ゼルダの伝説 蒼炎の勇導石   作:ちょっと通ります

70 / 80
祝 70話達成です!
中々のボリュームになった気がします。

UA14000達成と総合評価290越えありがとうございます!
これからもお付き合いのほどが出来れば幸いです。


第70話 リトの村には暗雲が立ち込める

 ◆ 翌朝

 

「サヴォッタ!今日も頼むぞドラグ!」

 

 馬宿からタバンタ大橋を渡っていくリンク達、この橋はハイラル大橋に次ぐ規模の物でククジャ谷を挟んで西ハイラル地方とタバンタ地方とのつながりを担ってきた。

厄災が再び封印されるまではこの規模の大きさでも修復の目処が立っておらず、足場の至る所が抜け落ちてしまっており危険極まりないものだった。

 

 あれから約十年、魔物達の脅威も去り人々は復興へ向けた活動を再開する。

その為には交流の要たる橋の修繕は必要不可欠だ。

現在では欠けていた部分には木の板で補強が施されており、今では橋の上で馬車どうしですれ違うことだって出来るのである。

 

「しっかし…すっごい深さだな…。ここで落ちたら間違いなく死んじゃうな…。ドラグ、慎重に渡ろう」

 

 ドラグもあまりの谷の深さに怖気づいたのか無言でコクリと頷く。

左右にも落ちない様にロープが張り巡らされているが完全とは言い難い。

このククジャ谷はただ深いだけでは無い、なぜかこの辺りだけ妙に乾燥した環境で風も強い。

谷の割れ目に沿って風車も至る所に作られている。

 

(この風車は粉を挽く為の物かな?この谷で水を排出するなんてありえないだろうし…)

 

 姉のスルバはこういった事にも深い造形を持っていた。

詩を作るにはその風景が思い浮かぶような深い知識が必要、師であるカッシーワからの金言である。

 

 その為至る所で旅に出た際に色々と疑問に思った事をその都度解説してくれたものだ。

そして解説に裏打ちされた今回の彼の推測は概ね正しい、この辺りではタバンタ小麦がよく取れる為小麦粉にする為に風車が使われているのだ。

モチモチとしたパンを美味しく焼くにはこの工程が必要不可欠、何より米と違い旅先で炊く必要が無いため携帯食料として重宝されてきたことが大きく相応の需要があった。

長旅の時は堅めに焼いて岩塩をまぶすといった一工夫がされていたとか。

 

 慎重に進んで橋を渡り終えた先には、これまた道の両脇を岩の壁で覆われた場所に出る。

そう言った意味ではゲルドキャニオンへと入る道筋に似ているだろう。

 

「よく見るとあちらこちらに焼けた跡が残ってる。この辺りを監視していたガーディアンがいたのかな?岩場からは観測用の塔も伸びてる」

 

 今一度言うがこの辺りはタバンタ地方と西ハイラルを繋ぐ急所である。

その為護衛の為に飛行型のガーディアンが配置されていた。

頑強さと破壊力を兼ね揃え攻撃が難しい飛行型となると如何にこの地点が要所であるのか伝わるだろう。

 

 しかしそれは寝返ってしまえば、交易を大きく制限する要因にもなりうる。

厄災ガノンがほぼ全てのガーディアンを乗っ取ることで皮肉にも実例を持って体験する事になってしまった。

 

「―目を奪われすぎたな、急ごう。全て終わった後に改めて観に来ればいい」

 

 ドラグを急き立て狭い谷間を一気に駆け抜ける。

目指すはリトの馬宿、リトの村へは馬を連れて行く事は難しいため最寄りの馬宿へ預ける者が多いのだ。

あそこまで辿りつけばドラグを休ませる事も出来る。

 

 

 岩場を抜けた先では涼しさを通り越してやや寒冷とした風が出迎えた。

吐息が白く曇り僅かに手が悴む。ゲルドの砂漠で慣れているリンクでなければ少々厳しかっただろう。

…奇妙だ、へブラの山まで登るならいざ知らず、麓では涼しくはあれど行動に支障が出るほどのものでは無いと聴いている。

よく見ると所々白い粉が積もっているではないか。

あれが雪というものなのだろう。

 

(…?今さっきメテオロッドの光が強くなったような気がする。気のせいかな?)

 

 目的地に近づいたからだろうか、理由はわからないがほんのり暖かく感じる。ちょっとぐらいの寒さなら平気かもしれない。

 

 目的の地である馬宿及びリトの村へと視線を向けると暗雲が立ち込め時折白く点滅する。

遠くから見ると落雷ってあんな風に見えるのか…ってそうじゃない!なんであの辺りで落雷が起きているんだ!?

馬宿で言ってたけど落雷は少ない筈なのに。これじゃあ盾やナイフは仕舞っておいた方が良さそうだな…

 

 岩だらけの黄土色から緑が多くなってきた辺りでとうとう豪雨に見舞われる。

早いとこ腰を落ち着ける場所に移動しないと、そう考えてシーカーストーンを見てみたら信じられない情報が目に入った。

 

「何だこれ!?天気がずっと雷雨だって!?こんな事あり得るのか!?」

 

 落雷で有名なアッカレや西ハイラルですら何時間も雷が鳴り響く事はほぼ稀だ、何より一日中落とし続けられるだけの電気などそうそう作れるものでは無い。

脳裏によぎるはイーガ団を蔭から操っていたあの男、まさか彼が何かを仕組んだのか。

 

「おーい!そんなところで何をしている!?」

 

 ふと空から大声で呼びかけられた。

上を向いて声の先をたどってみると鳶色の体毛に覆われたリト族の男性だった。

この辺りを巡回していたのかもしれない。

彼等は少数民族で商いなどを除けばそうそう持ち場からは離れない、かなりリトの村に近づいたのだろう。

 

「初めまして、俺はリンクといいます。リトの村のカッシーワさんに用がありまして、旅をしています」

 

「こりゃどうも。俺はギザンっていうんだ。カッシーワにかい?世界を旅してきたアイツは顔が広いからちょっとわからないな…。…って今はそれどころじゃない!リトの馬宿まで案内するから着いてきて!」

 

 言うが早いか強引に話を纏めるギザン。

だがこの状況ではそのほうが有り難い、雷雨に晒されながらのんびりと雑談など誰が望むだろうか。

 

 

 ギザンの誘導によってスムーズに進んでいくリンク達、慣れ親しんだ土地とは言え流石は空の支配者リト族というべきか馬に乗っているリンクを簡単に先導していった。

あの移動力は少しばかり羨ましいものだ。

 

 ◆ リトの馬宿

 

「ふぅ…なんとか日が落ちる前に着けたか…、かなり急いだからな。店主に行って拭く物を貸してもらうといい。思いの外身体は冷えてるから」

 

「はい、サー…ありがとうございます。タバンタからは中々距離がありますね。思いの外消耗してました」

 

 ドラグの体力や自身の体温の事もあり、直ぐに馬宿の方へ案内してくれたのはありがたい。

雨と寒さが重なると思いの外身体が動かしにくくなる。

一時的な冷えならともかくどうにも今回は様子が違うらしい。

 

「長い間急いだらそりゃそうだよ。今は雷雨でずぶ濡れだしね。」

 

「お客様、この大変な気候の中よくぞ御無事で!布を用意しましたのでこれで乾かしてください」

 

「いいんですか!?ありがとうございます!」

 

「悪いね、ギャロさん。それじゃあ僕は上肉のシチューを頂けるかな?コレ御代ね」

 

「すみません、俺のドラグを預かってもらえますか?急いできたから疲れていると思うので」

 

 頼むよりも先にここの馬宿の店主であるギャロが手を回してくれる。

2人そろって服や身体の水を拭き取る。

馬宿の中という事もあり心なしか暖かくなった気がする…ただどちらかというとそれだけ身体は冷え切っていたという事なのかも知れない。

 

「おっ、来た来た。ここのシチューはポカポカの実を使ってるから寒い時にはお薦めだよ。他にはだね…カレーライスも人気があるんだ。ハイラル米はともかくゴロンの香辛料が中々手に入らないから期間限定になっちゃうけど大抵の人は美味しく食べられるよ」

 

「へブラ山の麓で寒い地域だからですね?シチューは中央ハイラルでも食べました。カレーライスはちょっと辛いですが俺も好きです」

 

「へえ、君若いのに中々いろんな所に行ってるんだね!っといけないいけない話が逸れちゃったな。今この辺りは大変な事になってるんだ」

 

「あの雷雨の事でしょうか。一体何があったんですか?」

 

「ああ、最近になってずっと雷が落ちているんだ。ただでさえ雷は危険なのに今は金属を付けてない時ですら人を狙って落ちてくるからね。それだけじゃない、落雷に合わせて魔物達が襲撃してくる有様さ。とてもじゃないけれど観光なんてできないからね、当分はリトの村へ来ることを控えて貰うように村長から指示されているんだよ。馬宿は落雷にだって耐えられる様に作られているからね」

 

 合点がいった、ギザンは落雷に耐えうる施設に案内してくれたのだ。

シーカーストーンから得られる天候の固定という異常は普通は知り得ない。

落雷がやまない以上晴れるまでやり過ごすという通常のなら問題の少ない対策も危険極まりないものになってしまう。

 

 一体何が起きているのか、シーカーストーンの反応は未だにリトの村を指し示し天気図は相変わらず落雷を通知する。

これは偶発的なものではなさそうだ。

…リトの村で情報を集める必要があるだろう。

 

「ここまで来てしまい馬も疲弊しています、直ぐに非難するのは難しいです。リトの村は目と鼻の先ですしどうしてもカッシーワさんの所へ挨拶をしたいのですがお願いできませんか?」

 

「こっちとしては馬宿で休んだらすぐにでも帰って欲しいんだけど…まあ挨拶ぐらいならいいか」

 

 どの道直ぐには離れる事も難しいだろうしそう言い残すと食事を始めるギザン、ほろほろと柔らかくなった骨付きの肉を頬張る姿がとても美味しそう…作り置きしておいた焼きリンゴや木の実を炙った代物ではどうにも口が寂しくなってしまう。

 

 

「ふぅ…御馳走様。それでどうする?君さえ良ければ直ぐにでもリトの村へ案内できるよ。ここからは目と鼻の先だから迷うことはあり得ないし疲れているなら休めばいい。個人的には前者の方をお薦めするね、馬宿内じゃ火が起こせないから風邪ひいちゃうし」

 

「いいんですか?そういう事ならお願いします」

 

「オッケー、じゃ乗ってくれ」

 

「えっ、乗ってって…飛んでいくんですか?」

 

「そりゃそうだよ。この土砂降りの中、態々時間かかる移動なんてこっちから御免だね」

 

「凄い…一度空を飛んでみたかったんです…!お願いします」

 

 振り落とされない様しっかりと捕まるんだよと言われ恐る恐る背中に乗るリンク。

ドラグやスナザラシとはまた違った感触だ。

 

 ギザンがバランスを安定させるため助走を長めにとる。

グングンと勢いをつけて最後に力強く地面を踏み上がる。

跳躍の後は両腕の翼で力の限り羽ばたいてゆく。

 

「すごい速さだ!それに地面が遠い!風が冷たい!これが飛ぶという事なのか…!」

 

 恐らく人として産まれたものの大半が体験した事の無い大空への飛翔。

これで快晴だったのならいう事無かっただろう、自分でも自由に飛んでみたい!それほどの衝撃をリンクに齎しリトの村へと進んでゆく。

 

 リトの馬宿からすぐの所に存在する巨大な湖。

その上に聳え立つは岩の柱、螺旋の如く木で組み上げられた通気性の高い集落がリトの村だ。

彼が言った通り本当に目と鼻の先だった。

これならすぐにでも案内する訳だ。

 

「もうすぐリトの村だよ!着陸するからしっかりと捕まって!」

 

「はい!」

 

 リトの村で彼に待ち受ける試練はこれから始まってゆく。

 

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