ゼルダの伝説 蒼炎の勇導石   作:ちょっと通ります

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第42話 忍び寄る厄

 ゲルドキャニオンの馬宿

 

 ゲルド砂漠をスナザラシで半日、ゲルドキャニオンを数刻移動してお馴染みのゲルドキャニオンの馬宿辺りに着いた。

 

 何故辺りなのかというと、馬宿は名が表す通り馬の為の牧草が必要となる。

辺りの植物が無くなってしまう為、定期的に移動する必要があるのだ。

最も、あまりに場所が変わると利用者がわからなくなるため殆ど決まっている場所をローテーションするのだが。

 

「ゲルドキャニオンの馬宿へようこそ!本日はどのような御用件でしょうか?」

 

 店主であるピアフェが要件を尋ねて来る。

 

 決まっている、これから先の事も考えるのであればイグレッタさんの様に移動できるようにならないと。

 

「はい、こちらで預かってもらっているドラグを引き取りに来ました」

 

「かしこまりました。今一度確認をお願いします。愛称ドラグ、こちらの馬で宜しいでしょうか?」

 

「はい、間違いありません。よろしくお願いします」

 

 ドラグと出会って約1年。

人の1年と比べると馬の1年は大きい。

それこそ子供のリンクならその上に跨る事も出来る程に成長している。

 

「ドラグ!元気にしていたかい!?大きくなったなぁー!」

 

 彼は護衛の仕事について馬宿に滞在する合間にドラグと触れ合う事を欠かさない。

ドラグもリンクを見つけると彼の下に寄り添い顔を舐める。

すっかり仲良くなったようだ。

 

「あはは、くすぐったいよ?今日一日はここでゆっくりするから、そんなにがっつくなって。ちょっと食事をするから待ってろよ」

 

 スルバが持たせてくれたおにぎりに齧り付くリンク。

中身の具は肉の様だ、口の中にうま味の詰まった脂が広がる。

ボリュームがしっかりあり、隠し味の岩塩が保存の面でもありがたい。

材料的にはケモノ肉丼を携帯型にしたものともいえる。

 

「ふぅ…御馳走っと。それじゃドラグ、ちょっと乗ってもいいか?」

 

 そう言うとドラグは彼の隣に移動し、頬を擦り付ける。

大丈夫なようだ。

 

「よっと…、跨るのも大変だ。僕ももっと大きくならないと」

 

 跳び乗る、というよりはゆっくりとよじ登る感じだ。

いずれスムーズに乗れるようにはなりたいが、もう少しかかりそうだ。

 

 リンクも馬を乗りこなせるわけではないのでこの馬宿で練習していくつもりのようだ。

流石に襲歩までは試せないが、歩くぐらいならば問題はない。

 

(…まさか、スナザラシの練習がこんなところで役に立つとはなぁ)

 

 手綱を握り、ドラグを誘導していくリンク。

スナザラシの、それも練習用の扱い方の方が役に立つとは思ってもみなかった。

それでもリンクの身体が上下に揺れ振り落とされそうになる部分といった違う箇所も勿論あるだろう。

 

 ドラグと一緒にいるのはゲルドの街とは違った楽しみがある。

それは訓練の成果が実を結んだ時にも似ているし、気の合う仲間と思う存分遊びつくす感じなのかもしれない。

 

 失敗して落馬しても楽しいものだ。

この辺りは訓練とは決定的に違うし、実戦の様な焼けつくような重圧もない。

 

 彼らは眠る時間になるまで互いに合わせる練習をしていった。

 

 翌日

 

「ドラグ、サヴォッタ!今日から長旅だけどよろしくな!」

 

 どうやらリンクはドラグと共にカカリコ村へ移動するようだ。

馬を乗りこなすイグレッタでも何日もかかるのだ。

 

 馬を使わず、それも子供の脚で移動となるとどれだけ時間がかかるかわからない。

時間だけではない、道中には魔物や野生生物。

手持ちの食糧といった問題だって存在する。

危険な時間は出来るだけ減らすべきだろう。

 

 今の段階では襲歩までは使えないが、それでもリンクの移動と比べればかなり速い。

基本的には街道に沿って移動するので悪路が少ないのも大きい。

 

「そうだ、これ食べるかい?ちょっとだけ持ってきたんだ!」

 

 ゴソゴソと袋の中からイチゴを取り出すリンク。

準備をしている時に持ってきたのだ、嵩張らない事と直ぐに食べることが出来るので旅をしている時には非常に助かる。

 

 鼻を近づけ匂いを確認した後、恐る恐る口に運ぶドラグ。

味を確かめたら先程の様子とは打って変わってがっつくように食べてゆく。

どうやら気に入ったようで良かった。

あっという間に手に持っていたイチゴが消えてしまう。

 

「アハハ、気に言ったみたいで良かったよ!お前も案外食いしん坊なんだなー!さて、そろそろ行かないと」

 

 ドラグに跨り、ゲルドキャニオンを駆け抜けてゆく。

大地を力強く踏み込み、小石を蹴り飛ばしながら走るその姿は虚弱だった頃のものでは無かった。

 

――

 

 4日後 カカリコ村

 

 何とか大きな問題もなくカカリコ村へたどり着く事の出来たリンク達。

それでもイグレッタとともに来た時と比べるとそれなりに時間がかかっているので、まだまだ改善の余地はありそうだ。

 

 ドラグを待たせ、リンクは屋敷へと足を向ける。

 

「服装良し、簪良し。せっかくもらった髪留めだし、着けないのは失礼だよね」

 

 これからカカリコ村へ行くのだ、贈り物を大切にしているのを伝えたい。

 

「「これはリンク様!ゲルドの街から来て頂きありがとうございます。奥へどうぞ、族長がお待ちです」

 

 屋敷の手前でドゥランとボガードが快く出迎える。

リンクがプリコを守った事もあり、かなり友好的な印象を持っているのだろう。

 

「サークサーク、それでは失礼いたします」

 

 中に入ると変わらず荘厳な内装が出迎える。

遅れて、正面に目を向けたリンクは驚きの表情を見せた。

 

 この屋敷で上座に座るのは族長の筈だ。

そこには厳格な老婆のインパでは無く、若さと神秘的な美しさを併せ持つ孫娘、パーヤの姿があった。

 

「こんにちはリンク様。本日は遠路遥々このカカリコ村まで来て頂きありがとうございます」

 

 正座したまま頭を下げるパーヤ。

リンクには人見知りな部分が少しだけ薄れている気がした。

 

「あ、そんなに大したことじゃないですよ。それでインパ様は?族長様から伝えたいことがあると伺っているのですが…」

 

「ふふっ、問題ありませんよ。説明が遅れました、御婆様より正式に族長の役職を引き継がせて頂いたパーヤです」

 

 インパの姿が見えなかったため辺りを見渡していたリンクだったが、改めてパーヤに説明されて理解した。

…失言だ。族長を目の前にして族長はどこですかと尋ねてしまうとは…

 

「す、すみません。悪い事を言っちゃいまして」

 

 余りの事に口調がちょっと戻っている。

彼女は微笑みながら気にしていないと語り掛ける。

 

「…さて、話が逸れました。本日リンク様をお呼びしたのは昨年の件です」

 

 カカリコ村へイーガ団が入り込み、プリコを攫った事件の事だ。

新たな族長就任だけなら、リンクである必要性は薄い。

いや、子供であるリンクではまずいだろう。

 

「イーガ団の者は厄災に忠誠を誓っているのは御存じだと思いますが、同時に現実的に組織された集団でもあります。厄災ガノンが封印されて間もない時期から活動的になる事などあり得なかったそうです」

 

「…それってつまり…」

 

 イーガ団は崇める対象こそ理解の範疇を超えているが、その運営は割と現実的である。

去年の様なタイミングで積極的な行動を見せる事が不自然に映るほどに。

 

 不穏な空気が立ち込める。認めたくない、信じたくない。

パーヤが言おうとする予測は最悪なものであるとひしひしとリンクに伝わった。

 

 

「信じたくはありませんが、厄災の復活が近いのかも知れません。一時期おとなしくなっていた魔物の被害も、ここ最近急激に増えています」

 

 パーヤが話している事の恐ろしさがわかる。

厄災が封印されて8年しか経っていない、いくらなんでも早すぎる。

 

 英傑リンク様やゼルダ様達の命懸けの封印は、散っていった兵士達の魂は何だったというのか。

 

「ゲルドの族長、ルージュ様が彼らに呪われた事件。厄災封印の一端になったとはいえ、当てつけだけで実行するような代物ではありません。時期も適してはいないでしょう」

 

 ゲルド族の長を呪い殺そうとするなど、ゲルド族全体に対する宣戦布告といっていい。

活動の規模を縮小するであろう、タイミングでこのような事はあり得ない。

 

 そもそも神器「雷鳴の兜」奪還の折に、総長であるコーガを失っているのだ。

イーガ団が弱体化する要因こそ思い浮かぶが、活発になる要素などどこにもない。

 

「良くはわかりませんが、その辺りも理由の一因という事ですか…」

 

「はい。御婆様の見解では、あの時の呪いにはシーカー族のものでは無い細工が施されていたそうです。彼らの組織に何者かが手を貸している可能性があります」

 

 あのインパをして態々リンクを呼び寄せようとするほどだ。

信憑性はそれなりにあるという事なのだろう。

 

 だが同時にこういった話でなぜ自分が呼ばれたのか、それが解らないリンクであった。

もっと話の分かる大人だって呼び寄せることが出来たはずである。

 

「…今ここは人払いしてあります、秘密にしている話もできるでしょう。リンク様は…殿方なのですね?」

 

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