ゼルダの伝説 蒼炎の勇導石   作:ちょっと通ります

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お待たせしました。
どう書いていくのかいつも悩んでしまいます。


第78話 森の精霊達

 思えば随分と遠くまで来たものだ。マリッタ馬宿で休んだ後は舗装もされていない道なき道を駆け抜けた。

街道から外れたこの場所は湿地になっているようでありのままの自然が顔を覗かせる。

故郷と違い草木が生い茂り爽やかな風の吹くこの大地が少しだけ羨ましく思えた。

 

 陽が登れば灼熱の風、陽が沈めば荒涼の風が死を運んで来る。

ちょっと待てば空からは恵みの水が降り注ぎ生命を育んでくれるなんて旅をする前は想像もできなかった。

 

 そう物思いに耽りながら進んで行くと所々カエルの鳴き声が響くようになり、渡り雨でぬかるんだ地面にはゴーゴーハスが花を咲かせていた。

足を取られないように今度は慎重に手綱を引く。

 

 タイミングが良かったかゴーゴーハスの実が大量に自生しているようだ。

今のうちに準備しておこう。採取する時間も考慮しても充分すぎる程お釣りが来る。

非常時の1秒は普段の何倍もの価値があるのだから。

それが命のやりとりとなる戦いなら尚更だ。

 

 ついでとばかりにゴーゴーガエルやガッツガエルも慎重に採取していたらいつの間にか日が暮れてしまった。

仕方がないのでシーカーストーンも雨の予報を指し示したので野宿をする。

 

岩場の窪地に拠点を構え、焚火を作り腰を降ろした。

ここなら雨で火が消える事もない。

パチパチと音が鳴る中でシズカホタルのぼんやりとした光が心を落ち着かせる。

 

 シーカーストーンに地図と天候予測の機能があって本当に良かった。

大まかにとはいえ傾斜の少ない経路を選びながら移動ができるし雨に備えて凌げる場所を探す事も出来る。

マリッタの馬宿でゆっくりとルートを思案できたのが大きいだろう。

 

 テバさんの紹介で大森林を目指してはいるがその後はどこに行こうかな

そう物想いに耽っているとフッと灯りが弱まった。

どうかしたのかと思うよりも先にポツポツと音が響き始める。

凄いな、こんなにも素早く察知出来るのか。

自然の中で逞しく生きている彼等は本当に強いと思う。

 

ー色々と採取していたら思いの外消耗していたか疲れが出てきた。

少しだけ、弾いてみようかな 教えてもらった子守唄を

こうしていると何気ない日々を思い出す、ついこの間まで一緒だったのだから

姉ちゃんが弾く曲を聴くと不思議とよく寝れたっけ……

 

ホタルの光と焚き火が暖かく包み夜は更けていった

 

 いつの間にか眠ってしまっていたみたいだ。

すっかり雨は止み、日が昇っている。

馬のドラグとリンゴを齧りつつ予定していた進路を取った。

 

 道中ラウル集落跡と呼ばれる廃墟を駆ける際、気になるものを見かけた。

石碑とそれに捧げられる白く綺麗な花だ。

あの花、どこかで見たことがある……どこだっけ……

 

  厄災で失われし御霊 謹んで追悼す

        ―ゼルダ この碑を捧げる―

 

 ゼルダ様、ハイラル王家の生き残りにして厄災ガノンを100年もの間封じ続けたという神秘の姫。

最初から廃墟としてしか知らない俺とは違いゼルダ様達は実際に村の形を、暮らしている人達を実際に見ている。

 

 復興が続くハイラルにおいて尚、タバンタ地方やハテール地方など沢山の地域において未だにその爪痕から想像するだけとはまるで違う筈だ。

 

壊れるのは一瞬だが直すのにはとても時間がかかることくらいは何となく想像がつく。

そんな中で復興の旗印としてあらゆる場所を駆けずり回っているのだそうだ。

少しでも長く平穏な生活が続いて欲しい、そう思わずにはいられなかった。

 

森の馬宿

 

「すみません、一泊お願い出来ますか?朝まででお願いします」

 

「はいわかりました。かなり早いですね。どちらへ向かわれるんですか?」

 

「ハイラル大森林に行くつもりなんですが」

 

「そうなんですか、まさかあの大森林に行くお客様がいらっしゃるとは。あそこには奇妙な霧が立ち込めると迷ってしまうことで有名なんですよ」

 

「霧ですか?」

 

「ええ私の知る限りではゼルダ様達しかたどり着いた人はいませんね。道中は細い道になっているらしいので馬はおすすめ出来ません」

 

翌日

 

 ドラグを置いて森の馬宿から北へ進むとハイラル大森林に着く。

遠く離れた場所から見た森は明るく恵み豊かなものだった。

だが、近寄ってみるとそんな印象とは裏腹に鬱蒼とした不気味な森の様で深い霧の中、枯れ木に止まるカラスの鳴き声と羽音が二の足を踏ませる。

 

 人の領域では無い、そういう意味でサトリ山の雰囲気に似ているのかも知れない。

思い返せばあちらにも桜色をした花が咲き誇っていたな、中央にある巨木と同じ色だった。

 

サトリ様と思われる生き物から姉ちゃん達の杖に加護をいただいたっけ。

そう考えると俺は色んな所で助けられているのだろうな。

本当にありがたい。

 

とりあえずシーカーストーンを頼りに中央へと足を進めてみた時の事だ。

 

「うわぁ⁉︎何だこれ⁉︎」

 

 辺りを漂う霧が白く変わり腕や脚に絡みついたのだ。

慌てて霧を振り払いながら剣を抜き、後ろに飛び退いたらー

 

「……はい?」

 

 思いがけない現象を前に零れた。

見た覚えのある瓦礫が視界に広がる。

距離や方角からしてありえない事が起きている……

どうやら森の入り口に戻されたらしい。

 

「これが魔物から退魔の剣を守り切った秘密、なのかな?」

 

 とりあえずはさっきと反対の方向に駆け出してみる。

それでも先程のような現象が起きて戻されてしまった。

方向感覚が狂いそうだ……

 

 とりあえずは何か手掛かりはないのかと辺りを見渡す。

鬱蒼とした森の至る所に広がる石造りの崩れた残骸。

誰かが手入れでもしているのか人知れず寂しく灯る燭台の炎。

 

……怪しい。

注意深く見つめると火の粉が流れていくのが見えた。

草を千切りとって落としてみる。

多少揺れはすれどそのまま足元へと落ちてゆく―風とは違うのか?

 

 恐る恐る火の粉の向きに進んでみると新たな燭台が見えて来た。

火の粉を辿っていけばいいのかな?

不安になりながらも一歩、また一歩と歩みを進める。

信じ難い事にどんどん奥へと進んでいけるではないか。

 

―そう思っていたのがつい先程であった。

 

燭台が無い⁉︎

ここに来て手掛かりが消えてしまった。

闇雲に動いてみても違うぞと言わんばかりに霧によって戻されてしまう。

何度やってもうまくいかない。

 

「だぁー!わかんなーい!」

 

 思わずドサッと草の絨毯に身を放る。

こういう煮詰まった時は意気地になってもいい事は無い。

 

 兵士として鍛錬を続けていた時、ランジェ部隊長からそう教わった。

傍から見ても気苦労の多い先輩で部下達がトラブルメーカーという事で専ら有名だったけ。

 

部下の一人が無断で偵察に行って賊に捕まった話を聞いた時は心底同情したものだ。

しかも発覚したのが2日も経つのにまだ帰って来ないなぁと雑談みたいなノリで話されたそうだから笑えない。

 

「アチチ‼︎」

 

 そう思考の底に沈んでいると背中からの熱さに意識を戻された。

慌てて地面に転がり熱を逃す。

幸いな事に先日の雨で水溜りが出来ていたので大事には至らなかった。

 

思わず振り返った先にはメテオロッドが燃え盛る。

勢いが激しく火の粉が巻き上り樹の幹に吸い込まれていった。

 

「もしかしてここ、通れるの?」

 

恐る恐る手を伸ばすと樹はすり抜けるではないか。

信じられないけど幻の樹だったらしい。

すっごい…どんな仕組みなんだろう?

気にはなるが今はメテオロッドを片手に奥へ奥へと進んでいった。

 

「ふむ…うたた寝をしておった様じゃの」

 

 霧が晴れ淡い光の降り注ぐ森の奥で出迎えたのは巨大な老木だった。

樹が喋ると言うだけも驚きだがその大きさもまた凄まじい。

近かった分、見上げ過ぎで頭がクラクラして来そうだ。

 

「これお前達、皆出て来て挨拶をしなさい」

 

老木に呼応する様に葉の面を被った小人が次々と現れる。

ひょっこりと顔を出す者、葉を回して飛んでいる者、トテトテとこちらに近寄る者と実に様々だ。

 

「この子達はコログと呼ばれておる種族じゃ。人によっては見えない者もおるがー其方には見えておるようじゃな。よろしく頼むぞ。ワシは太古の昔からこのハイラルを見届ける老木、皆からはデクの樹と呼ばれておるよ」

 

「あ、これは丁寧にどうも……」

 

「この場所を訪れるのは姫巫女や騎士かと思っておったのにのぅ……ふむ……これは驚いた。ゲルド族の男の子とは。長い事生きながらえてきた儂でも初めてお目にかかる」

 

「っ‼︎」

 

「そう身を隠さずとも良い。―そうは言っても意識して治せるものでもないか。儂の腹へと進むが良い。この子達がもてなしてくれるじゃろう。食事をしてからでも遅くはないぞ」

 

 コログと呼ばれるらしい小人達に案内され奥へと進んで行く。

 

「デクの樹様が話してるのを聞きましタ‼精一杯お持て成しさせてイタダキますネ!」

 

 食材を次々と鍋に放り込んでゆく。

―そんなに一気に投げ込んで大丈夫?混ぜ過ぎじゃない?と思っていたその時

 

 ホ~ンジャラマ~ンジャラチョエーイ‼

 

奇妙な掛け声の後枝を振り下ろすと鍋が爆発して次々と料理が飛び出して来た。

すっごい……世界にはこんな作り方も存在するんだ……

ちょっとやってみたいなぁと思って聞いてみたけどコログ族にしか出来ないって言われてしまった…トホホ……

 

 森の精霊達だからか作られる料理は植物のものが殆どだった。

最近採れるようになったというハイラルトマトを使ったキノコの煮込みは出汁が染み出していて濃厚なうま味を引き立てて疲れた身体には優しい味付けだった。

 次に食べた山菜もしっかりと灰汁が抜かれていて程よい苦味が口の中をリセットする。

 

ナッツケーキは家庭料理とも村で頂いたデザートともまた違った、自然な甘さで不思議と落ち着く味がして無意識のうちに口に運んでしまう。

ほのかに香るこの甘みは何だろう?ガンバリバチの蜜よりも寄り添うような染み渡る味だ。

 

「どう?美味しかったかナ?隠し味に小鳥の木の実と花の蜜を入れてみたんダァ」

 

「とっても美味しかったです。ご馳走さまでした」

 

 

「口に合ったみたいで良かっタ。嬉しいから秘密を教えちゃうね。実はデクの樹様のお腹には≪秘密の抜け道≫があるんだ。かなり遠いんだけどデクの樹様が言うには特別な場所に繋がってるんだっテ!ミンナニハナイショだよ」

 

 そう言って談笑していると鈴を転がすような音をたてて一人のコログが歩み寄って来た。

 

「ねえねえカラッセ聞いた?東の山では今ゲームが流行ってるんだっテ!ピーカンったら一緒に行こって誘って来たのニ。準備したのは良いけど疲れちゃってもう動けなくテェ……とか言って寝転んでたなァ」

 

「しょうがないなァ。サリヤ湖かマッコレ島で釣りしながら待ってよう。しばらくしたら遊びに行こうネ‼」

 

 

「子供達の持て成しは如何だったかな?」

 

「どれもこれも美味しかったです。ご馳走様でした」

 

「先程はすまなかったな。軽率じゃった」

 

「そんなことはありません。俺がもっと上手く溶け込めれば良かっただけですから」

 

「ー大変な目に遭ったようじゃな、お主さえ良ければここで暮らしてみるのも如何だろうか。ここならば追っ手が来ることも無ければ秘密にする必要も無いぞ」

 

「サークサーク。でも裏で糸を引いていた者を追っているんです。野放しにしては取り返しのつかないことになる……そんな気がして」

 

「うぅむ……その直感は恐らく正しいだろうな。だが姫巫女達が態々退魔の剣を持って出るとなると相手が悪すぎる。今の主にはどうすることもできんじゃろう」

 

「それでも俺を狙って来ならもう巻き込みたくはない」

 

「決意は硬いようじゃな、ならば止めはせぬ。だが儂らはいつでも受け入れるつもりだ、遠慮なく頼っても良い。それに姫巫女からもいざという時の為に大切なものを託されておるのだから」

 

「大切なものを、ですか?」

 

「ああ、宝物という者もいる。ここは侵入するにも一苦労だし隠せるだけの広さもある。少々喋り過ぎたか、年寄りの戯言と思ってくれ。彼女はあの時以上に強い胸騒ぎを感じておる様じゃ。だからこそ退魔の剣を持って出たのじゃろう」

 

「ゼルダ様は何を感じられたのでしょうかー」

 

「そういえば主は姫巫女と面識があるのか?」

 

「はい、短い間ですが色々とお世話になりました。呪われた際色々と助けて頂いて……」

 

「なるほどな だからか。微かに魔の根源たる闇と姫巫女の齎す神聖な破魔の光が感じられるのは。―そうか、龍の導きとは、な」

 

 これも運命、か そう呟いた後で改めて話の続きをする。

 

「そなたにはこれまでも、これからも数々の苦難が待ち受ける事じゃろう。それこそが科された宿命、投げ出したくなるかもしれん。それでも其方は1人では無い。共に戦う者たちがいるのだ もう少しだけ誰かに頼る事を覚えなさい。それさえ忘れなければこの世界を大きく変える希望となるであろうな」

 

 1人ではない、頼れ……か、本当に難しい事を仰る。

それが分からないからこうしているのに。

成人する前にヴォーイに触れると災いを齎す。

ゲルド族ならば誰でも知っている鉄の掟。

あの日の惨劇が、取り返しのつかない犠牲が何よりも雄弁に語りかけるー

 

 

「今すぐに理解せずとも良い。これを持って行け、いつかこの森で役に立つであろう」

 

 デクの棒を手に入れた

森の長老であるデクの樹様から採れた神聖な枝。この森?で使えるらしい どういうことなんだろう?

 

「―其方に刻まれた魔の力がデスマウンテンからも感じられる……。気をつけてゆくのじゃぞ」

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