ゼルダの伝説 蒼炎の勇導石   作:ちょっと通ります

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お待たせしました、漸くリンク君の旅が始まります。
先は長いですが、完結させたいものです…!


第7章 厄災の雷龍を祓え
第67話 山と食材と骨達と


 ◆

 

「これからしばらく一緒だ。よろしくな、ドラグ」

 

 ゲルドキャニオンの馬宿で馬を引き連れリトの村を目指すリンク。

1日かけてデグドの吊り橋を乗り越え、街道沿いを北上していき平原外れの馬宿まで辿りついた。

この辺りは虫害がひどいのか、伐採された樹木の殆どには大きな穴が開いており、必要な薪を確保するためにより多くの木を切り倒している。

これは相当な重労働だといえるだろう。

 

 いきなりではあるがリンクは大きな問題に直面していた。

食糧の確保である。

 

 これからは1人で生きていかなければならない。

ゲルドの街にも帰るつもりもない以上、ルピーにも限りが出てくるだろう。

できる事なら何日かは食べられる様に保存しておく事が理想的だ。

常に食料を確保できる保証などどこにもないのだから。

特に植生に乏しいゲルド砂漠を生き抜いてきた彼にとってこの点は非常に敏感だ。

 

「料理鍋はあるけど…食材はそうもいかないしなあ…。馬宿でリンゴとかなら無料で提供されるけど、それだけじゃちょっと持たないだろうし…」

 

 馬宿では薪の束や火打ち石といった旅に必要な物資を無償で支給してくれる。

無論それにも限りがあるので、旅を続けるのにはまるで足りない。

 

「そこの少年、食糧が無いッスか?ああ、自己紹介がまだでしたね。俺、トロットというッス」

 

 そう悩んでいる時に、馬宿の従業員が声をかけて来た。

独特の言葉遣いをした細身で長身の男性だ。

木コリの斧を手に持っている彼が木を切り倒していたのだろう。

汗がにじんでおり息も上がっている。

体格的にも相当きつそうだ。

 

「ええ、まあそんなところです…」

 

「そういう事ならハイラル丘陵の手前にあるサトリ山に登ってみるといいッスよ。あの場所は植生の宝庫ッス。取りつくすのは御法度だけど、食う分を集めるには問題ないッスよ」

 

「サトリ山…ですか?」

 

「そうっス、あの山には主がいると噂がありましてね。その影響からか、普通では自生しない植物も大量にあるらしいッスよ。焼いたりしていけば当分は食いつないでいけるはず…」

 

 男のゲルド族という事もあり、余計な騒動を起こしたくないリンクはカカリコ村の美白クリームで誤魔化している。

男の子用のゲルド族衣装を身に付ける風変わりな子供とみられているようだ。

 

 リンクがヴォーイである事と、厄災ガノンと結び付けられては堪ったものでは無い。

内心胸を撫で下ろすのだった。

それに彼が齎した情報は非常にありがたいものだ、旅には食事は必要不可欠。

魔物の跋扈するこの世界でのんびりと観光とはいかないのだ。

 

「そうそう、そのサトリ山あたりでたまーに動物や昆虫が大量発生するらしいんスよ。ヌシってどんな味がするんスかね?」

 

 以外にも彼は肉食系男子の様だ。

 

「何から何までサー…あ、いや、ありがとうございます」

 

「ありゃっしたー!」

 

 威勢よく答えた後はああ…生の極上ケモノ肉が喰いて―ス。

とぼやきながら仕事場へと戻っていった。

 

「えーっと、地図によると…街道沿いにあるテスタ橋を渡って北西か…途中はちょっとドラグには登れそうにないか…仕方ないなぁ。麓のあたりで待っててもらうか」

 

 シーカーストーンに搭載されているマップ機能を使って計画を立てるリンク。

地図の見方はビューラ達にしっかりと叩き込まれて本当に良かった。

ドラグは馬宿に預ける事も考えたが、結構な距離が離れている。

往復と採取を考えると3日はかかるだろう、その間の食糧の事も考えるとそれでは意味がない。

 

「…よし!ここで一晩明かしてからサトリ山に向かうとするか!」

 

 料理鍋の前で一晩明かすリンク。

これまでの護衛の仕事ですっかりと堂にはいってしまった。

月光のナイフを抱きながら眠りにつく。

 

 ◆ サトリ山

 

 しっかりと休息をとったリンク達はテスタ橋を渡り、サトリ山の麓へと辿り着いた。

起伏の激しい岩肌に所々木々が覗いている。

これは馬では登れそうにない。

 

「間近で見ると起伏も激しいし、岩だらけだ…ドラグ、ちょっと待っててな」

 

 ドラグを麓に待機させてサトリ山へと向かう。

幸いこの辺りでは魔物もいないし、なだらかな草原が広がっているので問題は薄いだろう。

 

 とりあえずシーカーストーンに解散地点をマーキングして、木の生えている場所を目指して足を踏み入れた。

 

「何だこれ…。ちょっと怖いな…」

 

 今だ外の世界をあまり知らない彼ですらわかるその生態系の異常さ。

ハイラルダケに、ガッツダケ、ポカポカダケ、ビリビリダケ、ヒンヤリダケ、ガンバリダケ、マックストリュフ…あらゆるキノコが狭い盆地に所狭しと顔を覗かせている。

 

(こんなに生えているの初めて見た…見た事無いキノコもいっぱいある…)

 

 ポカポカダケやヒンヤリダケはそれぞれ暖かい気候と涼しい気候の場所で採れるとものだ。

同じ場所に生えてくることなど考えられるものでは無い。

後の事と考えて一部だけ摘み取ってゆくリンク。

次に向かった広場ではハーブなどの薬草がといった具合に次々と食材が手に入る。

一体どうなっているんだこの山は、殆どが雑草すら生えていない岩場でありながら草が生い茂る所にはこれでもかという程に食材が広がっている。

 

「…これだけ焼いておけば当分は大丈夫な筈…リトの村は寒いって聞いてるしポカポカハーブとポカポカダケを組み合わせておこう」

 

 おかしい所はまだある、いないのだここには。

これだけ食糧が豊富であるのにもかかわらず魔物達が。

魔物達だって生きていく為にものを食べる、肉食のモリブリンはともかくとして雑食のボコブリンすら影も形も見えないというのはどういうことか。

 

「あっちの方は何があるかな…?ちょっと楽しくなって来た」

 

 怖さが半分、好奇心が半分といった心境で探索していくリンク。

崖をよじ登った先はリンゴ畑であった。

リンゴ、リンゴ、リンゴ―農業の盛んなハテノ村ですらお目にかかれない数える事すら馬鹿らしくなる量だ。

 

「落ちている物だけで十分だ。焼きリンゴにしようかな?煮込み料理はあんまり日持ちしないだろうし―ってしまった。いつの間にか真っ暗になってる」

 

 サトリ山の群生地同士はそれなりに離れている。

時間がかかってしまったようだ。

シーカーストーンで解散した所を確認するが山の反対側、すぐに戻れそうは無い。

 

 ちょっと迂回しながら帰る途中に事は起きた。

 

 ◆

 

「…こんな所に何かある…骨?」

 

 おかしい、ここは来る際に通ったはず…なのにその時には見つからなかった骨が転がっていた。

警戒しながら近づくとバラバラになっていたそれはひとりでに組みあがり、次々と眼前に立ち塞がる。

生きているはずのない骨だけになりながら生命の理を捻じ曲げ武器を振るう―ボコブリンの群れだった。

 

「っ!」

 

 ある者は剣を振るい、ある者は弓を引く。

剣を紙一重で躱し矢を太陽の盾で受け止めて一番近いものへと月光のナイフを振るう。

骨だけだからかたった一撃でバラバラに砕け散ってしまう、あまりの手応えの無さに内心首を傾げるも奥にいる弓を構えたボコブリンの骨に狙いを定めた。

 

 次の矢を準備していたがそれよりも俺の方が早い、袈裟斬りでこちらも砕き落とした。

背後に回っていた槍持ちの一撃を振り向きざまに掠り乍らも突きでバラバラにする。

数は多いがそれだけだ、ライネルと比べると何という事は無い。

 

(…なんだ?この音は?)

 

 一掃した後、一息をつこうとした時僅かにだが音が聞こえてくる。

こちらへと高速で向かってくるのかそれはどんどん大きくなっていた。

 

 岩山を乗り越え、現れたソレに思わず思考が止まった。

 

(…あれは…馬…か?魔物達が馬に乗れるのは知ってたけど骨になっても乗れるのか!?)

 

 そのボコブリンはこの起伏の激しい岩山で馬に乗って現れた、先程まで襲いかかってきたボコブリンが骨だったのでそれ程驚愕するものでは無いだろう。

 

 驚いたのは馬すらも骨であった事だった。

骨しかないのに、あるいは骨だからなのか足場の悪いこの山を軽快に駆け寄って来るさまには自身の眼がおかしくなったかと錯覚するようだった。

 

「ぐわっ!?」

 

 そして、戦いの場でそのような動揺は命取りだった。

倒した筈のボコブリンに錆びた剣で背を切り裂かれる。

しばらく野ざらしにされていたからだろう、しっかりと研磨されたものでは無いそれは鈍だった。

もしこれが良質な業物だったら俺の命は尽きていたかも知れない。

 

 数にものを言わせた不死身の軍勢、砕いては治るを繰り返す。

その上で連携を取って来るのだから始末に負えない。

腕を斬られ、額を削られる。

代償は大きかったが、それでも得るものはあった。

 

(どうやらこいつらは頭が弱点みたいだ。戦いの最中態々頭を取りに行くなんてここが弱点と言ってるようなものだからな!―でも)

 

 別の頭でもいいのか…それだけは地味に厄介だ、とにかく近くにあった頭蓋を手に取り頭に乗せる様は何とも言い難い。

何はともあれ数を減らす事が大切。

思い切って剣を持っている一体に狙いを定めて頭蓋骨を粉砕する。

頭を失ってなお身体は彷徨っているのがちょっと不気味だが敵は他にもいるのだ、構っている余裕はない。

 

 木でできた槍を集中して躱し一気に距離を詰め、ナイフで下半身を吹き飛ばす。

生身のボコブリンならいざ知らず、骨だけならば子供の身体でも十分だ。

直ぐに槍を掴んで一直線に突き飛ばす。

振り返りざまに反対で弓を引いていたボコブリンに投げつけ、倒した事を確認するとナイフで頭蓋をたたき割る。

 

「ガァアア!」

 

 最後に残った騎乗したボコブリンが槍を振り回す。

遠心力と馬の推力が乗せられた一撃を太陽の盾で防ぎ反撃を目論む。

 

 ギャリン! ズズッ…

 

(骨になっても馬は馬か、速さも重さも段違いだ!)

 

 だが彼らの一撃は予想以上に強いもので体勢を崩してしまい、反撃できる頃にはもう届かない程に引き離されていた。

足場は狭く悪い、馬の速さからは逃げ切れない。

そもそも強引に逃げては滑落するのがおちだ。

―少々強引だが、今回はドカンと派手にいこう。

 

 距離を話したボコブリン達は反転し再び突撃してくる、今度は正面から突きで崖から落とすつもりの様だ。

瞬く間に距離が縮み攻撃に移ろうとした時である。

 

 ガシャン!という音と共に青い球が現れ、放物線を描き騎兵の足元へと落ちてゆく。

既に命は尽きているはずの彼らには走馬灯の如くそれが落ちる様がゆっくりと映りこんでいた。

地面に落ちたと同時に凄まじい風圧が彼らの虚弱な体躯を吹き飛ばす。

 

 シーカーストーンに搭載されたリモコンバクダンを使ったのだ。

骨になった彼らにとってこれは堪らない、あっという間に離散してしまい地面を転がるのみ。

そんな隙をリンクが逃す筈も無く落としていた槍で頭蓋を突き落とした。

全ての頭部が破壊され、彷徨う屍は煙と消え去る。

 

「ケホッケホッ…土埃が凄い…。あー疲れた、サトリ山は収穫も凄いけど思いの外過酷な場所なんだなぁ。―ん?あれは…?」

 

 戦闘も終わり、腰を落ち着け一息ついた時、異変に気が付いた。

山頂が、淡く光っているのだ昼間来たときや馬宿から眺めた時にはこんなことは一度としてなかった。

 

「―行ってみよう、何かがあるのかもしれない」

 

 サトリ山の山頂で何が待ち受けているのか、それは登ったものにしかわからない。

 

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