ゼルダの伝説 蒼炎の勇導石   作:ちょっと通ります

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 ついに60話、UA9000達成しました!ありがとうございます。



第60話 人か獣か

 いよいよアジトの内部へと侵入する事に成功したリンク。

岩をくりぬいて作られた洞窟であるのに綺麗に区分けされている。

長い間この地で暮らして来たのだろう。

入ってすぐ目に付く祭壇には彼らがよく使う弓2連弓が安置されていた。

 

 こんな不自然な置き方をされては十中八九罠であろう。

そう結論付けたリンクは、そんなものには目もくれず周りを見渡す。

いくつもの垂れ幕が掛けられたうちの中でただ一つだけ、空けられており奥へとつながっている。

 

(どういうことだ?これも罠の可能性が高いけど不自然な面が多すぎる…)

 

とりあえず薪と火打石などで即席の松明をつけ、まわりの垂れ幕を1つずつ燃やしてゆく。

…途中蝙蝠の魔物キースに襲われたぐらいで罠らしきものが見当たらない。

それどころか、他の場所は行き止まりになっており、最初から開いていた場所が正規の道筋である事を証明してしまった。

 

(…悩んでいても仕方がないか。ティクル姉ちゃんの事もある、先へ進もう)

 

 拍子抜けするほど警備が手薄なアジトである。

辺りを照らす燭台や、侵入者を発見する為と思われる櫓にすら見張りがいない。

その櫓にはネズミ返しが付いており、万が一の襲撃にすら備えのある拵えである為より一層不気味だ。

 

 奥へ奥へと進んでゆくと、松明を片手に入り口を警備している大男がいる。

ゲルド砂漠で指揮をしていた者と恰好が同じである為、彼も幹部なのであろう。

他には警備のものがいない為、その先にこそ彼らのトップ及びティクルがいると考えるのが自然だ。

 

(あそこまでしっかり張り付かれたら通り抜ける事は難しいな。何か使えそうなものはっと―)

 

 

(どうしてこんな事に)

 

 誰もいないこの部屋で幹部はため息をついた。

新総長は、ここ数年の間に急速に力をつけて来た。

その力は確かに目を見張るものがある、それは認めよう。

ただあのような術は見たことも聞いた事も無いし、厄災復活に手を貸すという者に与えられたという話を正直に信用してよいものか。

そこについて話を聞くと彼女は妄信していると言っていい反応を見せるのだから、不安で仕方がない。

 

(守りの要であるアジト内をこんなに手薄にするとは何を考えているのだ。ゲルド族交流の場で殺人に誘拐までして、大義名分まで与えるとはイーガ団を潰す気か)

 

 あまりの内容に作戦の撤回を申し上げたが、却下されこのような場所に待機させられている。

我々は外道だ、だがしかし仲間だけは決して見捨てない。

その結束があったからこそ、覇権を握っていたハイラル王国からも生き残って来れたのだ。

それなのに今の総長は団員にすら無関心だ。

こんな歪な組織では遅かれ早かれ瓦解してしまうだろう。

 

 ドサッ

 

 彼の目の前に何かが落ちた。

敵が来たかと警戒を強め風切り刀を握りしめるが、視線の先にあるソレには贖えない。

 

「ウホッ」

 

 先程までの意識はどこへやら子供のようにはしゃぎながら一目散に駆け寄ってゆく。

心なしか嬉しそうで楽しそうだ。

如何に鍛錬を積もうと、人智を超えた身体能力を誇ろうとイーガ団の団員である限り無力化されてしまう。

むしろここまで鍛え上げる為の過酷な訓練を積んできたからこそ、常に安らぎの一時に支給されるコレの魔力は格別といってもいいだろう。

 

(これは素晴らしいバナナだ。色、艶、大きさ最高だ。そう言えば去年屋台で食べたイチゴクレープは実に美味しかった。是非とも今度はツルギバナナを入れたクレープを食べたい。どれだけ工夫を重ねても何故だかバナナが跡も形も残らないからな…)

 

 そう考えている内に、脳天に強烈な衝撃が加わる。

リンクが背後から不意を突いたのだ。

峰打ちであるとは言え、完全に意識を外していた為この一撃には堪らず意識を手放す。

 

(しまった…、わかっていてもこればかりは対応できぬか…。だが甘い子供だ、それでは総長を倒す事など出来ぬ)

 

 他の者にとどめを刺されない為、煙の様に消える幹部。

また辺りにはリンクしかいなくなった。

 

 

 イーガ団アジト 総長の部屋

 

 これまでの、不気味で薄暗い部屋とは一線を画す様な明るく豪勢な椅子のある部屋に着いた。

ルージュの宮殿を見ているリンクはここが彼らのトップの部屋である事がすぐにわかる。

だがここには誰もいない。

パッと見では少々散らかっていて、砂が入り込んでいる事が気になるだろうか?

後はカカリコ村やハテノ村の古代研究所でも見かけたカエルの像ぐらいのものである。

イーガ団特有の布を顔に被せた拵えにはなっているが、それはカルサ―谷でも見かけたもので特別おかしなものでも無い。

 

(どういうことだ?ここまで来て誰もいないだなんて…?おとり?それにしても態々幹部を配置しておくだろうか?)

 

 机の上に飾られている2連弓にも罠の可能性も考えてロープで手繰り寄せてみたが、何も起こらない。

罠ですらなかった。

 

 更に見渡してみると部屋の一面が人が通れるほどに開かれているではないか。

右側も左側も開かれている上、垂直に伸びる壁の模様が一致する事から、その場所が隠し扉である事が窺える。

隠してすらいないとなると、もうこれは誘い込まれていると考えるしかないだろう。

 

「…準備は出来ている。どんな困難が待ち受けていようと進むしかない」

 

 覚悟を決め、兜の緒をしめて先へと進むリンク。

総長とティクルは目と鼻の先だ。

 

 

 数分前 隠し部屋

 

「フフッ、いよいよね。ガノン様の御復活はもうすぐよ」

 

 この瞬間を待ちわびたと言わんばかりにティクルの目の前にいる女性は光悦とした表情を浮かべる。

 

「ガノンってあの厄災ガノンの事!?私をどうするつもりなの…?」

 

 精一杯強がって見るものの彼女の声は震えている。

両腕は逃げられないよう縛られているし、そもそも丸腰の少女が渡り切れるほどゲルド砂漠は甘くはない。

 

「ああ、ごめんなさいねえ。正直に言えばあなたには用は無いのよ。強いて言えば…餌?かしらね?厄災の申し子をおびき寄せる為のね」

 

 餌というあんまりな表現で謝罪しつつも興味なさげに答える総長。

 

「まあいいわ、ガノン様の秘密について教えてあげる。元々はね、彼はゲルド族の男だったのよ。」

 

「ゲルド族にヴォーイなんて産まれる訳ないでしょう!?」

 

「あら、随分な反応ね、可哀想に…。基本的にはね、今回の事だってちゃんと調べて実行したのよ?まあ…あの子、女装して誤魔化しているから無理もないけどね」

 

 …今この人は何と言った?

基本的には?調べて?―あの子?

まさか、本当にゲルド族のヴォーイがいるというの?

滑稽を通り越して憐みすら伝える様に目の前のヴァーイは答える。

 

「話を戻しましょう、10年ほど前ガノン様は敗れたわ。それは紛れもない事実。でもね、あの御方は理性も無い不完全な状態での復活だったの。そこであの御方は考えた、ガノン様の肉体はすでに崩壊している。相応しい肉体と共に復活を成功させれば完全な状態を望めるし、だれにも止められないんじゃないかって」

 

 大変だったのよと事も無さげに冗談の様に話して来る。

もう目の前の女性が自分と同じ人間と思えなくなって来た。

 

「本当ならもっと早く取り押さえたかったのだけど、まだまだ彼は弱かったの。ガノン様の依代になるにはね。でももう時間の問題、あの子が真の力を引き出せればこれ以上ない素体でしょうね。嬉しいおまけもあったことだしね」

 

 そう話している間に、目の前の入り口から人が現れる。

ゲルド族特有の褐色肌に雷鳴の兜を被った子供だ。

この隠し部屋の広さと目の前にある大穴を挟んでいる為誰なのか判別できない。

それに加えて兜のサイズが大きすぎてどんな顔をしているのかわからないのだ。

 

「ようこそ、イーガ団のアジトへ」

 

「…―」

 

 目の前の子供は答えない、代わりにゲルドのナイフと盾を構える。

軋む音からして素人のティクルにも力が入りすぎている様に感じられた。

 

「あら?だんまり?お姉さん悲しいわ。まあいいわ、私がイーガ団新総長、フウマよ。初めまして依代さん?早速だけどごめんなさいねえ、あなたの真の力何としてでも引きずり出してもらうわよ」

 

 言うが早いか、フウマは印と共におどろおどろしい瘴気を纏い姿を変える。

団員や幹部のそれと比べてもどす黒く、あまりにも異質で禍々しさすら感じられた。

 

 その上半身は大柄なゲルド族よりもなお大きく、鍛え抜かれたという言葉が生温い程の強靭な筋肉の鎧を纏っている。

そんな屈強且つ重厚な身体を支える下半身は、ドラグの様な4つ脚でそれと比べても3~4周りは大きく、逞しさのある姿。

 

 荒々しい拵えの剣と盾を隙も無く構え、背中にはこれまた立派な弓まで持ち合わせる事から今までの相手とは一味も二味も違う存在である事が推測される。

何よりもそんな分析など必要ない程に強烈な威圧感の漂う半身半獣の化け物。

 

  獣人 ライネル

 

 数多くいる魔物の中でも最強と名高い種族。

様々な武器を使い分け、知能や生命力も相当に高いなど別次元と言ってよい強さを誇っている。

その実力は凄まじく、ゾーラ族などの小国では軍隊を持ってしても一体にすら対応できるものでは無い正真正銘の怪物なのだ。

かつての英傑達ですら単身では厳しいと言えばその恐ろしさがわかるだろう。

 

「この姿になると闘争心や高揚が抑えられなくてね。死んじゃわない様気を付けて」

 

 リンクとフウマ彼らの戦いの火ぶたが今切って落とされる―!




 幹部が内心で呟いた様にイチゴクレープはゲーム内で作れますが、バナナを入れてもバナナ要素は完全に消えてしまい何故かプレーンクレープになってしまいます。

 ついに本作初めてのボス戦です!
次回以降もお楽しみいただけたら幸いです!
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