俺がプロヒーローになったのは一年ちょい前といったところか。
あの頃は忙しかったなー
コスチュームの手続きにHNへのプロヒーローとしての登録。事務所への書類手続きにヒーローとしての心構えを卒業文集に書くなどととにかく大変だった。
そして雄英高校を卒業した後は冬美さんの手伝いあってかサイドキック先の事務所の名前の元、ヒーロー科だけのだが教員免許も取ることができた。
正直人生経験が二度ある俺は少々驚いたが、どうやらこの世界では高卒でもヒーローがヒーロー科に出張で教師をするのは珍しい事じゃないそうだ。それでもヒーロー経験が浅い俺が教職免許をとれたのはあの人の推薦と事務所にいることのネームバリュー、自分が高校から積み上げてきた実績のおかげだった。
んでそんな俺は今、サイドキックとして身を置いているヒーロー事務所でトレーニングを行っている。
「はっ!」
「ぐわっ!」
俺の正面にいる人は俺と同じサイドキックで先輩のプロヒーロー、フュージョナーだ。
俺に蹴り飛ばされたフュージョナーさんは埃を払って立ち上がる。
「やっぱり強いね。翔くんは!」
「フュージョナーさん。今の俺はマイティジョーカーですよ!」
「そうだったね、余計な一言だったか。じゃあ行くよ!」
フュージョナーさんはポケットから鉄のインゴットを出すと自らの個性で自分と融合させた。
これが彼の個性『フュージョン』だ。
<『フュージョン』!自らと生物以外のあらゆるものを融合させてその特性を得る!例えば鉄を融合させれば超硬度な体となり、ゴムと融合させれば伸縮自在な体となる!>
フュージョナーさんの体が銀色に輝いたのを見て俺も構えを取る。
「鉄塊拳法……!」
俺は全身の筋肉に命令を送って強張らせた筋肉を鉄以上の硬度に変える。
これは俺が前世で好きだったワンピースの技を戦いに使えないかと習得したものだ。
この世界でも身体能力を極めれば六式は使えた。流石に魚人空手は無理だったが。
それでも他作品の拳法も習得できたので戦闘向きじゃない俺の個性でもそれほど苦ではなかった。
そしてこの鉄塊拳法はジャブラが使っていた鉄塊の動けなくなるという弱点を完全に克服した形態である。
そして俺も三年生の時にようやく身に着けることができた技だ。
「はあっ!」
「おりゃあ!」
フュージョナーさんが飛び出したと同時に踏み込んだ地面を蹴った俺はそのまま飛び出して勢いをつけたまま再び地面を蹴る。
『踏み込む力が強ければ強いほどパンチは力を増す』
そんな彼の技はー
「冥躰震虎拳!」
フュージョナーさんが拳を振るより早く彼のボディにアッパーを放つ。
「ごふっ……!」
そしてそのまま倒れそうなフュージョナーさんを抱える。
「大丈夫ですか?」
「ああ……ハハハ……戦闘向けの個性の俺が完全に負けるなんて……やっぱりすごいね」
「あはははは……まあ強くなりたいとひたすら鍛えたらだれでもできるようなものですけどね」
「それは無理があるんじゃないかな……?」
「そうっすか?」
そして俺がフュージョナーさんを医務室まで連れていき戻ると
「あ、社長。帰ってたんですか」
「ん、ああ、ついさっきな。……そうだ。今なら時間がある。ちょっと付き合え」
「えー……今っすか?」
これでもフュージョナーさんと戦って連続50戦目なんだけど……それに社長も俺ほどではないが六式を使えるので、正直疲労も溜まっているのもあって、あんまり乗り気じゃない俺を見た社長は
「俺に勝てたら冬美とのデート場に高級料亭を提供して「上等っスよ!あとで後悔しないでくださいね!」チョロいな……」
チョロくてもいいのだ!待ってろよ!冬美さん!
・・・・
「んで?お父さんと無茶した結果がこれ?」
その結果、俺は都内の病院に3日間は入院することとなった。
いやね。最初は押していたのよ。でも最後の最後でエンデヴァーさんの六王銃を食らって大ダメージを食らってしまったのです。だがなんとか耐えた俺は冥躰鳳翔拳で勝つことができたもののこのような結果になってしまい」「『あんまり無茶しないで』って言わなかったっけ?」はいスミマセンでした」
冬美さん怖いっす。腕を組んでこちらを見つめてくる冬美さんに俺は一種の恐怖を覚えている。あれ?これ将来俺が尻に敷かれる前兆?エンデヴァーさんもあれ以降冷さんに頭があがらないって聞いているし……
「全く……ヒーローだから無茶するってのは知ってるけどなにもわざわざお父さんと戦ってこんなのになるなんて……ホンっとバカじゃないの!?」
「返す言葉もないっス……」
確かに冬美さんに心配かけたのは事実だ。それは誠意をもって示さねばならまい。
俺は冬美さんの顎を持ち上げて引き寄せるとチュッとキスをした
「ふぇぇぇぇ!?翔くん!?」
「ごめんね。でもこれが今俺ができる償いだからさ。それとも嫌だった?」
「いや……そうじゃないけど……!もうっ!いきなりキスするなんて!」
「アハハハ……」
「でも……嬉しかったよ♪」
身体をモジモジさせて眼鏡越しにチラッとこちらを見た冬美さんに俺はドキッとすると同時に滾る性欲を抑える。
そしてお互いを見つめあうほどに近づく。俺はベッドから動けないので冬美さんが近づいてくるのがまたドキッとしてしまう。
「翔くん……」
「冬美さん……」
そして冬美さんが目を閉じると同時にお互いの唇が重なる
ああ……幸せ「翔くん。大丈……夫のようだな……!」「翔兄、見舞いに……来たぞ……」
うええええっ!?なぜに炎司さんに焦凍くんがここに……!それよりも炎司さんのせいで病室がすごい暑くなってるんですが!焦凍くんも絶望したような表情止めて!罪悪感が凄いから!
「君はまだまだ稽古が必要なようだな……!」
「ちょ!炎司さんタンマ!ここ病室「うるさい!冬美が欲しければ俺に勝ってからにするんだな!「上等だあ!また負かしてやる!「行くぞ!「来やがれ!「ねえ……?「「!!?」」
一触即発の状態だった俺たちだったがこの場に誰がいるのかを忘れていた。
「なにやってるのかな……?ここ……病室だよ……?それに……お父さんも……翔くんも……安静にしなきゃいけないのに……ねえ……?」
俺たちはお互いに顔を見合わせてマズい表情で『どうしよう?』といった感じでアイコンタクトをとっていた。既にお互いの敵対心は消えてこの場を打開する方に意識を向けていた。
「ねえ……?」
「「……ハイスミマセンでした」」
幸い個室だったのもあり騒ぎにはならなかったが俺たちは一晩中正座させられ、冬美さんはその晩は不機嫌感満載だった。そして焦凍くんはというと部屋の隅で絶望オーラを漂わせていた。
アハハハ……
そんな俺たちだったが冬美さんと焦凍くんが寝たすきにこっそりと抜け出してトレーニングを行う。
幸いにもリカバリーガールの治癒のおかげかもう動ける。
俺に立ち止まっている暇なんてない。だって