ゼルダの伝説 蒼炎の勇導石   作:ちょっと通ります

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第68話 ヌシと出会うは桜の下

 今いる場所が切り立った崖の上という事もあり、思い切って山頂を目指すことにした。

入山する時に確認したけれどあちら側ならばここ程傾斜はきつくはない。

…なんて言い訳してみたけれど、本当の所は好奇心が勝っただけだったりする。

 

「…あれは?」

 

 登っていく最中見かけたのは生き物たちの群れだった。

二本の角を持つセグロヤギ達が僅かに盆地に集まり、黄金色に輝く甲虫が大樹にこれでもかとびっしりとへばり付いた。

手に届く範囲で大量にいたため甲虫をちょっと捕まえてみた。

角がちょっとカッコイイ…

他にもゲルドの街でも見かける茶色の肌を持つゴーゴートカゲが大樹の傍に集まる。

 

(-どうなってるの?この甲虫の名前は知らないけれど、これはいったい…)

 

 ゴーゴートカゲはゲルドの街でも見かけるから何を食べているか大体想像つく。

虫を食べているのだ、あのゲルド砂漠においてもそれで生き延びているのだからまず間違いないだろう。

…にもかかわらず、目の前にある大量の餌にすらそっちのけで、あの青白く輝く山頂にくぎ付けなのだ。

セグロヤギもそれは同じでまるで長であるルージュの登場を待つゲルド族の様だ。

 

 そんな彼らの傍にはこれまた青白く輝く二つの顔を持つ小さな獣。

確かゲルドの街でも人気のある雑誌「ウワサのミツバちゃん」シリーズにあの生き物について載っていた気がする。

赤い眼が特徴のルミ―とか言った生き物の筈だ。

 

 この雑誌の凄い所は実際に自分の足で様々な場所へと赴いてネタを集めている所だ。

何でも厄災を封印する前から駆けずり回っていたらしい。

この広大な世界を歩いて回り、魔物相手にも臆する事の無い逞しさには恐れ入る。姉達もよく読んでいた。

 

 ゲルド族は皆、伴侶となるヴォーイを探し求めてあの砂漠から旅立つ。

それまでに外の世界を知る事の出来るこういった情報が載っている代物は一定の価値があるのだ。

何でも弓でいるとルピーを落とす珍しい生き物らしい。

ちなみにこの雑誌の編集者であるミツバは弓の扱いが上手くない為、雑誌の最後に乗せるオススメ度はそれほど高くはなかったらしい。

 

―そう思案している内に、こちらに気が付いたのかはたまた誘導する役目を終えたからか、走っていくと光となって消えてしまった。

 

(へぇ…初めて見たけどふっしぎな生き物だなぁ…。輝く物が好きなのかな?なんでまたルピーだけを…?うーんわからない…。そう言えば光っている時はって聞いたな、時間が限られているのかも…?そろそろ行かないと)

 

 ルピーだけでなく宝石や今も光っている鉱床にだって興味をしめすのかな?と考えもしたが、そちらには見向きもしない。

そもそもトカゲたちですら餌をそっちのけの異常事態だ、今回のケースはどちらかというと例外と捉えるべきなのかも知れない。

 

 坂を上り崖に手をかけて進んでゆく、もうかなり高いところまで来たはずだ。

少しだけ肌寒くなってくる。

道中ルミ―と呼ばれる生き物とそれに連れられる動物の数々を何度も見た。

やはり今夜何かがあるらしい。

 

 寒さはゲルド砂漠で慣れているから平気だが、心なしか息が弾む。

思いの外体力を消耗しているのだろうか。

最後の崖をよじ登った時、そんな事すら忘れるほどの衝撃を目の当たりにした。

 

(ふうっ…ようやく登り切った…。っ!?)

 

 思わず自分の口をふさいだ。

野生の生き物は大抵物音に敏感だ、声なんてもっての外である。

いつの間にか空も目の前もうっすらと青白く発光し、その視線の先にはルミ―達が大きな水場で水浴びをしていたからだ。

 

 存在するかすら怪しく噂になる様な生き物たちの大集合、まるで自分が異世界に迷い込んだかと錯覚する様な神々しさすら感じるほどの神秘性。

山の頂にそびえる樹木は、狂い咲いたかの如く桃色の花弁を舞い落すさまは正に心を奪われる様で、この奇妙な色に染まりあがった空間に彩を与えてくれる。

 

(すっごい…こんな光景、初めて見た…。みんなに…いや、もうその資格はないな…)

 

 思い出すはかつてのゲルドの街、姉達と笑いその友と見知ってきた話を思いっきり話していたあの幸せだった瞬間。

甘えるなと首を振り、意識を切り替える。

しかし、切り替えてた時には、眼を外した訳でも無いのにいつの間にか中心にそれは立っていた。

ルミ―達と同じく青白く光る体躯に二つの顔を持つ、それでいてその大きさが彼等よりも遥かに大きい。

金色に輝く立派な角が左右に生えた不思議な生き物。

彼等がリスほどの大きさとすれば、成長した馬と比べて一回り大きさはある。

これが噂されていたサトリ山のヌシなのかも知れない。

 

「あ…」

 

 思わず声が漏れた、気配を消していたにもかかわらずこちらへと顔を覗かせ消えたと思った時には目の前に現れた。

それと同時に水浴びをしていた彼らも一斉に顔をこちらに向ける。

赤く輝く瞳が射貫いて来る…いきなりこれをやられるとかなり不気味だ。

気付けなかったこれが敵だったら命は無かっただろう。

それ程にするりと間合いに空気に溶け込んで来た、いや彼に空気が常に合わせていたそんな感じだ。

 

 しかし何故だか、害意は無い。

そんな気もした。

何というか…旧友に出会ったそんな感覚だろうか?モモちゃん達にあった時をもっと遠い時間離れ離れにした感じ。

 

 思案している内に近づいてきた、恐る恐る手で首元を撫でてみる。

悪い気はしないのか、襲いかかったり逃げたりはしないようだ。

2つ付いている頭が背にあるそれぞれのロッドへと口づけをする。

 

 その瞬間、メテオロッドとフリーズロッドが僅かに輝きを増した気がした。

背中に意識を向けている間にいつの間にか朝日が昇り、青白い空間は影も形も無くなり彼らも消えていた。

目の前にはなだらかな傾斜の先で待ち続けているドラグの姿。

 

「―何だったんだろう?おーい!ドラグ!ずいぶんと待たせちゃったな!今からそっちに行くから待っててくれ!」

 

 比較的なだらかな所を滑るようにして下っていき、その漆黒の体躯の燃え上がるような赤い鬣を撫でる。

 

 草だけでは足りなかったのか、早々にゴーゴーニンジンを平らげてしまった。

思いの外逞しくなったものだ。

 

「あー!せっかく取って来たのにもう食べちゃったの!?もう、しょうがないなぁ…」

 

 それでもこの山で採れた大量の食糧を考えれば決して悪い話では無い。

早い所リトの村方面の馬宿で腰を落ち着け簡単にでも調理しておきたいところだ。

ドラグに跨ると、大量の食材が重かったのかちょっと恨めしそうな視線を向けられる。

 

「そう睨むなって。これが俺達の生命線なんだよ?ちょっと重いのは我慢してくれ」

 

 しぶしぶといった面持で街道を疾駆するドラグ。

ニンジンを食べた手前とりあえずは納得してくれたようだ。

 

 ◆

 

 半日ほどかけて丘陵を越えてゆく、この辺りは天候の変化が激しく雨だけでは無く雷もそれなりに落ちる湿地帯も広がっている。

 

(うわぁ…ちょっと空模様が怪しいなぁ…。雨だけならまだしも雷だとちょっとまずいなぁ…たしか金属だけは絶対に付けるな!雷を呼び寄せるぞ!ってチーク隊長が言ってたっけ?)

 

 ハイラルでは雷の時には決して金属を付けてはならない、これは旅をする者にとって絶対の鉄則である。

何故なら、確実に誘導されて落ちてくるからだ。

馬に乗ろうが、鞘にしまっておこうがそんな事は関係ない。

幸いにしてポーチの中にしまっておけば問題は無いが咄嗟にしまえない状況では命取りになる。

 

「ドラグ、ちょっとだけ止まってくれ。武器をしまいたいから」

 

 そう一声入れてから着地し、急いで太陽の盾と月光のナイフをしまっていく。

武器に関してはメテオロッドとフリーズロッドがあるからまだましだが、盾については心許ない。

そうこうしている内に雨が本格的に振り出し、ゴロゴロと空が唸り声をあげだした。

 

「うわぁ!はやく馬宿まで行かないと!ドラグ、ちょっと急いでくれないか!?」

 

 とりあえず雷への対策は出来たが、雨もそれはそれで恐ろしいものだ。

長時間晒されれば、身体の体温が奪われるし風邪だって引きかねないだろう。

こんな事なら頭の装備も淑女の物に変えておけば良かった…そう自然に考えられるほどに抵抗なく着替えられる事に内心沈むリンクであった。

 

 襲歩によって一気に駆け抜けてゆき、何とか馬宿へと辿り着いた。

リトの村へと伸びるタバンタ地方と西ハイラルを繋げるタバンタ大橋馬宿だ。

 

「ふぅ…酷い目にあった…。しばらくはここで休んでいかないと…」

 

 馬宿へと辿り着いたあともやるべき事は沢山ある。

まずは服を乾かさないといけないし、その後はこの山積みになっている食料を調理して保存しなければならない。

 

 姉のスルバの受け売りだが、この辺りの特徴はそれぞれ異なる気候が続いている事らしい。

ここまでは雷雨の盛んな湿地帯、橋を渡ってすぐの所では打って変わって風の強い乾燥帯、そしてリトの村のあるタバンタ地方は涼しい事で有名らしい。

橋の掛けられた谷間が何故これ程までに乾燥しているのかは理由がわかっていないらしく一部の学者の間では注目の的なんだとか。

 

 色々と食材を選別しながら効果的に組み合わせなければならない。

別の性質の食材と一緒に入れてしまうと効果が無くなってしまうからだ。

できる事なら火打石を使ってこれらの準備をしていきたいところだが、流石に木造の馬宿テントの中で火は使えない。

良くて摘み出されるか最悪馬宿のテント全部燃えて犠牲者が出かねない。

 

 大人しく傷の手当てをし乍ら雨が止むのを待つリンクであった。

 

「オゥ!そこのアナタ!ちょっとよろしいですカー!?」

 

 突然声をかけられた。

どこか片言な言葉遣いで自分の様に異国の言葉を無理に使っているような感覚をリンクも覚える。

幼い身なりで一人旅では流石に目立つので声をかけられるのもそう珍しい事では無いのだ。

 

「えーっと、俺ですか?」

 

 声をかけて来たのは、大きなリュックを背負ったハイリア人と思われる男性だった。

どことなく手に入れた甲虫に似た作りをしている。

行商人だろうか…?

 

「イエス!貴方のその懐にいるそのガンバリカブト!よろしければ譲ってはいけないでしょうカ!」

 

 そういいながら懐にしまっていたガンバリカブト?と呼ばれる甲虫がいるであろう場所を指さす。

確かにこの辺りにはしまっておいたがよくもまあわかったものだと感心する。

 

「勿論タダでとは言いまセ―ン、私の持っている頑張り薬と交換はして頂けませんカ?」

 

 確かにこのままでは食材にはならないし、薬も作れるらしいがまだまだ作り慣れてはいない。

交換してもいいかもしれない。

 

「わかりました。それではこちらのガンバリカブト?をどうぞ」

 

「サンキュー!長い旅路は食べ物だけでは無く薬も用意しておく事をオススメしますヨ!」

 

 確かに長い間旅をするのなら傷にも効くであろう薬を用意しておくことも大切だろう、いずれ自分でも作れるように練習しておく必要がある、そう決意するリンクであった。

 




旅をする様をかくのも中々に難しいですね…
こちらも色々と試してみる必要がありそうです。
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