これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。
何とか間に合いました、今年最後の投稿です。
よいお年を
「…とまあ、こんな感じかな?長い事話してたら、喉が疲れちゃった。」
「ハチミツアメ舐めるといいわ。でも本当に危ない機能もついているみたいだから気を付けるのよ」
スルバの提案によってハチミツアメを口に運ぶリンク。
喉を包み込むような柔らかな甘みが好みの味だ。
水も飲むことで一息ついて喉の調子を整える。
「勿論!どんな機能がついているのかわからないものを、むやみに使ったりはしないから大丈夫だよ!後はね…スルバ姉ちゃんの言うようにハテノ村は農業や酪農が凄かった!すっごい大きさの田んぼが何段にも作られていて、ヤギなんかもいっぱい飼われていたよ!」
興奮気味に身振り手振り、精一杯見て来た村の様子を伝える。
手の広がりがその規模の大きさを連想させる。
「流石は厄災後、ハイラルの穀物といった食糧事情を担っただけあるわね。多分だけど、その田園は気候がいつもと違っていてもある程度米が採れるようにする為の工夫だと思うわ」
「なるほどぉ!そう言われてみるとそうなのかも知れないね!こうやって話もするのも面白いなぁ。それでね、それでね!ハテノ村の一番奥にあるハテノ古代研究所に言ってきたんだ。あれは…すっごいや。それ以外に言い表せないかな?行く機会があったら見てみるといいよ!」
「何だよそれ、もったい付けた訳じゃないのはわかるけど、全然伝わらないぞ?」
「うーん、それ以外の言葉で言うなら…強引?それぐらいしか言いようがないかなぁ…」
「間違っても建物に使う言葉ではないわね…。まあいいわ、訪れた時のお楽しみという事にしておきましょう。リンク、貴方がここを離れている間にね、アタシも作っていた曲が完成したの。次の演奏会、せっかくだからアンコールされた時に奏でてみない?」
「ホント!?スルバ姉ちゃん!?すっごく嬉しいけどいいの!?」
「勿論よ、去年の事もあるしね。初めて作ったこの曲、お披露目の機会としてこれ以上の場所は無いわ」
「一応言っとくけどアタイも手伝ったんだからな。勿論ティクルもだ」
「やったぁ!サークサーク!」
「となれば決まりね。この後は特訓にしましょう」
「おいスルバ、流石に今日はリンクも疲れ切ってるはずだ。それにこんな夜遅くにリンクに練習させるのはどうかと思うぜ」
「僕も今日は勘弁してほしいかな…。お腹いっぱいになったからか眠くなっちゃった」
「あ、ごめんなさい2人とも。そうね、また明日にしましょう。それじゃあ、リンク。サヴォール」
「フェイパ姉ちゃん、スルバ姉ちゃん。サヴォール」
「サヴォール、リンク」
言うが早いかベッドで横になったかと思えば、すぐに瞼がおり微かな寝息が聞こえてくる。
リンクが久しぶりに我が家で眠りについた後、最早日課になりつつある姉達の会話が始まる。
「…あっという間に寝ちゃったね」
この日はスルバが寝静まったリンクの赤髪を撫でる。
いつもフェイパが撫でているのがちょっと羨ましかったのかもしれない。
「そりゃそうだろ。いくら人並み外れた身体能力を持っているとは言っても、まだあいつは8歳だぞ。何十日も外で旅をして来れば疲れだって溜まるさ」
フェイパの言う通りだ、ならばせめて家にいる時ぐらいゆっくりと休んで欲しい。
そう思ってか、慣れた手つきで竪琴を取り出し子守歌を奏でるスルバ。
夜でも明るく、活気のあるゲルドの街の一角に安らぎと心地良さを齎す。
アローマの宿屋 Hotel Oasis で演奏してもいいかもしれない。
過酷な砂漠を渡って来るのだ、リラックスして疲れを落として貰いたいものである。
「そう言えばフェイパ。アナタに手紙が届いていたけど。誰からのだったの?」
「ああ、アイシャさんからの返事だったよ。中々面白い視点だったから試してみたい、ちょっと預けてはくれないかって」
「良かったじゃない。アイシャさんの助けになりたかったんでしょ?」
「おいおい、まだ上手くいくとは決まった訳じゃないぞ?リンクにも言ってたじゃないか。使い方を間違えると本当に危ないってさ」
「それはそうだけど…なんとなくいい結果になるような気がするのよ。なっていったってあなたの直感だからね」
どちらかと言えば理性を重視するスルバが直感で答えている。
珍しい事もあるものだ。
「スルバが直感とか言うなんて明日は雨か?」
あまりに予想外だったのか、フェイパが額に手を当てて熱が無いか確認してくる。
気に入らなかったのかスルバがちょっと視線を強めると直ぐに目線を逸らせるフェイパだった。
「ちょっとどういう意味よ?目をそらさないで正直に答えなさい。今なら御飯抜きで許してあげるから」
「それ、全然許していないぞ…?それはさておき、アタイ達もそろそろ練習しておかないとな。ちょうど新曲を書き終えたタイミングだしさ」
練習は曲の演奏だけではない、彼女達にもやるべき事は山積みだ。
「それもそうね。そろそろ私達も寝ましょう。サヴォール」
「だな、夜更かしはお肌の天敵ってな。サヴォール」
ゲルドの街 宮殿
「―以上が、本日の報告になります。ルージュ様」
「―ご苦労であった、チーク。下がって良い」
「失礼します」
チークが一礼をした後下がる。
リンクの帰還とカカリコ村、ハテノ村から彼に知らされた内容は非常に重要ではあったが好ましいものでは無い。
隣で聞いていたビューラも眉間に皺が寄っている。
早急に対策を講じる必要があるだろう。
「…テドゥーラやサジェに伝えておく必要があるな」
「かしこまりました。カチュ―達のカラカラバザールへの通知はいかがいたしましょう」
それとなく意図を察し、ビューラが提案をしてくる。
成程、必要なものを集めるという意味では正しい判断だ。
「そちらへは伏せて置いた方が良いかも知れんな。魔物ならともかくあちらは逆手に取ってくる可能性が高い」
だが今回は見送るべきであろう、どうするか尋ねた段階でビューラとしてもあまり有効な手とは考えてはいない事が透けて見える。
彼らの特性を考えると、下手に範囲を広げようものなら破壊工作の格好の的になろう。
それが実現できるだけの技量を持っているし、非情さも持ち合わせている。
「かしこまりました、品の確認は私が行いましょう」
「助かる、この分野においてお主ほど信用のおける者はおらんからな。それと今年は例年よりも街の警護を増やした方が良いだろう。この街は活気があるがそれだけに人の出入りが激しいのだから」
態々呼び寄せまでしたのだ、確信とまではいかないにしても裏付けされるような情報が手に入ったと考えるべきだ。
重要なのはその先だ、敵の狙いを考えるに雷鳴の兜、自身の首、ヴォーイであるリンク辺りか。
どれも一筋縄ではいかない、否いかせてなるものか。
それこそこのゲルドの街の警備を根底から覆さない限り、彼らをもってしても容易い事ではない。
後は住民にも警戒してもらわねばなるまい、兵士以上に接触が容易で溶け込むのが容易なのだから。
街の長として選択をしなければならない時が近いのかも知れない。
「明日にでもチークも交えて議論を重ねる必要があるな。あまり考えたくはないが、内容によってはバレッタにも参加してもらう必要があるかも知れん」
バレッタは数年前、雷鳴の兜を奪還する為にイーガ団アジトに潜入するも捕まっていた。
だがそれは裏を返せば、立地や内部の構造に精通しているともとれる。
実力的には問題が無いのだが、どことなく抜けている所がありここ一番で使うのは少々憚られる所があるが作戦を立てるには重宝するだろう。
戦力としてはリンクは外したくはない。
だが業を背負うべきは我々大人であるべきだ、それに彼は最後の関門を超えてはいない。
たとえ彼にそれを超える覚悟があろうとも、そんな過酷な道を歩んで欲しくはない。
「…今日の所はここまでだ。頼んだぞビューラ」
「かしこまりました。お休みなさいませ、ルージュ様」
族長の寝室前まで護衛に着いた後、一礼をして下がるビューラ。
寝室でスナザラシのぬいぐるみを抱きかかえベッドの上で天を見上げる。
族長の責務から解放され、素を出せる数少ない瞬間だ。
モフモフとした柔らかな抱き心地がなんともたまらない。
スナザラシは良い…、パトリシアちゃんに乗って思う存分ゲルド砂漠を駆け抜けたいものだ。
縦横無尽にスナザラシと共に砂海を泳ぎ、弓の扱いもしっかりとこなせる様にならなければ。
スナザラシラリーに参加するのも悪くないだろう。
明日は久しぶりにパトリシアちゃんに顔を見せようか。
政務もあるから2分も時間が取れれば御の字だろう。
お告げの確認も出来たらしておきたいものだ。
(母様…どうかリンクを…民達をお守りください…)
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