国となれば、知らなくても不思議ではないだろう。

 

「酪農が盛んなのどかな村よ。ウオトリ―村も近いから魚介類もそれなりに手に入るみたいね」

 

 もう1人の姉がどんなところなのか補足を加える、真面目に勉強してきたからかこういう知識においてフェイパよりも詳しい。

 

「スルバ姉ちゃん、その…」

 

「わかっているわ。おにぎりやパンを用意しておくから気を付けていくのよ。フェイパはその間にヒンヤリ煮込み果実を出してあげて」

 

「おうよ。リンク、ホントに危ない時はしっかり逃げるんだぞ。命あっての物種だ」

 

「わかった、気を付けるね」

 

 そう言いながら手慣れた動きで準備を整えていくリンク。

見た目の幼さとの差がものすごい。

 

「…よし、準備できた!フェイパ姉ちゃん、スルバ姉ちゃん、行ってくるね。僕がいない間、姉ちゃん達も気を付けて!」

 

「食べるときはおにぎりの方から食べるのよ。どちらかというとパンの方が長持ちするからね」

 

「あの香水をくれた人にお礼を言っていたと伝えてくれ。あれは本当にいいものだ」

 

「私の方も料理のレシピ教えてくれた人にお願いね?」

 

「うん!」

 

 落ち着いた足取りでレンタザラシ屋に向かうリンク。

最近ではだいぶスナザラシにも慣れて来た。

過酷且つ広大な砂漠は手早く抜けるに限る。

 

(これから先何が起こるかわからない、出来るだけスナザラシを乗りこなさないとな)

 

 スナザラシとつなぐロープを腰に巻き付ける。

乗り慣れたゲルド族の乗り方だ。

 

 この乗り方は転倒した時に引き摺られるという欠点があるが、両手が自由になるという利点もある。

まだリンクはうまく扱えないが弓を使う猛者もいる様だ。

 

(うわあっ!?やっぱり手で支えるのとは違うなぁ!重心移動が難しい!)

 

 手で誘導するのとは勝手が違う為何度も転倒するリンク。

まだまだゲルドの街に近い場所の為、魔物の影は見当たらない。

 

練習するのなら今の内だ。

そんな時である。

 

「お嬢さん!サ…サササ、サヴォッタ!」

 

 誰かが声をかけて来た。

メガネをかけたやや小太りのヴォーイでこの砂漠を走って近づいて来る。

この危険だらけの砂漠で転倒している子供だ、心配したのかも知れない。

 

「サヴォッタ、ええと…あなたは?」

 

「あ、ごめんね。僕はボテンサ!43歳 独身 趣味はジョギング!周りからは良くも悪くもがんばり屋さんだねって言われてるんだ!それよりも大丈夫かい?怪我はない?」

 

 そう言って彼は手を差し伸べる。

…思い出した、この辺りでスナザラシの練習をしていた時に声援を送ってくれた人だ。

 

「あ、心配ありがとうございます。これぐらい大したことありませんよ」

 

「それならいいけど…、何かあったら僕に言ってね!力になってみせるから!あ、喉が渇かない?ビリビリフルーツで作った煮込み果実あるよ?」

 

 そう言って彼が出した煮込み果実。

彼は変わった人かもしれないけれど悪い人ではなさそうだ。

切り方は不揃いだが香りにも色にもおかしい所は無い。

 

「あ、美味しいです!」

 

 切り方から見るに、料理の腕はスルバ程ではなさそうだ。

それでもビリビリフルーツの甘さをうまく引き出していると言える。

 

「口に合ったみたいで良かった!なんて言ったって鮮度が違うよ!」

 

「サークサーク。そう言えばボテンサさんどうやって砂漠の中を走っているんです?」

 

 リンクの言う通り、砂漠では砂に足を取られる。

そんな事などお構いなしに彼は砂漠で走り込んでいるらしい。

 

「あ、気が付いちゃった?これはね、以前履いていたサンドブーツを模して作ってみたんだ!以前みたいにより速く走れたりはしないけれど、砂地でのジョギングぐらいなら問題なく出来るんだ!」

 

 そう言って靴を指さしてとんでもない事を言ってのける。

砂漠の民ゲルド族ですらゲルド砂漠を走る事は困難だ。

 

 慣れていないハイリア人が走れるものではない。

以前のリンクもゲルド砂漠を必死の思いで駆け抜け、その過酷さから気を失っているのだ。

 

 しかも靴となればスナザラシに乗れない人でも問題ない、乗れる人にだって不都合にはならない。

 

「凄いです!砂漠でも走れる靴なんてゲルドの街でも実用化されてないんですよ!?どうやって作ったんですか?」

 

「ど、どうやってと言われても…。こう、頑張ってとしか言いようがないよ。人に説明したことが無かったから難しいな…」

 

 残念だ、思う存分スナザラシで駆け抜けるのもいいけれど。

自分の脚で駆けだすのも悪くないからだ。

 

「あっ、ごめんなさい。私、そろそろ行かないと!御馳走様でした!」

 

「あっ、急ぎだったのかな?ごめんね。気を付けてね?」

 

「はい、それではサヴォーク!」

 

「ええと…さようならだっけ?サササ サヴォーク!」

 

 そう言って目いっぱい手を振るボテンサ。

リンクも笑顔を返しスナザラシに出発の合図を送る。

何とかコツをつかみ手で指示するのと変わらないぐらいには上手く指示ができるようになった。

 

――

 

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