ゼルダの伝説 蒼炎の勇導石   作:ちょっと通ります

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遂にUA10000達成です!

本当にありがとうございます!
お気に入りも140達成、総合評価260と本当に嬉しいです!

今回は本当に難産でした


第62話 髪飾りの散った後

 切断された上半身が崩れ落ち、地響きと共に砂塵を舞い上げる。

先程の得体のしれない力は何だったのか。

明らかに人智を超越したものであり、握っていたナイフは耐えきれなかったのか粉々に砕け散っていた。

そしてそれは身体の方も同じであり、全身がバラバラになってしまうのではないかと思える程の激痛が走る。

 

 新総長が討たれ、広間には勝者が一人立ち尽くす空虚な平穏が訪れる。

先程引き出された信じがたい力について考える意識すら湧いてこない。

痛む身体を引きずりながら彼女の下へ向かい、拘束を外す。

 

(-終わった…何もかもが…)

 

 リンクは自身が引き出した力とは信じられず、己を手を見つめる。

手の平は歳不相応ではあるが豆や傷だらけのいつも通り、しかし裏側の甲にはいつの間にか正三角形を3つ象った痣が出来ていた。

 

(これは…一体…―もうどうでもいいか…)

 

 奇妙な現象であった為、不思議に思ったリンクであったが、すぐに興味を無くしてしまった。

眼を閉じた瞼の裏側ではティクルの母であるベローアの悲しむ姿、伯母であるエメリの怒り顔、民の為に危険を顧みず戦ってくれたルージュ様達、手をつないだまま離れない姉達の最期の姿が浮かんでは消えてゆく。

沢山の仲間がいた。

でも皆が皆幸せには見えなかった、プルアの言う過酷な試練…それが自分にならばいい。

けれども周りを巻き込む形だけは許せなかった、耐えれなかった。

しかも彼女の目の前で殺人を行ったのだ。

どんな状況であろうとも、どんな理由があろうとも、その事実は覆らない。

 

(ティクル姉ちゃんに怖い思いをさせてしまった…ごめんね…)

 

 何とかティクルだけは守ることが出来た、だからと言ってそれで彼の心が晴れる訳がない。

彼が最も守りたかった2人はもう帰って来ないのだから。

 

――

 

 リンクちゃんが助けてくれた…魔物になったとはいえ元人間を斬り殺して

雷鳴の兜で顔を隠していてもわからない筈が無い

リンクちゃんが無言のままこちらへ近寄る

多分、私に負い目を感じて欲しくないのだろう

誰よりも悲しい筈なのに今はその心遣いがすごく辛い

大丈夫だよサークサークと私は無事を伝える

これは誰に向けたものなの

リンクちゃんに それとも私に

ヤシの花で作った髪飾りが零れ落ちる

この花言葉はいっぱいある

「勝利」「平和」「守護」

どれもぴったりと当てはまる

だけどあの日の言葉だけが欠け落ちている

4人で笑いあった楽しかった日々 ついこの間であった筈の

《家族愛》の言葉だけが―

 

リンクちゃんが背を向け帰ろうとする…

どこに帰るというの

年相応に小さく見えた背中がさらに小さく、それ以上に寂しくみえた

駄目だ、今ここでリンクちゃんを帰したら…いくらリンクちゃんでも…リンクちゃんだからこそ本当に取り返しがつかなくなる

父様も母様も、フェイパもスルバも奪い取られて、どこまで追い詰められなきゃならないの

ヴォーイとして産まれた…それだけでどうしてこんな不条理が罷り通るの

思わず抱きしめた背中は冷え切っていて傷だらけだった

荒涼としたゲルド砂漠を渡り、あの化け物と戦ったのだ

私にだってわかる、あれはリンクちゃんがたった一人で立ち向かうような存在じゃない

それが彼にとってどれだけ過酷でそれすらも軽く思えるほど傷だらけの心

僅かに震える幼い体躯があらゆる感情を押さえつけている様にさえ感じる

この期に及んでも自分の正体を悟られない様耐えてしまえる心の強さ

それがもう見ていられなくて涙が零れる

雷鳴の兜が隠してくれるから大丈夫 ヤシの髪飾りが代わりに泣いてくれるから平気

耐える事を強いる力なんてあまりにも救いが無いよ

 

 パチン

 

(!)

 

「キャッ!?」

 

 反射的にティクルを突き離した直後、乾いた空に音が響く。

それと同時に魔方陣が地面に浮き上がり、リンクを宙へと吊り上げた。

 

(しまった!背後の存在を失念していた…!)

 

 気付いた時にはすでに遅く、肉体的にも精神的にも限界だったこともありリンクは身動きが取れない。

 

「リンクちゃん!どうしたの!?何が起こっているの!?」

 

 それに応えるかの様に広場に病的な程に白い肌に朱に染まったマントを身に纏った存在が姿を現す。

顔の片側を白い髪で隠し菱形模様を腕に脚に象った不思議な出で立ちだ。

 

「初めまして、厄災の申し子。―おや?見知らぬお嬢さんもご一緒みたいだね。…まあ、どうでもいいんだよ。キミなんぞは」

 

 彼はティクルになど目もくれず、リンクに対し言葉を続ける。

 

「…ああ。自己紹介がまだだったね失礼した。ワタシはこの世界における現魔族長…ギラヒム。気さくにギラヒム様と呼んでくれて構わないよ」

 

 自身の周りを菱形の外壁で守り、鼻歌と共に奇妙な舞いを踊り出す。

 

「ずっとこの瞬間を待っていたんだよ。魔力が最も満ちる赤い月とゲルド族の男が同時に存在し、それでいて神の力を引き出した者なんて条件…これを逃したらいつあるかわからないからね」

 

 光悦とした表情で宙に浮かぶリンクを見つめ長い舌で頬を舐める。

舐められるリンクもそれを見ているティクルもドン引きしているがお構いなしに語りを続ける。

 

 

「ああ、失礼した。さて…いよいよこのワタシの手によって魔族の悲願が始まる。忌まわしき封印から解放されるこの瞬間をどれ程待ち望んだことか!」

 

 ギラヒムが手を上げると共に広場に広がる巨大な穴から赤黒く染まった膨大な塊―ガノンの怨念が立ち上り、リンクの身体に怨念が次々と入り込んでゆく。

 

「リンクちゃん!」

 

(身体が熱い!苦しい!これはルージュ様の時のものか!でもあの時とは比べ物にならない…!)

 

 リンクを飲み込む、厄災の呪い。

それは1年前にルージュの呪いと酷似こそしているものの今度は怨念その物。

圧倒的な悪意の前にリンクは意識を失った。

 

「この儀式が終わる時、魔王様が御復活なさる時、この世界は魔族のものとなる!」

 

 厄災ガノンは元々は男のゲルド族、リンクという極上の肉体に共鳴したためだろう。

まとわりつく怨念は質、量共に失いきった力を取り戻し、凌駕しようとでもするのかものすごい勢いで膨れ上がり失っていた魔力を補充してゆく。

 

 その時、抑えようにも抑えらぬ歓喜をあげる彼に向かって青く白い光の衝撃が飛んでゆき。

菱形の外壁を砕き壊した。

 

「誰だい?ワタシの一番気持ちいい時間に水を差すのは…?」

 

 口調はともかくとして余程気に障ったのか、怜悧な視線を向けるギラヒムの前に現れたのは、蒼き衣を纏いし金髪の剣士。

その右腕にはスラリと伸びた細身の剣を構えている。

英傑のリーダーにして退魔の剣に選ばれた”英傑リンク”であった。

 

 

 

  数刻前 ゲルド砂漠

 

 ルージュへと魔物達が襲い掛かったその瞬間、爆風と共に一斉に吹き飛んだ。

囲んでいた数多の敵が一瞬にして次々と吹き飛んでゆく。

 

「リンク、ルージュは無事ですか!?」

 

「リンク、それにゼルダ姫!どうしてここに!?」

 

 スナザラシとともに現れるはリトの英傑リーバルの大弓を携えた英傑リンクとハイラルの姫君ゼルダ。

どういうことだ?今2人で中央ハイラルの復興に邁進しているはず、世界の果てのゲルド砂漠まで来るとはいったい…

 

「――」

 

「なに?手紙が置いてあった?なんじゃそれは…?答えになっておらんぞ?」

 

「インパとプルアが彼に頼んだのです。厄災復活の為にあの少年を狙う者がいる。その魔の手から守って欲しいと」

 

「シーカー族の重鎮たちか。何はともあれ助かった、サークサーク。彼はイーガ団のアジトに囚われているティクルと助けに向かった。どうか手を貸して欲しい」

 

 本来ならば自分も助太刀に向かいたい。

しかし今の身体では、一人で本拠地まで進む事すら難しい。

足手まといになっては元も子もない、今できる最善は英傑リンクに頼む事だろう。

 

 そうやってルージュが頼んでいる時、カルサ―谷の方からゲルド族の一団が現れる。

チーク隊長の指示のもと、ルージュの護衛を任された者達だ。

 

「ルージュ様!御無事ですか!?」

 

「バレッタ、ポブル、心配するな。っつ!」

 

「ルージュ様は御怪我をされている!応急手当の後、一刻も早くゲルドの街までお連れするぞ!」

 

 ルージュ本人としては、自身の安全よりもリンク達を優先して欲しいのだが、立場がそれを許さない。

兵士達も同じで、ルージュにもしもの事があるのだけは決して許されないのだ。

鋼のような皮膚を持つキングラジークの巨体との激突したのだ、毅然とした振る舞いをしているが腕はあらぬ方向に曲がっているし、擦り傷や切り傷が至る所に出来ている。

直ぐにでも街で治療を受けるべきだ。

 

「リンク、行きましょう!私も後で追いつきます!」

 

「――」

 

「―相も変わらずそなたは頼もしいな。すまぬが頼んだぞ」

 

――

 

 

「その剣…、その出で立ち…いい加減にしろ!あれからどれだけの時間が経ったと思っているんだ!儀式素人にはわからんかもしれんが、こういうのには時間が必要なんだ!よりにもよってこんなタイミングでお前らが来るんじゃない!」

 

 ギラヒムは我慢できないのか苛立ちをあらわにしながら吐き捨てる。

 

 英傑リンクはあっという間に距離を詰め、ギラヒムに斬りかかる。

それをギラヒムも咄嗟に剣を出し、受け止める。

その速さ、衝撃は凄まじく、砂埃と共に轟音が鳴り響いた。

武術の嗜みのないティクルから見てもリンクの切込みとは比較にならない。

 

「グググッ…!これ以上の儀式の中断は取り返しがつかなくなる…!猛烈に!強烈に!激烈に気分が悪い!!次に会った時は全治100年では済まさないからね。覚悟しておきなよ!」

 

 言うが早いか、ギラヒムが後ろへと飛び退いた後指を鳴らす。

それを合図に紫色の瘴気がリンクから離れ、ギラヒムの下へと集まり彼を包み込む。

次の瞬間には瘴気もギラヒムもあとかたも無く消え去ってしまった。

 

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