ゼルダの伝説 蒼炎の勇導石   作:ちょっと通ります

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第2章 ワイルドな世界
第7話 ゲルドキャニオンを目指して


リンクが兵士になってから3日が過ぎた。

いよいよ今日から街の外へ護衛として行く事になる。

 

 この3日の間リンクはみっちりとしごかれた。

なにせ街の外は魔物や野生生物もいる。人間相手では予想もできない行動や攻撃もしてくるのだ。

そういった相手への対策を学び、訓練場と違う外の砂漠での模擬戦を行ったりしている。

後は礼儀や言葉遣いの勉強もしっかりと行われた。

身内が相手なら大目に見られるだろうが、そこは護衛。

相手に対し、礼を失するのはよろしくない。

この講習がリンクにとって一番つらいものだった。

 

街の外は昼には一層暑く、夜には一際寒かった。

そして、ゲルドの街の整備された道以外では砂に足を取られて思うように動けないのがリンクにとって衝撃だった。

彼の持ち味である素早さを活かした戦いが行いにくいのである。

 

 また、魔物という存在は徒党を組んで襲うことも多い、一人で複数の人数と戦う戦闘も組み込まれた。

これが中々に過酷なのだ。

相手が持っている模擬用の武器は色々なものがあり、その上死角からの攻撃も飛んでくる。

ビューラは複数の相手と戦う方法だけでなく、撤退することの大切さも教えた。

というのも護衛の仕事が本懐であり、魔物討伐の為に依頼人を危険に晒してはいけないからだ。

 

「いよいよおぬしの初仕事であるな。これは餞別だ、受け取れ」

 

とルージュが伝え、控えていたビューラが袋を渡してきた、中からは銀色に輝く宝石にして貨幣のルピーとゲルドのナイフ、ゲルドの盾などが入っていた。

これから先、リンクが護衛中に使う事になる物一式だ。

 

「サークサーク、ルージュ様。気を引き締めて頑張ります」

 

様々な渦巻く感情を何とか抑えながら受け取るリンク。

ここから先はルージュ様やビューラ様はいない。

何かあっても自分で何とかするしかないのだ。

 

「鍋や薪、水といったものは用意してある。これらは備品だから帰ってくるたびにその都度補充はしていくが…流石に外までは補充に行けん。あまり無駄遣いはするなよ」

 

ビューラは厳しいながらもリンクの事を案じていた。

当然だ、基本的に野宿をすることになる場合、薪や水は生命線になる。

もしそれらを切らしてしまえばそれは死に直結するからだ。

 

「ゲルドキャニオンへはカラカラバザールを経由するといいだろう。オアシスのある市場でそなたには衝撃的かも知れぬ。そこで旅で必要な食糧や水などは補充をするとよい。わらわからは以上じゃ、幸運を祈る」

 

心配なのはルージュとて同じ事。

だからこそゲルドキャニオンの馬宿への比較的簡単な道筋と、補給場所を伝えてくれる。

 

「はい、そうさせて頂きます。サヴォーク」

 

そう言って一礼をし、宮殿を後にするリンク。

彼が歩いて行った先、ゲルドの街の入り口ではすでにラメラが準備を終えていた。

 

「それじゃあ、今日からゲルドキャニオンまでよろしくねリンクちゃん」

 

ラメラは笑顔でリンクに挨拶をする。

比較的短い道のりとは言え、何日かはかかるだろう。

ある程度は打ち解けていた方がいい。

 

「こちらこそよろしくお願いします。ラメラさん」

 

 リンクも爽やかに挨拶を返した後、砂漠をラメラとともに歩いてゆく。

何とも新鮮な心地だ、今までは基本的にフェイパかスルバと一緒に歩いたりしてきた。

家族以外の大人とそれも外を歩くというのは初めての経験だった。

その途中の事である。

 

「ねえ、リンクちゃん。おそらく外へ出るのは初めてでしょ?緊張している?」

 

ラメラが話しかけて来た。

彼女はリンクが初めて外へ出る事をそれとなく推測していたのだ。

 

「はい、少しだけ。あれ?私初めてだなんて言いましたっけ?」

 

リンクはラメラにそう問われたときに何気なしに答えたが、その後でちょっと軽率だとも思った。

危険の多い仕事で新人をあてがわれても気分のいいものではないからだ。

 

「リンクちゃん顔には表れにくいけど、目線が色々と動いているからね。初めての景観をしっかり焼き付けてるって思ったの。最も、こんなに小さなヴァーイがゲルドの街の外へ出てる時点でね」

 

そう言ってウインクしながら話すラメラ。

けっこう人を手玉に取るのが上手いようだ。

 

「なるほど…そう言われると成程と思います。それで今日は北東へと延びる道をまっすぐ進んでいきますか?」

 

それでもリンクの仕事は彼女の護衛。

話もそこそこに切り上げ、2人がとるべき進路を提案する。

 

「そうね…目的地のゲルドキャニオンまでは殆ど一本道だし、出来たら素早く移動したいわ。カラカラバザールでも物資は補給できるけれど、あまりルピーを使いたくないし砂漠の真ん中で野宿は危険すぎる」

 

 通常、ゲルドキャニオンへはカラカラバザールを経由するルートで移動する。

カラカラバザールへは歩いて行ったら一日はかかるだろう。

しかし、いくら砂漠の民ゲルド族といえど野生生物や魔物のいる砂漠で野宿をするのは危険極まりない。

日が昇れば灼熱の風が吹き、日が沈めば荒涼の風が吹く為、簡単な装備では体力を奪われかねない。

これに砂嵐や魔物の襲撃が加わった場合はもう想像もしたくもない。

 

「かしこまりました、それでは私が辺りを警戒するので日が暮れないうちにカラカラバザールを目指しましょう」

 

今日の予定は決まった。

日が沈むまでの間に、砂漠の市場カラカラバザールまで移動する。

 

「わかったわ、それじゃお願いね」

 

以上の事からラメラ達は、出来る限り素早い移動で進路を北東へ取る。

カラカラバザールまでの道は最低限舗装されているので方角を見失ったりはしない。

 

 

 カラカラバザール

 

 体調が万全の状態で急いだ為、日が暮れる少し前にオアシスを中心に展開する市場、カラカラバザールへとたどり着いた。

ゲルドの街を女性の街と例えるのならカラカラバザールは男性の市場だ。

というのもゲルドの街は掟によって男性が入ることを禁じられている。

 

 しかし、ゲルド族と商売をしたい者は女性だけではない。

そこで街までの途中にあるこのオアシスに、商売をしたい男性が集まるという訳だ。

勿論直接交渉しないといけない案件もあるので、成人したゲルドのヴァーイも何人か待機している。

 

「着いたわ、ここがカラカラバザールよ」

 

ラメラが少々疲れた声でリンクに紹介する。

慣れているとは言っても、砂漠を素早く移動するというのは中々に過酷だ。

 

この市場の特徴として砂嵐への対策として箱になっている荷物を積み上げ、布で簡易式のテント型の屋台にしている。

 

「わぁ…、これがオアシスの市場、カラカラバザールなんですね…」

 

リンクが感嘆の声を上げる。

彼にとって初めての市場でありゲルドの街以外の集落だ。

 

ゲルド族やハイリア人を始めとした様々な種族の交流の場がカラカラバザールなのだ。

活気としては不夜城とすら言われ、しっかりとした街になっているゲルドの街には劣る。

 

だがそれは、世界最大の交易の街と比べての事だ。

ここで扱われる品の数も種類もかなり多い上に、何といっても男性でも入場できる。

多くの種族にとってこれほど活気のある大きな市場は無くてはならないものなのだ。

 

「さて、リンクちゃん。ちょっとこっちに来てもらえるかい?」

 

ラメラは周りに見えない場所へ手招きをした。

何かまずいことでもあったのだろうか、首をかしげながらもリンクは着いて行った。

 

「族長からの許可が出ているとはいえ、他の種族からは不審に思われるからね。ちょっと申し訳ないけれど少し変装してもらうよ」

 

 そうなのだ、リンクはゲルド族。

掟によって外でゲルド族の子供を見かけることなど普通はあり得ない。

いくら外で見かけることが極稀にあるとは言っても、魔物が多い道中それも砂漠を渡って来た彼は目立ちすぎる。

それを何とかしたいのだろう、彼女の手には化粧道具が大量に握られている。

 

「言いたいことはわかります、…あまり好ましくはないんですけどね…」

 

ラメラの持っている道具でメイクを施されるリンク、悲しいかな女装されるのにはすっかり慣れている。

 

(こうしていると姉ちゃん達に変装させられる時を思い出すなぁ。)

 

主に服装はメルエナが選び、スルバが彼を髪を整え、小物のようなアクセサリーをこっそりとフェイパに頼むのが習慣になっていた。

もう母が選ぶことは無いのだなと思うと少し悲しい気持ちになるリンクであった。

 

「へぇ、なかなか似合うじゃない。今のリンクちゃん、どこから見てもハイリア人みたいだわ。ああ、そのクリームはあげるよ。アタイにはちょっと合わないみたいだし」

 

ラメラによって少しだけ肌を白くするようにクリームを塗られ、髪形を変えられたリンク。

こういう時、国を挙げて女子力を磨くゲルド族の力は凄いものだ。

あっという間にゲルド族とわからない程、肌の白い少女がそこにいた。

 

「さてと、まずは宿屋に行ってみようリンクちゃん。荷物を持ったまま市場を見て回るのは大変だからね。いつもお世話になっているから大丈夫だよ」

 

そう言って2人は宿屋へと足を運んで行った。

 

1日では終わらない護衛の仕事となればそれなりに荷物は嵩張るし、砂漠となると水分の持ち込みも重要になる。

重い荷物を持ちながら広い交易場を見て回る事は出来るだけ避けたい。

 

「カチュ―さん、サヴァサーヴァ。今日一日泊まっても大丈夫かい?」

 

ラメラが機嫌よく年老いた店主に挨拶をする。

彼女の名はカチュ―というようだ。

 

「あらラメラじゃないか、サヴァサーヴァ。今日は子供と一緒かい?しかも普段来るよりも早いじゃないか?」

 

カチュ―も挨拶を返し、そして驚く。

顔なじみが見たこともない女の子、それも5歳ぐらいの娘をカラカラバザールに連れて来たのだから。

彼女には娘はいなかった筈だが…。

 

「できるだけ野宿するのは避けたかったからね。紹介します、今回護衛を担当してくれるリンクちゃんです」

 

カチュ―の驚きを予測していたのだろう。

何食わぬ顔で平然と説明してのけるラメラ。

こういう豪胆さも商人には必要なのかも知れない。

 

「よろしくお願いします、カチュ―さん」

 

彼女の説明を待ってから挨拶をするリンク。

なるほど、確かにここカラカラバザールの警備兵と似ている仕草だ。

あながち間違いでもないのだろうと思う事にしたカチュ―。

 

「こんなに小さいヴァーイが護衛なのかい?ちょっと心配だけど腕は立つのかい?」

 

しかし、仕草は似ているとはいえ護衛が出来るかとはならないだろう。

この辺りの魔物は強いものが多いし、過酷な環境だ。

少々失礼かもしれないが、命にかかわる仕事だ。

心配げにカチュ―は尋ねた。

 

「意外なほどに強いみたいですよ。とは言っても今のところはまだ危険な相手は出ていないんですけれど」

 

それに対して、強いらしいがまだそんな場面に出くわしていないとラメラは答えた。

 

「まあ魔物とかに逢わないに越したことは無いけれどね…。わかったよ、とりあえず泊まる分には問題はないから荷物を置いていきな」

 

カチュ―に促され、宿屋に荷物を置いておく二人。

ラメラが出発は明日だから今日一日は見て回っておいでとリンクに気を使ってくれた。

 

市場は日が暮れていても辺りには篝火が灯され、店が開いている。

それだけ活気のある場所なのだと伝わって来る。

 

(帰りは一人だからここで姉ちゃん達にお土産買えるといいなぁ…へぇ、黄色いフルーツもあるんだ。)

 

中でもリンクの興味を引いたのはフルーツ屋だった。

フルーツ屋自体はゲルドの街にもある、ベローアの出しているお店だ。

イチゴをくれる姉達の友、ティクルの母親でもある。

 

(ティクル姉ちゃんにも美味しいイチゴをいっぱい御馳走になったし、出来たら買って行きたいなぁ…)

 

気になったのはその品揃えだ。

カラカラバザールはゲルドの街と同じく砂漠の中にある、しかも急げば一日とかからない。

にもかかわらず品揃えが全く違うのだ、共通しているフルーツはヒンヤリメロンぐらいでヤシの実もツルギバナナも街中では見当たらない。

 

すぐ近くなのにこんなに違うのか、外の世界は広かった。

そう思うリンクだった。

 

「いらっしゃい…かな?その衣装似合っているよ。来たばっかりで喉も乾いただろう?ゆっくり見て行って気に入ったら買っておくれよ」

 

交易場では様々な人が訪れる。

故に特徴的なゲルド語では商いは難しい。

共通言語で話すことが肝要なのだ。

 

「サークサーク、まだこの市場の事は知らないので、もう少し見てからにしようと思います」

 

リンクは店主である女性がゲルド族である事がわかる。

だからこそ普段慣れているゲルド語を交えて色々と見て回ってから決めたい旨を伝えた。

 

「お嬢ちゃんゲルド語上手だね。まだまだ開いているお店は多いから観光ついでに見てみるといいよ。ゲルドの街へ行くのならそこのフルーツ屋も覗いておくれ、妹が開いているお店なんだよ」

 

店主の言葉にリンクは思案する。

ゲルドの街で、フルーツ屋を営んでいるとなればベローアのお店だ。

となると彼女はティクルの伯母という事になる。

 

店主に言った通り市場を見て回るリンク。

カラカラバザールは広かった。

そして集まっている人達、特に男性の多さに驚いた。

 

 身近な男性は父だけだというゲルド族は多い、それだけにこのカラカラバザールで衝撃を受けるゲルドは多い。

 

ゲルド族以外の種族はこの砂漠の寒暖差に参っている様だった。

最も暑さだけなら活火山で暮らしているゴロン族の右に出るものはいないし、寒さなら雪山の近くに住み、大空を飛び回るリト族もかなり強いのだが。

 

リンクの驚きはまだまだ続く、よろずやでは何と魔物の尻尾まで売っていた。

彼らにとって魔物の存在は身近なのだ、使い方はいまいちわからなかったが店主のメキャップが言うには虫と一緒に煮込むと薬ができるらしい。正直あまり飲みたくはない。

 

(色々と欲しい物もあるけれど、帰って来れる間には食べ物はダメになっちゃうなぁ…ここは我慢するしかないか。)

 

結局今回は特に買い物をするわけでもなく宿屋に帰ってきたリンク。

宿屋ではすでにラメラが眠っていた。

眠れるときに眠っておく、疲れをとることを優先しているのだ。

 

(僕も寝よう、明日も早いんだから。)

 

初めて家族以外と眠るリンクにとって何とも不思議な感覚だった、コッコの羽毛を使った布団は暖かくて文句なしに心地よい物だったが。

 

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