ゼルダの伝説 蒼炎の勇導石   作:ちょっと通ります

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第75話 空の支配者

 飛行訓練場で各々が準備を整える。

弓や爆弾矢などはあらかじめ用意ができていたが、効果時間の限られている料理や薬に関してはそうもいかない。

ミツバが材料を片っ端から鍋に投入し、他は龍が使うという電撃への対策として素早く口へと運んでいる最中の事である。

 

「ングッ…チューリさん、それは?」

 

 チューリの胸元でぼんやりと青白く輝いている首飾りが目に留まる。

武器や防具の類では無いそれは不思議と目を引いたからだ。

 

「ああコレかい?夜光石で飾り付けたお守り。モモからのプレゼントでね、気休めかもしれないけれど身に付けておきたかったんだ」

 

「なるほど。…チューリさん、大切にして下さいね。絶対に生きて帰りましょう」

 

「ああ、言われるまでも無い。決して失くさないよ」

 

 チューリの背中に乗り、訓練場を飛び立つ。

ギザンが乗せてくれた時の様な客人を乗せるそれとは比べ物にならない、非常事態に出撃するリトの戦士の凄まじい推力に振り落とされない様必死でしがみ付くリンクであった。

 

 

 テバ side

 

 リトの村を守る為の戦いに臨もうかという時、奇妙な客人が現れた。

ゲルド族の民族衣装に身を包んだチューリよりも幼い子供、彼女はリンクと名乗った。

 

 つくづくこの名前とリーバル様が遺してくれた訓練場には相当な縁があるらしい。

確かハーツやカッシーワの娘達が偶に話していたような気がする。

ゲルド族の彼女が何故ここに…そう聞くのも野暮だろう。あんなことがあったのだから。

 

 聴く気は無かったがリトの村は非常に開放的な造りをしている分密談には向かない。

カッシーワとハミラの話から大凡見当はつく。

正直に言えば村の子供達と穏やかに過ごしていて欲しかった。

 

 俺もチューリもリトの戦士だ、息子が戦士になることに難色を示している妻には悪いが彼の手を顔つきを見ているとその必要性を改めて確信できる。

幼子とは思えない修羅場を潜り抜けて来たのだろう、命のやり取りをした者だけが辿り着ける境地に既に足を踏み入れている。

 

 何気ない日常は薄氷の上に乗ってるだけの脆く儚い物、妻や友を護る事の出来るこの仕事を後悔した事は無い。

 

 だがコレは大人の領分だ、ここまで幼い者では肉体的にも出来る事は限られるしこの世界は徹底的に非情なだけにその時が来るまでは鍛錬に留めてくれる方がありがたい。

だだそれでもなお選んだのならばその覚悟と誇りに敬意を持って接するべきだろう。

短い間ながらも付きっきりで指導したつもりだ。

その成長の速さや時が止まっているかのような集中力に加え、崖から飛び降りてまで特訓する執念には驚かされたが。

 

 チューリもそれが分かっているから内心はともかく彼女を戦士として尊重しているフシがある。

教える内容も数ある中でもかなり安全に気を遣ったものを選び抜いていた。

 

―そろそろ時間だ、俺も出撃しよう。

今、何かが光った気がしたが気のせいか?

 

 ◆ へブラ山上空

 

 ハイラルでも有数の標高を持つへブラ山、その山頂でさえもまるで届かない遥か上空に俺達は辿り着いた。

降りしきる雨はここでは数多の氷の粒となりそれに負けじと激しい落雷が鳴りやまない。

この場に身を置くだけでリトの村がどれほどの脅威にさらされるのか否でも感じ取れる。

 

 眼前には数えるのも億劫な程のボコブリン達。

大柄な魔物であるモリブリンや宙を歩く魔法を操るウィズローブまでいる。

そして自分にしか見えていないらしい黒い汚泥を身に纏ったような三本の角の生えた雷龍が向かって来る。

 

 とんでもない大きさだ、巨体で知られるヒノックスやモルドラジークが子供に見える。

リトの村を丸呑みできそうなぐらいかな?

カカリコ村へと続く道中に双子山という南北に分かれた山があったけれど、一説によると龍によって削り別れたって噂もあるらしい。

テバさん達も見えないながらも大凡この辺りにいるのであろうと辺りを付けられる程あからさまに魔物達の軍勢に穴が開いていた。

こんな化け物に襲撃されたら大抵の集落は瞬く間に壊滅するだろう。

 

「フン…ご丁寧に木組みの足場を作って御出ましか。空を舐めてるとしか思えん。―チューリ!リンク!周囲の魔物は俺に任せておけ。そっちは頼んだぞ!」

 

 テバさんは不服そうに言い捨てる。

どうやら魔物の方は蛸型の魔物、オクタというらしいそれを膨らませる事で無理矢理に登ってきており不安定なまま迎え撃つつもりの様だ。

こうして無理矢理来ている時点でそう考えるのもどうかと思うけど、翼も持たない彼らのそれは勇気を通り越して蛮勇そのもの、邪魔の入らない大空には相応の危険を伴うというのに。

 

 ジジッと導火線が燃える音を伴いながら弦を引く、狙いに気が付いたボコブリン達は弓を構えるがすでに攻撃準備を終えていたテバさんの矢の方が早い。

密集地点に放たれた矢は着弾とともに炸裂し足場を砕き、周りの魔物諸共吹きとばす。

 

 爆風で視界を覆っている間に肉薄し、猛禽類特有の鋭い鉤爪ですれ違いざまにオクタを攻撃する。凄い速さだ!あんなスピードで狙われたら躱しようがない。

1、2体でも倒してしまえばバランスの取れなくなった木組みは魔物達を宙へと放り出すのみ、空を飛ぶ事の出来ないボコブリン達にはどうする事も出来ずに死ぬだけだ。

 

「ギャッ!?アアァアア!!」

 

「よし、次だ―うおっ!?」

 

 次のオクタロックに狙いをつけ弓を構えるテバ、一連の攻撃で彼の脅威を肌で感じ取ったのかモリブリンは恐るべき方法で反撃に出る。

なんと、同じ足場に乗っていたボコブリンを鷲掴みにしこちらへと投擲したのだ。

ボコブリンも予想してなかったのだろう、手足をばたつかせ絶叫と共に飛んで来る。

 

これには流石のテバさんも面喰い照準合わせを取りやめ宙返りをして躱してみせた。

 

「次からはもっとまともな準備をするんだな」

 

 彼ら魔物にとって不幸だったのは対峙するテバさんはリト族きっての飛行の名手、こんないい加減な反撃が通用する相手では無い。

哀れボコブリンは放物線を描いたまま地上の星と消えていった。

 

 ハッキリ言えばこの抵抗手段は下策だとは思う。

投げ飛ばしたモリブリンだってこんな攻め方何度も使えない。

ボコブリンからすれば成否にかかわらず命を捨てる方法でもあるからだろう、モリブリンと同じ足場から逃げ出そうと他の足場に飛び移りそのうちの何体かは届かずに墜落する始末だ。

 

 上へ、右へ時には急降下と大空を縦横無尽に飛び交いハヤブサの弓で次々と足場を落としてゆく。

矢で撃たれそうなときは、他の足場を射線に入れて同士討ちを狙いつつ盾として使い、改めて狙いを付けたオクタという的を撃ち抜く。

これが空の支配者リト族の戦い方か…。

 

「俺達も行こう、背中から指示を出してくれ!」

 

「はい!まずは…あの青い魔物の辺りに飛んでください!あの辺りなら目玉が狙えます!」

 

 シーカーストーンの望遠機能を使い大まかな位置取りを指示する。

球体状の物体がいくつか見渡せるが、後方に見える尻尾の部分以外は閉じてしまっている。

チューリさんにはこの姿は見えない為、最寄りの青い魔物の箇所に移動してもらえるようお願いする。

遮蔽物の無い上空では目印になるのはどうしても魔物達になってしまうのがもどかしい。

 

「あれはフリーズウィズローブだな。あいつはまともに戦うと面倒だ。顔面を狙うか、火が使えそうな武器はあるかい?」

 

「メテオロッドならどうでしょうか!?」

 

「準備が良いなリンク!そいつならバッチリだ。しっかり掴まってろよ!」

 

 雷龍のものと思われる電撃を躱しながら接近すると、フリーズウィズローブはキヒヒヒと気味の悪い笑みを浮かべたかと思うと姿を消す。

 

「消えた!?」

 

「落ち着けリンク、あいつ等は消えたように見えても移動する際、足元の光は誤魔化せないんだ。ロッドを構えてじっくりと狙って!」

 

「成程!確かにあいつ等と違って足元の光が消えてない!…そこだっ!」

 

 足元の光が止まり攻撃に転じる瞬間を手にしたメテオロッドで振りかざす

フリーズウィズローブもほぼ同時に自身の持つフリーズロッドでリンク達に襲いかかるが―

 

「ギャッ!?」

 

「!?」

 

 なんとリンクのメテオロッドが放つ火球が氷球を打ち消しそのままフリーズウィズローブへと直撃したのだ。

氷のウィズローブは火に弱い為あっという間に霧となり消滅する。

 

「凄いじゃないかリンク!一体どんなカラクリなんだい?」

 

「えっ、あっいや…」

 

 そんな筈はない。確かに氷には火が有効ではあるが逆もまた然り、互いに打ち消し合う結果になると踏んでいただけに返答に困る。

 

「まだです、このまま龍の目玉を狙いましょう!」

 

「おっとそうだったな。今のうちに矢を準備してくれ」

 

 吹き荒れる暴風に降り注ぐ雹と雷弾を潜り抜け尻尾に生えた目玉を射貫いてみせる。

ツバメの弓では少々威力が足りないのか効いてはいるが撃破するまでには至らない、それなら何発も立て続けに浴びせるまでだ。

弓の特訓をしておいて良かったと胸を撫で下ろす。

 

 10本を越えた辺りで声にならない絶叫と共に紫色の粘液が一部剥がれ消滅する。どうやらミツバの集めた情報が正しかったようだ。しかしそれだけで終わるほど敵も脆弱では無い。

 

「!?チューリさん命中しましたが一段と龍の飛翔が速くなりました!どうやら全部壊さないといけないみたいです!」

 

「そう簡単にはいかせてくれないか、わかった。次の場所まで案内してくれ!」

 

 次に狙うのは今開かれた胴についてる目玉だが雷龍の反撃も激しさを増している。

ボコブリン達の矢の妨害もありチューリさんも思ったように近づけないようだ。

更に

 

「チッ、面倒な事をしてくれるな…!」

 

龍の前にウィズローブ達が立ちはだかり、その杖を回したかと思うと螺旋状に氷の球を降り注いできた。

 

「リンク、ちょっとだけ無茶をする。力の限り思いっきり握ってくれ!」

 

「は、はい!」

 

 チューリさんの言葉に従い思いっきりしがみ付く。

どんな考えがあるのかはわからないが一直線にスピードを上げて突っ込むつもりの様だ。

そんな間にも氷との距離は縮まりぶつかるかと思うその瞬間、世界が反転した。

チューリさんがトップスピードで螺旋に合わせた機動を持ってその隙間を掻い潜ったのだ。

 

「今だ!跳んでくれリンク!後の事は任せろ!」

 

 チューリさんに言われるまま跳躍し、ウィズローブたちの頭上を越える。

その身を宙に放り出す事で集中力を更に尖らせ数瞬の内に無数の矢を浴びせかけた。

先程同様に目玉が消滅し、雷龍を覆う粘膜の殆どが消滅する。

 

 重力に従い落下していく俺を拾いにかかるチューリさん、だが…

 

 グゥオオオオオオ!!!

凄まじい雄たけびと共に辺り一面に雷を落としてゆく。

その激しさは先程までとは比較にならない。

そして何よりその速さが桁違いだ、正に光の如く一瞬で地面まで辿りつく。

 

「う、嘘だろおい!冗談だと言ってくれ!」

 

 チューリさんが青褪めた表情でそう呟く。

 

 雷のうち1つがへブラ山の雪を崩し、雪崩を引き起こしたのだ。

進行方向は南西、リトの村も馬宿も全部まとめて飲み込んでしまう!

木々をなぎ倒し岩も飲み込むその威力、速さ、規模あんなのに巻き込まれたら絶対に助からない!

たった3人でどうやって止めればいいんだ…

 

 そんな思考を巡らせている時、更なる不運に見舞われる事になった。

 

「うわあああ!!!」

 

 そのうちの1つがチューリさんに直撃したのだ。

雷に備えて金属の武器は全て外してあるとはいえ、それで確実に当たらないかといえばそんな保証はない。

 

「チューリさん!!!」

 

「!?リンク!チューリィィイ!!!」

 

 テバさんが血相を変えて一直線に向かって来る。

これ程の高さから撃ち落とされれば死は免れない、それはリト族でも同じだ。

魔物達の相手をしていたのが災いした。出来るだけ狙いが分散する様に遠く離れてしまったのだ。

 

 物凄い速さで飛んで来るが、いかんせん距離がありすぎる。

いくらテバさんでもこのままではとても間に合わないだろう―ならば、やるべき事は一つだけ。

 

 ガシッ

 

「リンク、何を!?」

 

「ウォオオオオオオオオオ!!!!!」

 

 チューリさんの脚を掴み力の限りテバさんに向けて放り投げる。

彼等には大事な家族がいるんだ、帰りを持っている人達がいるんだ。

ここで死なせてなるものか!

 

「チューリ!」

 

(良かった…何とか、届いたみたいだ…)

 

 翼を持たない者は落下するだけ。

そんな空の掟に従い死の影が顔を覗かせる。

 

 まだやらねばならない事があるというのに、俺はここまでなのか

魔物達から雪崩からリトの皆を護りたい。

テバさん達の眼になって暴れる雷龍を止めたいのに。

観念し、目を閉じる。

地面に叩き付けられるだろうその衝撃が―訪れなかった。

 

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