ゼルダの伝説 蒼炎の勇導石   作:ちょっと通ります

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書きながら色々と模索中…
大まかなプロットはあっても間を埋めれない、誰か文章力を…


第65話 初恋の味はビリビリフルーツ

 ゲルド砂漠 8人の女神像前

 

 粒子となったリンクが砂を踏みしめる。

彼の身体にはもう痣はない、完全に呪いは振り払われたようだ。

 

(さっきの…男は…一体…)

 

「無事ですか!?」

 

「リンク!もう大丈夫か!?」

 

 彼の下へとゼルダ達が駆け寄る。

ルージュはともかく他の2人はリンクにとっては初対面である為、僅かに戸惑いが見て取れる。

 

「ルージュ様、もう大丈夫です。ええと、こちらの方達は…?」

 

「申し遅れました。私の名はゼルダ。そしてこちらに控えているのは騎士のリンクです。貴方を助けるため、ボテンサと共にこちらへと運ばせて頂きました」

 

 イーガ団のアジトでギラヒムと名乗るものと遭遇した後、目が覚めたらいきなりハイラルの姫と世界を救った英傑リンクが目の前に現れるだなんて誰が想像できるだろうか。

 

「し、失礼しました!とんだ無礼を…!」

 

「いえ、このような事態にあわれては仕方の無い事です。何はともあれ快方へと向かわれたみたいで良かった」

 

「ゼルダ姫、騎士リンク、ボテンサよ。ゲルドの長として改めて礼を―

 

 ゲルドの族長としてルージュが改めて感謝の意を示そうとし、言葉を失った。

只事では無い雰囲気を感じ取り、英傑リンクとゼルダも振り返る。

ボテンサが、いないのだ。

風の凪いだ見晴らしのいい砂漠で消えるなどあり得ない。

ましてや今の彼は素足だ、ゲルドの砂漠に慣れないハイリア人がそんな咄嗟に隠れる事など出来る訳がない。

 

 何かの間違いかと一斉に捜す3人。

しかし、彼の足跡1つ出てこない。

何か手掛かりはないか探し続けている時である。

 

  カツン

 

 英傑リンクのサンドブーツが何かに当たった。

何にぶつかったのかと拾ってみる。

それは一輪の花を咲かせたビリビリフルーツの実であった。

 

――

―

 

 同時刻 ゲルドの街

 

「夜分遅くにすまないね。ビューラ」

 

「いえ、こちらこそ遅くなってしまいすみません、リムーバさん」

 

 2人はゲルドの街の裏路地に存在する酒場、Bar Pure Lov まで来ていた。

先程までビューラはイーガ団達と戦った事後処理を行っていたのだが、リムーバが時間が空いたらここへ来てほしいと頼み込んだのだ。

勿論、やるべき事を全て終わらせるまで待つとビューラには伝えてある。

 

「フロスト、ビューラにも頼むよ」

 

 酒場のマスターでその刻まれた皺からは人生経験を蓄積した者が持つ貫禄と落ち着いた物腰を併せ持つ彼女がフロストだ。

フロストに一杯作る様に頼む。

 

「あの、お酒の類は少し困ります」

 

「心配しなさんな。このカクテルには酒の類は一切入っていないからね」

 

 リムーバは元は兵士だ、ビューラが己の剣を磨き上げる為酒を一切飲まなかった事にも配慮したのかもしれない。

 

「あいよ、Pure Lovだ。リムーバの言う通りさ、一切入ってないから心配しなくてもいいよ」

 

「サークサーク、それじゃビューラ。杯を持っておくれ。御代は先に払ってあるから」

 

 かつての先輩からの奢りという事で一礼をした後グラスを持つ。

 

 初めて聞く名前のカクテルだ。

世界的に有名なこの酒場の看板メニューは、ヴァーイ・ミーツ・ヴォーイだ。

そもそも彼女が頼んだカクテルは、メニューにも載っていない。

裏メニューという事だろうか。

 

「アタシはね、失われた武術を探す為あらゆる分野に手掛かりを求めたもんさ。このカクテルもその1つだ」

 

「まったく、よくもまあこんな古いカクテル探し当てたもんだよ。先祖代々伝わって来た隠しメニューだってのに」

 

「…どうやって突き止めたんですか?」

 

「ミンナニハナイショダヨってやつさ。ちょっとぐらいは祈ってみたくなってね、サボテンの精霊ってやつにね」

 

 グラスを傾けると、ビリビリフルーツの実が氷とぶつかりカランと音を立てる。

 

「サボテンの精霊…ですか?」

 

「ああ、このゲルド砂漠ではね、サボテンの精霊が見守ってくれているのさ。心を奪われるような恋に落ちた時、全ての力を使って導いてくれるんだよ…」

 

 さじすめサボテンの初恋って事さね、お酒じゃないけど飲まずにはいられないと漏らすリムーバの横顔から覗く瞳には哀愁が漂う。

 

 

「今回ばかりはアタシ一人だけじゃ困るんでね。どうしてももう1人相手が欲しかったのさ。捧杯のね」

 

 ああ…、だから私を呼んだのか。

ゲルドの兵士ならば敵と戦う事も覚悟しているし、その職務上命を散らすこともあるだろう。

だが、此度犠牲になったのは巻き込まれただけの子供が2人。

それも街の中で起きた凶行だ。

 

「―あのボーヤの生い立ちは知っている。あの齢で親を亡くし、兵士として歩み始め、降りかかる災禍によって最後に残った姉達すら失ってしまった。それでもあの子には魔の影が常に付きまとっている」

 

「ええ、剣の才はある。精神的にも齢以上に成熟している。だがそれすらも遥かに凌駕する試練の数々は如何ともし難いものです」

 

 誰よりも彼の剣を見て来たビューラだからこそ、その強さが彼に親を失い、そこから姉達の死すら耐える事を強いてしまう事が哀れでならなかった。

それでもなお彼には安息の日々が訪れる気配すらない。

 

「あの子は人智を越えた宿命を背負っているようだ。どうあがいてもあたし達ではそれを止められない…痩せても枯れても兵士だったあたしが祈る事に縋りたくなるなんてね。さあ、ビューラ。2人の冥福とあの子の未来に―」

 

「献杯」

 

 ◆ ゲルド砂漠 8人の女神像

 

「リンク、何か見つけたのですか!?」

 

 ゼルダは英傑リンクが何か見つけたかと声をかける。

咄嗟の事だったのでリンクと言ってしまったがここにはもう1人のリンクがいる為紛らわしい事この上ない。

 

「――」

 

 彼はそこに落ちていた何かを拾い、首を傾げる。

何か気になる事でもあったのだろうか。

 

「これは…ビリビリフルーツ?サボテンも無いのにこんな所に?」

 

 このゲルド砂漠にここにいる誰よりも詳しいルージュがその違和感の内容を看破する。

有り触れている様でも、その不思議な状態に彼女は気が付いた。

 

 鮮やかに花咲かせたビリビリフルーツ、それも砂に塗れてもいなかった。

一体どういう事だろうか、遠くから転がって来たというには砂が少ない。

直ぐにしおれてしまう花がこの過酷なゲルド砂漠において瑞々しく咲き誇っている。

近くで実を落とさないとこんな形はあり得ない。

 

「――」

 

 再び無言となる英傑リンク。

言葉には出さないが、その表情には感謝や困惑、謝罪などといった様々な感情が混じり合っている。

 

 導き出せる事実はどれ程信じがたいものであっただろうか。

英傑のリンクが拾った辺りには何一つ痕跡すらなかったのだ。

 

「―ボテンサ、さん…」

 

 リンクがポツリと答えた。

何かを察したのか英傑リンクは無言のまま彼にそのビリビリフルーツを渡した。

 

◆

  ―口に合ったみたいで良かった!なんて言ったって鮮度が違うよ!

 

 ああ、だからあの日のビリビリ煮込み果実はあんなにも美味しかったのか。

ティクル姉ちゃんのお店で買ってきた、新鮮なそれと比べても更に鮮度が良かったのはそういう事だったのか。

 

「――」

 

 英傑のリンク様が気をかけて下さる。

何でも僕は呪いが掛けられていたそうだ、それもルージュ様の時を超える様な禍々しいものだったらしい。

彼がこの場所の存在を教えてくれ、そして試練を乗り越える事で呪いを解くことが出来たそうだ。

足りない女神像をここへ呼び出したのは紛れもなく彼であり、ずっとこの地を見守っていたと…姿を消した…いや消えてしまった。もう会う事も出来ない、そう感じた。

 

 …サークサーク

 

「姫様―!」

 

 この場にハイリア人の兵士と思われるヴォーイが駆け寄って来た。

ゼルダ姫の従者か何かだろうか。

 

「ここまで来るとは何かあったのですか?」

 

「姫様!英傑様!城下町復興予定地が魔物達に襲撃されました!至急お戻りください!今のところは何とか持ちこたえておりますが、いつまで持つかわかりません!」

 

 突然起きた魔物達による襲撃の報せ、中央ハイラルはカカリコ村へ向かう時に横切ったが見晴らしの良い穏やかな平原であった。

魔物達の暮らす集落もあるにはあるが、集団による襲撃が出来るほど洗練はされていない。

起きる事は考えにくいのだが…彼らの服についている傷跡を見るに本当の様だ。

 

「―!何という事!」

 

「すぐに行くのだ、ゼルダ姫よ!こちらの事はわらわが何とかする!己の役目を見失うな!」

 

「はい!感謝します!ゲルドの長ルージュ!」

 

 ゼルダの言葉を皮切りに英傑リンクがスナザラシを呼び寄せ準備に取り掛かる。

直ぐにでも出発するようだ。

 

「それでは私達はここで失礼します!あまり力添えが出来ず申し訳ありません」

 

「謙遜などするな、本当に助かったぞ。ゼルダ、そして騎士リンクよ。サークサーク」

 

 ゼルダ姫と英傑リンク様はスナザラシに乗って風の様に去っていった。

意外にもゼルダ様もスナザラシを乗りこなしていた。

逞しい一面もあるのかもしれない。

 

「…行きましょう。ゲルドの街へ」

 

「ああ、ビューラ達もまっているからな」

 

「ルージュ様」

 

「どうした?」

 

「サークサーク」

 

 ◆ ゲルドの街

 

「「ルージュ様!お帰りなさいませ!」」

 

「ドロップ、ムリエータ。心配させたな、もう大丈夫だ。良く持ちこたえてくれたな」

 

「ドロップさん、ムリエータさん心配かけました。サークサーク」

 

「リンク、気にするな。これぐらいどうってことないって!こう見えてもアンタの先輩だよ!」

 

「ドロップの言う通りだ、これぐらいで根を上げるほど柔な鍛え方はしていないさ。疲れただろう、ゆっくりと休め」

 

 門をくぐるルージュ達、肉体的にも精神的にも疲れ果てた彼女達の足取りは、砂漠を渡り抜いた背中を見続けて来た門番達にから見ても重たいものだった。

 

― 裏路地

 

 リンクはルージュと別れ、裏路地に来ていた。

身体の節々は痛み、疲労で上体はふらついておりまるで枯れ木の様、戦士としての姿は見る影もない。

肉体は休息を訴えるが、とてもそんな気にはなれなかった。

 

(姉ちゃん…)

 

 訪れる理由などただ一つ。

姉達の死を悼み、喪に服すため。

街の人が弔ってくれたのか、この場所に姉達が眠る墓を作ってくれたようだ。

立てかけられている2人のロッド、はめられた宝石が月に照らされる。

 

「大事な時に傍にいれなくてごめん!守るって誓ったのにごめん!結局、僕は口先だけだった!もうどうすればいいかわかんないよ!」

 

 駄目だ、これは駄目だ…折れてしまう、崩れてしまう。

己の中から何もかも、消えてしまう。

頬から…零れ落ちてしまう。

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