ゼルダの伝説 蒼炎の勇導石   作:ちょっと通ります

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第51話 東の村から西の街へ

 5日後 ゲルドの街 宮殿

 

「チーク様、ただいま帰りました!」

 

 ドラグに跨り、街道を駆け抜けて来たリンク。

思わぬアクシデントがあったとはいえ、アラフラ平原にあるマーロン湖まで寄り道をしてしまったのだ。

 

 リンクにとっては遅くなったでは済まされない遅刻だろう。

 

「ああ、少しばかり遅くはあったが…。まあ、子供の脚では仕方も無いだろう。報告を頼む」

 

 思いの外チークは厳しくは無かった。

どうやら歩いて、ハテノ村まで行ったと考えているようだ。

リンクが馬を使った事など知らなかったからだ。

 

「あ、はい。…ルージュ様にお伝え願えますか?」

 

「…どうやら相当重要な話の様だな。周りに聞かれない様、小声で話せ」

 

 リンクはパーヤが厄災の復活が近いと言っていた事を伝える。

予想以上に規模の大きい話に、思わず取り乱しそうになったチークであったが、彼女とてビューラに後を託された者。

すぐに落ち着きを取り戻し、今後の事を思案する。

 

「なるほど、確かに私の手には余る案件だ。ルージュ様にはすぐに伝える。…訓練や戦略を見直す必要があるかも知れんな。こちらは私に任せておけ、家族にだって会いたいだろう」

 

「はい!サークーサーク!」

 

 待ってましたと言わんばかりに、元気一杯な足取りで駆けてゆくリンク。

久方ぶりの我が家だ、家族だ。

あの位の子供にとって20日も会えないというのは相当に堪えるだろう。

せめてこちらにいる間位、一緒にいさせてやりたいものだ。

 

 

 

 ゲルドの街

 

「フェイパ姉ちゃん!スルバ姉ちゃん!ただいまー!」

 

 やっと帰って来た、久々の我が家だ!

街の外では素の自分を出すことが出来ない為、中々に窮屈だったこともあったけど思いっきり羽を伸ばせる。

 

「お帰りリンク!今回は長かったなー!」

 

「お疲れ様、リンク。お風呂にする?ご飯にする?」

 

「うーんとね、ご飯がいいな!やっぱり色々と見て回るとお腹が減っちゃうよ!」

 

 仕方ないなぁと言わんばかりの表情で、料理を作りに向かうスルバ。

その間、リンクの話し相手をするのがフェイパの日課でもあった。

 

「今度行ったハテノ村はどんな場所だった?アタイに教えてくれよ」

 

 大抵はどんな場所であったのか尋ねる事が多い、ただしスルバがいない時に聞いても教える事をリンクはしない。

 

「うーん、スルバ姉ちゃんがいない時に話すのはなぁ…。とりあえずこんなもの貰ったんだ!」

 

 そう言ってプルアから貰ったシーカーストーンを見せるリンク。

これも今回の旅の収穫と言えるだろう。

 

「ん?何だこの板?何かできるのか?」

 

「えーっとね、これはシーカーストーンって言って古代のシーカー族が作り上げた技術を詰め込んだ代物らしいんだ。あ、適当にいじっちゃ駄目だよ。結構危ない機能もついてるから」

 

 そんなものなのか、そうフェイパが板を持ち上げ眺めている。

リンクが態々言うぐらいだ、使い方を間違えるととんでもない事になるんだろう。

それ以上は下手にいじらずにリンクに返す。

 

「まあ、その辺りも含めて後でゆっくり教えておくれよ。そろそろスルバが料理を持ってくるぞ、しっかり食べて疲れを癒してくれ」

 

 そう言ったのとほぼ同じタイミングでスルバが料理を運んでくる。

今回は上ケモノ肉のミートパイにハートミルクスープ、ゴーゴーハスの実とゴーゴーニンジンの焼き山菜だ。

口直しにハチミツアメも添えられている。

 

「凄い凄い!何だかいつにも増して気合入ってる!」

 

「ここの所、フェイパにばかり料理させていたからね。2人を労ってって事かしら」

 

「え?何かあったの?フェイパ姉ちゃんがずっと料理していたなんて…」

 

 リンクが言うように、余程の事が無い限りはスルバが料理を担当する事が多かった。

特段出払ったり、一時的なものでも無いとなるとリンクの疑問も自然と言えるだろう。

 

「実はね…、ついに出来たの。私の初めての曲!ちょっと熱が籠っちゃって料理まで手が回らなかったのよ」

 

「まったく…、好きなものに打ち込むのはいいけどよ。寝食を忘れるのはどうかと思うぜ?倒れてからじゃ遅いんだからよ」

 

「ホントだよ!スルバ姉ちゃんが倒れるなんて僕嫌だからね!」

 

「わ、悪かったわよ…。さ、冷めないうちに召し上がれ。せっかく作ったんだから美味しいうちに食べて欲しいわ」

 

 スルバが早めに食べる事を勧める、話を逸らしたいのかご飯が冷めてしまうからか。

恐らくは両方だろう。

 

「しっかし…、どこでこんな料理覚えて来るんだ?初めて見るんだが」

 

 そう言って見つめる先には、ハートミルクスープが。

使われている材料の多さからかなり手の込んだ代物である事は明らかだ。

 

「買い物している時にちょっとね。街の外へ出かける齢までにはこれを作れるようになった方がいいってアローマさんがね」

 

「おい、ちょっと待て!それってヴォーイの心を射止める為の料理じゃねーか!アタイにも教えろ!絶対にものにしてやる!」

 

 ハートミルクスープには特別な意味合いがある。

2人で一緒に食べると仲が良くなるというジンクスだ。

言い変えるのならば恋人と愛情を深めるための手料理。

ゲルドのヴァーイが手を抜く事などまずありえないと言っていい。

 

「もー!早く食べようよー!その辺りの話は後でもできるでしょー?」

 

「っと、悪い悪い。それじゃ、いっただきまーす!」

 

「「頂きます」」

 

 熱々のミートパイに口に運んでゆくリンク。

予想以上に熱かったのか、慌ててフレッシュミルクを口に流し込み、次からはフーフーと冷ましてから慎重に食べてゆく。

タバンタ小麦を練られた生地に上質なケモノ肉の旨味が染み渡り。

挽肉からも肉汁が溢れだす。

 

 ゴーゴーハスの実とゴーゴーニンジンの山菜炒めは、ハスの実の独特な食感とニンジンの特有の甘さで野菜が苦手な人でも親しみやすい味付けとなっている。

 

 そして、ハートミルクスープだ。

ビリビリフルーツやヒンヤリメロンをフレッシュミルクで煮詰めたスープに多めに入れられたマックスラディッシュの辛味が互いを阻害することなくハーモニーを奏でる。

 

 ビリビリフルーツもヒンヤリメロンもゲルド砂漠の特産品だ。

案外、ゲルドの街で編み出された執念の料理なのかも知れない。

 

 

「凄い美味しいよスルバ姉ちゃん!かなり難しい料理なんじゃない?」

 

「そうね…、アローマさんに教えて貰えなかったらちょっと無理だったかもしれないわね。パッと見ではどんな材料がどれだけ入れられているのかわからないもの」

 

「スルバでも厳しいとなるとアタイにもできるかな…。ちょっと不安になって来た…」

 

 フェイパもちょっと自信がなさそうだ。

料理に関してはスルバには遠く及ばない為、現時点では相当に難易度が高いと言える。

 

「大丈夫よ、街へ出られるようになるまでにはちゃんとできる様に付き合ってあげるから。レシピは残してあるから問題は無いわ」

 

「ホントか!?サークサーク!」

 

 ゲルド族として成人と認められる年齢にはまだ時間がある。

要はそれまでに作れるようになればいい訳だ。

 

「リンク、ミートパイは熱いから火傷には気を付けてね。急がなくてもご飯は逃げたりはしないわ」

 

「サークサーク、スルバ姉ちゃん。…そっかぁ、あと数年したら姉ちゃん達街の外へ行っちゃうのか…」

 

 

 姉ちゃん達の街の外へとは意中のヴォーイを探す旅の事だ。

恐らく自分の旅とは比較にならない程長いものになるだろう。

寂しくないと言えば嘘になる、でも姉ちゃん達だってずっと頑張って来たことを知っている。

母様達の分まで絶対に幸せになって欲しい。

それに僕がいない間もずっと耐えて来たんだ。

僕も頑張らないとな。

 

「―大丈夫よ、リンク」

 

 スルバの輝きを増した青い瞳が覗き込んだ。

姉の前では誤魔化しなんて通用しない、そんな気すらしてくる。

 

「何もずっと外にいなければいけない訳じゃないわ。偶には帰って来るつもりだし、多分私以上に優しいフェイパならきっと何度も様子を見に来るはずよ」

 

「ハァ!?い、いいいきなり何を言い出すんだ!?そ、そりゃリンクが寂しがるなんてあっちゃいけないからな。ちゃんと見に来るつもりだけどよ」

 

 きっと2人して理由を付けて帰って来るつもりなのだろう。

その時には長旅の疲れを癒してあげたいなぁ、護衛の仕事と重ならなければいいけど。

せっかく帰って来たのに誰もいないんじゃちょっとがっかりだもんね。

 

「絶対だよ!良い事があっても、悪い事があっても帰って来てね!ここが僕たちの家なんだから!」

 

「おっ、言うじゃねーか。リンクもだからな!約束だぞ!」

 

「ふふっ、言われなくてもわかってるわよ。約束」

 

「うん!それと御馳走様でした!美味しかった」

 

 やっぱり旅の先での料理も新鮮で美味しいものだけど、スルバ姉ちゃんの料理が一番落ち着くや。

その次はココナさんかな?

そもそも食べられればいいっていう平原での食事と比べること自体間違いなんだけど。

 

「あら?もう食べちゃったの?また食べるの早くなったのね?」

 

「あれか?外の世界では直ぐにでも食べないといけない決まりでもあるのか」

 

「そういう訳じゃないけど…、どうしたって食事の時とかは油断しちゃうし危険も多いからね。姉ちゃん達は馬宿や人のいる所で食事しないと駄目だよ!遠くから魔物や野生生物が襲ってくることだってあるんだから」

 

「なるほどなー…そうだ、リンク今回の旅はどうだったんだ?スルバが来るまで内緒だったんだしもういいだろ?」

 

「フェイパー?アタシが料理をしている間、そんなことしていたのかしら」

 

「あっ、やっべ、ワリィワリィ。それはそれとして…リンク変わったもの持ってたぞ」

 

「露骨に話を逸らして来たわね…。まあいいわ。それで変わったものってなんなのかしら?」

 

「えっとね、フェイパ姉ちゃんには説明したけど、この板はシーカーストーンっていう古代のシーカー族の技術を集めたものらしいんだ。これ1つで色んなことが出来て便利なんだよ!ここをこうするとね…ほら、地図にだってなるんだ!今僕はここにいるってすぐにわかるのはすごく便利だよ!」

 

 プルアからの説明やシモンの説明書などによって、すっかりと使いこなせるようになったリンク。

そこにたどり着くまでに、タモ沼のあたりで盛大にやらかしたのは内緒だ。

 

「へえー、お伽話でしか聞いた事が無かったけど本当にすごい技術を持ってたんだなー。なあなあ、他にはどんなものがあるんだ?」

 

「えっとね、これがマグネキャッチって言って、金属なら重たいものでも簡単に持ち上げたり退かしたりできるんだ。それからこっちはアイスメーカ―…これは水場で使うもので氷の柱がすぐにでも出せるんだよ!」

 

「氷が作れるなんて凄いじゃない!大人にでもならないと使わせてもらえないもの」

 

 スルバの言うように、熱砂の砂漠では氷は非常に貴重だ。

その為、氷が使われるのは専ら病気の時とか、大人がカクテルに使う時ぐらいである。

 

「でしょ?3つまで作れるんだ!後はリモコンバクダンね、これがあるから出来たらあまり触らないで欲しいかな…使い方を間違えると本当に危ないから…。そして最後にビタロック!これ凄いんだよ!物の動きを少しの間止めることが出来る上に、その間に力を一気に溜める事だって可能なんだよ!」

 

 リンクの紹介に興奮気味のフェイパとは対称的に複雑な顔を見せるスルバ。

とても便利な機能が沢山あるのはわかった。

 

 しかしである、どれもこれもが子供が持つには過ぎたオモチャだ。

どんな意図があってリンクにこれを渡したのか…考え過ぎだろうか。

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