ゼルダの伝説 蒼炎の勇導石   作:ちょっと通ります

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第8話 初陣

翌朝

 

「サヴォッタ、リンクちゃん。早めに起きてくれて助かったよ」

 

 ラメラが目を擦り寝ぼけ気味のリンクへ挨拶をする。

 

「サヴォッタ、ラメラさん…まだちょっと眠いです…」

 

市場の探索よりも出発に備えてすぐに眠ったからだろう、寝坊助なリンクにしてはかなり早い時間に目が覚めた。

その事にひとまず胸をなでおろすリンク。

護衛である自分の寝坊の為に、スケジュールを変更しなければならない…とあっては恥もいいところだからだ。

 

「すぐに出発するけれど、まずはこれを渡しておくね。昨日市場で借りて来たの」

 

 そう言ってリンクに兵士の槍を渡すラメラ。

元々はかなり長い槍だったのだろうか、少しだけ短く加工されており、軽量化だけでなく背丈の小さいリンクにもピッタリのサイズになっているようだ。

道中は危険だらけであり、武器を貸し出しているところも多い。

 

特にこのサイズだと大人では短すぎてとても使えたものでは無い為、在庫整理の意味合いもあるのだろう。

 

「サークサーク、やはり武器は色々とあったほうがいいですよね。助かります」

 

そう言ってリンクは背中に槍を背負う。

魔物達の中には徒党を組む者もいれば、それこそ体力が無尽蔵なのかと思うぐらいに常識はずれなものも存在する。

 

最悪の場合、両立する場合だってありうる。

そんな魔物と相手をしている時には武器が途中で壊れてしまったり、そもそもの武器と敵との相性が悪い場合もある。

 

「水は汲んでおくのよ、ここまでの様に穏やかに行く事は殆どあり得ないわ」

 

そう言われて、水を汲んでいくリンク。

道中は重くなるだろうが生命線でもあるので我慢する。

 

「カチュ―さんに頼んで煮込み果実を作って貰ったわ。砂漠へ出る前に食べましょう」

 

熱砂への対策にヒンヤリメロンを使ったヒンヤリ煮込み果実を食す二人。

見晴らしの良い砂漠で途中で日陰で休める可能性は低い。

 

(これスルバ姉ちゃん好きなんだよなぁ…。姉ちゃん達元気にしているかなぁ)

 

リンクは街に残してきた姉達が心配になった。

自分の心配をした方がいいと思われるだろうが、始めからそんな簡単に割り切れる訳がない。

 

「どうしたの?リンクちゃん何だか思いつめたような表情よ?」

 

ラメラが心配そうに顔を覗き込む。

大人を誤魔化せるほど彼はまだ器用では無い。

 

「大丈夫です、あまり遅くなると危ないのでそろそろ出発しましょう」

 

姉達の事を考えてる時にラメラに心配をかけてしまった。

護衛に支障をきたせては問題だ。

何でもないように振る舞うが、それでラメラが納得するわけでもない。

 

「注意力が散漫だとお互いに危険なんだけれど…しょうがないわ。道中の歩いている時に相談に乗るわよ」

 

そんな訳で長いゲルド砂漠の道中を歩いていく間、姉達の事を話すリンク。

流石にちょっと知り合ったばかりのラメラに母達の事までは言えなかったが。

話の内容を聞いて少し渋い顔をするラメラがいた。

 

「リンクちゃんはお姉ちゃん達が大切なのね…、でもきっと大丈夫よ。話を聞いている限り周りの友達や大人が気をかけてくれているわ。貴方達はもう少しでもいいから大人に甘えたっていいのよ?」

 

端的に話した内容ではあるがラメラは耳を傾ける。

時には相槌を打ち、時には悲しい表情を浮かべ彼女なりの意見を述べる。

特にリンクが7歳という点に驚いていた。

 

 望むにしろ望まないにしろ、自立を強制されたリンク達。

成長という意味では効果はあっただろう。

しかし、子供の。それも2桁行くかどうかの少女や、7歳のリンクがあらゆる面でいきなり大人になれる訳ではないのだ。

 

「サークサーク、そう言って頂けると少しだけ肩の荷が下りた気がします。理想を言うなら私がしっかりと姉達を支えられるといいのですが、まだまだこれからみたいですッ―!」

 

リンクがもう少しだけ助けて貰おうかと話していた時である。

何かが動いたような気がした。

辺りに意識を張り巡らせ、敵がいないかを確認する。

 

「そういう事、帰ったらそれを話して―ってえ!?」

 

話している途中、リンクはラメラのいる方向に向かって駆け出した。

同時に砂漠の一部が跳びあがり襲いかかる。

それに対し、ラメラの背後に立ち彼女との間に盾を滑り込ませる。

 

ガキン!

 

金属同士がぶつかり合う鈍くて不快な音と衝撃が辺りを支配した。

体重の乗せられたその一撃にリンクは耐えきれず後ろに転がった後、受け身を取って対峙する。

 

リンクの眼前に現れた相手、それは緑の鱗を持ち、直立2足歩行をしながら剣と盾を構えた爬虫類型の魔物、リザルフォスだった。

 

リザルフォスは特徴として、自身の肌を周りに溶け込む保護色に変えることが出来る。

砂一色に染まるゲルド砂漠ではその効果は極めて高い。

砂嵐で体が埋まっていようものなら見つけ出すのはまず不可能だ。

 

「リ、リザルフォスだ!リンクちゃん早く逃げて!」

 

ラメラが思わず叫ぶ、仕事とはいえこんなに小さなヴァーイに命の危険を晒すような真似をして欲しくはない。

 

世界中を歩き回っているラメラがリザルフォスを知らないはずが無い。

一般人にとってはメジャーな子鬼の姿をした魔物、ボコブリンですら脅威なのだ。

その数段上をいく強さのリザルフォスはまともに相手をするだけでも危険といえる。

 

(だめだ、ラメラさんを逃がしたいけれど、リザルフォスは身軽な魔物だと聞いている。逃げ切れる可能性は低いし逃げてる途中で他の魔物と挟み撃ちになったら本当に取り返しがつかない!)

 

砂漠という初めて出た場所で安全な場所を把握できるわけがない、重い荷物を持っている彼女が砂地を素早く移動できるとも思えない。

戦闘を回避するという方針を立てても、それを可能にする妙案が浮かばなかったのだ。

故にリンクはリザルフォスを撃退する事にした。

 

「…」

 

「…」

 

少しの間にらみ合う両者、リザルフォスはその俊敏さで付かず離れずの距離での攻撃を得意としている。

リンクもその身長の小ささゆえに殆ど密着しないと攻撃が届かない。

お互い有利な間合いを測っているのだ。

 

 

(!こんな攻撃で来るのか!)

 

始めに動いたのはリザルフォスだった。

お互いに武器が届かないぐらい離れた距離からの攻撃。

爬虫類系の魔物であるからかその口から自身の5倍はあるかというぐらいの長さの舌を伸ばして攻撃したのだ。

多少ではあったが不意を突かれたリンク。紙一重で躱すと隙の見えた胴体に向かって接近し剣を突き出す。

最短距離を進む剣が敵を穿つかと思われた

が―

 

(何だって!?このタイミングで躱すのか!?)

 

リンクの表情が驚愕に染まる。

リザルフォスが後ろに向かって跳躍し距離を取った。

言葉にするとそれだけかもしれない。

 

だがここは砂漠なのだ、当然足場は砂に覆われており思うように動かせない。

しかしながら、そんなものは関係ないと言わんばかりにリザルフォスはあっさりと躱して見せた。

 

ハッキリ言って人間には不可能な挙動といえる。

リザルフォスはその身軽な動きが武器の一つである、自分の何倍もの高さまで跳躍することもできる強靭な足腰が不安定な足場でも機動力を保証しているのだ。

 

「うわっ!」

 

躱された隙を伸ばした舌で狙われ打撲を増やすリンク。

舌とは言うがものすごい速さで延ばされるので、殆ど砲弾がぶつかったようなものだ。

 

(くっ、負けるか!)

 

「!?」

 

それでもリンクは伸ばされた舌を脇と腕を使って絡めとった。

伸びきっている舌をナイフで切り落とす。

 

リザルフォスがその痛みで声にならない悲鳴を上げながら飛び上がっている隙に、リンクは素早く接近。

無防備になっている胴体に対して遠くからでも攻撃できる槍で突きを繰り返した。

その鱗で覆われた身体から鮮血を飛び散らしながら吹き飛び消滅する。

リンクの勝ちだった。

 

「ふぅ…つ、疲れたぁ…」

 

戦いは終わり砂場に尻もちをついて呼吸を整えるリンク。

訓練とは違った命のやり取り、神経をとがらせる状況というのはそれだけで疲労も大きい。

体中は痣だらけで辛勝としか言えない様子であった。

 

「リンクちゃん!大丈夫かい!?」

 

ラメラは慌ててリンクに駆け寄った。目の前の小さな子が魔物を前にして果敢に戦い、そして打ち身だらけになりながらも倒したのだ。

患部をできるだけ動かないように布で固定し応急処置だけは済ませないといけない。

 

放っておけば傷が悪化したり、感染症だって引き起こすこともある。

それにまだまだ魔物と戦うことだってあり得るからだ。

 

「ラメラさん、サークサーク。助かります…」

 

ラメラに手当をしてもらい安堵の表情を浮かべるリンク。

応急手当の訓練も受けてはいるが、自分自身の手当ては難しいし、怪我の数や大きさによっては更に困難になるだろう。

 

「いくら護衛だからといっても無茶をし過ぎだよ!正直、こんな小さなヴァーイが護衛なんて無理だと思ってたけれどアタイが見くびっていたようだ。ごめんよ」

 

ラメラとて旅を繰り返している者、それもゲルドの街からかなり遠いゴロンシティまで足を運ぶ猛者だ。

魔物や野生生物の恐ろしさは良く知っているし、護衛となればより大変である。

 

「いえ、正直そう思われても仕方がないと思います。何はともあれラメラさんに怪我が無くて良かったです」

 

リンクも当然とばかりに言いのける。

もし、自分が同じぐらいの子に護衛を任されると言われたら不安にもなっただろう。

ラメラの考えも無理もない。

 

(族長様が言ったとおりだった…まだまだ経験が足りないな。)

 

それでも彼自身、リザルフォスを相手取った初陣の内容には納得できなかった。

場所や環境次第でこれほど戦いにくい相手になるとは思ってもみなかった。

 

ラメラを守るという護衛の初仕事は微妙な結果だったと言える。こんな状態では次に襲われたらひとたまりもない。

 

「ラメラさん、早めに砂漠を抜けましょう。今のこの状態で奇襲を受けたり野宿する事になったら大変なことになります…」

 

前もってビューラに叩き込まれたのだが、出来る限り砂漠は素早く抜けるべきだとラメラに伝えた。

昼は暑くて夜は寒い、砂嵐で視界が悪くなることも起こりうるし先程の様に保護色で擬態した魔物も存在している。

とてもではないが長居できるような場所ではないのだ。

 

「リンクちゃんの言う通りだ、急いで砂漠を抜けるからちゃんとついてくるんだよ」

 

先程までよりもさらにスペースを上げて進む二人、子供である彼にはそのペースは辛かったがそれでも何とかついていくことが出来た。

リザルフォスにやられた傷が歩くたびに痛む。

 

(手当てをした状態でもこんなに痛いのか…自分で手当て位できるようにならないとな)

 

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