ゼルダの伝説 蒼炎の勇導石   作:ちょっと通ります

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第44話 厄災の爪痕は未だ深く

 翌日

 

「ふわぁ~、ドゥランさん、ココナさん…サヴォッタ」

 

「おはようございますリンク様。昨夜はよく眠れましたか?」

 

 それなりに早く起きる事も出来るようになって来たリンクであったが、2人ともそれ以上に早起きしていた。

もう1人に関しては名誉の為伏せて置く。

 

 朝食はゴーゴークリームスープと卵焼き、ハイラル米にヨロイカボチャの煮付けが用意されていた。

旅先ではケモノ肉などの油物が多い為調整してくれたのだろう。

 

 クリームスープの柔らかな味わいの中にゴーゴーニンジンの甘さが広がっている。

卵焼きは鶏卵の濃厚な美味さが濃縮されている、ココナの腕もだがコッコの卵を育てている人の情熱が感じ取れるようだ。

 

 ハイラル米を口に運ぶペースも上がるというものだ。

ヨロイカボチャ特有の堅さをガンバリバチの蜂蜜が柔らかくし、芳醇な香りで食欲をそそるのだ。

 

「ふぅ…、ご馳走様でした。とても美味しかったです。ココナさんは料理上手ですね」

 

「お粗末様でした。そう言って頂けて幸いです」

 

「ココナさんのレシピ、僕の家でも好評なんですよ。姉が大層喜んでいました」

 

 そう話すと彼女の表情が一段と明るくなる。

父であるドゥランでもそうそう見かけない喜びに満ちた表情だ。

 

「ありがとうございます。書いてみたはいいものの、内心ではドキドキが止まりませんでした」

 

「しかし…これだけ色々とお世話になって何も渡せないのはちょっと嫌ですね…。ちょっと待ってください」

 

 そう言って、リンクは自分の身に付けている服から装飾を外しココナに手渡す。

金属でできた、三日月のブローチだ。

素朴なカカリコ村の品とはまた違った趣がある。

 

「…綺麗…。あ、あのリンク様。本当によろしいんですか?」

 

 気持ちは嬉しいのだが、本当に貰っていいのかとおずおずと尋ねるココナ。

どことなく甘え慣れていないのが伝わって来てどちらが年上なのかわからなくなりそうだ。

 

「これは僕の我儘です。何度も泊めて貰い、食事までご馳走になるというのは、外で旅をする者にとってどれだけありがたい事なのか…身に染みるものでした。ですから受け取って下さい。何もしない状態で帰ったらそれこそ姉達に怒られちゃいますから」

 

「―嬉しいですリンク様。さ、サークサーク…」

 

 消え入りそうな声でゲルドの言葉で御礼を言うココナ。

頭を下げており、その表情はよく見えない。

 

「リンク様、そろそろ出発のお時間です。プリコ、そろそろ起きなさい。お客様を見送るのはせめてもの責務ですよ」

 

 その言葉に、勢いよく起き上がるプリコ。

どうやら朝早く起きるのは苦手の様だが、寝起きはいい方らしい。

 

その間にも出発の準備を整えてゆくリンク。

ココナも旅先でお腹も空くだろうと食べ物を準備しリンクに渡す。

 

外ではドラグが準備を整えて待っている。

昨日の時点でパーヤが手を回してくれたのだろう。

 

「もう行ってしまうのですね。また遊びに来てください。ココナ姉様やプリコとの約束です!」

 

「またいろいろ話したりしましょう。今度は一緒に馬にも乗ってみませんか?」

 

「いいんですか!?リンク様と一緒に乗れるのですね!良かったですね、姉様!」

 

「プ、プリコまで…もう。リンク様、私も一緒に乗ってみたいです。またの機会によろしくお願いいたします」

 

「ドゥランさん、ココナさん、プリコさん、お世話になりました」

 

 見送るドゥラン一家と別れの挨拶を交わした後、来た道を戻ってゆくリンク。

パーヤと話した通り、ハテノ村に行くにはカカリコ橋を渡り、東へと進まなければならない。

ここからまた、旅の続きだ。

気を引き締めていかねばと気合を入れるリンクであった。

 

――

 

 リンク達はカカリコ橋を渡り、東へと進んでゆく。

その先には苔や水草の生えた湿地帯、タモ沼が広がっていた。

ドラグも何度も泥濘に足を取られそうになりとても走りにくそうだ。

 

「大丈夫かな、ドラグ?知らない土地だ。ゆっくり行こう」

 

この土地にはハテノ村への侵攻を阻んだハテノ砦が聳え立っている。

ハテール地方の魔物達の攻撃を一手に引き受けた場所だ。

水の過剰な湿原でさえ、消しきれぬ戦火の跡がその過酷さを映し出す。

 

(でっかい砦だなぁ…。それでいてボロボロだ。燃えた痕跡や、砕き壊された箇所がこんな遠くからでも沢山ある…。パーヤ様が言っていた厄災、これ以上の被害なんて想像もしたくないよ)

 

 とりあえず一息つけようと打ち捨てられた小屋で休息をとる事にしたリンク。

これだけ足場の悪い土地だ、ドラグにも休息が必要だろう。

虚弱では無くなったとはいえ、頑健というにはほど遠い。

 

小屋の内部…いや壁も崩れ、天井も殆ど残っておらず人が住んでいた形跡を探す方が難しい有様であった。

 

(うわぁ…これじゃあ外で野宿と変わらないなぁ…。ん?何かあるぞ?)

 

リンクが見つけたもの、それは長い間小屋に取り残された古びた書物だった。

至る所が風化しており、文字が掠れている。

 

「うーん、表紙だけしか読めないなぁ…。ラ…ダ…の…宝?これ宝の地図!いや本だ!」

 

これは思わぬ収穫だ、宝があるのかどうかもわからないがこういうものには探すことにロマンがある。

そう言う楽しみ方もあったっていいはずである。

 

「うわぁ!本物なのかなぁ!?どんなお宝が眠っているんだろう!?」

 

知らない事や予想もしない事が起きるのが旅の常。

不安もあれば楽しみもあるだろう。

 

「いつか見つけてみたいなぁ!うわっとと悪い悪いドラグ。今はゆっくり休もうか」

 

昂る気持ちを抑え、休むように促すドラグ。

リンクだって慣れない土地を旅するのは流石に堪えるのだ、自覚は無いかも知れないが疲労は溜まっているとみていいだろう。

 

 崩れかけている小屋だったがそれでも何もないよりはましだ。

ココナが作ってくれた山菜のおにぎりとリンゴを食べながら体を休める。

勿論ドラグにもリンゴを忘れない。

馬でも食べられる携帯食料というのは旅においてありがたいものだ。

 

 食事も終え、体調を整えてから動き出すリンク達。

 

他には何かないかと見渡してみると、幾多の脚を持っている残骸が至る所に放置されているのが見えた。

水を汲む容器にも似た頭頂部に冷たさすら感じさせる不気味な眼、食器をひっくり返したような円状の下半身。

そんな特徴的なものが大量に打ち捨てられているのだ。

 

 中でも目を引いたのは、砦から少し離れた繁みの外れ。

何故かそこにだけ不自然な程に残骸が残っており、激しい戦闘があったと予想される。

しかしだ、その場所は妙に狭いのだ。

軍の様な集団とぶつかったのならこのような極端な密集はあり得ない。

そもそも守りの要である砦から態々出てきて、不利な場所で事を構えようなんてもっての外だろう。

 

「ドラグ、ちょっとだけ寄り道いいかな?あの場所を覗いてみたいんだ」

 

 ドラグを誘導し、残骸の山へと近づくリンク。

近くで見るとなお無機質でぞっとする残骸達、その近くは大地が砕け焼け焦げたように黒ずんでいる。

目の前の物体がやったのだろう。

調べてみると、部品の様なものがいくつか水たまりに浮かんでいた。

 

(何だろう、コレ…?わっ、軽い。金属とも違う感じだしどうやって作ったのかな…?)

 

 インパやパーヤの話から考えるに100年は過ぎている。

 

 雨曝しにもかかわらず、しっかりとした形状のまま摩耗すらないその様は、ある意味で技術者の憧れともいえよう。

手近にあるものを鞄の中に押し込んでゆくリンク。

それなりに量があったが軽い為それ程持ち運びには困らない。

 

「さて、寄り道はこれぐらいにしよう。ハテノ村まで行かないと」

 

 足場の問題から慎重に進んでゆくリンク達。

ハテノ砦を潜り抜けた辺りですっかりと日が暮れてしまった。

 

 この辺りには馬宿が無いので野宿になるだろう。

しかしである、リンクはまだこの場所について詳しくは知らない。

見知らぬ土地で魔物などを考えると野宿は賢明ではないのだ。

そんな時である。

 

「あっ、こんなところに小屋がある!今日はあの場所に泊まろう!」

 

 渡りに船とはこの事だ、丸太を組んで作り上げた小屋があったのである。

この辺りを旅する人達も野宿はしたくなかったのだろう、考える事は案外似ているのかも知れない。

良く見てみると、窓から明かりが漏れている。

誰かが利用しているようだ。

 

「誰かいるみたいだ。お願いして泊めて貰おう」

 

 ドラグを近くに待機させ、ドアをノックする。

しばらくするとメガネを付けた老人が出迎える。

 

「おや、こんな夜更けに1人かい?お嬢ちゃん」

 

 老人は突然の来訪、それも幾ばくも無い齢であろう少女に驚いているようだ。

 

「とにかく小屋に上がりなさい、今からでは集落までは帰れそうもない。ここで泊まってゆくといい。私の名はカリーユという考古学者だ」

 

 夜更けに小屋に訪れる理由など殆どない。

ましてやここら一帯に集落などの夜を明かせる場所は無いのだ。

大凡の理由を察した彼はリンクを迎え入れた。

 

「サークサーク。カリーユさん。私はリンクといいます。一晩お世話になります」

 

 良かった、これで野宿だけは避けられる。

ほっと胸を撫で下ろすリンクだった。

 

「カリーユさんではなくて できれば その… カリーユ先生と呼んでくれ。この小屋はみんなのものだ、遠慮はいらないよ。外は物騒だからね、ベッドがあるからゆっくりと眠るといい」

 

 そう言って、彼は空いているベッドの方を指さす。

1つしかないが大丈夫なのだろうか。

 

「ありがとうございます、助かりました。でもいいんですか?カリーユ先生の寝る場所は…」

 

「先生…カリーユさんではなくてカリーユ先生と… 心配はいらないよ、私はここで調べ物をしているとそのまま寝てしまうからね。ベッドを使わないんだよ」

 

 リンクの心配を笑って返すカリーユ。

どうやら先生と呼ばれたことが相当嬉しかったらしい。

快くベッドを使うと良いと提案してくれた。

 

 これが学者という人種なのだろうか。

寝食を忘れ研究に没頭する事が多いのだろう。

 

「いいですよね、古代のお宝とか」

 

「ほう、お嬢ちゃんにも男のロマンが解るんだね。先人達が残した謎、財宝、技術いずれも素晴らしいものだ」

 

「少しだけですけどね」

 

 ついさっき興味が沸いたのだ、その道の人の情熱と比べれば小さな熱かも知れない。

そんな感じで当たり障りのない返答にとどめるリンク。

 

「それでいいんだよ。最初は誰でもそんなものさ。私は呪われた石像について調べているんだ」

 

 それをしっかりと受け入れてくれるカリーユであった。

初心の大切さを身に染みているのだろう。

 

「呪われた石像ですか?」

 

「ああ、ここから北東に位置する場所に墓地があってね。そこにはこんな言い伝えがあるんだ。(呪われし石像 闇の光が宿るとき その眼を貫け さすれば封印されし試練は 解き放たれる)。私の入念な調査の結果、古文書がこの場所を指している事が判明したんだ」

 

「封印された試練ですか!?面白そう!ワクワクします!」

 

「だろう?私はこれを解明するために朝は墓地に向かい。夜はこうして研究しているのさ。だけどそこからが全然進展が無くてね。手詰まり状態なんだよ」

 

「そうなんですか…。そう言えばここに来るまでの途中に小屋がありましてね。そこに宝の書かれた本が置いてあったんですよ。何か手掛かりになるかも知れません」

 

「それは本当かい!?日が昇ったら見に行ってみるよ。いやあ思わぬところに手掛かりは転がっているもんだなぁ!っといけないいけない、つい熱が籠ってしまってね。夜も遅いし、ゆっくりと休むといいよ」

 

「あ、はい。それでは失礼します」

 

 カリーユの厚意に甘え、就寝する事にしたリンク。

疲れはある筈だが、少し興奮していたのか寝付きの悪い夜となった。

 

――

 

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