ゼルダの伝説 蒼炎の勇導石   作:ちょっと通ります

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第6話 2人の誓い

 宿屋 Hotel Oasis

 

「お帰り、3人とも。元気になってくれて嬉しいよ」

 

 Hotel Oasisの入り口でアローマ達が出迎える。

3人の表情を見て察したのだろう、どうにか立ち直ってくれたと安堵の笑みを浮かべる。

 

「アローマさんやオルイルさんのおかげですよ!リンクが頑張ってるのにアタイ達がいつまでも落ち込んでる訳にはいかねえからな!」

 

フェイパが持ち前の元気な笑顔で応える。

爽やかな笑顔からは白い歯が覗いている。

 

「色々とご迷惑をおかけしました。もう大丈夫です、ありがとうございました」

 

スルバが感謝の笑みを浮かべ、礼儀正しくお辞儀をする。

その澄んだ瞳が悲しみや苦しみを乗り越えたことを雄弁に語りかける。

 

「やっぱりみんな元気があったほうがいいよ、子供は元気が一番ってね。ところで宮殿にはどんな用事で行ったんだい?」

 

オルイルがうんうんと頷いた後、どんな用件で宮殿に向かったのかを尋ねる。

ゲルド族の長からの直々の要望だ、重要な内容である事は間違いないであろう。

 

「はい、色々と衝撃的でまだ混乱していますが―

 

リンクは1つずつ自分にも言い聞かせるように内容を伝える。

 

 これからゲルドの兵士として生きていくつもりであること、今回の事で旅先への警護を任されること。

内容を聞いてアローマもオルイルも嬉しさと心配さが2対8程で混ざった複雑な表情をした。

 

「それは凄いことだねえ、こんなに小さくてももう一人前なのかい。でも…あんまり無理をするんじゃないよ。あんた達にもしもの事があったらメルエナにも申し訳ないからね」

 

アローマはリンクの話した内容に驚き、心が痛んだ。

 

 こんな小さな子に無理はして欲しくない、それが旧友であるメルエナの娘となれば尚更だ。

彼女の決断はとても勇気のいる立派なものだとは思うが、それでも好ましくは思えない。

けれどもこの子達が生きていける様な妙案もそう簡単には思いつかなかった。

 

「状況が状況だから焦るなとも言えないけれどさ、甘えるところは素直に甘えてもいいんだよ?そんないきなり大人になんかなれる訳ないんだからさ。ほら護衛まで行かなくてもリンクちゃんならさ、兵士の教官見習いとかでも悪くはないんじゃない?」

 

オルイルもアローマとは違う内容であるが、彼女達に気を遣っているのがわかる。

自立を強制されたとは言え、すぐに大人並みに色々と出来るようになる訳がないのだ。

 

「サークサーク、心配も怖さもありますが、楽しみでもあります。外の世界はどんなものなのか見てみたいのも本音です」

 

それに対し、楽しむという言葉で答えるリンク。

アローマ達を心配させたくないという思いが透けて見える。

外とは言っても目の前に広がるのはハイラルでも屈指の過酷さを誇るゲルド砂漠。

儚く命を散らすその姿のどこに楽しみがあるというのか。

それを見逃すアローマではない。

 

「ふぅ…、責任感から来るんだろうけれどその言葉遣いはやめておくれ。仕事の時以外もそんな風にしていると気疲れしちまうよ」

 

昨日の今日でこれだけ口調が変われば気が付かないほうがおかしい。

それだけではない、リンクの仕草や振る舞いにだって明らかな違いがある。

 

大人である兵士達と話をする機会が多かった分、同じ年頃の子と比べると不自然な程堂に入っている。

人によってはちょっと気味が悪いと感じるかも知れない。

 

「そうだぞリンク、昨日の今日で別人みたいな話し方しちゃってさぁ。その話し方も悪くはねーけど、やっぱアタイ達の後ろについて回ったりしてた時の話し方の方がアタイは好きだぜ!」

 

「リンク、貴方は私とフェイパにとって自慢のかわいい家族よ。貴方は本当に優しいから私達の為に気を張ってくれていたのね。でもそこまで背負い込まなくてもいいのよ?」

 

アローマが気が付くのだ。

家族としてずっと一緒にいたフェイパとスルバが気が付かない筈がない。

 

そうなのだリンクは腕白ではあるが、実は責任感が強い。

特に姉達の事で必死にならざるを得なかった事が拍車をかけているようだ。

本人は気づいていなかったが言葉もどことなく堅いものになっていた。

 

「フェイパ姉ちゃん…、スルバ姉ちゃん…、アローマさんも…。うん!みんな大好きだよ!サークサーク!!」

 

ようやくいつもの言葉遣いに戻り、4人の表情が緩む。

良かった。

あんな事があったとはいえ、リンクがこんな己を縛った言葉や姿しか出せないなんて想像もしたくはない。

 

「うんうん、それでこそリンクちゃんだよ!お腹すいたろう?今日はアタイが作ったんだ!ピリ辛チキンカレーだよ!アローマさんに教えて貰いながら作ったから味の方もバッチリさ!」

 

 そう言ってオルイルが料理を運んでくる。

女子力を高める為、料理にだって手を抜く事は無い。

この辺りではあまり目にしない異国の料理である事はすぐにわかった。

 

今回の料理はポカポカの実を隠し味にしたチキンカレーだ。

香り豊かなゴロンの香辛料に下味の刷り込まれた鶏肉の肉汁がハイラル米と見事に調和し口の中で広がってくる。

肉の臭みを抑え、独特の味わいが食材の旨味を更に引き出している。

 

「うめえ!うめえ!ご飯がめっちゃ進むぜ!お代わり!」

 

フェイパには好みの味付けだったようだ。

どんどんかき込み、その味を堪能する。

あっという間に皿の中身が無くなってしまった。

 

「美味しいけどちょっと辛いや…。ヒリヒリする…」

 

子供のリンクには刺激が強すぎたようだ。

辛さは人によって好まれる範囲が違うので調節は難しい。

 

スルバは辛いのは苦手な方ではあるがリンクよりは平気らしい。

黙々と食べる彼女の額には汗がにじんでいる、それでも食べるペースが速いのはオルイルが作ったカレーが美味しいことを証明している。

 

「うん、オルイルも少しは上達したようだ。リンクちゃんがいるときは辛さを抑制する飲み物も用意するともっとよくなるかも知れないね」

 

最後にアローマがオルイルの料理の感想と改善点を言い、更なる高みを提示する。

 

「あー、確かにそうですね。ちょっと小さい子供には刺激が強かったかー」

 

言われてみればその通りだなとオルイルもその助言を手帳に書き込んでゆく。

料理はおいしく食べられる方がいい。

貴重な香辛料を使っているのだ、そう気軽に何度も挑戦できるわけではないのだ。

一回一回の機会は大切にしたい。

 

「珍しく香辛料が手に入ったから使って料理したかったんだろう?ゴロンシティは物好きか鉱石を求める人しか行かないからねぇ」

 

ゴロンシティはゲルドの街とは反対の位置に存在する。

距離もあれば環境も特殊な為、香辛料もそう簡単には手に入らないのだ。

訪れるだけでも専門の用具を準備しなければならない。

 

「こんな風味の料理もできるんだな。アタイこれ気に入ったよ!身体も温まってきた!」

 

香辛料の効能と暖かいご飯による影響で体が温まる。

熱々の料理を食べた時とはまた違った感覚だ。

 

「もうちょっと大きくなったら美味しく食べられるのかなぁ…?ふぁ~、なんだが眠くなってきちゃった」

 

食事も食べ終わり、お腹がいっぱいになったリンクは大きなあくびをして目をこすっている。

かなりの睡魔が来ているのだろう、時折頭が揺れ動く。

 

「あら眠そうねリンク。すみませんアローマさん、今日はこのあたりでお暇させていただきます。オルイルさんも夕食美味しかったです、御馳走様でした」

 

そう言いながらリンクを背負うスルバ。

彼女自身も大人と比べればかなり小さいが、それでもゲルド族特有の恵まれた筋力は持っている。

片手で数えられる齢のリンクぐらいなら問題ないのだ。

 

「もういいのかい?しばらくはゆっくりしていってもいいんだよ?」

 

泊っていってもいいと伝えるアローマ。

まだ両親を失って一日しか経っていないのだ、今日ぐらい休んでも誰も文句は言わないだろう。

それに対し、姉達は首を横に振り答える。

 

「お気持ちは大変うれしいです。でもずっとアローマさんにもオルイルさんにも甘えていたらそれこそ母様に怒られてしまいますから」

 

 2人の好意はありがたいが、それに頼りきりになってしまう事を母様はきっと許さないだろう。

メルエナは優しくも厳しい人なのだ。

それにリンクがこれだけ頑張ろうとしているのだ、自分達だけという訳にもいかない。

 

「ふぅ…わざわざメルエナを出す必要もないだろうに。わかったよ、でも本当に困ったことがあったらちゃんとここへ来るんだよ、それじゃサヴォール(お休み)」

 

これから先、彼女達が生活していけば困難にも遭遇するだろう。

もしもの時は支えになると彼女達に伝え、見送る。

 

「「サヴォール」」

 

リンクを背負って家に帰っていくスルバ達。

背中ではリンクが寝息を立てて眠っている。

彼自身にとっても大きな選択をしたのだ、ここ数日は大変だったのもある。

 

「なぁ、スルバ」

 

帰り道、フェイパがスルバに尋ねた。

いつもとは違い真剣な顔を覗かせる。

 

「どうしたの?フェイパ」

 

言いたい事は大凡見当がついている。

その上でスルバも返事をした。

 

「リンクのやつこんな小さい体でアタイ達を守ろうと必死だったんだよな」

 

そう言ってリンクを見つめるフェイパ。その瞳はどことなく寂しいような悲しいような色も混じっている。

静かに寝息をたてているその姿は幼さが前面に出ており、どう見たって子供だ。

 

「…ホントにね。私達が泣き疲れてしまった時でもこの子は泣かなかった。その上、母様と父様を失ってすぐに兵士になるだなんて…。とても大きなものを背負わせてしまったわ。とっても強くて優しくて私には勿体無いぐらい素敵な弟よ」

 

本当に強い子だ。

護衛の仕事の必要性は私達にもリンクにも刻み込まれている、精神的にだって相当厳しいものだったろう。

あれだけの事があっても泣きごと1つ言わずに厳しい選択をした。

誰が何と言おうと世界一かっこいいアタシの自慢の弟だ。

 

「それを言うなら、アタイ達だろ?ホントに良くできた弟だよ。スルバ、せめてリンクがちゃんと帰って来る家ぐらいはアタイ達で守らないか?だってさ―」

 

フェイパ自身も覚悟を決めたのだろう。

リンクに、弟だけに背負わせるわけにはいかない。

 

「フェイパ、私達だって姉妹よ。あなたが言わなくてもそれぐらいわかるわ。一人じゃ母様達の代わりは出来ないけれど。フェイパと一緒ならやってみせる」

 

フェイパの言葉に被せる様にスルバが答える。

私だってわかっている、だからこそみんなで力を合わせるのだ。

私達の弟に応えられるよう。

 

「サークサーク、スルバ。アタイ達はいつでも一緒だよな」

 

 夜が更けてゆく、明日からリンクは宮殿で護衛のための訓練だ。

起こさないよう静かにそれでも素早く彼女達は家に帰って行った。

 

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