ゼルダの伝説 蒼炎の勇導石   作:ちょっと通ります

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アンケートご協力ありがとうございました。
書き溜めは50話まで出来ております。

そして終わった後は、定期的に投稿をしたいと思います。
間隔としては5の倍数の日にちに投稿をしようと考えております。
これからも頑張りますので何卒よろしくお願いします。



第43話 異国の友達

「えっ!?どうして…」

 

 重い口調で静かに語りかけるパーヤ、その内容は彼にとって触れて欲しくないものであった。

 

 手に取るように慌てるのが解るリンクの反応。

普段ヴォーイとばれない様に女装までしていたのに顔を合わせるのも数回の彼女に見破られるとは…。

 

「御婆様の御側で跡目を継ぐため、色々と学んできました。ゲルド族の子供がここ、カカリコ村まで来るとなると只ならぬ事情があるのは自ずとわかります。我々シーカー族は元々隠密に長けた一族です。各地から情報を集め、対策を練る事で厄災に贖ってきたのですから」

 

 おっとりとしたパーヤの口から出る話とは思えない暗い内容であったが、それがシーカー族の長を継ぐという事なのだろう。

 

「話が逸れましたね、100年ほど前の厄災の封印には多くの犠牲が出ました。しかし、御婆様の話では当時の厄災は自我を失った不完全な姿だったそうです」

 

「…もし完全な姿であったのなら…?」

 

 厄災の爪痕は今でも世界中に残っている。

それはここまでくる間にもリンクも沢山その目で見て来た。

あれでも復興が進んでいるのだ、その恐ろしさは想像を絶する。

 

「ガノンは強さもさることながら知性も凄まじいものだったと伺っております。理性を失ってなお我々を出し抜いてみせました。間違いなく100年前を遥かに超えた被害をハイラル全土に齎すでしょう」

 

 あのパーヤが言い切るほどだ、どれだけ前向きに見積もっても未曽有の大災厄になる。

 

「厄災ガノンは、かつてゲルド族の王でした、それも男性であったそうなのです。委細まではわかりませんでしたが、完全復活を目論むイーガ団はリンク様を狙っている可能性が高いのです」

 

 ここまで来て、リンクを呼んだ理由が判明した。

厄災の復活が近く、その為に彼が狙われるであろう事が、可能性とは言っているが遥か彼方のゲルド砂漠から呼び寄せるぐらいだ。

 

 まず間違いなく彼らは、リンクを厄災の為に利用するつもりの様だ。

 

「気を付けて下さい、イーガ団は全盛を誇っていたハイラル王家ですら打ち倒せなかった精鋭集団です。殺戮すら厭わない非情さも持っています」

 

「わかりました。心配してくださりサークサークです」

 

 気をつけねば、厄災が直接絡んでくるとなれば万が一は絶対に許されない。

復活を許してしまえば沢山の人が犠牲になる。

 

 眼を閉じたリンクの瞼の裏に、ティクルやルージュといった街の人々、カカリコ村の皆、家族である姉達が浮かんでくる。

大切な人達、絶対に失ってなるものか。

 

「もう1つリンク様にお願いがあります。ハテノ村に向かっては頂けないでしょうか?」

 

 先程までの緊張を僅かに緩ませ、話を変えるパーヤ。

深刻な話ではなさそうだ、最も厄災に匹敵するような内容など普通は存在しないが。

 

「ハテノ村へ向かって欲しいとは聞いています。内容まではわかりませんが」

 

「実はですね、この書状をプルア様に届けて欲しいのです」

 

 そう言って彼女はそれを差し出す。

族長となる為の教養も積んできたのだろう、達筆すぎてリンクには読めない。

 

「プルア様は御婆様の姉上です。是非ともお会いしたいと幾度となく書状が届きまして…」

 

 あのインパの姉だ、余程の高齢だと考えられる。

自分から会いにゆくのは難しいのだろう。

 

「わかりました。しかし、ハテノ村へは行った事がありません。どのあたりにあるのか教えて頂けませんか?」

 

「大丈夫ですよ、ハテノ村はここへ来るまでの間に通って来たカカリコ橋を戻ります。そこから分かれ道を東の方へ移動していけば後は殆ど一本道になっています。距離は馬で2~3日程かかりますからこのカカリコ村でゆっくりと休んでいくと良いでしょう」

 

 そう言いながら、パーヤはカカリコ村からハテノ村への道筋を描いた地図を手渡す。

マメな心配りがとてもありがたい。

 

「ハテノ村の一番高い所に立てられた家にプルア様は住まわれております。プルア様は優秀な研究者で家を研究所にしているので直ぐにわかるでしょう。その、あれは…一度見たら忘れられないと思うので間違えはしないかと…」

 

 何故か妙に歯切れの悪いパーヤ、そんなに不思議な光景が広がっているのだろうか?

 

「わかりました、明日の朝にハテノ村へ向かおうと思います。パーヤ様、去年の話ですが香水サークサークです。姉からそう伝えて欲しいと頼まれまして…。改めて族長就任おめでとうございます」

 

「気に入ってもらえたようで何よりです。この村には特産品と呼べるような代物は少なくて…。ありがとうございます、この村でゆっくりと骨をお休め下さい」

 

 改めて一礼をして屋敷を後にするリンク。

門を潜り抜けた辺りで、門番の一人であるドゥランが語り掛ける。

 

「リンク様、本日の宿はお決まりでしょうか?」

 

「ドゥランさん。まだ決めていませんね。これから探そうかと考えています」

 

「それでしたら是非、我が家へ来てください。ココナもプリコも来てくれるのを楽しみにしているんですよ」

 

「いいんですか?…あ、ドラグ、いや馬のご飯も何とかしないと」

 

「リンク様はパーヤ様のお客人です。ゴーゴーニンジンを用意してあります」

 

「サークサーク、助かります。他には心配はありません、お邪魔してもいいですか?」

 

「勿論です、それではこちらへどうぞ」

 

 ドゥランの家

 

「「父様、リンク様。お帰りなさいませ」」

 

 娘達が礼をし2人を迎える。

御宿の様な作法が板についている。

 

「ココナさん、プリコさん今日一日お世話になります」

 

「そんな一日と言わずにもっといて下さいよ!お気になさらずに!」

 

「プリコ、リンク様にも事情があります。こちらの我儘だけで引き留めてはいけませんよ」

 

「姉様だって、本当はリンク様が来るのをずっと待ち望んでいたではありませんか。簪を付けてくれるだろうか、重くないかと―」

 

「プリコ!」

 

 聞かれたくなかったのかココナが声を荒げ、プリコの言葉を遮る。

 

「あ、あの…今日一日ドゥランさん一家の厚意に甘えさせて頂くので、その辺りで…」

 

「ココナ、プリコ。そこまでにしておきなさい。お客様の顔を立てる事も大切ですよ」

 

「…お見苦しい所をお見せしました。申し訳ございません」

 

「リンク様、ごめんなさい」

 

 2人は謝罪した後、夕餉の準備を始める。

 

 本日の献立は山菜、しのび草を使った混ぜご飯にシノビタニシの壺焼き。マッスクバスの包み焼き。そして前回食べる事の叶わなかったリンゴバタ―であった。

 

相変わらずの腕前だ、スルバもカカリコ村の郷土料理を作れるようになって来たが、作り慣れた彼女達にはちょっと敵わないだろう。

 

 山菜を使った混ぜご飯は独特の風味と苦みを併せ持っており箸が進む。

シノビタニシの貝類特有の旨味は濃厚なミルクのようで味わい深く弾力のある歯応えは食べ飽きない。

 

 マックスバスの包み焼きの大きな身を余すところ無く堪能する。

何か香草を挟んで包み焼きにしたのだろうか、余計な臭みがなく軽くまぶされた岩塩がより美味しさを引き出している。

 

食後の甘味はリンゴバタ―だ。

加熱されより甘みを増したリンゴに濃厚なバターが染み渡る。

ヤギのバター独特の脂肪が素材を存分に活かしている。

 

――

 

「ふぅ…美味しかった。御馳走様でした」

 

 我ながらよく食べたものだ。

やはりカカリコ村までの道中で消耗していたのだろう。

こういう時にはついつい食べ過ぎてしまう。

 

「お粗末様でした。夕餉を楽しんで頂けたようで何よりです」

 

 ココナも作った甲斐があったようで安堵の笑みを浮かべている。

プリコはというとリンゴバタ―を食べる辺りからリンクに視線を寄せていた。

誰が作ったのかは言うまでもない。

 

「リンク様!そのリンゴバタ―、プリコがココナ姉様に教えて貰って作ったのです!どうでしたか!?」

 

「リンゴバタ―も美味しかったです。サークサーク」

 

「えへへ、サークサーク!これだけは覚えました!」

 

 我慢できなくなったのか、プリコが自分の作った甘味の感想を訊いてきた。

ゲルドの言葉で感謝を伝えると、去年の事を覚えていたのかお礼をゲルド語で返す。

悪い気はしないものだ。

 

「それでリンク様。いつ頃発たれるのですか?」

 

 ドゥランがそれとなく聞いて来る。

リンクの旅発つ予定に合わせて見送ったりするつもりなのだろう。

 

「はい明日の朝にでも出かけるつもりです。あまりご迷惑はかけられませんしハテノ村でプルア様がお待ちのようですから」

 

「そんな迷惑だなんて、リンク様とお話しするのはこちらも楽しんでいますよ?」

 

 意外にもそう返事を返したのは姉のココナの方であった。

プリコもココナも相槌を打ちつつ、時に笑い時に驚いたりしている。

強ち間違ってはいないのだろう。

 

「プルア様がお待ちですか。何かと奇抜な方と伺っております。度肝を抜かれるやもしれませんな」

 

「そうなんですか!うわぁ、どんな人なんでしょう?」

 

 ドゥランも聞いた事がある程度ではあるが、プルアの人物像を教えてくれた。

なお、実際に人となりを知っているインパは決して姉の性格を語ろうとはしない事を記しておく。

 

「明日も早いのでしたら、就寝の準備を整えて来ますね。失礼いたします」

 

 そう言って、床の間へ向かうココナ。

本当にありがたい、その気配りが嬉しいリンクであった。

 

 警護の交代の時間と言ってドゥランがインパ達の屋敷へと向かって言った頃、プリコが尋ねて来た。

 

「ねえ、リンク様。姉様のことどう思いますか?」

 

「急ですね、プリコさん…。そうだなー、真面目で優しいヴァーイ…かな?」

 

「ヴァーイ!それってどんな意味なんですか?プリコ気になります」

 

「えーっと、女性って意味…かな?ゲルド族にはまず間違いなくあてはまるし」

 

「あっ、しまった…ゴホン すみません、話が逸れました。あんなに嬉しそうなココナ姉様久しぶりに見ました。姉様からの贈り物、ちゃんと着けれくれていたのですね」

 

 そう言って彼女は簪を見つめる。

彼女は知っている、姉が朝早く起きてこっそりと村を抜け出す事を。

母様の御墓の前で泣いていた事を。

 

「…姉様は真面目な人です。父様の言いつけやプリコの我儘に文句ひとつ言った事がありません。時には言い出したい事だってある筈なのに」

 

 ドゥランも言っていた事だ。

幼くして母を亡くしている以上、どうしたって無理が生じるのは姉達を見てきているからわかる。

 

「カカリコ村の皆は優しいです。それでも姉様はその厚意に甘える事が苦手で、それを上手く汲んでくださるのはパーヤ様だけです」

 

 プリコが言いたいことが何となく見えてきた気がするリンク。

前まではパーヤが上手く支えてくれたが、今の彼女は族長。

彼女がやらないといけない事は山の様にあるのだろう、以前の様にココナの為に時間を割けるものでは無い。

 

「そんな姉様がリンク様と御一緒の時は本当に楽しそうに笑ってくれるんです。プリコが攫われた時も助けて下さったリンク様だからこそ信頼し、年が近いからこそ自然体でいられるのでしょう…。お願いです、また顔を見せに来てくれませんか?」

 

「勿論です、プリコさんも優しいんですね」

 

(ドゥランさん…お姉さん思いのいい妹じゃないですか。ココナさんもプリコさんも素敵な娘達ですよ)

 

「ありがとうございます。でも姉様の大切な人に靡くプリコではありません」

 

「リンク様、寝る準備が出来ました。プリコ、リンク様に失礼はありませんでしたか?」

 

 プリコとの約束を交わし終わった頃、ココナが帰って来た。

自分がいない間、何をしていたのか気になったのだろう。

 

「いいえ、プリコさんが気を利かせてくれたので色々と楽しむことが出来ました。サークサーク」

 

「それならばいいのですが…、リンク様は明日早いのですよね?そろそろお休みになられては如何でしょうか?」

 

「それもそうですね、お言葉に甘えさせて頂きます。ココナさん、プリコさん、サヴォール」

 

「お休みってことでしょうか!?それではサボール?です!」

 

「サ、サヴォール?」

 

「また明日、よろしくお願いします」

 

 明日にはカカリコ村を出なくてはいけない。

少しでも体力を回復する必要のあるリンクは深い微睡に落ちていった。

 

――

 

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